『機動戦士ガンダム』は「ハリウッド実写化」なのか–––中国・ワンダ配下のレジェンダリー制作で、青島で撮影の可能性も | VG+ (バゴプラ)

『機動戦士ガンダム』は「ハリウッド実写化」なのか–––中国・ワンダ配下のレジェンダリー制作で、青島で撮影の可能性も

「ガンダム実写化」で改めて問われる「ハリウッド」の意味

「名作アニメのハリウッド実写化」に対する拒否反応も

7月6日、『機動戦士ガンダム』の実写化作品の制作が発表され、原作アニメ『機動戦士ガンダム』を手がけた株式会社サンライズと、「パシフィック・リム」シリーズのレジェンダリー・ピクチャーズが共同で制作を行うことが判った。このニュースに、各メディアは一斉に「ガンダム ハリウッド実写化」と書き立て、SNS上では、「日本アニメのハリウッド実写化」というお馴染みのフレーズに危機感を覚えるファンが続出。だが、第一報でも触れたように、レジェンダリー・ピクチャーズは現在、中国・ワンダ(大連万達)グループの配下にある。『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)同様、「東のハリウッド」と呼ばれる青島東方影都(チンタオ・オリエンタル・ムービー・メトロポリス)での撮影が行われる可能性もある上、そもそも日本のアニメスタジオとの「共同制作」であることも軽視されていないだろうか。

もちろん、ハリウッドで撮影を行うことが「ハリウッド映画」の条件ではない。だが、多様な人材とグローバルな市場を巻き込み、「ハリウッド」という物差しが示す領域がもはや曖昧なものになろうとしている今、VG+では改めて今回のガンダムの「ハリウッド実写化」について考察してみたい。

新たなロールモデルを作り出したレジェンダリー

ハリウッドの「パシフィック・リム化」

現在、ロシアで開催されているFIFAワールドカップ2018。試合中、コカ・コーラやアディダスと並んで、「万达 WANDA」と書かれた広告がスタジアムに掲載されていることにお気づきだろうか。ワンダグループは、FIFAと2030年までスポンサー契約を結んでいる巨大企業。本来は不動産業を本業としていたが、エンターテイメントや金融業などにも事業を拡大し、破竹の勢いで急成長を遂げた。2013年に公開された『パシフィック・リム』が作中の舞台となった中国で大ヒットを記録すると、2016年、ワンダグループはレジェンダリー・ピクチャーズを買収。レジェンダリーが手がけ、万里の長城を題材にした『グレートウォール』(2016)は、中国で米国内の4倍近い興行成績をあげたのだった。
この辺りの詳細については、「中国が牽引するハリウッドの「パフィリック・リム化」 〜『パシフィック・リム』をおさらい〜」をご覧頂きたい。

海外市場での成果が問われる時代に

もはや、世界をマーケットの単位として考えなければ興行が成り立たない時代が到来している。先日、VG+が公開した2018年上半期のSF映画興行収入ランキングには、トップ10に「ハリウッド映画」がズラリと並んだ。だが、今やアメリカ国内でのヒットだけでは、上位に食い込むのは難しい。このランキングも、アメリカ国内の興行収入に限定すれば、1位の作品と2位の作品の順位が逆転してしまう。レジェンダリーが手がけた『パシフィック・リム:アップライジング』も、米国内では低調だったものの、国外で大ヒットしたことで上半期のトップ10に食い込んでいる。

中国人俳優を重要なポジションで起用し、日本を舞台にした「アップライジング」は、興行成績で、その思惑通りの結果を残したということである。もはやアメリカ国内の市場だけを見て映画を作る時代は終わったのであり、国際的な視野を持ち、率先して新たなロールモデルを作り上げているのがレジェンダリーなのだ。

『パシフィック・リム:アップライジング』中国語版予告編

ステレオタイプからの脱却を

中国は「遠すぎる」のか

『パシフィック・リム:アップライジング』の制作に使用されたオリエンタル・ムービー・メトロポリスこと青島東方影都は、ワンダグループが8,100億円を投資して建造された。同作では日本や中国を拠点にする俳優・スタッフが多く参加しており、地理的にも最適な撮影場所になったと言える。米国では、「ハリウッド作品」を青島東方影都で撮影することについて、「遠すぎる」という批判があることも確かだ。俳優やスタッフが、本国の家族と離れる時間が長くなってしまうというのだ。だが、それはあくまで米国本土から考えた視点でしかない。「アップライジング」のような「多国籍映画」にとっては、「遠すぎる」のは米国の方である。それに、『機動戦士ガンダム』の実写化作品が日米共作ということなのであれば、それも日本のコンテンツを題材にするのであれば、中国のスタジオを利用しての撮影は、この上ないフェアな条件にも思えるが–––。

異例の作品をどう評価するか

アメリカに拠点を置く中国資本の映画スタジオと、日本のアニメ制作会社が、共同で日本のコンテンツを実写化する–––そんな構図は、今までになかったものだ。仮に制作地が中国になるとすれば、尚更異例のことである。これまで通り、「日本アニメのハリウッド実写化」というレッテルで実写化作品を評価することは、果たしてできるのだろうか。他方で、我々は「ハリウッド」というステレオタイプを捨て去り、作品と向き合うことができるのだろうか。その答えは、他でもなく、完成した作品を確認することで見えてくるだろう。

VG+編集部

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