『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期放送開始!
2023年4月9日(日)17時より、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期が放送開始となる。2022年10月〜2023年1月まで放送された第1期で明かされなかった謎の数々には果たしてどのような「答え合わせ」が用意されているのだろうか。
ここではこれまでのネタバレを含みつつ、放送直前の第2期の内容を予想してみたい。
以下の内容は、アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1期の内容に関するネタバレを含みます。
「ガンダム」の定義
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期の展開予想に入る前に、物語の大きなテーマである「ガンダム」を巡る謎について整理しておこう。初代『機動戦士ガンダム』(1979〜1980)以降、ガンダムシリーズは拡張を続けてきた。40年を超える歴史の中で、「ガンダム」という単語の持つ意味は作中においても現実においても多義的になってきた。
大きく分ければ、ガンダム生みの親である富野由悠季が主に手掛けた「宇宙世紀」シリーズと、世界観を異にするいわゆる「アナザー」シリーズの二つがガンダムには存在する。そこに、2011年にTV放送された『ガンダムビルドファイターズ』から連なる「ガンプラ」自体をテーマとするシリーズを加えた三本柱で近年のガンダムシリーズは展開している。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』はこの中では「アナザー」シリーズに位置付けられる。そして、これまでのガンダムシリーズ以上に劇中において「ガンダム」の持つ意味が多義的だ。
まず、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』においてガンダムとはこれまでのシリーズ同様人型巨大兵器である「モビルスーツ」の種類を指す。だが、特殊な粒子(パーメット)を介してパイロットとモビルスーツが「人機一体」となる「GUNDフォーマット」を搭載したモビルスーツ=兵器である「GUND-ARM」がその由来であるという違いがある。「GUND-ARM」は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』独自の設定だ。
そして、「GUNDフォーマット」は元々医療用であったパーメットによる人体拡張技術「GUND技術」を軍事転用したものだ。つまり、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』世界において「ガンダム」は人を殺す兵器でありながら、その大元としてはむしろ対極の人を救う医療用技術であるという矛盾があえてもたらされている。
シャディクの目的とは何か
さて、ミオリネが立ち上げた「株式会社ガンダム」の「医療用技術としてのガンダムの再定義」という理念とは裏腹に、ガンダムエアリアルは改修されることで見た目にもかなり攻撃的な「兵器」としての印象が強まってしまった。
学園における生徒同士の「決闘」の外に明確な「敵」として地球側のテロ組織である「フォルドの夜明け」が設定された。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期の物語としては当然フォルドの夜明けとの対決、ガンダムルブリス・ウル/ソーンとの対決は描かれることになるだろう。
だが、それを描くだけでは事態のすべては解決しない。むしろ、フォルドの夜明けは今のところ主体的に動いているというよりはシャディクに依頼された仕事をこなしているだけだ。シャディクがそのような実力行使に打って出てまでもベネリット・グループを解体したい真の目的は何なのだろうか。
シャディクの目的が「(デリングの排除によって)ベネリットの頂点に立つ」ことではなく「ベネリットの解体」であることにも注意が必要だ。デリングによって支配されたベネリット・グループは、決闘の勝者にミオリネを「花嫁」として差し出すことによる跡継ぎのシステムを築いている。だが、ベネリットを解体することでその束縛からミオリネを解放したいということがシャディクの目的という訳ではどうやらなさそうだ。
確かにシャディクは一時期ミオリネに恋していただろうが、そのミオリネが巻き添えとなってしまうリスクを冒してさえデリング暗殺を優先して指示を出した。そこまでしたデリング暗殺も未遂に終わってしまうが、そのことを特段悔しがる様子も見せなかった様子からその「真の目的」は未だ窺い知れない。第2期ではこの点が明らかになることに期待しよう。
「クワイエット・ゼロ」とプロスペラの思惑
そして、忘れてはならないのが「PROLOGUE」において、あれほど強硬にガンダムを排除したデリングが本編では掌返ししたかのようにミオリネの「株式会社ガンダム」設立を認めたことだ。むしろ本編においてガンダムに対して頑なな姿勢を保っているのはグラスレー家のサリウス・ゼネリである。
これまでの物語では、プロスペラは夫を殺した筈のデリングに復讐するどころか、むしろ二人で「クワイエット・ゼロ」と呼称される何かしらの計画を企む描写が見られた。これは恐らくプロスペラとデリング以外には共有されていない秘密なのだろう。それが21年前の「ヴァナディース事変」の頃から仕組まれていたものなのだとしたら、プロスペラは復讐どころか最初から仲間を見殺しにしていたことになるだろう。
そうではなく当初はデリングへの復讐を画策していたが、デリングに懐柔されて手を組んだという線も考えられる。しかし、劇中の描写からは主導権を握っているのはデリングというよりプロスペラのように見えた。いずれにせよ、「クワイエット・ゼロ」の全貌が明かされるのを楽しみに待ちたい。
「クワイエット・ゼロ」はガンダム・エアリアルやスレッタ・マーキュリーの出自に絡んでいるのだろうか。シャディクがその存在を知った上でクーデターを起こしたのか、それとも知らずにやったのかによってもその行為の意味付けが変わってくるだろう。
物語は戦争へと進んでいくのか
現在、劇中ではベネリットグループの主導権を巡るデリングとシャディク/サリウスの対立が軸となっているが、その外にはより大きな地球居住者「アーシアン」と宇宙移民者「スペーシアン」との対立がある。そして、アーシアンもスペーシアンも一枚岩ではないながら、どちらの勢力にも「ガンダム」がある。
物語がベネリットグループの主導権を巡る紛争で決着するとは思えない。そもそもそれは主人公であるスレッタ自身には何の関係もない舞台装置に過ぎないからだ。何かしらスレッタがプロスペラを介して「世界の秘密」に触れ、自らの主体的な判断として「戦う」ことを選ぶのか、戦うとしたらその時「敵」は果たして誰なのかということに注目していきたい。物語は戦争へと突き進んでしまうのか、それとも「医療用技術としてのガンダム」というミオリネやスレッタの理想が実現されるのか。
ところで、今のところそうした謀略とは最も遠いところに居るのがグエル・ジェタークに見えるが、グエルはグエルで不本意ながらも「父殺し」をしてしまい心に深い傷を負った。未だ本編では動きを見せていないエラン5号とともに、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期においてどのような役割を果たしていくのかに注目だ。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2は、2023年4月9日(日)午後5時~MBS/TBS系全国28局ネットにて放送開始。
第1期はAmazonプライムビデオ他で配信中。
Blu-rayはvol.1〜4が発売中。
第1期最終回第12話のネタバレ感想&解説はこちらから。
第1話のネタバレ感想はこちらから。