ネタバレ考察『ホワット・イフ…?』第7話 キャプテン・マーベルに新たな一面。最強ヒーローのジレンマを救うのは… | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ホワット・イフ…?』第7話 キャプテン・マーベルに新たな一面。最強ヒーローのジレンマを救うのは…

© 2021 Marvel

「もしも」を描く『ホワット・イフ…?』

MCUのあり得た「もしも」のストーリーを描くアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』。ペギー・カーターがスティーブ・ロジャースに代わってキャプテン・カーターになった世界や、MCU世界がゾンビアポカリプスに変化した世界など、様々な物語が紹介されている。

それぞれの世界線で描かれる“変わらないこと”と“変わること”を通して、これまでのMCUの物語の本質の部分が見えてくるのが『ホワット・イフ…?』の特徴だ。つまり、過去の分岐点だけでなく、今後のMCUにおいて注目すべき点も示してくれるのが『ホワット・イフ…?』である。今回は、第7話で見えたキャプテン・マーベルに関するある説について考察していきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』第7話の内容に関するネタバレを含みます。

『ホワット・イフ…?』で示されたキャプテン・マーベルの可能性

『ホワット・イフ…?』第7話では、ソーがひとりっ子として育ったがために“パリピ”になり、地球でパーティを繰り広げる。地球の危機を感じ取ったS.H.E.I.L.D.は本来『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) で使うことになるキャプテン・マーベルのポケベルを使う。呼び出されたキャプテン・マーベルはソーを地球から退去させるために真っ向から勝負を挑む。

二人の力はほぼ互角。若干キャプテン・マーベルが優勢にも見えたが、キャプテン・マーベルはソー主催のパーティに喜んでいる人たちから「お邪魔虫」とバッシングを受け、一度はS.H.E.I.L.D.の基地へと戻る。ここでキャプテン・マーベルの口から語られる言葉が重要になる。

キャプテン・マーベルはソーのことを「地球に穴を開けてまで倒す価値もない」と表現する。本気を出せば倒せるが、地球に犠牲を出してまで挑むほどの脅威ではないということだろう。このやりとりの中で、一つのセオリーが生まれるのだ。

それはつまり、キャプテン・マーベルが問題に対処しないと決める可能性がある、ということである。キャプテン・マーベルことキャロル・ダンバースといえば、MCUでも屈指の強さを誇るスーパーヒーロー。その力は“最強”と言ってもいい。いわばDCコミックスにおけるスーパーマンにあたる存在だ。

故に『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019-) においてはキャプテン・マーベルは最終兵器的存在だったし、フェーズ4においても「ヒーローがいない惑星を助けるので忙しい」という理由をつけなければMCU世界のパワーバランスが崩れてしまうような存在だ。もしもキャプテン・マーベルが地球にいたら、ほとんどのヴィランはキャプテン・マーベルが倒してくれるだろう。

キャプテン・マーベルはどうしても必要な時にだけ現れて、人類を救ってくれる。そんなスーパーヒーローだったのだが、『ホワット・イフ…?』第7話で示されたのは、キャプテン・マーベルにも当然ながら感情があり、誰を倒し、誰を救うのか、自分で判断を下すということである。

キャプテン・マーベルのトリアージ

これはスーパーヒーローが直面する”トリアージ”の問題だ。トリアージとは医者が治療にあたって負傷者や病人に治療の優先順位をつけることを意味する。スーパーヒーローの世界においては、それは誰を助けるのかということを意味する。特に銀河中からその力を必要とされているキャプテン・マーベルは、どの惑星の人々を助けるのかを自分で判断しなければならない。MCUのメインストーリーにおいては、サノスが目的を達成するまで姿を現さなかった。DCコミックスにおけるスーパーマンが“誰を助けるのか問題”に悩んできたように、MCUにおいてはキャプテン・マーベルもまたトリアージの問題に直面する可能性があるのだ。

とりわけ『ホワット・イフ…?』第7話において言明されはしなかったものの、パーティに興じてキャプテン・マーベルを“お邪魔虫”扱いする人々を「相手にしてられない」とキャプテン・マーベルが思っていたとしても無理はない。私たちが地球に住む人類を見た時、自信を持ってキャプテン・マーベルに「救ってください」と言える自信はあるだろうか。

