シーズン2第5話ネタバレ解説『ロキ』まさかのラストの意味は? サイエンスか、フィクションか あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン2第5話ネタバレ解説『ロキ』まさかのラストの意味は? サイエンスか、フィクションか あらすじ&考察

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『ロキ』シーズン2第5話はどうなった?

MCUドラマ『ロキ』シーズン2は10月より配信を開始。MCUドラマでは初めてシーズン2に更新された本作は、時間軸を管理するTVAでのロキの奮闘が描かれる。MCUにマルチバース化をもたらしたシーズン1に続き、シーズン2ではTVAの危機に立ち向かうロキの姿が描かれる。

今回はドラマ『ロキ』シーズン2第5話の各シーンをネタバレ有りで解説&考察していこう。以下の内容は重大なネタバレを含むので、必ずDisney+で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ロキ』シーズン2第5話の内容に関するネタバレを含みます。

『ロキ』シーズン2第5話「サイエンス/フィクション」ネタバレ解説

フェイルセーフ・モード

ドラマ『ロキ』シーズン2第5話のタイトルはズバリ「サイエンス/フィクション」。書評家でSF翻訳家の大森望も「MCUフェーズ4で最もSFなのは『ロキ』」と評していたが、ここでSF=サイエンス・フィクションを冠するエピソードが登場することになった。一方で、「サイエンス」と「フィクション」の間はスラッシュで区切られている。シーズン2第5話ではこの二つの概念を追っていくことになる。

前話のラストではヴィクター・タイムリーが処理速度倍増器で時間織り機を延命させようとするも、タイムリーはスパゲッティ化して時間織り機が臨界点を迎えてしまった。これで世界が終わり、というわけではなく、シーズン2第5話の冒頭ではロキは誰もいなくなったTVAに一人取り残されている。

どうやらTVAは「フェイルセーフ・モード」に入ったらしい。フェイルセーフとはエラーや誤作動が発生したときに自動的に起動する安全装置のことで、工場や飛行機などでも用いられている。エラーは必ず起こるため、それが大事故につながらないようにするという前提で作られるもので、TVAを設計した在り続ける者の用心深さを感じさせる。あるいはウロボロスか。

一方のロキは、シーズン2第1話で陥っていたタイムスリップ状態が復活。誰もいなくなったTVAで少し未来の自分を見てはタイムスリップし、先ほどの過去の自分を見るというループ状態に。TVA自体がスパゲティ化していく中で「フェイルセーフ・モード」を示すモニターも破壊されるなどカオスな状況に陥っている。なお、この時ロキはTVAのハンドブックをデスクの上から手に入れている。

アルカトラズ島

一転して場面は分岐時間軸の1962年、サンフランシスコで脱獄しようとするケイシーらの姿に。ロキはここにタイムスリップしてくるが、ケイシーはフランクを名乗る囚人でロキのことを知らない。しかも、この監獄がある場所はアルカトラズ島だった。

アルカトラズは今では観光名所として人気の場所だが、1963年まで刑務所として利用されていた。孤島であることから、かつては軍事刑務所としても利用され、連邦刑務所になった後はアル・カポネなど凶悪犯も収容されている。1962年6月には、フランク・モリスとアングリン兄弟による脱獄事件が発生。このエピソードはドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演で『アルカトラズからの脱出』(1979) として映画化されている。

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分岐時間軸ではあるものの、TVAのケイシーは有名な脱獄犯のフランク・モリスだったようだ。この設定は、ロキが1971年にハイジャック事件を起こしたD.B.クーパーの正体だったという『ロキ』シーズン1第1話のネタに重なる。TVAには歴史に残る大事件を起こした人物が集まっているのかもしれない。

この場面でケイシー/フランクがボートの話をしているのは、孤島であるアルカトラズから脱出するためだ。なお、アルカトラズ島を脱出したフランク・モリスとアングリン兄弟は生死不明の扱いとなり、翌年の1963年に刑務所は閉鎖された。

仲間と再会するも…

またもタイムスリップしたロキは、マクドナルドにピランハ・パワースポーツ(Piranha Powersports)の駐車場、そして、TVAのタイムシアターへと飛ばされる。いずれもシルヴィとメビウスに関係のある場所だ。タイムシアターはシーズン1第1話でロキとメビウスが話をした場所で、ロキが過去と未来の自分の姿を見た場所でもある。

