『ホワット・イフ…?』第6話で見えた可能性
MCU初のアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』は2021年8月よりシーズン1の配信がスタート。映画では『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の劇場公開や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の第一弾予告公開、ドラマでは『ホークアイ』の予告公開など、次々とMCU作品に動きが見られる中、『ホワット・イフ…?』でも新しい動きが起きている。
9月15日(水)に配信された『ホワット・イフ…?』第6話では、MCU第1作目『アイアンマン』(2008) と第18作目『ブラックパンサー』(2018) をベースにした物語が展開された。そして、全9話で構成されるシーズン1は第6話から後半戦に突入し、シーズンのクライマックスへ向けた予告も公開された。今回は、第6話の展開と予告映像から見えてきたシーズン1後半のある可能性について考えてみよう。
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』第6話とそれまでの各話の内容に関するネタバレを含みます。
第6話は終わりじゃない?
『ホワット・イフ…?』第6話は『アイアンマン』の冒頭で自社の兵器によって負傷するはずだったトニーが、キルモンガーによって救われたことが分岐イベントだった。つまりこれは、キルモンガーがスターク・インダストリーズのナンバー2だったオバディア・ステインとテン・リングスとが繋がっていたことを知り、“ワカンダ攻略”の近道としてトニーに取り入ることを選んだ世界線である。
第6話のキルモンガーは、不要になった人物をあっさり殺す冷徹さと、遠回りでも確実に目的を達成する用意周到さが『ブラックパンサー』よりも色濃く表現されていた。こちらの世界線のキルモンガーは早々にティ・チャラを排除することに成功し、ワカンダを乗っ取ってみせる。一方、キルモンガーを疑っていたシュリはペッパーの元を訪れて二人で共闘することを提案する。そう、これまでのストーリーと同じくまだ続きがありそうなエンドを迎えるのだ。
第6話では特に、キルモンガーがハート型のハーブを飲んだ後に見た世界での亡きティ・チャラの忠告にもあった、「悪行で成果を得ても罰される」という寓話的な教訓が実現しなかった。そもそも映画『アイアンマン』の物語は、軍需産業で儲けてきたトニー・スタークがしっぺ返しを食らって改心するという展開がミソだったが、『ホワット・イフ…?』ではそのしっぺ返しを食らわず改心しなかったトニーが描かれただけだ。この物語には続きがあると考えるのが妥当だろう。
問題は、その続きの描かれ方だ。後半戦までの『ホワット・イフ…?』の終わり方を見れば、いずれも続きがありそうなラストになっていることが分かる。これらの物語の続きをシーズン1中に一気に描くとすれば、これまで描かれた全話がクロスオーバーする可能性も考えられるだろう。
これまでの『ホワット・イフ…?』
『ホワット・イフ…?』第1話では、ペギー・カーターがキャプテン・カーターになり、スティーブ・ロジャースと同じく自らを犠牲にして地球の危機を救う物語だった。だが、最後にはニック・フューリーによって異次元から再召喚されるところで幕を閉じる。
第2話ではティ・チャラがスター・ロードになった世界線でサノスは改心し、デシメーション(指パッチンによる人口半減)は起きなかったことに。ハッピーエンドにも見えたが、ピーター・クイルの父エゴが仲間のいない彼の前に現れ、ウォッチャーが「宇宙の消滅」を予言したところで終了する。
第3話ではハンク・ピムの妨害によってアベンジャーズ計画が失敗。ニック・フューリーがキャプテン・アメリカとキャプテン・マーベルという二人のキャプテンと共にアベンジャーズを再建しようとするところで終了する。
第4話では闇堕ちしたドクター・ストレンジが変えることのできない“絶対点”を力づくで改変したために宇宙が消滅。宇宙にドクター・ストレンジ一人を残して物語の幕がおりる。
折り返し地点となった第5話ではゾンビアポカリプスに陥ったMCU世界でピーター・パーカー、ティ・チャラ、スコット・ラング、そしてドクター・ストレンジのマントが、マインドストーンとワカンダの技術力を活用して地球を救おうとする。しかし、その先にはゾンビ化したサノスが待っており、ウォッチャーがまたも「宇宙の消滅」を予言して物語が終了する。
各話のメインストーリーには決着が付いているものの、いずれも続きがありそうな終わり方をしていることが分かる。6話中半分は「宇宙の消滅」というラストが用意されているが、各話のユニバースがクロスオーバーしてその先が描かれるとすれば、MCUらしい希望のある展開だと言える。
クロスオーバーは…ある!
