イズガンダのセンシとは何者なのか
センシの過去が語られはじめたアニメ『ダンジョン飯』。そこには『ダンジョン飯』という作品の根底に存在する「食事の意味」があると考察できる。センシは何故食事に拘るのだろうか。そして、センシを雁字搦めにしている過去は払拭することができるのだろうか。
本記事ではセンシの過去を深掘りするアニメ『ダンジョン飯』第23話「グリフィンのスープ/ダンプリング1」について感想と考察、解説をしていこう。なお、本記事はアニメ『ダンジョン飯』第23話「グリフィンのスープ/ダンプリング1」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『ダンジョン飯』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ダンジョン飯』で深掘りされるセンシの過去
イズガンダの鉱夫団
今から10年以上前のこと。若き日のセンシが所属していた鉱夫団は、まだ未発見だったダンジョンへ偶然にも辿り着いていた。まだ金剥ぎの冒険者もいない黄金城は文字通り純金に覆われており、それだけでも価値は十分だ。しかし、黄金の魔力は凄まじく、鉱夫団はダンジョンの奥へと吸い寄せられていく。
ダンジョンは不思議なもので、まるで鉱夫団を逃がさないかのように彼らに十分な水と寝床を与えた。だが、それも限界が来る。食料が枯渇しはじめていたのだ。リーダーのギリンは魔物が食べている食べ物を奪う作戦に打って出た。それを妨害し、多くの仲間を殺めたのが鳥の魔物だった。
これが原因でセンシは鳥の魔物をグリフィンだと思い、グリフィンに異常な恐怖心を抱くようになったと解説されている。また、センシは食糧に困り果てた末に馬を絞めたことを後悔しているようだが、この馬に深い愛情を注いでいることが第4階層でケルピーに愛着を持ち、名前を付けたことに繋がっていると考察できる。
次の世代こそ宝
ギリンは幼いセンシに一番食料を与えていたが、それにもう1人の生き残りであるブリガンは反発する。ギリンは「大人の俺たちが面倒を見る責任がある」「次の世代の面倒を見てやれなくなったら終わりだろ!」と返す。
この考えはセンシも持つもので、センシはチルチャックなど年下や育ちざかりに見える人物に対して食糧を食べさせなくてはならないと焦っている描写などがある。このギリンの持つ次の世代こそ宝という精神性がセンシにも受け継がれていると考察できる。
ギリンとブリガンはグリフィンに襲われてブリガンは即死したギリンは語ったが、センシは直前の口論から一つの考察を立てていた。それはギリンがブリガンを殺し、それによってスープをつくったのではないかという考察だ。ギリンもその後、センシの見えないところで死亡した。
グリフィンのスープ?
ギリンがブリガンを殺害したのではないかと考察しているのを聞いたライオスは、グリフィンを食べることを提案する。当然のように周りからの反発を受けるライオス。ライオスはグリフィンが執拗にセンシの鉱夫団を襲った理由を馬がいたからだと考察し、若きセンシたちを襲ったのはグリフィンではなくヒポグリフだと考察する。
グリフィンとは鷲の上半身と翼、ライオンの下半身を持つ魔物である。その名前は「曲がった嘴」を意味しており、古くはヘーロドトスの『歴史』やアイスキュロスの悲劇にまで遡るほど歴史の長い魔物である。神々の戦車を引くとされている他、黄金を集めて守るとする伝承が各地に残されているため、その性質が空のないダンジョンに登場する有翼の魔物という設定のモデルになったと考察できる。
それに対して、ヒポグリフの起源はグリフィンとは異なる。グリフィンが伝承上の魔物であるのに対して、ヒポグリフは詩人の創作なのだ。古代ローマの詩人であるウェルギリウスは『アエネーイス』にて、不調和の意味を込めて「グリフィンとその好物である馬を掛け合わせる」という表現を用いたのがヒポグリフの最初だとされている。
取り替え子〈チェンジリング〉
ライオスは報告例のないグリフィンの出現とヒポグリフの目撃例から取り替え子〈チェンジリング〉の存在の影響を考察する。取り替え子〈チェンジリング〉の伝承は世界各地に残り、1890年代にも取り替え子〈チェンジリング〉を追い払うために実子を殺害してしまった事例が存在する。『ダンジョン飯』の取り換え子〈チェンジリング〉は、茸型の魔物であり、その輪に入った生き物は少し種族が変わってしまうというのだ。
