『ホワット・イフ…?』第7話は驚きのオチ
MCUフェーズ3までの作品で起こりえた「もしも」のストーリーをアニメで描いていく『ホワット・イフ…?』。シーズン1の全9話の内、第7話までが配信された。第7話では、幼いロキが氷の巨人の王レウフェイに返され、アスガルドはヨトゥンヘイムと平和な関係を結ぶ。そしてマイティ・ソーがひとりっ子として育てられ、パーティ好きな“パーティ・ソー”に育った世界の物語が描かれた。
第7話本編の解説はこちらの記事に詳しいが、驚きだったのはそのラストだ。『ホワット・イフ…?』ではこれまでも意外なオチを用意していたが、今回は少し質が違うように思われる。『ホワット・イフ…?』はおろか、MCU全体にも影響を与えかねない展開が待っていたのだ。今回は第7話のネタバレありで、あのエンディングについて、そして今後起きうる展開について考察していく。
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』第7話の結末に関するネタバレを含みます。
ウルトロン登場?
ソーが“後片付け”を済ませた後、ジェーンとデートの約束をして全てが丸くおさまったかに見えた第7話だったが、ウォッチャーですら驚く展開が待っていた。何もない空間から突如現れたのは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) に登場したウルトロンの部隊、ウルトロン・セントリーによく似た集団。そしてその奥から登場したのはウルトロンっぽい姿の人物だ。
これはおそらく『ホワット・イフ…?』の最初のポスターに写っていた人物だろう。
その体には5つのインフィニティ・ストーンが埋め込まれており、額には黄色いマインドストーンが光っている。マインドストーンを額につけているということはあの人しかいない。マスクが開くとそこにはヴィジョンの顔があるのだった。
これまでに公開された予告映像では、ブラック・ウィドウやパーティ・ソー(ヒゲがない)らがウルトロン・セントリーと戦うシーンが公開されており、ここで現れたヴィジョンは敵である可能性が高い。問題は、このヴィジョンがどこからやってきたのかという点である。
ヴィジョン誕生の条件
こちらの解説にも書いたとおり、MCUのメインのタイムラインにおいてはヴィジョンはソーの落雷によって“起動”している。そのためこの人物は、ソーがアベンジャーズに入っていない『ホワット・イフ…?』第7話の世界線におけるヴィジョンだとは考えにくい。
そもそも第7話は『マイティ・ソー』の2011年頃を舞台にしており、ヴィジョンが誕生する『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の4年前にあたる。別のユニバースで誕生したヴィジョンが、パーティ・ソーのユニバースに来たと考えるのが理にかなっているだろう。
それに、ヴィジョンはマインドストーンがなければ完成しない。『エイジ・オブ・ウルトロン』では、ウルトロンが南アフリカでユリシーズ・クロウから仕入れたヴィブラニウムと人工皮膚細胞を掛け合わせた最強の肉体を韓国のヘレン・チョ博士に作らせようとしていた。この時、ウルトロンは人工肉体にマインド・ストーンを埋め込んでいる。
アベンジャーズはこの人工肉体をマインド・ストーンごと奪取することに成功。そして、トニー・スタークとブルース・バナーが協力し、インターネット空間を彷徨っていたJ.A.R.V.I.S.の意識をこの肉体にアップロードしようとした時、パワー不足になっていた装置にソーが電撃を浴びせてヴィジョンが起動する。
つまり、ヴィジョンが誕生するためには、以下の5つの要素が必要になる。
② ヴィブラニウム
③ ヘレン・チョ博士の技術と人工皮膚細胞
④ マインド・ストーン
⑤ ソーの雷
なんだかゲームのアイテム集めのようだが、この内、J.A.R.V.I.S.の意識はなくても、ヴィジョンのような見た目の肉体は作り出すことができる。また、当初のウルトロンの計画通り、ウルトロンの意識をアップデートするのであれば、ソーの雷も不要だろう。
計画が成功したウルトロン?
