第2期1話/第12話ネタバレ感想【推しの子】 実写化におけるキャラクター像の変化 原作漫画との違いを解説 | VG+ (バゴプラ)

第2期1話/第12話ネタバレ感想【推しの子】 実写化におけるキャラクター像の変化 原作漫画との違いを解説

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

アニメ【推しの子】第2期スタート

2024年11月28日(木)にAmazonプライムビデオで実写ドラマ版が配信され、2024年12月20日(金)には実写映画版が公開される【推しの子】。そのアニメ第2期第1話にあたる【推しの子】第2期1話/第12話が2024年7月3日(水)より放送が開始された。そこでは2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』に出演することになった星野アクアの目的はいったい何なのかが描かれることになる。

本記事ではアニメ【推しの子】第2期第1話にあたる第12話「東京ブレイド」の原作漫画との違いなどを比較して考察と解説、感想を述べていこう。なお、本記事はアニメ【推しの子】第2期1話/第12話「東京ブレイド」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『推しの子』第2期1話/第12話の内容に関するネタバレを含みます。

【推しの子】第2期1話/第12話ネタバレ解説

東京ブレイド

劇団ララライの2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』の開幕と共にはじまったアニメ版【推しの子】。シーズン2第1話にあたる第12話「東京ブレイド」は、【推しの子】のアニメ化ではなく、『東京ブレイド』のアニメ化だと錯覚してしまうほどに2.5次元ミュージカルの空気感を再現している。その一方で、劇団ララライと新人俳優たちのどこかギスギスした空気感も再現されている。

原作漫画【推しの子】第41話「顔合わせ」では、星野ルビーの視点から物語が始まっていたが、アニメ版【推しの子】第12話では星野アクアが金田一敏郎に迫っていく原作漫画【推しの子】第42話「読み合わせ」へとスムーズに変更されている。

姫川大輝によって適応型の演技をしていた有馬かなが前に出る演技をするように変化する場面は、まるでペンキを掛け合うような演出がなされている。そして、俳優と役柄の境界線が曖昧になっていき、姫川大輝と有馬かなが2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』に没入していくのが伝わってくる。また、このペンキが飛びかかる演出は、それが他の俳優にかかることで、他の俳優が演技に圧倒されていると考えられる演出だ。

視聴者も没入させる演出

演技のぶつかり合いと『東京ブレイド』への没入を表現するためか、有馬かなが黒川あかねと星野アクアの関係に対して嫉妬のような眼差しをする場面がカットされている。他にも鳴嶋メルトが『今日は甘口で』の実写化の失敗を悔いている場面や、『今からガチ恋始めます』の回想もカットされている。これにより、視聴者はより一層2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』に没入できるようになっている。

他にも有馬かなが劇団ララライの看板役者と共に演技をすることで、黒川あかね以上の才能を開花される可能性を星野アクアが指摘する場面がより強調されるなど、全体を通して『東京ブレイド』以外のコメディ的演出を削っている印象だ。これにより、視聴者がより一層『東京ブレイド』でキャラクターたちがどのような演技をするのかに注目出来るようになっていると考察できる。

それだけではなく、星野アクアが「才能ある奴に勝てるなんて思ってないよ」と黒川あかねに語る場面にも注目だ。原作漫画【推しの子】よりもアニメ版【推しの子】では星野アクアの目線が強調されており、それによって星野アクアの底知れない計画が際立っている。

黒川あかねの視点

他にも注目すべきは黒川あかねの視点だ。金田一敏郎から演技指導を受ける場面では漫画的演出が削られており、それによって視聴者は黒川あかねが抱える悩みに生々しい形で同調することになる。その後、画面は黒川あかねを残してホワイトアウトしていき、有馬かなたちの演技の声が聴こえなくなることで殻に閉じこもっていくように見える演出がなされていると考察できる。

キャラ分析の場面ではパズルのピースを集めていく場面がCGで細かく映像化されることで、黒川あかねが持つ不安感がよりシリアスなものになっている印象だ。星野アイのパズルが横に並ぶことで、『今からガチ恋始めます』で星野アイを演じた際も同様の方法が用いられたことがよくわかる。そこでは星野アイは比較的パズルは完成に近いものの、『東京ブレイド』で黒川あかねが演じる鞘姫のパズルは全体像が見えていないことから、黒川あかねの演技プランが対応しきれていないことが考察できる演出になっている。

