シーズン2第1話ネタバレ解説『ロキ』最高のスタート! SF・ミステリ・コメディ全部乗せ、MCUに新理論も | VG+ (バゴプラ)

シーズン2第1話ネタバレ解説『ロキ』最高のスタート! SF・ミステリ・コメディ全部乗せ、MCUに新理論も

© 2023 Marvel

『ロキ』シーズン2配信開始

MCUきっての人気キャラであるロキを主人公に据えたドラマシリーズ『ロキ』のシーズン2が2023年10月6日(金)より配信を開始。第1話が同日の午前10時に配信された。MCUドラマでは初のシーズン2となり、大きな注目が集まる。『ロキ』シーズン1ではMCU世界全体を揺るがす事件に巻き込まれたロキだが、シーズン2ではどんなも物語が描かれるのだろうか。

今回は『ロキ』シーズン2の第1話についてネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は本編のネタバレを含むため必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ロキ』シーズン2第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『ロキ』シーズン2第1話「ウロボロス」ネタバレ解説

これまでの『ロキ』

映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で、テッセラクトを手に入れて2012年から逃亡したロキ。時系列を変える行動を取ったとしてTVA(時間変異取締局)に連行され、そこで世界の中心となる“神聖時間軸”の存在と、そこから枝分かれする時間軸をTVAが剪定することでそれを保守していることを知らされる。

ロキは剪定を逃れるために逃亡中の変異体を捕まえたいメビウスとTVAに協力するが、その任務の中で出会ったのはロキの変異体であるシルヴィだった。幼い頃にTVAに人生を奪われてTVAに復讐を誓ったシルヴィは、ロキと共にTVAを裏で操る“在り続ける者”の元へとたどり着く。しかし、在り続ける者は二人がここに到着することは、全て自分が計画したと主張する。

在り続ける者は、かつてマルチバースを発見した31世紀の科学者で、自分の変異体達と戦争になったことからアライオスという怪物を従えて時間軸(ユニバース)を一本に統一。神聖時間軸を守り続けてきたがそれに疲れ切っており、在り続ける者はロキとシルヴィにその座を譲ろうとしたのだった。

このオファーを拒否したシルヴィは在り続ける者を殺し、統一されていた時間軸は解放されてしまう。これによって、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) と『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) でのマルチバース展開が発生することになる。後者では、マルチバース同士が衝突して消滅を引き起こす“インカージョン”も紹介されている。

マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でストレンジが呪文に失敗し、マルチバースを繋いでしまったことについて、「ロキとシルヴィがやったこと」によって起きたと説明している。つまり、神聖時間軸が守られていれば、時間軸(世界線)の大幅な分岐はなく、仮に時間軸同士を繋いでしまったとしてもTVAが剪定して終わっていたと言うことだ。

また、映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023) では在り続ける者の変異体である征服者カーンが量子世界に登場。カーンの変異体達によるカーン評議会が開かれていることも明かされた。征服者カーンはその中でも異端で、他の時間軸を消し去ろうとする征服者カーンを他のカーンたちは“時間の外”にある量子世界へと追放したことが明かされた。

『ロキ』シーズン2では、シーズン1のラストから繋がるもので、TVAに戻ったロキはカーンの銅像と、ロキのことを知らないメビウスらと直面していた。MCU映画でその影響が語られたのちに幕を開ける『ロキ』シーズン2第1話は、どんな展開が待っていたのだろうか。

シーズン1ラストの意味が明らかに

久しぶりの緑のマーベル・スタジオロゴタイトルの後、ロキはまたもメビウスとハンターB-15に追われている。自分のことを忘れて追ってくるメビウスを見るロキの目が悲しそう。「メビウス、私だ」と訴えかける姿も切ない。この描写だけで、シーズン1でメビウスとロキにどれだけの絆が芽生えていたかを思い出させてくれる。