分岐時間軸の2012年のニューヨークには医者として働くハンターB-15の姿が。ここにもロキは現れるが、やはりすぐにタイムスリップしてしまっている。2012年のニューヨークといえば映画『アベンジャーズ』(2012) の舞台でもある。

再びピランハ・パワースポーツに飛んだロキはメビウスと再会する。場所は2022年のオハイオ州クリーヴランド。ここにタイムスリップで戻ってくる瞬間のロキはバルーン人形と同じ動きを見せている。

ここでのメビウスはジェットスキーを販売するドンさんとして生きていた。メビウスはシーズン1第2話からジェットスキーへの憧れを語っており、第4話ではラヴォーナに「どこへでも行けるならジェットスキーに乗りたい」と語り、シーズン2第1話ではジェットスキーのマガジンを読んでいることも明かされていた。

元の時間軸ではメビウスはジェットスキーの販売員として働いていており、息子もいるようだ。月〜土の9時5時で働く一般人のドンさんは、「TVAがなくなった」と言うロキに「ATVのことか?」と返しているが、ATVとは「all-terrain vehicle=全地形対応車」、つまり四輪バギーのことだと思われる。ATVには水陸両用のものもある。もう一人の息子の存在にも触れられるなど、ケイシーやB-15と同じくTVAでの姿とは全く違う人生を歩んでいることが分かる。

悲哀のSF作家

次のシーンでは、1994年のカリフォルニア州パサデナで『ザルタン・コンティンジェント(The Zartan Contingent)』という本を手に取るウロボロスの姿が。実はこの本はシーズン2第1話からエンディングのクレジットシーンに登場していた。ちなみに本棚には2021年に刊行されたフレイヤ・サンプソンの『The Last Library』も置かれており1994年という舞台とは矛盾しているが、これは小ネタの範囲だろう。

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ウロボロスがレジに持っていった『ザルタン・コンティンジェント』は、この時間軸でSF小説を書いているウロボロスの自作だったことが明らかになる。筆名はA・D・ダグ(A.D. Douug)となっている。本名はダグラスだろうか。

売れないSF作家のウロボロスは自分の作品を勝手に書店に置いて自分で買うという行動をとっており、「自分のSF小説を勝手に棚に置かないで」と言われると俯きながら「SFは示唆に富んでて高評価だ」と答える。追い打ちをかけるように「ここでは誰も買わない」と言われ、入口では本の束が崩れて慌てる悲哀の姿を見せている。

1994年というと、SF小説はもちろん定着していたが、マーベルをはじめとするSFがポップカルチャーの中心にある現在とは受け取られ方が異なる時代だった。また、ウロボロスはアジア系だが小説の世界においては白人男性が優位な立場にあり、業界にダイバーシティが広がっていったのは2010年代後半に入ってから。劉慈欣の『三体』がアジア初のヒューゴー賞長編小説部門を受賞するのは2015年のことだ。ここで登場する本屋の目立つ場所には、アーサー・ヘイリーら非SF作家の書籍が面陳されている。

アジトに自著を山積みにしているウロボロスの前にロキが現れるが、さすがはSF作家、タイムスリップしてきたロキの登場をあっさり受け入れている。また、ロキに「作家か?」と聞かれると、ウロボロスは誇らしげに「SF作家だ」と答えている。

ウロボロスは、作家だけでは食べていけないので大学で物理学を教えているという。英語ではカルテック(=カリフォルニア工科大学)で教鞭をとっていると明かしてもいる。SFの想像力を信じるウロボロスは、過去のTVAに戻りたいというロキの話を「不可能」としながらも「諦めないで」と励ます。「時間がない場所(TVA)で時間旅行をした」というのは不可能な話だがロキは実際にやったわけで、「もう存在しない場所への旅」というのも不可能な話だから逆説的に可能かも、と話している。

「非科学的だね (Doesn’t sound like science.)」と話すロキは、「でもフィクション的だ (No, but i does sound like fiction.)」というウロボロスの返答にピンときていない様子。ウロボロスの中では「サイエンス」と「フィクション」はセットであり、その根底にあるのは理論と可能性をセットで信じるという信念なのだろう。

