ドラマ『エコー』第2話ネタバレ解説&考察 孤立するマヤと先祖の力。ビスケッツからも目が離せない | VG+ (バゴプラ)

ドラマ『エコー』第2話ネタバレ解説&考察 孤立するマヤと先祖の力。ビスケッツからも目が離せない

© 2024 Marvel

ドラマ『エコー』配信開始

2023年1月10日(水) より配信を開始したMCUドラマ『エコー』は、ドラマ『ホークアイ』(2021) に登場したマヤ・ロペスを主人公に据えた作品。マヤと同じくネイティブ・アメリカンでろう者のアラクア・コックスが初主演を務める。

ドラマ『エコー』には、ABC製作のドラマ『デアデビル』(2015-2018) からデアデビルことマット・マードックやキングピンことウィルソン・フィスクも登場。前者は『シー・ハルク ザ・アトーニー』(2022) に続き、後者は『ホークアイ』に続くMCU参戦となっている。

今回は、全5話が一斉配信されたドラマ『エコー』より、第2話をネタバレありで解説&考察していく。以下の内容は『エコー』第2話の重大なネタバレを含むので、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『エコー』第2話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『エコー』第2話「ロワク」ネタバレ解説&考察

イシュタボリの英雄

ドラマ『エコー』第2話の冒頭は西暦1200年から始まる。第1話でもチョクトー人の起源から幕を開けており、『エコー』では各話の冒頭でネイティブ・アメリカンとしてのマヤのルーツを遡るパターンが踏襲されている。

場所はアラバマ州で巨大な塚が見えるが、これは“マウンドヴィル”または“カホキア”と呼ばれるミシシッピ文化の建造物で、現在もアラバマ州には遺跡が残っている。歴史的にはこの後、アメリカ大陸は白人によって植民地支配されることになるが、このシーンでは、かつては豊かな文化と都市が形成されていたことが再現されている。余談だが、川辺にはワニの姿も見える。大きな川が流れているアメリカ南部ではワニ肉を食べる文化が今でも残っている。

そして始まるのはイシュタボリ(Ishtaboli)と呼ばれる競技“チョクトー・スティックボール”とも呼ばれる二つのスティックを用いて球を運ぶ球技で、ラクロスの起源の一つである。このシーンでは重大なイベントとしてのイシュタボリが再現されているが、もちろんこのシーンもチョクトー族の組織による監修が入っており、マーベル側は衣装や建物も含め、全てコミュニティの要求通りに制作を行なったとされている。

イシュタボリの優れたプレイヤーだったと思われるロワクは、自分も部族が土地に残る権利をかけて強靭な相手と戦う。ロワクがピンチに陥った時、ロワクには第1話冒頭に登場した“最初のチョクトー人”チャファのビジョンが見え、その手にはチャファと同じ渦巻きの紋章が。力を得たロワクは驚異的な身体能力を見せてチームを勝利に導くのだった。

ビスケッツ大活躍

オープニングは第1話エンディングで使用されたヤー・ヤー・ヤーズの「Burning」(2022)。第2話以降はこの曲がオープニング曲として使用されている。

現在に戻ってマヤは訪問者を知らせるストロボライトの光で目を覚ますが、『ホークアイ』でもケイト・ビショップがマヤのアパートに侵入した際にストロボが点滅し、クリント・バートンが「ストロボはろう者用の警告装置だ」と説明するシーンがあった。

そのシーンでは、バートン家の情報が書かれたノートが見つかっているが、『エコー』第2話では必要な物資が書かれたマヤのメモが映し出されている。そこには「スティックのり 15本」「ドリル」等と書かれており、マヤが何かを作ろうとしていることが示されている。

訪問者は物資を持ってきたビスケッツだった。だがその物資をよく見てみると、「低温殺菌処理チェダーチーズ」やドリトスなど、食べ物ばかり。たぶんビスケッツなりの気遣いなのだろう。これを無視したマヤは先ほどのメモと大金をビスケッツに渡し、物資の調達を頼む。ビスケッツが訪れたのは「スカリーの質店」。スカリーは第1話の回想で登場したマヤの祖父だ。

すっかり昔とは違う雰囲気になったスカリーは、白人観光客相手にチョクトーの骨董品を売っていた。「早く買え」と唱えるところは英語で「buy the damn thing(このゴミを買え)」の発音を崩して民族のチャント風に唱えている。客を馬鹿にしているのだが、客が厄介なのは変に知識だけあるところだ。

ナバホ族の敷物を求める客に対し、スカリーは“アンソロポロジー”という店にならあると紹介。“アンソロポロジー (Anthropology)”は「文化人類学」という意味の単語であり、ずいぶん適当なネーミングだ。ここでビスケッツが援護に入り、スカリーの店で商品を買わせることに成功。ビスケッツは、アンソロポロジーの商品は“マドリプール産”ばかりだと主張する。

マドリプールはドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) で登場した架空の犯罪都市の名前。パワー・ブローカーことシャロン・カーターが根城にしており、ドラマ『ムーンナイト』(2022) 第3話ではレイラとモガートがかつて会った場所として名前を挙げている。シャロンはここで盗品の絵画を売り捌いていたが、ここでの「マドリプール産」というのは偽物であることを意味しているのだろう。