飛び降りて脱走を図ったロキは、相変わらず全てをめちゃくちゃにしてしまう。カーンの石像に車で傷をつけ、モニターが落下したことで床に描かれたTVAの紋章にも印象的なヒビが入る。やはりロキの登場が混沌をもたらしてくれるということを期待させる演出になっている。ちなみにロキは窓から落ちようとしている車をなんとか助けようとしており、この小さな動きからも、かつてとは大きく変わったロキの姿を垣間見ることができる。

TVA職員のケイシーもロキのことを覚えていない様子。シーズン1では証拠物の管理をしており、引き出しに大量にしまわれているインフィニティ・ストーンが出てくる場面などで登場している。
なお、ケイシーを演じるユージン・コルデロは映画『キングコング 髑髏島の巨神』(2017) にジョー・レルス特技上等兵役で出演しており、MCUでお馴染みのトム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソンと共演している。

ケイシーにも忘れられたロキは侵入者として通報されるが、その瞬間、ロキは身体に異常が起きて、ケイシーがロキのことを知るTVAへと飛ばされる。ロキは先ほどモニターの落下によってできた地面のヒビを見て、ここが先ほどのTVAよりも未来に位置していることを察している。『ロキ』シーズン2では、時間軸がより混乱した状態になることが予想されるが、こうしたヒントを見つけて状況を判断していくことになるのだろうか。

ここでのケイシーはロキと出会った後のケイシーであり、先ほどのケイシーはシーズン1でロキと出会う前のケイシーだったのだ。つまり、『ロキ』シーズン1のラストでメビウスを含むTVAの人々がロキのことを知らなかった理由は、ロキが皆と出会う前の過去に飛ばされたということだ。TVA内でのタイムスリップという意外な種明かしからシーズン2は幕を開けることになった。

クリネックスの意味

自分のことを知るケイシーに出会ったのも束の間、ロキは再び飛ばされてしまう。一方のメビウスとハンターB-15は、伸び続ける分岐をモニターで見ている。シーズン1でB-15は、シルヴィの魔法によってかつて自分が地球で生活していた記憶を取り戻した。そのためB-15はTVAの職員はみな変異体であり、ここに連れて来られたという真実を知っている。

B-15は「元の人生に戻る権利がある」として職員に真実を伝えようとするが、メビウスは全てが間違っていたと聞かされる職員達の心情を考慮して慎重な態度をとる。これは『ロキ』シーズン1ラストのロキとシルヴィの立場の違いに似ている。間違った状態を一刻も早く終わらせるべきなのか、段階を経て終わらせるべきなのか、判断に悩むところではあるが、後者はやはりその“段階”をコントロールする人が新たな支配者になる未来が見えてしまう。

ケイシーはメビウスにロキが捜していたと伝える。メビウスとロキが最後に会ったのは虚無(The Void)でのこと。剪定された二人は、剪定された人々が単に消えるのではなく、この虚無の空間に飛ばされ、アライオスがそれを食べることで始末していた。メビウスはシルヴィが持ってきていたタイムパッドでTVAに帰ったが、シルヴィとロキは在り続ける者が待つ屋敷へと向かっていった。

メビウスはその感動の別れの後、ロキとシルヴィがどうなったかを知らない。そのため、ここではミス・ミニッツに連絡を取ろうとしている。だが、ロキとシルヴィは在り続ける者の城でミス・ミニッツに迎え入れられているため、ミス・ミニッツもまた在り続ける者の傀儡であることが予想できる。

そこに現れたのは、ラヴォーナ・レンスレイヤーの跡を継いだX5。「これって神聖時間軸にある?」と、メビウスのデスクにあったマガジンから「ジェットスキー」「シードゥー」の名前を挙げている。メビウスはTVAに連れて来られる前の記憶から、ジェットスキーに乗りたいという夢を抱いており、上司で判事のラヴォーナから剪定される直前にも「どこへでも行けるならジェットスキーに乗りたい」と話していた。

英語ではX5は「こういうのが君の名前を呼んでいるのか?」と聞いており、その流れからメビウスは「ちなみにジェットスキーは水上バイクの商品名(ブランド)だ。クリネックスと同じ」と話している。確かに「ジェットスキー」はカワサキの、「シードゥー」はBRP(ボンバルディア)社の登録商標だ。