茸が輪を作って生えるフェアリーリングという現象は現実にも存在するものである。身近なものだと芝生の上に輪のような形で繁殖し、芝生を枯らすか、芝生をより豊かなものにすると言われている。これには植物も成長物質が関わっており、芝生の張替えなどで円形に広がった茸の端から成長物質が出ており、それが芝生の生育に影響を及ぼすのである。日本の研究者によればフェアリーリングが生みだす成長物質によって作物の成長を促進させることが可能であるとされ、食糧危機を救う可能性すら見せている。
並行思考クイズ
センシは取り替え子〈チェンジリング〉のフェアリーリングによって変化したヒポグリフの肉を食べると、涙をこぼす。これこそ、センシが長年求めていたグリフィンのスープの味だったのだ。このエピソードは並行思考クイズ「ウミガメのスープ」をライオスなりの方法で解決したものだと思われる。
かつてはヒポグリフに襲われ、飢えからバラバラになってしまったセンシのパーティーだったが、ライオスによって再び心の中で団結することが出来た。センシは求める者には苛烈な反応を見せるダンジョンの恐ろしさを語るが、それでもライオスのパーティーは前進しはじめた。取り替え子〈チェンジリング〉のフェアリーリングを踏みながら。
種族ごとの戸惑い
取り替え子〈チェンジリング〉の影響で、ライオスはドワーフに、マルシルはハーフフット、チルチャックはトールマン、センシはエルフ、イヅツミはコボルトに変わってしまった。ダンジョンの形も変わってしまったことで、取り替え子〈チェンジリング〉の場所まで戻るのも難しくなってしまった。
取り替え子〈チェンジリング〉で種族が入れ替わったことで、各々は種族が持つ身体的な特徴を実感することになる。ドワーフの目は暗闇でも良く見え、膂力は強い。ハーフフットは非力だが五感が優れている。トールマンは他の種族に比べると感覚が鈍い。コボルトは鼻がよく利くといった具合だ。
戻るつもりが、最奥の扉に辿り着いてしまったライオスのパーティーだが、ケン助から触手が伸び、扉が開きそうになる。そうするとガーゴイルが動き出すが、それによって種族の悪い部分が見えてきてしまう。ハーフフットの体は魔法使いに向いておらず、ドワーフの体は疲れやすい。エルフは非力など、各々が今の体はこれまでの自分たちの戦い方に不向きであることが明らかになる。
ダンプリングを作り、食べているときにダンジョンの成り立ちについてマルシルが解説する。このダンジョンの根底にはドワーフの防御拠点という役割があり、ドワーフとエルフは戦争によって技術を先鋭化させた結果、災害を招いたという。それがダンジョンや古代魔術を禁止しているということだった。ライオスのパーティーはこのダンジョンを探索しつつ、取り替え子〈チェンジリング〉から戻る策を練らないといけなくなった。
本日のレシピ
グリフィンのスープ(上半身)
1. グリフィンの肩ロース肉を一口大に切る。
2. 切った肉を塩で軽く揉む。
3. 灰汁を取りながら湯で煮る。
グリフィンのスープ(下半身)
1. グリフィンのもも肉を一口大に切る。
2. 切った肉を塩で軽く揉む。
3. 灰汁を取りながら湯で煮る。
ヒポグリフのスープ
1. ヒポグリフのもも肉を一口大に切る
2. 切った肉を塩で軽く揉む
3. 灰汁を取りながら湯で煮る。
ヒポグリフの水餃子
1. 小麦粉・水・塩・コカトリスの卵をよく練り寝かせておく。
2. 挽いたヒポグリフのもも肉に刻んだ玉ねぎと人参を加えてよく練る。
3. 寝かしていた生地を棒状にする。
4. 生地を等分に切り、薄く伸ばす。
5. 伸ばした生地に具をのせてくるむ。
6. 沸騰した湯で茹でる。
7. 浮かび2~3分したら引き上げる。
8. 黒胡椒をかける。
23話の感想と最終話24話への期待
アニメ『ダンジョン飯』第23話「グリフィンのスープ/ダンプリング1」では、魔物食研究家のセンシが何故食事に拘るのか、そして第1話から続く伏線が回収され、そのトラウマをライオスの思ったことを口に出して実行する性格と豊富な魔物知識が解決してみせた。それによって抱える問題が「ファリンのキメラ化の解決」「狂乱の魔術師シスルとの対話」「翼獅子の解放」という3つに絞られた。
第24話はアニメ『ダンジョン飯』の最終話であり、取り替え子〈チェンジリング〉問題の解決と連続2クールの結末が描かれることが予想される。果たして、アニメ『ダンジョン飯』はどのような結末を迎えるのだろうか。最終話のアニメ『ダンジョン飯』第24話にも期待していきたい。
アニメ『ダンジョン飯』第23話「グリフィンのスープ/ダンプリング1」は2024年6月6日(木)22:30より放送と配信が開始。
Source
産経新聞
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