ビスケッツは白人客を「ナホロ」と読んでいるが、ナホロはチョクトーの言葉で「コケイジャン/白人」を意味する。ドラマ『エコー』ではこの後も白人を指す意味で「ナホロ」という言葉が使われる。ビスケッツはスカリーから軍用の極小カメラをゲット。ちなみにスカリーは「小さいカメラ」としてGoProも提案している。

哀しい話

コミュニティの人々とイベントの準備を進めるチュラ。仲間の一人のニタがチュラの民芸品ブースはどこに出すのかと聞き、別の人物がチュラはもう店を閉めたと言う。今は郵便局員をやっているらしいチュラが、かつては手芸を生業にしていたことが示唆されている。

ここで「ありがとう」という意味でチョクトー語の「ヤコキ (Yakoke)」という言葉が使われているが、先のほどのスカリーの店でも白人女性が去り際に大袈裟に「ヤコキ」と言い、スカリーが「なんて言った?」と馬鹿にしている。

チュラはここで、マヤの帰還、マヤとヘンリー・ロペスが会っていたことを知る。第1話でチュラは「ロペス家の男」を災いの元だと考えていることが示されており、ここでもマヤがウィリアムの兄弟であるヘンリーの元へ行ったことに不安を抱えているはずだ。加えて、ここでは個人の動きが瞬く間に人に伝わる小さなコミュニティ特有の閉塞感も演出されている。

チュラは早速ヘンリーのもとへ。ヘンリーはそれに驚いていることから、同じ街に住みながら顔を合わせていないことが分かる。スケート場で流れている曲はK-Ci & JoJo「All My Life」(1998)。ここでの状況とは相反する「私の人生はずっと、あなたのような人を求めてきた」という歌詞が歌われている。

チュラは「マヤには影響力がある」と認めながら、「ビスケッツには害」「ボニーには秘密にするべき」と、街に残る自分の孫たちのことを心配している。ヘンリーは唯一、ウィリアムが追放されたことやマヤの母とウィリアムの死を念頭に「マヤも悲しんだ」とロペス家としてマヤの側に立つ。

哀しい話だ。ヘンリーからすると追い出された兄弟のウィリアムは死んだが、チュラからするとウィリアムのせいで娘は死んだということになる。チュラはウィリアムをマヤごと追い出したことに引け目を感じているだろう。だが、チュラは「面倒は御免」と言う通り、これ以上誰も失えないという気持ちがあるはずだ。哀しい話である。

目覚めた力

一方のマヤは夜7時までに帰ってチュラとご飯を食べないといけない言うビスケッツを連れ出していた。マヤはビスケッツのスマホに追跡アプリをペアリングすると、歩道橋の上から貨物列車に飛び乗る。「ほぼ満月だから見えるはず」とは「よく見ること」をウィリアムから教わってきたマヤならではの感覚だろう。

「DX-9」と書かれた護衛されている車両にたどり着いたマヤは列車の底にドリルで穴を開けてカメラを差し込み、チェーンソーで床を破って侵入するアクロバティックな芸当をやって見せる。ここまで全てビスケッツが調達した物資を使っている。

マヤは貨物コンテナの中にあった荷物に細工をして脱出。列車から降りようとするが、車両の連結部分に義足が挟まれてしまい身動きが取れなくなる。ここでマヤに飛び込んできたビジョンは、冒頭で登場した先祖のロワクと、最初のチャクトー人のチャファの姿だった。

ロワクがチャファの姿を見て力を得たように、マヤもまた二人の姿を見て力を得る。素手で列車を切り離したマヤの両手には、チャファとロワクと同じ渦の紋章が浮かび上がっていた。マヤに初めてスーパーパワーが宿った瞬間だ。ドラマ『ホークアイ』では、スーパーパワーを持たない人たちの物語が描かれたが、『エコー』ではマヤの力が目覚めることになる。

おばあちゃんからの電話を切り、走ったことのないオフロードを走るビスケッツはトンネル直前で列車に追いつくと、マヤは大ジャンプを見せて車に飛び乗る。第2話は戦闘シーンはないものの、列車でのド派手なアクションが用意されていた。

耳が聞こえないマヤに咄嗟に大声を出すビスケッツだったが、言ってから気づいて手話で言い直している。ビスケッツは、マヤが列車に飛び込んだ時も咄嗟に声を出して呼びかけていた。そして、ビリー・ジャックの安否を確認。犬は死なない。

チュラのルーツ

列車はニューヨークに到着すると、マヤが細工をした貨物はキングピンの下で働くゼインの元に到着。ゼインが倉庫を出た途端に貨物は爆発。倉庫ごと吹き飛ぶ大爆発を起こす。街で手に入れられるものでここまでの爆発物を作れるとは。マヤにはトニー・スタークを思わせる科学力も備わっているようだ。