考え得る一つのセオリーは、『ホワット・イフ…?』第7話ラストで登場した人物の中身がヴィジョンではなくウルトロンであるという可能性だ。
『エイジ・オブ・ウルトロン』では、ヒドラのストラッカーはマインドストーンを内包したロキの杖(セプター)を利用して、AI研究に取り組んでいた。その研究に可能性を見出したトニーとブルースは、最強の人工知能ウルトロンの生成に挑戦する。アベンジャーズと人類の滅亡が地球に平和をもたらすと結論づけたウルトロンは暴走を始め、上述の通りボディーを最強の肉体にアップデートしようとしていた。
この目論見はウルトロンの計画を知ったワンダによって阻止されたのだが、ウルトロンがもし自分の身体をこの人工肉体にアップデート出来ていたとしたら、見た目はヴィジョンで中身はウルトロンという存在が誕生する。
一方で、①マインドストーン(セプター)を手に入れたストラッカーがAI研究を進め、②その成果にトニーとブルースが手を加える、というプロセスがなければウルトロンは誕生しない。故に、ウルトロンが『ホワット・イフ…?』第7話の舞台である2011年に存在しているとは考えづらく、やはり別ユニバースから現れたという説が理にかなっている。
ウルトラヴィジョン登場?
もう一つのセオリーは、原作コミックの“ウルトラヴィジョン”の登場だ。ウルトラヴィジョンは、世界をコントロールすることを宣言したバージョンのヴィジョン。1990年に刊行されたコミック『What If?』Vol.2では、ヴィジョンはインターネット空間を支配することで世界をコントロールしようとする。アベンジャーズの反対を押し切って。
ウルトラヴィジョンは国連の協力を取り付けて、核兵器の放棄や経済的平等、環境保護を進める。地球に黄金時代をもたらしたウルトラヴィジョンは、クリーとスクラルにも平和をもたらす等、地球を含む太陽系に平和をもたらしていく。しかし、ウルトラヴィジョンがマルチバースを繋ぐ“ネクサス・ビーイング”になることを危惧したタイムキーパーの策略によって、ウルトラヴィジョンは倒されてしまう。ドラマ『ロキ』(2021) 風に言うと“剪定”されたことになる。
第7話ラストの人物は、その中身がウルトロンなのか、ウルトラヴィジョンなのかがポイントになる。ウルトロンの場合、目的は明らかで元のユニバースで“平和”をもたらした後に別のユニバースにも“平和”をもたらそうとする。つまり各ユニバースで地球に危機をもたらすアベンジャーズと人類を滅亡させていくのだ。中身がウルトラヴィジョンであった場合、本当の意味でこのユニバースに平和がもたらされるだろう。ただし、ウルトラヴィジョンの管理下で、という条件付きだが。
なお、インフィニティ・ストーンを使ってのユニバース間移動は身体に大きな影響を与えるはずだ。指パッチンをした後のサノス、ブルース、トニーの姿を見れば、インフィニティ・ストーンを6つ揃えて力を使うことは、命がけの行為であることが分かる。だが、身体がヴィジョンであればヴィブラニウム製との頑丈な身体ということであり、繰り返しストーンを使えるのかもしれない。
マルチバースに大きな影響?
最後に、『ホワット・イフ…?』内とMCU内での展開を含めて考えてみよう。インフィニティ・ストーンでマルチバース間の移動ができるとすれば、第5話で登場したゾンビサノスは、インフィニティ・ストーンの力を使い、食糧(人間)を求めて別ユニバースに行くかもしれない。それは原作コミック「マーベル・ゾンビーズ」でヒーローたちが取った行動と同じである。
こちらの記事で解説した通り、ゾンビ化した世界では、食料問題解決のために「人口を半減させる」という“手段”は変化し得るのだ。
そして、もしもゾンビサノスとウルトロン/ウルトラヴィジョンが互いにマルチバースを超えていくのであれば、両者の利害が対立し、衝突する可能性もある。互いに潰しあってくれればよいのだが……。
また、インフィニティ・ストーンを活用して別ユニバースに行くことができるのならば、MCU本編においてもインフィニティ・ストーンの脅威は去っていないことになる。映画やドラマシリーズにおいても、別ユニバースでインフィニティ・ストーンを揃えたヴィランが襲来する可能性があるのだ。いつウルトラヴィジョンがやってきてもおかしくない。
ドラマ『ロキ』第1話では、TVAで収集され無力化した多数のインフィニティ・ストーンが登場した。インフィニティ・ストーンが分岐イベントやマルチバースの接続にあまりに便利であるため、TVAは積極的にインフィニティ・ストーンを回収していたのだろうか。
と、このように第7話のラストシーンだけでも想像は尽きない。最後に現れたのはウルトロンなのか、ウルトラヴィジョンなのか、ゾンビサノスはやってくるのか、インフィニティ・ストーンによる次元間移動は可能なのか——これらのセオリーが当たっているのかどうかも含め、『ホワット・イフ…?』シーズン1のラスト2話を楽しもう。
第8話配信直前に公開された第8話のポスターはこちらから。
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