アダム・ウォーロックに注目
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』が2023年5月3日(水・祝)より劇場公開された。日本では2023年公開の洋画実写映画としては最高のヒットを記録し、全世界興収でも最初の5日間で2億8200万ドル(約380億円)を記録している。
現行のガーディアンズメンバーの有終の美をかざることになる本作。この大ヒットを支えている存在として、クイルやロケットといった主人公たちはもちろん、ウィル・ポールター演じるアダム・ウォーロックの貢献も見逃せない。
コミック版の人気キャラを何度も見たくなる実写キャラに生まれ変わらせたウィル・ポールターが、米メディアでアダム・ウォーロックというキャラクターの特徴について語っている。劇中での活躍と合わせてその魅力に迫ってみよう。
なお、以下の内容は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の結末に関するネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の内容に関するネタバレを含みます。
アダム・ウォーロックとは
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でMCU初登場を果たしたアダム・ウォーロックは、原作コミックでは1967年刊行の『Fantastic Four #67』で登場した古参の人気キャラ。原作でも悪の組織によって作り出された後、ハイ・エボリューショナリーに発見されて「ウォーロック」という名前を授けられる。映画にも登場したカウンター・アースの監督を任されることになり、コミックの「GotG」シリーズにも登場している。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』(2017) では、ポストクレジットシーンでソヴリンの女王アイーシャが出産ポッドから生まれてくる人物の名を「アダム」と言及。続編でのアダム・ウォーロックの登場が示唆されていた。
『VOLUME 3』では、ソヴリンという文明自体がハイ・エボリューショナリーによって創造されたという意外な事実が明かされる。生まれたばかりのアダム・ウォーロックは母アイーシャに従いながら、間接的にハイ・エボリューショナリーの目的のために行動していくことになる。
アダム・ウォーロックは『リミックス』でソヴリンからバッテリーを盗んだロケットに瀕死の重傷を負わせ、後半ではハイ・エボリューショナリーが狙うロケットをウォー・ピッグよりも早く捕えることを試みる。一方で、アイーシャの「本気を見せてやりなさい」という言葉を受けて捕虜を焼き殺してしまう、残されたペットのブラープをどこへでも一緒に連れて行くなど、幼い一面も見せている。
最後にはグルートに助けられ「やり直せばいい」と声をかけられると宇宙空間を漂うピーター・クイルを救出。戦いの中で母を失ったアダム・ウォーロックは、ミッドクレジットシーンではロケットが率いる新生ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに加わったことが明かされている。
「オーブンから早めに出された」
めちゃくちゃ強いが、中身は赤ん坊なので憎めない、そんな不思議なキャラクターであるアダム・ウォーロックを演じたのはウィル・ポールターだ。『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』(2010) のユースチス・スクラブ役などで子役時代から活躍しており、成人後も『デトロイト』(2017) のフィリップ・クラウス役、『メイズ・ランナー:最期の迷宮』(2018) のギャリー役、『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』(2018) のコリン・リットマン役などの出演で知られている。
ウィル・ポールターは『GotG3』公開時点で30歳。複数のチャリティに取り組み、インタビューでも白人異性愛者でありマジョリティであることの責務に言及するなど、ファンからの評価も高い人物だ。自身が演じるキャラクターの社会的な影響にもこだわりを持って演じていることで知られているが、アダム・ウォーロックのことをどのように見ているのだろうか。
米GQマガジンのインタビューでは、ウィル・ポールターはこう話している。
ジェームズ(・ガン監督)がウォーロックにある種のひねりを加えたことは確かです。この映画では、彼はまだ幼児です。オーブンから早めに出されて、まだ焼き上がっていない状態です。善悪の違いを判断しなければならないプレッシャーの中で、この世界の中での自分のあり方を見出そうと努力しています。
ドラマもコメディも含まれるので、本当に楽しい現場でした。ウォーロックというキャラクターは、私が個人的に「ガーディアンズ」の好きなところ、つまりキャラクターは可笑しいのに心理的には本物だと感じられるという点を象徴しています。
ウィル・ポールターは、アダム・ウォーロックが「まだ焼き上がっていない状態」でオーブンから出されたと形容する。一方で、ウォーロックはいきなり戦闘の現場で判断を求められる“戦力”としての扱いを受ける。赤ん坊が善悪の判断がつかないのは当たり前で、保護者に付き添われて少しずつその境界線を学んでいくものだが、残酷にもウォーロックは人間兵器としての期待を受けている。
音楽と仲間
悲壮な状況ではあるのだが、『GotG3』ではその状況がユーモアを交えて描かれ、アダム・ウォーロックが新しい居場所を見つけるまでが描かれる。ウィル・ポールターはこう続けている。
ウォーロックは任務を達成するべく期待を背負って飛び込んできたものの、お尻を叩かれてしまうという点が可笑しいと思いました。一面的なことをやらない、予想を裏切ってより面白く、角度をつけるというのはジェームズらしいやり方ですよね。その点は本当にありがたかったですし、戦闘シーンでほとんど全てのガーディアンズと関わることになり、ユーモラスな形で終わる点もクールでした。
『GotG3』のラストでは、アダム・ウォーロックはロケットのチームの一員として登場する。母を失い孤独の身になったウォーロックだが、キャプテン・ロケットと共に地球の音楽を学び、仲間と一緒に人々を守る任務に就いている。クイルも任務の時に愛聴していたRedbone「Come and Get Your Love」(1973) のイントロに身体を揺らす姿が印象的だった。
幼くして家族のもとを離れたという点では、アダム・ウォーロックはロケットやクイル、ガモーラ、ネビュラとも境遇は似ている。ロケットやガモーラはハイ・エボリューショナリーやサノスによって“支配”に近い教育を施されていたが、ウォーロックはベイビー・グルートと同じように音楽と仲間に囲まれながら育っていくことになる。
ブラープといっしょ
注目したいのは、新生ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーには、“茶色いもふもふ”ことブラープが加わっていることだ。アダム・ウォーロックが飼い主を焼き殺してしまい、「哀しそう」と拾ったブラープをウォーロックは溺愛している。「ソヴリン流に育てる」と母の反対を押し切って自分で飼うと決めたことは、ウォーロックにとって初めて自分の意志で下した決断だったのかもしれない。
アイーシャに「殺しなさい」と言われたこともあってか、アダム・ウォーロックは任務にもブラープを抱っこして連れていき(そのお陰でブラープは爆発を免れた)、新生ガーディアンズの任務にも同行させている。ロケットにとってグルートが欠かせない相棒になったように、幼いウォーロックにとってはブラープが相棒になっていくのだろうか。
ジェームズ・ガン監督が言う通り、現行メンバーの物語は一旦これで終わりを迎えた。しかし、アダム・ウォーロックとブラープの物語はこれから続いていくはずだ。ふたりの新しい冒険が描かれることを楽しみに待とう。
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は2023年5月3日(水・祝) より劇場公開。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のオリジナル・サウンドトラックは発売中&配信中。
Source
GQ Magazine
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