ニューヨークでの大爆発を受けて、貨物の発送元であるオクラホマのヘンリーの家電、スマホ、ガラケーにそれぞれ電話がかかってきている。時計は朝7時50分ごろを指しているが、両州には1時間の時差があるのでニューヨークは8時50分ごろだ。ゆえにシャワー中だったヘンリーは電話を受けてすぐにフィスク運輸へ。「D9-X」が爆発したことに勘づいたヘンリーはマヤを呼び出すのだった。

マヤは、義足を治してもらうために祖父のスカリーの元へ来ていた。スカリーは、厄介者扱いされているマヤに「お前がいなくて寂しい」という言葉をかけてくれるが、マヤは「私の選択じゃない」と言い返す。みんなが望んでいない状況に置かれ、動けなくなっている。哀しい話だ。

スカリーは即席で代用の義足を作り、マヤは当面この足を使うことになる。その場しのぎの義足をつけたばかりで足をついている感覚や金属が軋む音が、それまでの自然さと対比になる形で違和感を表現している。マヤにとっては義足も身体の一部であり、それが変わるということはどういうことなのか、しっかり時間をとって表現されている。

ここでマヤはスカリーの店に置いていたチャファの像を見て、スカリーから祖母チュラのルーツがチャファにあるということを聞かされる。チャファと先祖たちは困った時に子孫を助けてくれる、だがそれがいつ来るかは予想できない、とスカリーは“エコー”の能力にヒントを与えるのだった。

マヤは先ほど先祖の姿を見ており、このスカリーの話に心当たりがあるが、先祖の話を知っているチュラに聞きに行くことはできない。マヤのルーツを辿る旅は、ここではむしろ家族間の問題によって妨げられることになる。

安定のビスケッツ

そのチュラはというと、ボロボロの車で郵便配達を行なっていた。ビスケッツが借りたトラックもまたボロボロになっている。そのトラックでチュラの前を通るビスケッツの顔が「ヤバい」から「早くやり過ごそう」に変わっていく様子は笑える。

ビスケッツは無線連絡で自分のプレイステーション4を売ってトラックの修理代を捻出しようとしていた。ビスケッツはPS4を$125でオファーするが、今ならもう少し高く売れるだろう。だが、ドラマ『エコー』の舞台は2025年5月ごろなので、意外と妥当な値段かもしれない。結局ビスケッツはよほど売りたいらしく、$100まで値下げしている。

ビスケッツは「ポクニに殺される」と言っているが、「ポクニ」はチョクトーの言葉で「祖母」という意味だ。この無線を聞いて折り返してきたボニーに、ビスケッツはマヤが帰ってきていることを漏らしてしまう。電波が悪いふりをして無線を切るビスケッツの姿はやっぱり可笑しくて笑ってしまう。マヤの従兄弟という意外なところでかなり良いキャラが誕生している。

フィスクの理論

マヤを見つけたヘンリーは「戦争を始めた」「ニューヨークの問題を持ち込むな」と叱責するが、マヤは「私の合図で始まり、終わる。これは力だ」と言い返す。キングピンの下で働いていたヘンリーは「その言い方はまさにフィスクだ」と指摘。一人、また一人と家族を失っていったマヤは、いつの間にかキングピンの考えに染まっていたのだ。

マヤがやったことはまさに「目には目を」で、やられたらやり返すという理論だ。だが、そうせざるを得ないという現実があることも確か。『エコー』第2話はこのがんじがらめになった現実のどうしようもなさが強調されているように思う。一方でそこに一筋の光として先祖の姿、つまりルーツの物語が加わっていることに希望がある。スカリーの話が正しければ、先祖は困った時に助けてくれる。

ヘンリーは、「身近な人間が犠牲になる」と忠告するが、マヤは身近な人間などいないという態度を取る。同じロペス家のヘンリーは、従姉妹のボニーは……。孤立していくマヤはボニーからのテキストを無視すると、昔の記憶を消し去るように家の遊具を銃で撃つのだった。狙撃はすごい腕前を見せるが、この時、前の二人の先祖とともに見たことのないもう一人の先祖の顔が浮かぶ。

狙撃と関連がある先祖の存在を示唆されていると共に、逆説的だが先祖のビジョンが見えたということはマヤが困った状況にあるということでもある。“戦争”の予感を漂わせて、ドラマ『エコー』第2話は幕を閉じる。

引き続き、第3話以降も解説記事を投稿していくので、ぜひチェックしていただきたい。

ドラマ『エコー』はディズニープラスで全5話が配信中。

ドラマ『エコー』(Disney+)

『エコー』第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

ドラマ『ホークアイ』最終話のネタバレ解説はこちらの記事で。

『ホークアイ』最終話で残された13の謎はこちらから。

『エコー』主演のアラクア・コックスのこれまでの道のりはこちらの記事に詳しい。

 

【!ネタバレ注意!】ドラマ『ロキ』シーズン2最終話のネタバレ解説はこちらから。

【!ネタバレ注意!】映画『マーベルズ』のラストからポストクレジットシーンまでの解説&考察はこちらの記事で。

【!ネタバレ注意!】映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のラストからポストクレジットシーンまでの解説&考察はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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