サイエンスか、フィクション

ウロボロスの提案は、ロキがタイムスリップを操れるようになること。話を聞いたウロボロスは、ロキが先ほどから捜している者のところへ移動していることを指摘する。「タイムパッドより優秀」というのは、ロキは分岐時間軸への移動もTVA内での時間移動もできる上、位置が分かっていなくても求めている人の元へ行くことができるからだ。これを操ることができればロキは縦軸と横軸(時間と場所)のどこへでも行くができる。

ウロボロスは、サイエンスでは対象 (What)手段 (How) が、フィクションでは理由 (Why) が全てになると話す。何をどうやって実行するかは理由が全て。これを解き明かすことができれば、求める場所 (Where)時間 (When) へ自在に行くことができるというのだ。

ロキは行動の理由 (Why) を説明しようとするが、これまで通りTVAの崩壊を阻止できなければカーンに支配されるという説明を繰り返すばかり。ロキが真の理由を理解しているのであれば、ロキは時間移動を操れるはずだというのがウロボロスの主張だ。だが、ロキが「TVAを救うぞ」と力を込めてもタイムスリップは発動しない。それが本当の理由ではないのだ。

ロキは(フィクションではなく)科学的に考えることを提案する。だが、「存在しない場所に行く」という言葉自体がフィクションのメタファーだ。そこでウロボロスは、「TVAは存在する」という仮定を置くことにする。TVAにいた仲間を一箇所に呼び戻し、束となったメンバーの時間オーラを観測することで、同じ面子のメンバーがいた場所を座標のように割り出せるのではないかというのがウロボロスの仮説だ。

問題はタイムパッドがないこと。だが、ロキはシーズン2第5話の冒頭でTVAのデスクからTVAのハンドブックを手に入れていた。ロキは、これをウロボロスに託し、またタイムスリップしてしまっている。ハンドブックを与えて運命を変えるのは、ミス・ミニッツとラヴォーナがヴィクター・タイムリーにやったのと同じ手段だ。

二児のパパメビウス

メビウスの家にやって来たロキは、シングルファザーのメビウスが息子のケヴィンとショーンの面倒を見ている姿を目にする。メビウスはやっぱりジェットスキーの売り込みをする。ガレージにはちょうど2台のジェットスキーがあり、もうロキとメビウスと二人の息子で幸せに暮らせばいいのではと思ってしまうが、そういうわけにもいかないのだろう。

ロキがジェットスキーについて「様式美と機能美を兼ね備えている?」と先回りして聞いたのは、シーズン1第2話でメビウスがそう話していたからだ。TVAの記憶がないメビウスの説得に手こずるロキだったが、そこに現れたのはタイムパッドを完成させたウロボロスだった。大学を解雇され、妻に逃げられながらも19ヶ月をかけてタイムパッドの初号機を完成させたのだ。

ウロボロスのタイムドアは不安定ながらも十分に機能しており、ロキはメビウスに数分前の自分たちの姿を見せることで自分たちを信じさせることに成功する。必死に「友達だ」と伝える姿が印象的だ。TVAの危機によって息子たちも危険に晒されるという言葉が決め手となり、メビウスはロキの元に戻ることを決意したのだった。

ロキはB-15とケイシーも呼び戻す。あのロキがTVAの仲間たちをアッセンブルさせる胸熱展開。メビウスがケイシーに自分の名前を「スペースネーム」と話すのは、メビウスの元ネタがドイツの天文学者アウグストゥス=フェルディナント・メビウスから取られているからだ。

正義論 vs 欲望論

ロキは連れ戻すべき最後の一人、シルヴィの元を訪れるが、シルヴィにはロキと同様記憶があった。それでも、シルヴィはやはり自分の意志でTVAには戻らないと決断する。なお、シルヴィがロキを連れて行ったバーには「ザニアックは血を求める!」という声が流れるザニアックののアーケードゲームが置かれている。シーズン2第2話ではX5が時間軸内でブラッド・ウルフという俳優として映画『ザニアック!』の主演を務めていることが明かされた。このゲームは映画をゲーム化したものなのだろう。

シルヴィがすっかり常連になったバーで、ロキは皆がTVAと時間軸の人生の両方を知り、選択肢を持つべきだと熱弁する。確かに、哲学者ジョン・ロールズの正義論では、選択肢があることが公正な状態だと考えられている。それもどうでもいいという態度を見せるシルヴィをロキは「自分勝手」と非難するが、ここでもシルヴィが一枚上手だった。

