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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第12話配信開始
芥川賞作家の円城塔がシリーズ構成・SF考証・脚本を担当する『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』。遂に次週で最終回。巨大化し続けるゴジラに果たしてオーソゴナル・ダイアゴナライザー(以下、OD)は効くのだろうか? 早速第12話を振り返っていきたい。
以下の内容は、アニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第12話の内容に関するネタバレを含みます。
第12話「たたかいのおわり」あらすじ/注目ポイントはココ!
計算爆発
BBとリーナについてシヴァの真下へとやって来た銘、ペロ2。BBによればそこは五十年前に葦原が超時間計算機のテストをした場所とのことだった。しかしテストは失敗、”計算爆発”が起こり辺りは煤だらけとなる。計算爆発を「問題の複雑化により必要な計算量が爆発的に増えること」と説明するペロ2。その事故がきっかけで超時間計算は封印され二十年が経った。その封印を解いたのが李博士だった。李博士はそこでアーキタイプを発見し、特異点のリフトアップを再開した。しかしBBによればそれは「計算機ではなく生産プラントとして」とのことだった。特異点は何かを生産するのだろうか? 特異点が仮に紅塵の生産プラントだとしたら、一体李博士はそれを地上に引き上げて何をするつもりだったのだろうか。
葦原は未来予測によって”破局”へと触れたとする銘の推測を肯定しつつ、そうであれば破局に至る手前、手近な未来で計算を折り返せば良いとBBは語る。葦原は爆発に巻き込まれて今も行方不明だと聞かされて複雑な表情を浮かべる銘。
遊びのルール
マニピュレーターに一羽の蝶が停まり、噛まないかと怯えるジェットジャガーPP。ユンと侍が蝶は遊びにきただけだと宥めると、ジェットジャガーPPは「遊び」のルールを尋ねる。かつてユングが子供たちに話し掛けられた際には、数字を言いながら親指を上げて合計本数を言い当てられたら勝ちというゲーム(正式名称不明)に勝つために子供の視線や筋肉の動きを観察して先取的に結果を予測していたが、それを「ズルだろ」と侍に咎められると「ルール上禁止されていません」と開き直っていた。
この時ユングはルールを熟知した上でその裏をかく戦法を編み出していたが、しかしそのような仕方で勝利がほぼ確実なものとなってしまえばそれは最早遊びとは呼べない。遊びにはある程度の予測不能性が必要であり、その結果が予測不能であるが故に人はそれを”遊べる”のだと筆者は考える。謂わばそれは賭けなのだ。吉と出るか凶と出るかというスリル、その先の勝利を確実なものとすべく最大限努力するが、それでも結果が分からない。だからこそその賭けに身を投じることができ、その果てに見事勝利を掴めばそれは紛うことなき報酬となる。相手との実力差が歴然としており、故に手合わせの前から勝負が見えているような状況は、だから遊びとして成立しないのだ。
対して、ジェットジャガーPPは遊びに際してルールを弁えていないようだ。いや、一口に遊びと言ってもそこには明確なルールの定められているものとそうでないものとがある。ゲームにルールは不可欠だが、遊びのすべてがゲームという訳ではない。しかしジェットジャガーPPの中では遊び=ゲームという捉え方がされてしまっているようだ。蝶との遊びはどちらが勝つか負けるかを競い合うものではない。
いずれにせよジェットジャガーは、ルールの内においても外においても上手く”遊ぶ”ことができないようだ。しかし、敢えて「ルール」という観点からジェットジャガーの生真面目な不器用さ、あるいは素朴さを描いたことには何らかの意図があるのだろう。
もしやルール、即ち自然界の秩序たる物理法則に対して、最終回でジェットジャガーが何かしらのアプローチを掛け、あるいはそれを乗り越えることの暗示なのだろうか?
紅塵を吸収する植物怪獣?