メビウスが例に挙げた「クリネックス」はキンバリークラーク社の登録商標であるティッシュペーパーの名称だが、1924年から発売されており、アメリカではメーカーに拘らずティッシュのことを「クリネックス」と呼ぶ。ジョンソン・エンド・ジョンソンの登録商標である「バンドエイド」を絆創膏全般を呼ぶときに使うのと同じだ。

ちなみにプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地は、2008年から2013年までネーミングライツを日本でクリネックスを展開する日本製紙に売却し、「クリネックススタジアム宮城」と呼ばれていた。略称の「Kスタ宮城」はよく聞いたことがあるのではないだろうか。

組織改革の壁

すっかり話が逸れてしまったが、メビウスもそんな調子で聞かれてないことをペラペラと解説。しかしX5は、レンスレイヤーの後を継いだドックス将軍とギャンブル判事がメビウスを待っていると告げる。

ドックスはおそらく原作コミックのMr.パラドックスをベースにしたキャラクターだ。原作コミックではメビウスやウロボロスを含むTVA職員は皆クローンで、Mr.パラドックスはコミックの「シー・ハルク」に判事としてちょい役で登場している。一方のギャンブルも原作ではTVAのエージェントだったがクローンではなく、TVAと対立していくことになる。ギャンブル判事を演じるリズ・カーはコメディアン・俳優として知られるが、幼少期から車椅子で生活しており、障がい者の権利獲得にも尽力してきた人物だ。

ウォー・ルームでの評議会の会議に呼ばれたメビウスは、入り口でシーズン1第4話でレンスレイヤーの命令に従って自分を剪定した職員と出くわす。気まずい。メビウスはレンスレイヤーからの謝罪が欲しいと言っているが、ラヴォーナ・レンスレイヤーはシーズン1最終回でメビウスとの対話を打ち切り、「自由意志を探しに」と言ってタイムドアから出て行ってしまった。

ロキはウォー・ルームに来るが、これはおそらく過去のTVAだ。壁には複数のカーンの顔が彫られており、カーン評議会をかたどったものだと思われる。過去のTVAではタイムキーパーは使っておらず、カーンによる支配は公然と行われていたのだろう。あるいはタイムラインの開放によって過去の状況が変わったのだろうか。いずれにせよメビウスらは何度も記憶を消されている可能性があるので、誰も答えが分からない。

一方、メビウスとB-15がいる方のウォー・ルームの壁画はまだ三人のタイムキーパーになっている。だが、テーブルの上には前シーズンでロボットであることが明らかになったタイムキーパーの頭が転がっている。評議会は、B-15が主張する剪定の中止について議論するが、やはり手順を大事にする官僚機構っぽさが可笑しい。

支配からの脱却

ロキの方は壁に付いているレコーダーを再生すると、そこからは在り続ける者と思われる人物の声が流れる。「共に指揮できて嬉しい」と言い、パートナーと思しき相手を「この戦争で殊勲を立てた」と称賛している。ロキがレコードを巻き戻すと、その相手はラヴォーナ・レンスレイヤーだったことが明らかになる。ラヴォーナと在り続ける者は親密な関係にあったようだ。

ここで思い出したいのは映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』だ。変異体である征服者カーンは、量子世界で出会ったジェネット・ヴァン・ダインと仲良くなり、量子世界を出るための船を一緒に修理した。音声の在り続ける者も「チーム」であることを強調しているが、目的達成のために人を丸め込むことに長けている人物でもあることも忘れてはいけない。

評議会は紛糾。タイムキーパーがいなくなり、自分たちにも帰る場所があると分かった今、TVAはリーダー不在で組織改革を求められていた。変わるまいとする力学も働いており、最近のジャニーズ問題を思い出させる展開だ。

ドックスの「守る」という意識に対し、B-15は、TVAがやってきたことは他のタイムラインの「破壊」であり、そこに住む人々の「虐殺」だと主張する。確かに征服者カーンは他のタイムラインを直接的に破壊していたようだが、在り続ける者がやっていたことも、静かに枝を切り落としていくことであり、あまり変わらないように思える。剪定が即時消去でなく、“虚無”に飛ばしてアライオスに食わせることだったのだから尚更だ。

