『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』公開
人気サッカー漫画『ブルーロック』(2018-) の初めて映画化となる『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』、通称「エピ凪」が2024年4月19日(金) より劇場で公開された。『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の原作は三宮宏太が作画を手がける『ブルーロック -EPISODE 凪-』(2022-) で、金城宗幸の原作とノ村優介のキャラクターデザインを元に、凪誠士郎を中心に据えた物語が展開される。
『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』では、91分という尺もあり、原作漫画からカットされた描写もあった。今回は、中でもファンが多い剣城斬鉄と凪誠士郎の関係について振り返ってみたい。以下の内容は映画版と原作漫画のネタバレを含むので注意していただきたい。
以下の内容は、映画『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の内容に関するネタバレを含みます。
『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』斬鉄に注目
「バカ斬鉄」と呼ばれる天才
剣城斬鉄は興津和幸が声優を務める『ブルーロック』の人気キャラの一人。サッカープレイヤーとしての武器は初速の「加速力」で、左足からの強力なシュートも武器だ。本人は気づいていない自分の“レンジ(射程)”があり、そこからシュートを放てばキーパーが触れない弾道を描いてゴールを奪うことができる。身長は187cmで、意外と190cmある凪より少し背が低い。
斬鉄は試合でもプライベートでもメガネをかけているが伊達メガネであり、難しそうな言葉を使うことで少しでも自分を賢く見せようとしている。凪と玲王との出会いはブルーロックのロッカールームで、このとき斬鉄はボディスーツを上下逆に着ており、「いいブラッシュアップになった。プレリリースだ」と支離滅裂な発言をして玲王に馬鹿にされている。
入寮テストの鬼ごっこでは、斬鉄はルールを理解しておらず、玲王から「バカすぎる」、凪から「バカっぽい」と言われ、バカと「言う方がバカだぞ!」とキレている。その後の試合でも玲王からは「バカ斬鉄」と言われ、「俺はバカじゃない」と反論するなど、「バカ」と言われることに対してコンプレックスを持っていることが分かる。
斬鉄のバックグラウンド
原作漫画『ブルーロック -EPISODE 凪-』では、試合後も斬鉄と玲王は食堂で口論になり、「バカ!」「バカって言うな」の言い合いを繰り広げるのだが、このシーンは映画版ではカットされている。玲王は学校と同じくブルーロックのチーム内でも皆の心を掴む性質があることが示される一方、斬鉄とだけは反りが合わないという描写である。
そして、その後に続くのが劇場版でも描かれた凪と斬鉄のお風呂シーンだ。斬鉄は、実家が歯医者であることから、「冠婚葬祭を忘れても歯磨きだけは忘れるな」という家訓があることを明かし、それに対して凪は「何そのバカ名言みたいなの」と反応する。ここから、斬鉄の身の上話が始まる。
斬鉄の家族はみんな斬鉄に優しく、斬鉄をバカにすることはない。そして、「本当に賢い人間はバカにバカって言わない優しさを持ってる」という斬鉄の名言が飛び出すのだ。つまり、斬鉄が玲王と反りが合わないのは、玲王は自分のことを「スーパーエリート」と言っておきながら、他者をバカにしており、斬鉄の基準で言えば「本当に賢い人間」ではないということになる。
カットされた電車の話
『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』では、斬鉄は周りにバカにされていたが、足が速いことに気づいてスポーツで生きていくことに決めたと語る。世界一のストライカーになって、「世界一尊敬されるバカになる」というのが斬鉄の夢だ。
このシーンは、漫画版ではより詳細に背景が描かれており、足が速いことに斬鉄が気付いた理由も述べられている。それは、電車に乗る際にお金の計算ができず、バカにされたくなかったから公共の交通手段は使わずに走って移動していたという経験だ。つまり、人と違う斬鉄をバカにする社会のせいで、斬鉄は人の力を借りて生きるという手段を奪われたのである。
そうした特殊な経験によって斬鉄はスポーツで生きていくことを決めた。この話を聞いた凪は、斬鉄になぜサッカーを選んだのかと聞くが、斬鉄は「直感」と答えている。凪は「やっぱバカっぽい」と心の中で言うが、口に出すことはしていない。
斬鉄と凪の関係
凪への信頼
世界一のストライカーを目指すという斬鉄に、凪は「なんか、カッケェね、アンタ」と言い、斬鉄からの信頼を得るようになる。このシーンでは、凪が玲王を好きな理由について、自分に「興味を持ってくれた」と話しており、斬鉄からしても、バカにすることなく正面から自分のバックグラウンドを聞いて受け止めてくれた凪は特別な存在になったのだろう。
このシーンで、凪を「悪いやつじゃない」と判断した斬鉄は、ピッチ上で凪の言うことを聞くようになる。映画版ではこちらも省略されているが、斬鉄は自分を「バカ」呼ばわりする玲王に「バカと呼ぶ奴の話は絶対聞かん」と助言を断固拒否。それでも、凪からもらったパスで玲王の助言通りのレンジからカーブをかけたシュートを放つと、その助言が正しかったことが証明される。
こうして斬鉄は、自分をかっこいいと言ってくれる凪と、自分の使い方を理解している玲王と共にブルーロックを生き延びていくことになる。斬鉄もまた、凪との出逢いを通して変化を経験したキャラクターなのだ。
「バカ」と言わない凪
最後にもう一つ、『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』と原作漫画の違いを指摘しておきたい。それは、映画版では凪が「バカ斬鉄」と複数回に渡って発言している点だ。これはアニメ『ブルーロック』でも見られた演出で、金城宗幸とノ村優介による原作『ブルーロック』では凪は玲王と同じく斬鉄のことを「バカ斬鉄」と呼ぶことがあった。
しかし、三宮宏太による漫画『ブルーロック -EPISODE 凪-』では、凪は斬鉄のことを「バカ」と呼ぶことはない(よね?)。「バカ」という言葉を使う場合はあっても、あくまで「バカっぽい」「バカ名言みたいなの」等と不確定な表現のみで、凪が斬鉄のことを直接「バカ斬鉄」とは呼ばない。ゆえに斬鉄は、「本当に賢い人間はバカにバカって言わない優しさを持ってる」という言葉通りに、凪に優しさを感じたのではないだろうか。
一方で、『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』ではアニメ版の演出に合わせているようで、対チームZ戦では、斬鉄が「なんかあいつら、意気消沈?」と言った時に、玲王の「意気投合な」というツッコミに続いて凪が「バカ斬鉄」と呟いている。漫画版『ブルーロック -EPISODE 凪-』では、この「バカ斬鉄」というセリフは、玲王が「意気投合な、バカ斬鉄」と続けて発していることになっている。
おそらく三宮宏太は意識的に凪に「バカ斬鉄」と言わせないようにしていると考えられる。だが、先に作られた本編の方では凪も「バカ斬鉄」と言っているため、映画版では本編のキャラ設定に合わせたものと考察できる。凪ファンとしては、「エピ凪」の凪を踏襲してほしかったが、皆さんはどう思われただろうか。
『劇場版 ブルーロック -EPISODE 凪-』は2024年4月19日(金)より全国の劇場で公開。
原作漫画『ブルーロック -EPISODE 凪-』は4巻まで発売中。
本編の漫画『ブルーロック』最新刊は28巻が発売中。
漫画『ブルーロック』29巻は5月16日(木)発売で予約受付中。
『ブルーロック』27巻、凪・玲王サイン入り公式応援セット付き特装版は発売中。
もえぎ桃によるノベライズ版『ブルーロック -EPISODE 凪-』も発売中。
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