自衛隊のテント内で報告を受ける松原。どうやらゴジラ付近で紅塵を吸収して成長する植物のようなものが現れたらしい。そこへマキタを伴って鹿子が現れる。これまでの二人の会話のフランクさから、松原が「鹿子くん」と呼んでいたのは少し意外な印象を受ける。あるいは他の隊員の手前、ということだろうか。
鹿子は松原にODを見せ、インドで計算中のコードを入力すれば紅塵を半永久的に無効化できると伝える。松原は銘が世界中に送り付けたメールは受信したもののコードはまだ送られてきていないと言う。分からないことはオオタキファクトリーの有川ユンに訊けとの銘の伝言を伝える鹿子。目の前で膨張し続けるゴジラの危機。いつまで待てばいいのかと焦る松原。
ジェットジャガーPP大活躍!
車で移動中、ジェットジャガーPPは何かの気配を察知して一人アンギラスの槍を携え瓦礫の中を進んでゆく。その先では鹿子らを乗せた車がラドンの群れに追われていた。横転した車に迫る一羽のラドン。あわや、というその瞬間ラドンの首が地面に転がる。続いて二振り、三振りと着実にラドンを仕留めていくジェットジャガーPP。見た目は決してカッコ良くはない筈なのに、こうして槍を振りかざし怪獣を撃退する様子を見せられるとどうしてもカッコ良く見えてしまうから不思議だ。今のジェットジャガーならばメガロを相手にしても押し負けることはないだろう。大きさの違いは・・・気合いでカバーだ。
ジェットジャガーPPを追ってきたトラックに佐藤の姿を確認した鹿子は、遂にオオタキファクトリーのメンバーと合流する。
“シヴァ”の正体
BBがアンティークの銀食器セットを七ヶ国の大使館に向けて着払いで発送した記録があるとの報告を受けるティルダ。つまりこれがODを送り付けた記録ということか。
その直後、サルンガの周囲で結晶崩壊が始まったという報告が上げられる。ティルダの予想よりも早くそれは起きたようだ。
かつてBBがODを使ってサルンガを閉じ込めた空間を階段やエレベーターで昇っていく銘たち。その時の紅塵結晶はまだ残っていた。完全なコードを見付け出せない限りODは一時凌ぎにしか使えないらしい。とは言え連鎖反応を制御できなければ世界中が紅塵結晶に覆われてしまう。「過ぎれば毒、足りなければスパイス。薬はその中間にある」と言うBB。
ペロ2がコンピューターをハックしてティルダたちに気付かれないようにした後でシェルターを解放する。BBはシヴァに辿り着いたらコードを見付け、それを外部の回線に接続して世界中に送信するつもりらしい。そのコードを各国がODに打ち込めば紅塵は片付き、ティルダは失脚するとの見立てだ。BBによればシヴァとは「特異点の周囲を包むアーキタイプの殻と観測制御機器が融合した構造」となっているそうだ。遂に銘たちがシヴァに辿り着くとその周囲では波打つように空間が歪んでいた。
余談だが、以前BBが初めてODを用いた際にサルンガは紅塵の針に貫かれたものの絶命してはいなかった。そして街中に出現した時には一体どうやって地下空間から脱したのかと思っていたが、銘たちが目指す場所こそまさに先刻自分たちが脱出してきたウパラの研究所そのものであり、”シヴァ”はまさにそこにあったという訳だ。わざわざ研究所を脱出したのだから目指す目的地はどこか違う場所なのだろうと思わされたり、ODの性能やサルンガの能力、そしてシヴァの正体も明かされぬままだったことから少し混乱していたが何のことはなかった。しかしサルンガはシヴァを目指すのであれば何故わざわざ地下の洞窟を抜けて街へと出たのだろうか。ODによる紅塵の針で全身を貫かれても絶命しない生命力を以てすれば、シェルターの一枚くらい打ち破れそうな気がしてしまう。何より、シヴァを目指す目的は何なのだろうか。
シヴァに辿り着いた銘一行。早速コードを見付けようと計算を開始するが未来が分岐してしまう。分岐の手前で計算をやり直そうとする度に分岐が前倒しになっていく。ペロ2は単身その原因を探りに行く。未来の分岐から破局までの猶予を計算したBBは、破局は何百年も先の話だと考えていた自らの見立てが甘過ぎたことを思い知る。その結果によれば、破局は何と最短で三時間後にも起こるとのことだった。
そこにペロ2が帰還する。BBによればペロ2は「未来を見てきた」らしい。そこでペロ2が見たものは葦原の「紅塵由来生物についての考察」というノートに書かれていた図と同じものだった。それを改めて見た銘は、葦原がODを破局回避のために使おうとしていたことに気付く。銘が関連するページを探してくれと言うと、ペロ2は次々に分裂しててんでばらばらなことを言い出す。未来と同じくペロ2も分岐してしまったようだ。最後にオリジナルらしきペロ2が何かを発見すると同時に画面はブラックアウトする。そしてシヴァから流れ出す例の子守歌。