B-15の「信じてきたものに背を向けるのは辛い。でもTVAは変わるべきです。今すぐに」という言葉を必要としている日本の組織はどれほど存在しているだろうか。最高のコンサルだ。「剪定には戻れない」とするB-15に対し、ギャンブル判事は「なんだって選べる」とした上で、分岐の選定をやめるように通達を出すのだった。

ギャンブルはずっとタイムキーパーの言いなりになってきた。だから、ここでもB-15の言うことをただ聞くのではなく、一旦立ち止まって、自分はなんでも選べるということを認識した上で、「自由意志」でこの決断を下したのだ。「自由意志」はシーズン1のテーマでもあった。ちなみにこの間、X5は「X」と「5」と書かれた手袋をはめて両手で首の襟を持つことで「X5」という字面を見せ続けている。

そこに帰ってきたのはロキ。ロキを知るメビウスとようやく再会を果たすと、タイムキーパーの壁画にタイムスティックを当てて、その裏にあったカーンの彫刻をあらわにしてみせる。やはり先ほどのウォー・ルームは過去のもので、タイムキーパーの壁画は後から付けられたものだったのだ。

在り続ける者が帰ってくると警告を与えるロキだったが、シルヴィが彼を殺そうとしたと話したことで、シーズン1で剪定されたシルヴィがまだ生きていることがTVAに知れ渡ってしまう。ドックスはシルヴィを「混乱の元凶」と呼んで、X5に時の終わりでシルヴィを捜索するよう指示。それでは何も解決しないが、とりあえず敵を作ることで統制は保たれるという組織の原理をよく捉えている。

漫才をする二人

ロキはメビウスにシルヴィが在り続ける者を殺したということを説明し、時間軸が解放されることで在り続ける者の変異体が押し寄せてきて戦争になると説明する。メビウスやB-15はこの時点までタイムラインの解放=マルチバース化にどんな負の側面があるかを知らなかったのだ。

漫才のようなやり取りをする中でも、ロキは壁画に描かれた複数のカーンたちが戦う様子を指差して「戦争がやってくる」と警告する。この絵に描かれているカーンは原作コミックの姿をしているが、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』と同じ姿でもある。

メビウスはロキのことを心配してもいるようで、「無様ではないけど」変な消え方で過去に行ってしまうロキについて対処するために設備管理部へ向かう。ロキはTVAの過去に行ったと言うが、メビウスはTVAに過去はないと言う。TVAは時間軸から独立しているから拠点として時間軸を管理することができるのだ。

ロキはまだ在り続ける者に対処したいと主張するが、メビウスはその前に“在り続けるロキ”になれと宥める。ロキにはこういうロキ自身のことを気にかけてくれる存在が必要だ。なんだかんだより大きな大義のために捨て身で動こうとしてしまうのがロキだからだ。今まではその存在が母フリッガであり兄ソーだったのだろう。メビウスという友達ができたのは本当に良かった……。

消え続けるロキは、「無様ではない」と言ったのに「気味が悪い」と言うメビウスを咎めるが、メビウスは「あれは嘘だ」と言い、エレベーターの中でまた漫才をやっている。『ロキ』シーズン2はSF・ミステリ・コメディ、どの要素をとっても良質な出来だと言える。

ロキとメビウスが通った食堂には「ランチタイムは17分以内で」「カフェでの会話は控えめに」と描かれたポスターが貼られている。官僚主義ディストピアのTVAを象徴するものだ。ちなみに『ロキ』シーズン2第1話は廊下を歩くシーンのカメラワークがとにかくかっこいい。

タイムスリップ、初の理論

設備管理部についた二人は、そこを担当するウロボロスと会う。ウロボロスは原作コミックではメビウスと同じくクローンのTVA職員だった。演じているのはキー・ホイ・クァン。ついにMCUに参戦だ。