シルヴィの理論は、自分は「自分の人生を生きたい」という願いに従っているが、ロキこそ自分の望みのために動いているというものだった。ロキは問い詰められ、在り続ける者を止めたい、全てを守りたい、TVAを元に戻したい、という目的が、全て「友達を取り戻したい」という真の願いの先にあったものだったということを認める。

ドラマ『ロキ』では、2012年からやってきたロキは友達ができ、孤独ではない人生を知った。だから、ロキはどうしても再び孤独になりたくなかったのだ。シルヴィはロキに「あんたも勝手」と指摘するが、それはそのはず。人のほとんどあらゆる行動は「〜したい」という欲望の上に成り立っている。「地球を守りたい」も「人を幸せにしたい」も「善く生きたい」も、母音が「iai」で終わる以上は、欲望がその指向を生み出しているのだ。

正義論を掲げたロキに対し、欲望論で対抗するシルヴィ。高度なディベートが繰り広げられているが、最後には心の問題に行き着く。ロキの「皆がいなくなったら、私の居場所は?」という悲痛な問いかけに、シルヴィは「皆自分の物語を書いてる」と言った後、言いにくい言葉を吐くために勢いをつけるようにしてバーボンをショットで流し込み、「自分の物語を書いて」と告げるのだった。

やはりシーズン2第5話はサイエンス・フィクション/物語がエピソード全体のテーマになっている。不可能を可能にするためには「理由=なぜ」を突き止めなければならないというウロボロスの言葉通り、ロキは自分の中にあった本当の「理由=なぜ」を見つけた。だが、シルヴィはその理由の不当さを指摘し、他人を巻き込まずに自分の物語を書くように言うのだ。しかし、シルヴィにはそうできたかもしれないが、それを他者に求めるのは、どんな状況でもサバイブできる強者の理論でもある。

シルヴィは立ち去り、やりきれないロキは自分もバーボンに手を伸ばすが、そこにあったはずのショットグラスがなくなっている。さらっと挿入されたコミカルなシーンだが、この時間軸に異変が起きていることを示唆している。

流れた音楽は?

ウロボロスの基地でロキを待っている一行は、すっかりジェットスキーのセールス、泥棒、医者としての顔を見せている。なお、B-15はロキを待っている間にウロボロスの著書『ヨーレンの息子たち』を読み始めている。

常連のレコード屋を訪れたシルヴィ。この時間軸の舞台は1982年だが、CDが登場したのはこの年の10月で、まだレコードの全盛の時代である。最初に店内で流れている曲はローズ・ロイス「Love Don’t Live Here Anymore」(1978) で、「あなたが私を捨てた、ここには愛はない」と歌われている。

店の人に勧められてシルヴィが聴き始める曲はヴェルヴェット・アンダーグラウンド「Oh! Sweet Nuthin’」(1970)。「彼女は何も持ってない」と歌われる内容は、レコード屋が言う通り、ネガティブにもポジティブにも受け取ることができる。

何も背負わなくて良くなったシルヴィは幸せだが、不幸でもあるのかもしれない。この曲はクラシックロックの名曲であり、シーズン1でシルヴィがパンクな生き方を見せていたことを考えると、ソファに座ってゆっくりこの曲を聴くシルヴィの人生は大きく変わったと言える。

だが、このシーンにはやけにオレンジ色が多い。ソファのクッションや後ろの椅子、ライトに壁紙に至るまでTVAの色であるオレンジがかった色が散りばめられている。画面に緑が多い時はロキ/シルヴィのターンだが、オレンジが多い時は要注意だ。

『インフィニティ・ウォー』以来の衝撃

手始めにレコード屋に入店した客がスパゲティ化して消えると、店主がコーヒーをいれていたカップが消え、コーヒーの液体もスパゲッティ化していく。先ほどのバーでロキのバーボンのショットグラスが消えていたのは、この時間軸が消え始めていたことを示していたのだ。

世界がスパゲッティ化して消えていく中、シルヴィはまだ持っていた在り続ける者のタイムパッドでこの時間軸を脱出。世界が消えていく様は映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) でシニスター・ストレンジがいた世界の状態を想起させる。あちらの世界はインカージョン(ユニバース同士が衝突して崩壊する現象)が起き、街が溶けるようにして崩壊していた。時間織り機が崩壊したことで時間軸同士がぶつかり、インカージョンが起きているということなのだろうか。

