ネタバレ考察「ロケット自身の物語」ジェームズ・ガンが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』で描いたテーマとは | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察「ロケット自身の物語」ジェームズ・ガンが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』で描いたテーマとは

©2023 MARVEL

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』公開

2023年5月3日(水・祝) より、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』が北米に先駆けて日本で公開された。『GotG3』は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの一旦の集大成となる作品で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017) 以来、6年ぶりにジェームズ・ガン監督が手がけるMCU映画になる。

現行のガーディアンズメンバーでの物語は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』で最後になることも宣言されている。ジェームズ・ガン監督は本作でどのようなテーマを描きたかったのだろうか。今回は、米マーベル公式のインタビューで語られた内容と合わせて紐解いてみよう。

なお、以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ず劇場で本作を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の内容と結末に関するネタバレを含みます。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のテーマ

主人公はロケット

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が公開されたのは2014年のこと。今から9年も前になる。当時のジェームズ・ガン監督はコメディ映画やB級映画と呼ばれる類の作品を手がけており、『GotG』への起用は大抜擢だった。

そして、ジェームズ・ガン監督の手によって、それまで企業の社長に科学者、神様や英雄が主人公だったMCUに異色のならず者たちが加わることになる。その後、元泥棒のアントマンや高校生のスパイダーマンらが次々と参戦するのだから、ファン層の拡大という意味でもガン監督が果たした役割は大きい。

米マーベル公式では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の公開前にジェームズ・ガン監督のインタビューを公開。そこでガン監督は本シリーズのキャラクターたちについて、「登場人物達は皆アウトサイダーで、本当の居場所がないと感じています」と語っている。

ガーディアンズメンバーは、その感覚を出会いと冒険、サノスとの戦いを通して埋めていくことになる。だが、マーベル公式はそれでもなお「最も孤独を感じている人物」として、ロケットの名前を挙げている。

ジェームズ・ガン監督は、かねてよりロケットを「GotG」シリーズの「影の主人公」と語っており、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でようやくロケットのオリジンが描かれることになった。ジェームズ・ガン監督は第一作目で初めてロケットについて書くことになった時のことを以下のように振り返っている。

ミーティングから来るまで帰っている時に考えたんです。「ロケットは宇宙で最も哀しい生き物だ」と。連れ去られて本来とは違う姿に変えられてしまった小さな動物。銀河系のあらゆる生命体の形から追放され、疎外されたことに対して怒っています。彼は怖がっているんです。

ロケットの怒りに満ちた態度の裏には、銀河中の生態系から追放されたと感じていること、その状況に対する恐怖が存在しているということだ。

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』では、ロケットはドラックスとガモーラから「害獣」や「ネズミ」と呼ばれることに激怒していた。後にソーからは「ウサギ」と呼ばれることになるし、呼び名の定まらない「何者でもなさ」はロケットの中で埋まらない穴として残っていたと考えられる。

ロケットが「自分」を見出す物語

では、ジェームズ・ガン監督が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でロケットを物語の中心に据えた理由は何だったのだろうか。ガン監督は、『GotG3』のテーマは「自己」であるとして、以下のように話している。

その(ロケットの)物語を全て語るということは、私にとっては非常に重要でした。これまでもそうでしたし、それ自体が映画を作っている時に私を駆り立てていたものでした。1作目は母の物語で、2作目は父の物語、そして本作は自己の物語であり、ゆえに私的な物語になっています。

第1作目の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と第2作目の『リミックス』では、それぞれクイルが幼い頃に亡くした母と、後から現れた父との向き合い方が描かれた。前者では母からもらったカセットテープを開封し、後者では育ての父であるヨンドゥが残した音楽プレーヤーのズーンを受け取る形で幕を閉じている。

第3作目となる『GotG3』では、親のいないロケットが自分自身と向き合う物語が描かれた。「自分は何者なのか」という根源的な問い。生死を彷徨い過去の自分と対峙した末、ロケットはその答えを「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのロケット・ラクーン」だと見出す。それはクイル達と出会って初めてできた居場所、初めての友達だったライラたちと決めた名前、そして実はクイルが呼び続けていた“アライグマ”という自分のルーツを繋げたものだった。

そのラストでは、ロケットは親友であるクイルからズーンを受け取る。大事な相手に音楽が手渡されていくのが「GotG」シリーズの特徴だ。最後にロケットがかける曲は「ここに愛を取りにきな」と歌われるRedbone「Come And Get Your Love」(1973)。親のような存在がいなくても、自分で愛を見つけて生きていくという力強さと、それを居場所のない誰かに言ってあげるロケットの優しさを感じる演出になっている。

