第1話ネタバレ感想&解説!!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』「ウテナ」オマージュを超えた新しさ | VG+ (バゴプラ)

第1話ネタバレ感想&解説!!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』「ウテナ」オマージュを超えた新しさ

© 創通・サンライズ・MBS

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』放送中

2022年10月2日(日)より放送を開始した『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。ガンダムのTVアニメシリーズ初の女性主人公作品ということで情報解禁以来話題沸騰の注目作もいよいよ放送開始となった。これまでのガンダム作品などと比較しながら、早速第1話「魔女と花嫁」を振り返っていこう。

舞台は「学園」

これまでのガンダム作品は基本的に「戦争」を舞台としており、そこでは人々のリアルな命のやり取りが描かれた。しかし本作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の舞台は「学園」であり、そこでのMS(モビルスーツ)同士の戦いは「決闘」と称され、どうやら命を奪い合う殺し合いではないようだ。

さて、「学園」と「決闘」そして1話ラストで描かれた「(女性同士の)結婚」と言えば思い出さずにはいられない作品がある。そう、1997年放送のTVアニメ『少女革命ウテナ』である。

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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の脚本とシリーズ構成を務める大河内一楼は『少女革命ウテナ』のノベライズにより小説家デビューを果たした。本作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』OPテーマ曲、YOASOBI「祝福」の‟原作”小説である「ゆりかごの星」の執筆も務める。「祝福」がより深く味わえること請け合いなので、是非ご一読頂きたい。ネットでも「水星の魔女」と「ウテナ」を結び付ける感想が多かったが、第1話の展開はまさにウテナをなぞったものと言って良いだろう。

しかし、そこには単に懐古的なセルフオマージュに留まらない新しさがあった。オリジナリティと言っても無から有を生み出すことは誰にもできない。人が何かを「作る」と言う時、それは既にあるもの同士の組み合わせを意味する。ビルや自動車だって突き詰めれば砂や鉱物から作られている。要するに、「何をどう組み合わせるか」ということにこそ個性やオリジナリティは宿るのだ。

その意味で、「ウテナ」のストーリーを「ガンダムでやる」ことには確かに新しさがある。これまでガンダム作品が描いてきたものは人々が殺し合う「戦争」だが、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でのMSの戦闘描写は今のところ命を奪い合わない「決闘」であるからだ。『少女革命ウテナ』は確かに名作だが、舞台設定や作家性から物語としては曖昧で消化不良な結末という面もあった。

そこに対して、いつものガンダム作品以上に緻密なSF設定を用意した『機動戦士ガンダム 水星の魔女』には、「ガンダムを、ウテナを、‟SF”でやる」という作り手の決意を感じる。

学園を舞台にしたガンダム作品というのも前例がない訳ではない。2001年よりガンダムエース誌上で連載されていたものの現在は休載中の漫画作品『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル 天空の学校』も学校を舞台としている。但し、こちらでは生徒はMSパイロットを養成する為の謂わば「専門学校」に通っていた為に、教習としてMS同士の戦闘が描かれることには無理がなかった。

しかし『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の舞台の学校は特にMSパイロットを養成する為の専門機関ということではなく、MSパイロットではない生徒も多く在籍しているようだ。『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル 天空の学校』が「ガンダムに学園モノを持ち込んだ」としたら、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は「学園モノにガンダムを持ち込んだ」とアプローチが真逆に見える。

一方、『新機動戦記ガンダムW』(1995~1996)も序盤は地球に下りたコロニー側の主人公であるヒイロやデュオが身分を偽装する為に学園に潜入する描写が見られたが、こちらは特にそれが物語の本筋に絡むこともなく単に当時流行の学園モノのテイストを取り入れただけに思えた。

「決闘」のルール

「相手機体のアンテナを折る」ことが「決闘」の勝敗を決めるルールということだが、こちらも『機動武闘伝Gガンダム』(1994~1995)の「ガンダムファイト」における「相手機体の頭部を破壊した者が勝者」というルールを踏襲したものだろう。そして、決闘の舞台となる「戦術試験区域」の描写は、ガンダムのプラモデル「ガンプラ」を扱ったTVアニメ『ガンダムビルドファイターズ』(2013~2014)シリーズでガンプラ同士が戦う「バトルフィールド」の描写が引き継がれているように見える。

「決闘」に勝利した主人公スレッタ・マーキュリーは、学園理事長である父親に決闘の勝者との結婚を強いられたミオリネ・レンブランの「花婿」となる。これは『少女革命ウテナ』で「薔薇の花嫁」であるアンシーが決闘の勝者であるウテナと「エンゲージ(婚約)」した展開をなぞるものだ。

しかし、アンシーが「薔薇の花嫁」という役割に徹し自らそこを抜け出そうとする主体性が描かれなかったのに対し、ミオリネは押し付けられた状況の外ー地球ーへの脱出を企てる。ミオリネが脱出先として選んだのは何故地球なのか。宇宙生まれの「スペーシアン」と地球生まれの「アーシアン」との間には何やら緊張関係があるようだ。

果たして戦いは「決闘」で終わるのか、それともいずれはこれまでのガンダム作品同様「戦争」が勃発してしまうのか。企業が絶大な権力を持つ世界観で、更にその上位存在としての国家や政府は描かれるのか。まだまだ謎だらけな『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。これからの展開にも注目していこう。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は、2022年10月2日(日)より、毎週日曜午後5時~MBS/TBS系全国28局ネットにて放送開始。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』公式サイト

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普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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