ネタバレ解説 スターク社が兵器開発をやめた理由とは『ホワット・イフ…?』第6話で示された真実 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説 スターク社が兵器開発をやめた理由とは『ホワット・イフ…?』第6話で示された真実

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『ホワット・イフ…?』第6話で見えたこと

アニメ『ホワット・イフ…?』シーズン1はMCUフェーズ3までの23作品を対象に、あり得た「もしも」の物語を届けてくれている。一方で、『ホワット・イフ…?』内で起きていることは全てMCU世界の別ユニバースで現実に起きていることとされている。ただ単に「もしも」の物語を描くだけでない、“本編へと繋がりそうな予感”が本作の魅力でもある。

『ホワット・イフ…?』第6話では、「もしも…キルモンガーがトニー・スタークを救ったら?」というタイトルのエピソードが配信された。全ての始まりであるMCU第1作目『アイアンマン』(2008) の冒頭でトニーが重傷を負わず、キルモンガーに助けられていた世界線の物語が描かれた。同話はキルモンガーの「もしも」でありつつ、一方ではトニー・スタークという人物の「もしも」でもある。

元のストーリーと同じ展開と異なる展開を見比べることで、物事の本質が見えてくることもある。今回は第6話のあるシーンから見えた「トニー・スタークがスターク・インダストリーズの兵器開発をやめた理由」について考察してみよう。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』第6話の内容に関するネタバレを含みます。

トニー・スタークがアイアンマンになった理由

『ホワット・イフ…?』第6話の結論は、ウォッチャーが言う通り「旅の始まりのたった一歩の違いによって、たどり着く先は大きく異なる」ということであり、「ヒーローとは暗闇で鍛えられ、戦いで磨かれ、犠牲により名を残す」ということだ。

軍需産業で兵器開発を進めることで成長してきたスターク・インダストリーズ。トニー・スタークはクラスターミサイルのジェリコを売り込むためにアフガニスタンを訪れる。本来であればテン・リングスの襲撃によって護衛の米兵達が殺され、トニー自身もテン・リングスが入手したスターク社製の爆弾で重傷を負うはずだった。

『ホワット・イフ…?』第6話ではキルモンガーが登場してトニー・スタークを助けるのだが、これはキルモンガーがトニーに取り入るための作戦だった。キルモンガーは科学者としてのトニーの頭脳を利用して祖国ワカンダの乗っ取りを目論んでいたのだ。

問題はトニー・スタークである。第6話ではトニーがアイアンマンのスーツを開発することはなく、代わりにキルモンガーが学生時代に構想していたドローンの解放者/リベレーターをキルモンガーと共同で開発することに。『アイアンマン』におけるトニーは、テン・リングスに捕らえられたことで同じく捕虜になっていたホー・インセン博士とアイアンマン マーク1を完成させている。つまり、第6話はキルモンガーの介入によってアイアンマンが誕生しなかった世界線ということになる。

『ホワット・イフ…?』第4話では、特定の世界線で変えられない分岐イベント=“絶対点”という概念が紹介されたが、アイアンマンの誕生はこの世界では絶対点ではなかったということだ。トニーがアイアンマンになるには、ウォッチャーが「ヒーローは暗闇で鍛えられ」「犠牲により名を残す」と言った通り、重傷を負いテン・リングスに捕虜にされるという条件が必要だったのだ。

スターク・インダストリーズが兵器開発をやめた理由

同じように『ホワット・イフ…?』第6話のもう一つの大きな出来事は、スターク・インダストリーズが兵器開発をやめなかったということだ。スターク社が軍需産業から手を引かなかったことで、米政府が同社を国有化して米国がワカンダに攻め込む展開まで描かれる。

実は第6話では、スターク・インダストリーズが兵器開発をやめなかった瞬間というのがはっきりと描かれている。それはアフガニスタンから戻ったトニーが記者会見を開くシーンだ。映画『アイアンマン』では、トニーは「若い米国人が私の作った兵器で殺されるのを見た」と話し、「自分が無責任なシステムの一部だった」と気付いてスターク社による兵器製造の中止を発表する。だが『ホワット・イフ…?』では、トニーは「自社の兵器が若き兵士の命を奪った」という事実を受けて「より努力してより強力な兵器を作る」と豪語する。