これまでのロケットと新しいロケット

ロケットの行動基準

一方で、ジェームズ・ガン監督はロケットについて、これまではその優しさが限定的なものであったと語っている。

実際のところ、ロケットは人生に価値を見出してきませんでした。自分自身のことや仲間のことは大切にしていましたが、自分の仲間以外の人間に対しては全く共感を示してこなかったのです。とても古い時代の感覚ですよね。

彼はどの映画でも友人を助ける以外の場面では利他的な行為をしたことがありません。たとえ彼が惑星を救い世界を守ったとしても、それは仲間を助けるための行動なんです。彼は、それ以外の人に価値があると思ったことがないので、それ以外の理由では行動を起こしたことがありません。

確かにロケットは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でも『リミックス』でも、仲間との関係性を通して、憎まれ口を叩いたり、仲間思いな一面を見せたりすることで、そのキャラクターの特徴が描かれてきた。

映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) では世界を救うことになるが、クイルやグルートを復活させたいという思いも強く持っていたのだろう。また、この時も『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) で出来たソーという新しい仲間や、デシメーションで唯一生き残ったガーディアンズメンバーのネビュラとの関係を深めて行動している。

ロケットの変化と成長

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のクライマックスでは、ロケットは“ガーディアンズ”としてハイ・エボリューショナリーを殺さず、幼いアライグマ達と動物達を助ける。これはおそらくロケットにとって初めて友達のためではない、誰か別の他者のための行動だったのではないだろうか。

それは根拠のない聖人的な行いではなく、自分の知り合いではないが、同じような境遇にある人を助ける、共感を抱ける相手を助けるという理にかなった感覚をベースにしたものでもある。自分がどういう存在なのかということに向き合って初めて、自分と似た部分を持つ他者のために行動することができる——「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は9年をかけて描かれたロケットの成長譚だったのだ。

マーベル公式は、実はロケットはこれまで銀河系に興味がなかったとも記している。『GotG3』におけるロケットの行動は、本作で子ども達を助けようとしたネビュラたちや、これまでに銀河を守ろうと動いてきたガーディアンズメンバーに影響を受けたものであることは間違いないだろう。そして最後にロケットは、銀河を守るガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのリーダーになる。

ミーティングのシーンでは、それぞれの道を行くメンバーを前に「これで解散ってこと?」と残念がっており、やはりロケットにとってはガーディアンズの活動よりも仲間の存在が何より大事だったことが示されている。それでも、クイルは「銀河にはガーディアンズが必要」と、今いる仲間を理由にするのではなく、助けを必要としている他の誰かのためにガーディアンズを率いることをロケットに求める。

それは生死の境を彷徨うロケットにライラがかけた「創る手もあれば、導く手もある」という言葉に通じるものでもある。ロケットには、それができる力がある。大事な人たちからの言葉を受けて、ロケットは自ら先頭に立って銀河を守る真のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとして活動を始めるのだ。

前に進むこと

最後に、ジェームズ・ガン監督は「ロケットは私が親しみを感じる存在です。ですから、これは私の物語なんです」と、『GotG3』がガン監督自身の物語であると話している。

ロケットは私自身です。様々な意味でね。この映画は本当に私自身のことだと感じられたし、マーベル・スタジオがいつも通り私が私であることを信頼してくれたのは、嬉しいことでした。

銀河の平和のためには戦えないが、仲間と離れたくはない、そんなロケットに自分の姿を重ね合わせた人も多いだろう。同じくロケットに自分自身の姿を見出していたガン監督は、ロケットを前に進ませることを選んだ。自分のルーツや仲間との出会いを通して、人もアライグマも変わることができるのだ。

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は2023年5月3日(水・祝) より劇場公開。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

これまでの作品におけるロケットの音楽への向き合い方と、『GotG3』での変化についてはこちらの記事で解説している。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のオリジナル・サウンドトラックは5月4日(木) 発売&配信中。

Source
Marvel.com

『GotG3』ラストからポストクレジットまでの解説&考察はこちらの記事で。

これまでのロケットの描写についての総解説はこちらから。

『GotG3』のカメオ出演者の紹介はこちらから。

アダム・ウォーロック役のウィル・ポールターが語った“ハグシーン”の裏側はこちらの記事で。

グルートの“あの発言”についてジェームズ・ガン監督が明かした事実はこちらから。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー4』についての情報と考察はこちらから。

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』のネタバレ解説はこちらから。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ラストとポストクレジットの解説はこちらから。

映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ラストの解説はこちらから。

映画『ソー:ラブ&サンダー』ラストとポストクレジットの解説はこちらから。

 

ドラマ『シークレット・インベージョン』予告の解説はこちらの記事で。

映画『マーベルズ』予告の解説はこちらから。

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』最新予告の解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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