そしてそのクロスオーバーの可能性は公式にも示されている。まず、これまでに公開されていた予告編では闇堕ちドクター・ストレンジとキャプテン・カーターが遭遇するシーンが見られたが、第6話までにそうした展開は見られなかった。
また、9月14日(火)に米マーベルが公開した『ホワット・イフ…?』の新たな予告編では、第7話以降のものと見られるシーンがいくつも挿入されている。「Mid-Season Sneak Peek(シーズン中盤のプレビュー)」と題されたその予告編がこちらだ。
ブラック・ウィドウがウルトロンの軍隊ウルトロン・セントリーをなぎ倒すシーンや、DJを務めるグランドマスターの姿、盾を投げるブラック・ウィドウなど、第7話以降で描かれるシーンも見られる。
その中には、明らかに第6話までの展開を踏まえたシーンも。ペッパーはキルモンガーがブラックパンサーを倒すシーンで使っていた銃によく似た武器を持って、シュリとドーラ・ミラージュと共に走っている。また、エゴがレストランでクイルと思われる人物に電流を走らせている場面も。
やはり、各作品の“その後”は描かれるようだ。それだけではない。各作品のクロスオーバーの可能性も示されている。ソーが闇堕ちドクター・ストレンジに「ゾンビか、いいね!」と言っているシーンは第4話と第5話が、キャプテン・カーター、ブラック・ウィドウ、ガモーラ、ティ・チャラ版スター・ロード、ソーによるアベンジャーズが並ぶ場面は(少なくとも)第1話と第2話がクロスオーバーしている。また、当初の予告で闇堕ちドクター・ストレンジとキャプテン・カーターが会話を交わしていたことを考えれば複数話が絡み合う展開が期待できそうだ。
問題は、誰がマルチユニバースを繋ぐのかということである。マルチバースを移動できる存在はネクサス・ビーイングとして知られるが、ここまでのMCUにおいてネクサス・ビーイングであることが示唆されたのはワンダのみ。だが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではドクター・ストレンジがマルチバースの扉を開くとされている。
この条件を考えれば、『ホワット・イフ…?』でマルチバースを繋ぐのは、やはり闇堕ちドクター・ストレンジ(ドクター・ストレンジ・スプリーム)だろうか。彼は数世紀にわたって大量の魔物の力を蓄えている。仮にそうなれば、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』や『ドクター・ストレンジ イン・マルチバース・オブ・マッドネス』の前にドクター・ストレンジがネクサス・ビーイングになるポテンシャルを示すことになる。
あるいは、大穴でウォッチャーが動く展開もあり得るだろう。ウォッチャーは第4話ではドクター・ストレンジと会話するシーンも見られたが、基本的にはナレーター役に終始している。シーズン2のことも考えると大きな動きが取れるかどうかは微妙なところだが、原作コミックでは色々あったウォッチャーことウアトゥがこのままバックグラウンドも語られずに終わってしまうのは少し寂しい。
いずれにせよ、『ホワット・イフ…?』では全ての物語がクロスオーバーするかどうかは分からないが、各話のその後が描かれることは確かなようだ。30分では足りないほどの濃度の物語を届けているが、それらが混ざり合う時、どのような化学反応が起きるのだろうか。その結果を楽しみに待とう。
アニメ『ホワット・イフ…?』はDisney+で独占配信中。
『ホワット・イフ…?』第6話で明らかになったスターク・インダストリーズが兵器開発をやめた本当の理由についての解説はこちらの記事で。
第7話の登場キャラクターについてはこちらから。
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第1話のネタバレ解説はこちらから。
第2話のネタバレ解説はこちらから。
第3話のネタバレ解説はこちらから。
第4話のネタバレ解説はこちらから。
第5話のネタバレ解説はこちらから。