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) において、ウルトロンは「地球に平和をもたらせ」という指示を受けた結果、人類とアベンジャーズが地球にとって脅威になると結論づけた。キャプテン・マーベルも同様に、彼女が愚かな地球人をいつまでも無条件に助けてくれるとは限らない。キャプテン・マーベルがいくら最強であっても、人の心を持っているからだ。

なお、英語圏では『ホワット・イフ…?』第7話のキャプテン・マーベルのキャラクターは不評で、「こんなのキャプテン・マーベルじゃない」という反応が多く出ていることも指摘しておこう。第7話はMCU本編とは別ユニバースであり、多少なりとも異なる人格のキャプテン・マーベルになっていると考えるのが妥当なのかもしれない。

キャプテン・マーベルに次ぐヒーローは

一方、キャプテン・マーベル視点ではなく、客観的に見た時には、キャプテン・マーベルが協力を拒んだ時に地球のアベンジャーズはどのように対処すべきかということは想像しておいて損はないだろう。繰り返しになるが「ウォッチメンを誰がウォッチするのか」という問題は、スーパーヒーローものの作品では(MCUも含めて)度々取り上げられてきたテーマだ。

フェーズ4以降のMCUには、これまでと違って強力なスーパーヒーローがほとんど存在していない。アイアンマン初代キャプテン・アメリカヴィジョンが去り、ハルクもインフィニティ・ストーンを使用した影響で右腕を負傷したままだ。二代目キャプテン・アメリカのサム・ウィルソンや新ヒーローのシャン・チーにはスーパーパワーはなく、ワンダは辛い状況に置かれている。ソーは宇宙に旅に出た。ブラックパンサーの扱いは作中の事情ではなくチャドウィック・ボーズマンの急逝によって微妙な状況にある。ドクター・ストレンジスパイダーマンあんな感じだし、やはりキャプテン・マーベルの存在だけが頼りなのだ。

そこで期待がかかるのが、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) で覚醒したモニカ・ランボーだ。『キャプテン・マーベル』(2019) の続編にあたる『ザ・マーベルズ(原題)』では、キャプテン・マーベルことキャロル・ダンバースと、原作コミックでは二代目キャプテン・マーベルに就任するモニカ・ランボー、そしてドラマ『ミズ・マーベル』の主人公カマラ・カーンが登場する。3人の“マーベル”が結集する『ザ・マーベルズ』では、キャロル・ダンバースと肩を並べる新たなスーパーヒーロー達が揃い踏みになるはずだ。

そして、『ワンダヴィジョン』でモニカ・ランボーが見せたキャプテン・マーベルへの憤りの片鱗には、“トリアージ”の問題が無関係ではないのかもしれない。モニカはサノスの指パッチンによって消滅していた間に母マリアを失い、その死に目に立ち会うことができなかった。20数年間地球から姿を消していたキャロルは、モニカの立場からすれば、他の惑星の人々を“優先していた”と捉えることもできる。

当然ながらキャロルの身体は一つしかないし、マリアが亡くなったのはキャロルの責任ではない。しかし、だからこそ、モニカがキャロルと同等の力を持ったスーパーヒーローになることで、より多くの人々を救うことができるはずだ。それはモニカがキャロルの抑止力になるということではなく、二人のスーパーヒーローがそれぞれの価値観の下で動けばいいのである。

『ホワット・イフ…?』第7話では、キャプテン・マーベルが今後直面するかもしれない“疲れ”や“嫌悪感”が提示された。これはMCU最強のヒーローを支える存在の必要性を感じさせるものだった。フェーズ3まではキャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソーによる“ビッグ3”が中心になっていたMCU。フェーズ4ではキャプテン・マーベルを中心とした新たな布陣の形成に期待しよう。

アニメ『ホワット・イフ…?』はDisnet+で独占配信中。

『ホワット・イフ…?』(Disney+)

『ホワット・イフ…?』第7話のネタバレ解説はこちらから。

第7話ラストで登場した人物の考察はこちらから。

第7話で分かった『キャプテン・マーベル』の猫のグースのその後についてはこちらから。

もちろん、11月5日(金) に公開される映画『エターナルズ』で登場する太古から地球を見守ってきた不死の種族エターナルズの11人にも注目だ。

モニカ・ランボー役のテヨナ・パリスが『ザ・マーベルズ』について語った内容はこちらから。

『ザ・マーベルズ』への出演が確実視されているパク・ソジュンが演じるキャラ予想はこちらから。

ドラマ『ホークアイ』の予告編とその解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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