中国系でベトナム生まれのキー・ホイ・クァンは、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984) や『グーニーズ』(1985) での子役での出演で知られるようになり、その後は制作側に回ったが、2022年に『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で俳優として本格復帰。第95回アカデミー賞で助演男優賞を受賞した。2024年にはルッソ兄弟が手がけるNetflix映画『エレクトリック・ステイト』にも出演する。SF作品への出演が続くのだ。

非常に印象的な演技を見せるキー・ホイ・クァンのウロボロスは、400年前にメビウスと会ったというが、メビウスはそれを覚えていない様子。覚えてないことを覚えてるフリをするコメディにも見えるが、シーズン1でも、メビウスはレンスレイヤーに指摘されたテーブルのコップの跡について記憶がないという描写があった。何か重要なヒントのような気もする。

働き者のO.B.ことウロボロスにペースを合わせるメビウスだったが、またロキが消えてしまい、ウロボロスはそれを「時間移動/タイムスリップ」だと指摘する。タイムトラベル=時間旅行ではなく、スリップして移動してしまうタイムスリップ。ロキは大昔の設備管理局に飛び、そこでウロボロスと再び出会い直すことになる。

ロキが過去のウロボロスを「O.B.」と呼んだことで、ウロボロスは初めてO.B.というあだ名を手に入れる。このウロボロスはメビウスと出会う前のウロボロスなのか、それともメビウスはウロボロスにあだ名などつけていなかったのか、このあたりから何が事実か分からなくなってくる。なんならメビウスがロキの変異体だったなんてことにまで想像が及んでしまうが、今はとりあえず前に進もう。

興味深いのは、ロキが過去のウロボロスと対話を重ねると、現在のウロボロスの記憶が更新されていくことだ。これは、MCUのタイムトラベルのセオリーから外れたもので、今までは過去に干渉してもタイムラインが分岐するだけで元にいた未来に影響はないとされていた。TVAだけは時間軸が一本に統一されており、過去から未来に影響を与えることができるということなのだろうか。

ウロボロスからは、時間移動は時間軸から切り離されたTVA内では不可能ということが改めて指摘されるも、ロキのバグを直す方法として「止まりたい時間先の人が時間オーラ抽出器を使う」が示される。過去のウロボロスは簡単に時間オーラ抽出器を作ってしまい、未来のウロボロスがそれを手にすることになる。ロキは指でテーブルを叩きまくっている。

過去のロキの行動によって、現在がどんどん塗り替えられていく。これまでのMCUにはなかった展開だ。さすがはロキ。メビウスは“時間織り機”に行って時間と空間の糸からロキを引き抜くよう言われる。ロキは自分を剪定することで時間から解放され、その瞬間にメビウスの抽出器がロキを現在に引き込むという。確かに“剪定”は分岐のない“時の終わり”に人を飛ばす装置であり、時間から解放されると考えることもできる。

失敗すればメビウスの皮膚が剥がれて、ロキはブラックホールに入ってスパゲッティ化するという一か八かの作戦。スパゲッティ化というのは、ブラックホールに物質が飲み込まれると水平に圧縮され、垂直に引き伸ばされるためスパゲッティのように細長い形状になると言われていることを踏まえている。

ロキを信じる人

メビウスはTVA全体で「電力サージ」が起きていると言っているが、電力サージは電圧が過度になることで、タイムラインの分岐が大量になったことで電力負荷がかかりすぎているというのだ。この場面の蛍光灯にズームアップしていくシーンなど、やはり印象的なカメラワークが光る。この後の廊下を歩いて時間織り機に向かうシーンのカメラワークもやっぱりクールだ。

合流して「これ重要? 上が大変で」と聞くB-15にメビウスは「重要だ」と即答。この辺りにもロキへの愛が感じられる。廊下を歩くシーンでは、ウロボロスが書いたというTVAのガイド本も紹介される。ロキがウロボロスからこの本をもらったのはターニングポイントになるだろう。