ロキはメビウスたちに「私の望みを押しつけていた」と謝罪し、自分たちの人生に戻るよう告げていた。「TVAはなくても平気」と話すが、それを否定したのは自分の分岐時間軸が崩壊したシルヴィだった。シルヴィが分岐が消えていることを告げると、これを受けてロキは織り機の崩壊を止めるために再び立ち上がることを決める。

しかし、時すでに遅し。ウロボロスがいた時間軸も崩壊が始まっており、ウロボロスが作ったタイムパッドは消えてしまっていた。ケイシー、O.B.、メビウス、B-15、そしてシルヴィまでもが順番にスパゲッティ化して消えていくシーンは、ロキの息遣いも含め、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) におけるサノスの指パッチン/デシメーションの反復だ。

なお、ウロボロスが消える時に「SFの問題だった」と言っているが、英語では「フィクションの問題だった (It was a fiction problem.)」と言っている。つまり、科学的な思考で仲間を集めて時間オーラを観測するという道を選んだが、大事なのはそこではなかったということだ。

ロキは同作の冒頭でサノスに殺されたため指パッチンを経験していなかったが、あまりに残酷な形で一人ずつ仲間を失ってく。消えゆく世界を手繰り寄せるように手を伸ばすロキの脳内には仲間たちのこれまでの言葉が響いている。そして、「ロキは負ける運命なんだと思う?」というシーズン1第4話のシルヴィのセリフが聞こえた時、ロキは数十秒前への時間移動に成功する。同エピソードでそのセリフに対してロキが言ったことは、「負ける時もあるが、決して死なない」だ。

ロキ、覚醒

ロキはついに時間移動を操ることに成功。さらに数分前に戻ると、一同に「問題は場所 (Where) や日時 (When) や理由 (Why) じゃない。誰 (Who) を思うかだ」と説明。序盤のウロボロスの「科学では対象 (What) と手段 (How)」が、「フィクションでは理由 (Why)」が大事になると話していたのと合わせると、英語の情報の要素を指す5W1H (When/Where/Who/What/Why/How) を全て検証したことになる。

「いつ (When)」の「どこ (Where)」に行くかに必要なのは、「何 (What)」を「どうやって (How)」を問う科学(サイエンス)的な思考ではなかった。だから仲間たちを集めて時間オーラを観測するという方法は失敗した。一方、フィクション的な思考で「なぜ (Why)」を問われた時にロキは行き詰まってしまい、仲間たちを元の生活に返すという結論しか導き出せなかった。

大事なのは「誰 (Who)」だと思い至ったロキ。確かにロキはシーズン2第1話からタイムスリップした先は全てメビウスやケイシーら自分が知る人と繋がりがある場所だった。ロキは「なぜ (Why)」や「どこ (Where)」ではなく、「誰 (Who)」のところに行きたいかを念じることでその場所に飛ぶことができると分かったのだろう。

ロキは、ドラマチックな音楽と共に「物語を書き換えられる (I can rewrite the story.)」と宣言。この時のロキは、画面外にいるシルヴィの方を見ている。先ほど「自分の物語を書いて」と言ったシルヴィへのアンサーとして、「書き換えられる」と言ったのだ。

そしてロキはTVAへの時間移動に成功。英語音声のオーディオディスクリプション(音声解説)では、メルトダウンが起きる前のTVAに戻ったとされている。なお、今回はエンドクレジットを最後まで見ると、シルヴィの行きつけのバーにあったアーケードゲームの『ザニアック!』の音声で「死亡だ、コインを入れろ」という声が入っている。『ロキ』シーズン2最終話でのザニアック登場の布石だろうか。

ドラマ『ロキ』シーズン2第5話ネタバレ考察&感想

ロキはネクサス・ビーイングに?