つまり、「自社の兵器で若い米兵が死んだ」という同じイベントに対して、異なる二つの結果が生まれているのだ。ということは、どちらにせよ「自社の兵器で若い米兵が死んだ」ことは建前でしかなく、その分かれ道の背景には別の理由が存在していたと考えられる。その理由とは、一体何なのだろうか。

トニー自身とアークリアクター

『アイアンマン』と『ホワット・イフ…?』第6話を見比べて分かるキルモンガーの登場以外の違いは、以下の二つである。

① トニー自身が被害を被ったかどうか
② アークリアクターの小型化に成功したかどうか

以上は二つともキルモンガーに救われたことによって起きなかったイベントだ。スターク社製の爆弾によって心臓の近くに破片が刺さったトニーは瀕死の重傷を負い、破片が心臓に到達しないよう吸い上げ続けるためにインセン博士と共にアークリアクターの小型化を実現した。この二つのイベントはセットで起きる出来事だ。

第6話では、トニーはリベレーターの動力源として活用するためにアークリアクターの小型化を思いつくが、瞬時に「無理か」と諦めている。小型化は、命の危機に直面し、インセン博士というもう一人の天才がいて初めてなし得たことだったのだろう。

アークリアクターの小型化が重要である理由は、兵器製造から撤退したスターク・インダストリーズはその後の経営の柱としてエネルギー事業に乗り出すからだ(『アイアンマン2』(2010) では風力発電や二酸化炭素削減の事業に乗り出している)。『アイアンマン』では、トニーが会見で突如表明した兵器製造撤退に対し、スターク・インダストリーズのナンバー2であるオバディア・ステインは猛反対した。だが、トニーがアークリアクターの小型化というビジネスの切り札を握っていたことを知って安堵する場面がある。

つまり、トニーが『アイアンマン』で選んで『ホワット・イフ…?』第6話で選ばなかったスターク社の兵器製造撤退は、あくまでビジネス上の判断だったと考えることもできる。バックアップがあってこそ大胆な改革を行うというのは、経営者としては真っ当なのかもしれない。

一方で、トニー自身が自社の兵器で死にかけたという事実もまた、この決断に影響を与えていたと考えられる。ウォッチャーの言うように「ヒーローとは暗闇で鍛えられ」るものであり、真に切羽詰まった状況に直面することがなく「なんとかなってしまった」場合には、トニーが改心することは難しかったのかもしれない。

“そうなった世界”の尊さ

だが、これをもってトニー・スタークを“冷たい人間”と突き放すことはできないだろう。『アイアンマン』のトニーは、自身は自社兵器によって命の危機に瀕し、会社としてはアークリアクターという代替戦力があり、米兵の命を奪ったという複合的な理由から兵器製造の中止という決断に至ったと考えられる。物事はいつだって重層的で複雑なのだ。

いずれにせよ、トニーが会見で語った「自社の兵器で若い米兵が死んだ」ことは、スターク社が兵器製造から撤退する“唯一の直接的な理由”ではなかったことが今回明らかになった。そして考えられる二つの理由については、トニー自身が被害を被ったかどうかは人の心の問題で、やはり自分が傷つかなければ思い至れない領域がある(トニーにはあった)ということだ。アークリアクターの小型化が実現したかどうかは科学の問題であり、一つのテクノロジーのブレイクスルーが未来を変えうるということだ。今回見られた“トニーの変化”は、共に重要な教訓を与えてくれている。

トニーは後にスティーブ・ロジャースを含む様々な人間との出会いがあって、ヒーロー活動の中で自己犠牲を払うようになっていく。そうならなかった世界を見ることで、そうなった世界の尊さが身に染みて分かる。残り3話となった『ホワット・イフ…?』、引き続きその“違い”に注目して観ていこう。

アニメ『ホワット・イフ…?』はDisney+で独占配信中。

『ホワット・イフ…?』(Disney+)

第7話の登場キャラクターについてはこちらから。

『ホワット・イフ…?』第6話の内容と新予告から考察する第7話以降の展開はこちらから。

11月24日(水)から配信を開始するドラマ『ホークアイ』の予告編とその解説&考察はこちらから。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編の解説&考察はこちらから。

映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』のネタバレレビューはこちらから。

 

『ホワット・イフ…?』第6話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。 お問い合わせはコチラから
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