O.B.が「TVAの心臓」と話す時間織り機は、生の時間を物理的な時間軸に織り上げている織り上げているという。確かに入り口に糸が入りすぎているように見える。これを解決するために枝を剪定するというO.B.の提案は、B-15によって却下される。O.B.は意外と聞き分けが良くて、防爆扉を閉めて枝の対処を考えることを提案。だが、その作業は時間織り機がオーバーロードする前に行わなければならない。一方でロキのタイムスリップを止めるためにはこの時間織り機を利用する必要があり、ロキはダブルの課題に直面することになる。

シーズン2第1話からなかなかの危機に直面している。メビウスはモニターの埃を使って「SKIN?(皮膚は?)」と落書きしている。乗り気じゃなさそうだ。メビウスの役割は時間織り機の前まで行って、防爆扉を閉める前に時間オーラ抽出器を起動すること。ロキは織り機と同期しているタイマーの合図で、抽出器の起動に合わせて自分を剪定すれば抽出器から引き抜いてもらえることになる。

だが、ロキはドックスたちのシルヴィを捕まえようとする動きを聞いてそちらに向かおうとするが、やっぱりこれを止めるのはメビウスだ。まずは自分のことを優先する、そのためにメビウスが一緒にいる。このコンビは最高だ。

そして「もし戻らなかったら」と言い出すロキに、メビウスは「お前は必ず戻る」と言い聞かせる。シーズン1でメビウスは何度もロキに裏切られたと思ったが、いつでもロキはメビウスの元に戻ってきた。どんなことがあっても。シーズン2のメビウスは、ロキ自身よりもロキのことを信じている。

最後に登場したのは…

しかし、ロキは一番大事なところでタイムスリップしてしまう。モニターには先ほどメビウスが書いた「SKIN?」の文字があり、これが先ほどよりも未来の世界であることが分かる。タイムスリップしたことで自分の剪定するタイムスティックを失ったロキは、これを探して未来のTVAを走り回ることになる。大仰だけどヘルメットにヒビの入った防護服で時間織り機へと向かうメビウス。時間を超えた共同作業だ。

未来のモニターでは織り機に入っていく分岐の数がオーバーロードして臨界状態にあり、こちらでもTVAが終末を迎えていることが分かる。O.B.はこれを防ぐために防爆扉を下ろして分岐の対処法を考えようと言っているのだ。扉を閉めて分岐に対処しなければどうなるかを未来の描写で示す上手い演出になっている。

限界が来てウロボロスがスイッチを押そうとする中、メビウスは自らの皮膚を危険に晒しながらもロキのことを諦めようとしない。一方のロキは何かを感じ取り、そばで電話が鳴るエレベーターの前で足を止めると、その中から現れたのはシルヴィだった。「ここにいた!」と嬉しそうな顔を見せたシルヴィは、ずっとロキのことを捜していたのだろう。

しかし、その瞬間ロキは背後からタイムスティックを当てられ剪定される。ロキを剪定したのは、一体何者なのだろうか。しかし、ロキは幸い時間オーラ抽出器に吸い取られて現在に復帰。勢いでメビウスを押し出して防爆扉が閉まる直前に二人は帰還に成功したのだった。これぞロキ。やっぱりロキは帰ってくる。そしてロキを信じたメビウスは正しかったのだ。

それにしてもロキは愛されている。映画『ソー ラブ&サンダー』(2022) では、ソーがその背中に亡くなったロキのタトゥーを入れていた。2012年のロキが生きていて、メビウスというパートナーもできたと知ったら、ソーは大層喜ぶことだろう。

二人の次の目標はシルヴィを助けること。TVAの全戦力をシルヴィ捜索に向かわせる異様な光景にB-15は困惑を隠せない。指揮するドックスには何か闇があるのだろうか。お馴染みの音楽が鳴るエンディング映像もSF絵がたくさん出てきてかなりクールだが、ウロボロスのTVAルールブックが出てくることにも注目しておきたい。重要なアイテムになるのだろうか。

ミッドクレジットシーンの意味は?

