「私は白人で異性愛者で中流階級」——『バンダースナッチ』コリン役ウィル・ポールターが語ったマジョリティの責務 | VG+ (バゴプラ)

「私は白人で異性愛者で中流階級」——『バンダースナッチ』コリン役ウィル・ポールターが語ったマジョリティの責務

via: Screenshot on 『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』 Netflix

『バンダースナッチ』コリン役俳優が語った マジョリティの責務

視聴者が展開を選ぶ『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』

2018年末にNetflixで公開された『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』は、インタラクティブ・コンテンツを大胆に採用した映像作品として注目を集めた。視聴者は主人公の朝食や聴く音楽、そして生死に関わる行動までもを選択し続け、どこに向かうのか予想もつかない物語へと誘われていく——否、視聴者自身が誘っていくのだ。

人気を呼んだコリン・リットマン

そんな観る者の主体性と緊張感が同居する奇妙な物語にも、ある種の安心感を与えてくれる人物が登場する。それが、主人公ステファンの先輩であり、カリスマゲームクリエイターとして登場するコリン・リットマンだ。コリンは、ナムコの名作アーケードゲーム『パックマン』(1980)を題材に「この世界は操られている」と語り、ステファンと視聴者に世界の真実の姿を提示する。その天才的な振る舞いと圧巻のスピーチを披露する姿は、まさに“異端”だ。

人気子役から実力派俳優に

『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』でコリン・リットマンを演じたイギリス人俳優ウィル・ポールターは、子役の頃からイギリスのコメディ界で活躍してきた逸材だ。

『ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島』(2010)や、『なんちゃって家族』(2013)、『メイズ・ランナー』(2014)、『デトロイト』(2017)をはじめとする映画作品への出演で注目を集め、『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』での“怪演”で、改めて人気を集めている。

「白人で、異性愛者で中流階級」

そんなウィル・ポールターは、『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』公開前の2018年9月、英ガーディアン紙のインタビューで、興味深い発言をしている。ガーディアン紙によると、2回にわたるインタビューの中で計5回、ポールターは自分自身を「白人で、異性愛者で中流階級」だと、(意図を誤解されないよう、注意深く) 指摘したという。果たして、その意図はどこにあったのだろうか。

「申し訳なく思うだけでは、十分ではない」

このインタビューでウィル・ポールターは、自身の信条について、このように述べている。

私は、(マジョリティとして恩恵を受けて育ったことに) 罪悪感を感じています。ですが、不利益を被っている人々に対して申し訳なく思うだけでは、十分ではありません。まずこの事実を認めることが、公平な社会を実現するために、この状況を利用する第一歩になるはずです。単に特権を享受しながら罪を認めるのではなく、このヒエラルキーを解体する方法を見つけようと思っています。

では、ウィル・ポールターは、その為にどのような活動に取り組んでいるのだろうか。

私は、社会活動家として成長したいと思っており、チャリティーや関連団体に関わっていきたいと思っています。役者としては、出演するプロジェクトが社会的政治的に影響力のある作品であることは重要なことです。その作品の持つメッセージを意識するようにしています。白人で異性愛者で、中流階級の男性として、当たり前のように感じることを、自覚を持って捉えるようにしています。

「社会活動家として成長したい」と堂々と宣言したポールター。既に、いじめの撲滅を目指す団体の活動など、複数のチャリティーに積極的に携わっている。『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』の公開後にTwitterを休止したポールターだが、チャリティー団体のアカウントを通した発信は今後も行っていくと表明していた。

実話を題材にした『デトロイト』で主演

1967年のデトロイト暴動で実際に発生した事件を扱った映画『デトロイト』では、ウィル・ポールターはレイシストの警官として主役を演じている。様々なインタビューで、そのように自身の信条とは相容れない人物を演じることについての苦悩を吐露してきた。だがこの出演も、作品が社会に与えるメッセージとその影響力を信じてのこと。『デトロイト』では“悪役”を演じることで、社会に明確なメッセージを届けた。

『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』が提示したメッセージ

SF作品の『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』では、特異で現実離れした設定の中で、“天才” コリン・リットマンを演じた。けれど、作中でコリンがステファンに伝えた、「重要なのは俺たちの選択肢だ。それが全体を変化させる」というメッセージは、私たちが生きる世界でも重要な意味を持つだろう。

その言葉をウィル・ポールター自身のポリシーと重ね合わせたとき、特別な意味を感じずにはいられない。ポールターはこれからどのような道を辿るのか、そして、視聴者は彼が出演した作品のメッセージをどのように受け止めるのか。『バンダースナッチ』同様、選択肢は各々の手に委ねられている。

インタラクティブ映画『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は、Netflixで独占配信中。

ブラック・ミラー:バンダースナッチ

Source
The Gardian

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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