爆弾発言

その後、『今日は甘口で』の作者の吉祥寺頼子と『東京ブレイド』の作者の鮫島アビ子の飲み会はカットされている。そこでは実写化が大失敗に終わった吉祥寺頼子に、鮫島アビ子がどこまで2.5次元ミュージカルの演出に口出しして良いかを尋ねている。そこを後回しにして脚本家の質問場面を先に披露することで、漫画と舞台という媒体によるキャラクター演出の差を演劇に詳しくない視聴者でもわかるようにしていると考察できる。

鮫島アビ子が稽古を観てほのぼのとした空気になるのを強調することで、その後の脚本を全部修正してほしいと言い出す瞬間の空気の変化がひしひしと伝わってくる。ここに至るまで鞘姫のキャラクター像を変えた理由まで詳しく説明し、演劇の裏側に詳しくない視聴者にも「こうなるのは仕方がない」と納得したところで、鮫島アビ子の爆弾発言が炸裂する。その衝撃は視聴者にとっても相当大きいと考察できる。

【推しの子】第2期1話/第12話ネタバレ感想&考察

実写化の舞台裏

2024年には実写ドラマと実写映画が控えている【推しの子】で、実写化によるキャラクター像の変化などを言語化し、わかりやすく解説することで「実写化で何故キャラクター変更が起きるのか」が視聴者に解説された。それにより、2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』を演じる俳優たちの葛藤や悩みを表現するだけではなく、実写化への入り口をつくったとも考察できる。

それに加え、アニメ第2期第1話にあたる【推しの子】第12話「東京ブレイド」では直接的に触れられなかったが、実写化の失敗例として『今日は甘口で』を出しておくことでキャラクターたちの間に「今度は失敗できない」という緊張感が走っていることが伝わってくる。そこに鮫島アビ子の爆弾発言が加わることで、その緊張感は限界に達して視聴者側まで胃が痛くなりそうだ。

鮫島アビ子と吉祥寺頼子の飲み会もカットすることで、鮫島アビ子の奇人具合はアニメ版【推しの子】第12話「東京ブレイド」では描かれない。それによって、爆弾発言が奇人鮫島アビ子故のものではなく、実写化をする上での苦労をしらないからこその意見のようにも思えてしまう。

しかし、好きな作品の実写化に関する不満は誰もが何かしらの形で抱いたことがあるだろう。特に自分の子供のような作品ならなおさらだ。視聴者は制作側とファン側の双方の立場に立たされることになり、心が引き裂かれそうになる。

声優による演技の変化

舞台の上での演技ということで注目すべきは声優たちによる演技の変化だろう。舞台に立った瞬間にキャラクターに没入する姫川大輝などの没入型俳優の演技や、演出家の指摘によって演技プランを変えていくところなど、声優たちによって原作漫画【推しの子】では絵で表現された演技の変化がわかりやすく描かれた。

その他にも没入型の演技とその影響によって、俳優とキャラクターの境界線が曖昧になるのを表現したのが見事だ。そこまで没入した演技を見せてくれたがために、鮫島アビ子の「脚本……全部直してください」という一言で、どのように俳優たちが演技プランを変えて来るのかに期待が高まる。

昨今、原作者と脚本家のずれや媒体ごとの演出の変化、実写化に伴うストーリー変更はシビアな問題と化している。原作漫画【推しの子】第45話「伝言ゲーム」にあたるアニメ版【推しの子】第13話では、その問題をどのような演出で視聴者に見せてくれるのだろうか。

アニメ【推しの子】第2期は毎週水曜23時より全国35局にて放送中。配信先は公式サイトで。

アニメ版【推しの子】公式サイト

2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』編が収録された【推しの子】第5巻は発売中。

¥659 (2024/12/07 06:33:50時点 Amazon調べ-詳細)

アニメ【推しの子】第2期第2話/第13話「伝言ゲーム」のネタバレ感想はこちらから。

 

【ネタバレ注意!】『呪術廻戦』第2期最終話の解説&感想はこちらの記事で。

【ネタバレ注意!】アニメ『ダンジョン飯』第1話「水炊き/タルト」の感想と考察はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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