余談だが、ペロ2が葦原ノートの図を表示する際に捲っていた「P」と書かれたノートは『機動戦士ガンダム』において主人公のアムロ・レイが初めてガンダムに乗り込む際に手にした「V作戦マニュアル」の意匠のオマージュだ。原典では「P」の代わりに「V」と書かれていた。過去の特撮作品からのオマージュはこれまでにも無数にあったが、ここへきてガンダムにまで目配せをしてくるとは恐れ入った。
秘密兵器
銘から送られてくると予言されたものはどうやらODを起爆するコードであるらしい。巨大化するゴジラは既に東京駅の上空100メートルに達していた。つまり、ユンはゴジラの頭の上でコードを受け取り、その場でODを起爆させるということだろうか。どうやってそこまで向かうのかとの松原の問いに「対ゴジラ用決戦兵器」に任せろと胸を張る大滝。
ジェットジャガーの最終調整を済ませトラックに乗せたオオタキファクトリーメンバーを送り出す鹿子たち。戦の前兆のように舞う蝶。待て、次回。
以上、第12話をざっと振り返ってみた。
残すところ最終話のみとなったが未だに解けていない謎は多い。
これまでの筆者の印象では、『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』という作品はゴジラシリーズというよりはどちらかと言えば『新世紀エヴァンゲリオン』に近い作品に思える。
世界観の謎を前面に出し、その果てには何かしらの「世界の終わり」が待ち受けていることを描く。登場人物は自らの内的な欲望を賭けてドラマを演じるというよりは、物語によって与えられた役割を忠実に演じる。「何かが起きている」予感に画面は覆われるが、そこで何が起きているのかは決して視聴者には明かされない。
そうした物語が悪いとは言わない。実際、「謎解き」というのは物語の面白さを成す主要な要素であると感じる。だからミステリーは常に人気のジャンルだし、『新世紀エヴァンゲリオン』も日本のみならず世界的にヒットした。だからそこには確実に需要があるし、何が起こっているのかを敢えて示さないことで視聴者に考えさせることにはもしかしたら教育的な側面もあるかも知れない。
けれど筆者としては、「謎解き」自体が自己目的化した物語にはやはりそれ程の面白みを感じられないというのが正直なところだ。結局のところ、謎は「何のために」解かれる必要があるのか。そこのところがまず腑に落ちねば、如何なる問題設定も空虚に思えてしまう。せめて”破局”の全容くらいは未来予測で早い段階で明らかにした上で、その発生機序を「謎」としておけば迫る破局の一方で一向に防ぐ手立てが見付からない緊迫感によってドラマは大いに動かせただろう。何より、『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』はゴジラ作品なのである。ゴジラや怪獣がせめてその謎と同じくらいには前面に出てこなければ興醒めだろう。本来怪獣という「有り得ないもの」を成り立たせる頓智として編み出された筈であろう紅塵の謎解きがメインとなってしまい、むしろ怪獣が添え物であるような印象がある。果たして最終回でこれまでの印象を覆してくれるようなどんでん返しは起こるや否や。
登場怪獣
今回は新規登場怪獣はなし。
ミサキオクから骨が運び出されたことによって登場が期待されたメカゴジラもやはり登場しないようだ。ジェットジャガーとODのみで、果たしてゴジラは倒せるのだろうか。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は2021年4月1日(木) 22時30分よりTOKYO MX、KBS京都、BS11で、同日24時よりサンテレビで放送開始。
Netflixでは3月25日(木)より先行配信を開始しており、毎週木曜日に最新話が配信される。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』Blu-rayは予約受付中。
サントラも予約受付中。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』最終回第13話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第1話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
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