そして『ロキ』シーズン2は第1話からミッドクレジットシーンが待っていた。シルヴィが現れたのは、分岐した時間軸である1982年のオクラホマ州ブロクストン。MCUの1982年といえばマリア・ヒルが生まれた年だが、そうした出来事と関連付けないために分岐した時間軸としているのだろう。一方で、オクラホマというのはシーズン1第1話ラストでシルヴィが顔を隠して登場した場所でもあった。1858年のオクラホマ州サライナでシルヴィはTVAの舞台を焼き払っていたのだ。

だが、ブロクストンとサライナはかなり離れた位置にあり、時代も違うため、シルヴィは同じ狙いがあるようには思えない。シルヴィはそこで見つけたマクドナルドに入ると、「リスとポッサムとネズミ以外、死んでて顔のないやつを」と注文する。しかし、店員はフィレオフィッシュやクォーターパウンダーなど、次々と商品を提案。一方のシルヴィはマクドナルドで楽しそうに過ごす客たちを見つめて「全部試したい」と言い、笑顔を見せるのだった。

『ロキ』シーズン1ラストのシルヴィの行動をめぐっては、当初はシルヴィを批判する声もあった。その後、シルヴィ役のソフィア・ディ・マルティーノは、マーベル公式サイトで幼い頃に自分を攫った人物が目の前に現れた時、その人物を許すことができなかったと語った。一方で、シーズン1最後のシルヴィは復讐は果たしたものの満たされていないとも語っている。

世界にとって、今の状況は混沌だが、シルヴィにとっては初めて経験する自由な世界だ。今なら剪定されることを恐れずに生きられる。シルヴィにとってやるべきことは、復讐を果たすことだけでなく、その後に自由な自分自身の人生を歩んでいくことだったのだろう。

80年代にマクドナルドのメニューが並べられて“選択肢する自由がある”という状況は、非常に資本主義的な価値観をプッシュする演出だが、シルヴィという個人にとっては味わえなかったかけがえのない時間ということになる。「リスとポッサムとネズミの、生きてて顔のある」ようなやつを食べなければいけなかったような人生を生きてきたシルヴィは、どう生きるのだろうか。

ドラマ『ロキ』シーズン2第1話ネタバレ考察&感想

最高のスタート

ドラマ『ロキ』シーズン2第1話は映像も展開もお見事。シーズン1配信中の楽しかった日々を思い出させてくれる最高のスタートだった。第1話でやったこと自体は、メビウスとロキのイチャイチャを再度見せて、ウロボロスを紹介、ロキのタイムスリップ状態を利用して状況を整理、過去と未来のTVAを見せてヒントをばら撒くというもの。SFとミステリとコメディがふんだんに詰め込まれた40分間だった。

シーズン2第1話では他のMCU要素が出てこなかったが、ロキはもう“ロキバース”とでも呼べる『ロキ』の世界観とキャラクターたちを創り上げているので、メビウスやシルヴィらの再登場だけで十二分に楽しむことができる。また、シーズン1のマルチバース開放によって映画世界で起きている出来事もロキたちにはあまり関係なく、より大きな事故を防いだり、大事な人を守ったりすることに注力していることも、『ロキ』という作品を独立して楽しめる所以だ。

もちろん、ここから映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で登場したカーンも姿を見せることになるのだろう。フェーズ5以降の大ヴィランであるカーンを中心にMCU全体の流れに合流するのは確かだと思われるが、その辺りのバランスと、『ロキ』が独立してシーズン3にも更新されるのかという点にも注目したい。

在り続ける者/カーンを演じるジョナサン・メジャースをめぐっては、過去の女性への暴行疑惑がきっかけになり所属事務所の契約を解除されている。ジョナサン・メジャースはこれを否定しており、裁判は9月15日に予定されていた。しかし、三度目の延期が決まり、裁判は10月25日に再設定された。こちらの進展にも注目したい。

見事なミスリード

ドラマ『ロキ』は、シーズン1とシーズン2でそれぞれ独立したストーリーが描かれるのではなく、シーズン1から地続きの物語が描かれている。まず、シーズン1ラストでメビウスたちがロキを認識できなかったのは、ロキが過去のTVAに飛ばされていたからだということが明らかになった。