ロキ覚醒。『インフィニティ・ウォー』以来の絶望からの、とんでもない展開が待っていた。これでロキは恐らく、自分が思う人物がいるところであれば、どんな時間のどんな場所にもジャンプできるようになったと思われる。タイムスリップを繰り返していたロキだが、今ではタイムトラベラーになったのだ。

そして、「物語を書き換える」という力強い宣言。確かにロキが、“人とのつながり”という条件はあれど、どの時代のどの場所にも行けるのであれば、事実上の現実改変能力を手に入れたと言っても過言ではない。時間軸を移動できるということは、ロキが“ネクサス・ビーイング”になったということを意味しているとも言える。

ネクサス・ビーイングとは、マルチバース間を自由に移動することができる存在のこと。これまでにワンダや、アニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) の完全体ウルトロンなどがMCUにおけるネクサス・ビーイングとなっている。セレスティアルズらコズミック・ビーイングと呼ばれる宇宙の上位と共に、ネクサス・ビーイングはシリーズでも最強の存在だ。ロキがそんな存在になったのだとしたら、感慨深くもあり、少し寂しくもある……。

劇中最強の存在になったワンダとロキには、魔法使いであるという共通点はある。それでも、体が小さすぎるからと捨てられた捨て子だったロキに友達ができて、時間移動もできるようになって……。「物語を書き換える」という宣言は、MCU全体に影響を与えうるものだが、今のロキなら悪用はしないと確信が持てる。信頼できる正義のネクサス・ビーイングを作り出すためには、これくらいの道のりが必要だったのかもしれない。

どうなる最終回

シーズン2第5話のラストでロキはシーズ2第4話ラストのヴィクター・タイムリーが突入する前のTVAに戻ったものと思われる。あるいはそれよりも前に戻った可能性もあるだろう。いずれにしてもやはりロキは“やり直し”で未来を変えるようだ。

となると、少なくともヴィクター・タイムリーは復活するということになる。タイムリーは善人のまま死んだが、やっぱり在り続ける者に成り変わるという展開もあるかもしれない。また、ラヴォーナ・レンスレイヤーは剪定されたが時の終わりにいるはずだし、ミス・ミニッツもTVAが救われれば再起動して復活する可能性はある。今回エンドクレジットで示唆されたザニアックの登場もあり得る。

また、ロキが時間織り機の崩壊を阻止できたとして、好きな時間と場所に戻れるのだとしたら、それ以上のことをやるのかどうかという点も注目だ。ロキはワンダやソーと同じく多くのものを失っている。誰かを想うことで行ける時間軸は少なくなさそうだ。それでも、今回のエピソードで重要だったのは、ロキにとって本当に大切なのは友達だったということが示された点だろう。

TVAのために熱心に働いているように見えて、本当は友達といたかっただけというのがロキの想いだった。あとは、時間軸での人生についてメビウスらが知った時に、それぞれがどのような選択肢を取るのかが気になるところ。もうロキはメビウスと二人の息子と一緒に暮らして、休日にジェットスキーを楽しむのがハッピーエンドだと思うが、ケヴィン・ファイギはそうさせてはくれないだろう……。

なお、『ロキ』シーズン2の最終回となる第6話は2023年11月10日(金) の配信となる。この日はMCU映画最新作『マーベルズ』の公開日でもある。バゴプラでは、『マーベルズ』の解説記事を配信した後、『ロキ』シーズン2最終話の解説記事を配信する予定だ。忙しい金曜日になるが、両作の公開を楽しみに待とう。

ドラマ『ロキ』シーズン2は2023年10月6日(金)よりDisney+で独占配信。

『ロキ』視聴ページ (Disney+)

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『ロキ』シーズン2最終話第6話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン2第4話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン2第3話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン2第2話のネタバレ解説はこちらから。

シルヴィを演じたソフィア・ディ・マルティーノは、ロキが「脅威」になると語っている。詳しくはこちらから。

シーズン2第1話のネタバレ解説はこちらから。

トム・ヒドルストンが語ったシーズン2のロキの”新しい家族”についてはこちらから。

プロデューサーが語ったマクドナルド登場の理由はこちらの記事で。

トム・ヒドルストンが『ロキ』シーズン2の「責任」というテーマについて語った内容はこちらから。

新キャラのウロボロスの背景について俳優とプロデューサーが語った内容はこちらから。

 

『ロキ』シーズン1最終話の解説はこちらの記事で。

プロデューサーが語った時間軸とマルチバースの関係についてはこちらから。

ケヴィン・ファイギが語ったロキとシルヴィがMCUに与えた影響はこちらから。

『ロキ』のベースになった名作SFはこちらの記事で。

トム・ヒドルストンが語ったシーズン1でのロキの変化はこちらから。

 

ドラマ『シークレット・インベージョン』最終話の解説はこちらから。

11月10日(金)公開の映画『マーベルズ』で主人公三人が置かれている状況についてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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