ロキはシーズン1のラストでシルヴィが開いたポータルの中に蹴り飛ばされたので、シルヴィが意図的に過去のTVAにロキを飛ばしたとも考えられる。しかし、シーズン2第1話ではTVA内で時間移動をすることはできないとされており、シルヴィも意図的にそんなことができるとは考えにくいし、そうする理由もないだろう。

一方で、シーズン1で見事にミスリードされたのは、そこが過去のTVAであるにもかかわらず、TAはタイムラインの分岐によってパニック状態に陥っており、なおかつカーンの巨大な石像が建てられていたからだ。これはシルヴィが在り続ける者を殺してTVAが変化した結果ではなく、過去のTVAにもカーンが表に出て支配をしていたがタイムラインの分岐が止まらなくなった事件があったということなのだろうか。

シーズン2第1話のウォー・ルームでのレコーダーの音声では、カーンはラヴォーナ・レンスレイヤーと戦争を戦ったことに触れている。これはシーズン1で在り続ける者が話していた、アライオスを率いて戦った戦争のことなのかもしれない。

『ムーンナイト』とのつながり

レンスレイヤーといえば、シーズン1で回収されなかった伏線として、レンスレイヤーのオフィスのテーブルに複数のコップの跡がついているというシーンがある。メビウスは以前のコップ跡に身に覚えがなく、メビウスがクローンで複数いるのではないかという推理もあった。だが、この答えは結局回収されないままだった。

シーズン2第1話では、ロキやメビウスが残した痕跡によって、その移動先が過去か未来かを判断することができた。この痕跡の要素と、コップの跡の要素はもしかするとリンクすることになるのかもしれない。あるいは、今回はメビウスは何度も記憶を消されていることにも言及されているので、過去にレンスレイヤーのオフィスに行っていたが記憶を消されているということなのだろう。

いずれにせよ、シーズン2もミステリー要素は強そうだ。それもそのはず。『ロキ』シーズン2第1話は、ドラマ『ムーンナイト』(2022) 第2話と第4話を手がけたジャスティン・ベンソンとアーロン・ムーアヘッドのコンビが監督を務めている。同じくミステリー展開と推理が楽しかった『ムーンナイト』の良いところも『ロキ』にもたらしてくれているのだ。

シーズン1は運命論と自由意志がテーマになっていたが、それを乗り越えたロキたちは、シーズン2ではどうやら時間に追われるスピーディーな展開に巻き込まれていくことになりそうだ。ロキやメビウス、シルヴィたちは幸せを掴むことができるのか、今後の展開に注目しよう。

ドラマ『ロキ』シーズン2は2023年10月6日(金)よりDisney+で独占配信。

『ロキ』視聴ページ (Disney+)

ドラマ『ロキ』シーズン1のコレクターズ・エディション スチールブックは12月22日(金)発売で予約受付中。

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『ロキ』シーズン1のオリジナルサウンドトラックは配信中。

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 ダニエル・キブルスミス&ジャン・バザルデュアのコミック『ロキ:地球に落ちて来た神』(吉川悠 訳) は発売中。

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シーズン2第2話の解説&考察はこちらから。

トム・ヒドルストンが語ったシーズン2のロキの”新しい家族”についてはこちらから。

プロデューサーが語ったマクドナルド登場の理由はこちらの記事で。

トム・ヒドルストンが『ロキ』シーズン2の「責任」というテーマについて語った内容はこちらから。

新キャラのウロボロスの背景について俳優とプロデューサーが語った内容はこちらから。

 

『ロキ』シーズン1最終話の解説はこちらの記事で。

プロデューサーが語った時間軸とマルチバースの関係についてはこちらから。

ケヴィン・ファイギが語ったロキとシルヴィがMCUに与えた影響はこちらから。

『ロキ』のベースになった名作SFはこちらの記事で。

トム・ヒドルストンが語ったシーズン1でのロキの変化はこちらから。

 

ドラマ『シークレット・インベージョン』最終話の解説はこちらから。

11月10日(金)公開の映画『マーベルズ』で主人公三人が置かれている状況についてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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