第2期2話/第13話ネタバレ感想【推しの子】 原作者と脚本家の関係性 原作漫画との違いを解説 | VG+ (バゴプラ)

第2期2話/第13話ネタバレ感想【推しの子】 原作者と脚本家の関係性 原作漫画との違いを解説

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

爆弾発言「全部直してください」

2024年11月28日(木)にAmazonプライムビデオで実写ドラマ版の配信、2024年12月20日(金)には実写映画版の公開が予定されている【推しの子】。そのアニメ化作品であるアニメ【推しの子】第2期2話/第13話が2024年7月10日(水)に放送開始された。そこで注目すべきは原作者と脚本家の関係性だ。原作者は実写化作品にどこまで意見を出すべきなのか、脚本家の役割とは。その2つがアニメ【推しの子】第2期2話/第13話では、両者の視点で描かれることになる。

本記事ではアニメ【推しの子】第2期第2話にあたる第13話「伝言ゲーム」の原作漫画との違いなどを比較して考察と解説、感想を述べていこう。なお、本記事はアニメ【推しの子】第2期2話/第13話「伝言ゲーム」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『推しの子』の内容に関するネタバレを含みます。

【推しの子】第2期2話/第13話ネタバレ解説

劇団ララライと鏑木組の顔合わせ

原作者の鮫島アビ子の「全部直してください」という爆弾発言から遡ること数週間前。その頃、劇団ララライと鏑木プロデューサーがキャスティングした通称“鏑木組”は顔合わせを行なっていた。鳴嶋メルトも鏑木組としてキャスティングされたが、心情は複雑だ。ドラマ『今日は甘口で』での初めての演技での失敗以来、鳴嶋メルトには他の俳優たちとは違う緊張感が走っていた。

劇団ララライと鏑木組の顔合わせは原作漫画【推しの子】第41話「顔合わせ」で描かれたエピソードだ。原作漫画【推しの子】では最初に行なった展開を後ろにずらすことで、2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』がどのようにして築かれたのかが丁寧に描写され、それをひっくり返す原作者の鮫島アビ子の「全部直してください」という発言の重さが伝わってくる演出だ。

そして、原作漫画【推しの子】第42話「本読み」の展開も再び丁寧に描写される。前話がリアリティを重視した演出だったのに対し、第2期第2話/第13話「伝言ゲーム」は原作漫画【推しの子】のコミカルな演出が多い印象を受ける。

爆弾発言の舞台裏

『今日は甘口で』の原作者の吉祥寺頼子と『東京ブレイド』の原作者の鮫島アビ子の飲み会が描かれ、前話では引っ込み思案という印象だった鮫島アビ子の天才故の奇人さが描かれる。その奇人っぷりを描き直し、吉祥寺頼子の不安が的中するという形で前話を別の視点から描き直している。

ここで脚本家のGOAの顔がアップになる。その表情を一言で表すのならば“絶望”だ。『東京ブレイド』のファンでもあり、脚本家としても愛情をもって作品に向き合ってきたGOAにとって原作者からの否定はそれほどまでに重たいものだったと容易に考察できる。

脚本家にも創作者としてのプライドがある。激怒していたとはいえ、鮫島アビ子は同じ創作者として踏みにじってはいけない一線を越えそうになったと考察できる。しかし、この脚本が出来上がったのには理由がある。それが第2期第2話/第13話「伝言ゲーム」というタイトルにもなっているように、実写化作品における意見が伝言ゲーム状態になることである。

舞台はその性質上、多数の人物が多く関わっている。そのため、その間で言葉を問題が起きないように仲介者たちが翻訳するのだが、そこに生まれる小さな齟齬が雪だるま式に大きくなり、それが取り返しのつかない問題になる。この問題は現実でもセンシティブなものとして存在しており、実写化におけるトラブルが原作者vs脚本家という単純な対立構造ではないことが視聴者でも理解できる。

脚本家の地位と演劇の魅力

また、原作のある作品を実写化する上で、脚本家の地位がさほど高くないというのも現実で発生している問題だ。2023年に起きたハリウッドでの全米脚本家組合ストライキにおいても、多少形は違うが脚本家の地位の低さは言及されている。GOAとプロデューサーの雷田澄彰の会話は稽古場の一角から、休憩所に変更され、どこか大人の会話という雰囲気が漂っている。それもあってか立ち上がりGOAに頭を下げる雷田澄彰が置かれている立場が複雑なことがより一層伝わってくる演出だ。

星野アクアはあくまでも金田一敏郎に近づくために2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』に参加しているため、ステージアラウンドを知らない。星野アクアを通して細かい演劇の世界は解説されていく。第2期第3話/第14話では、映像作品とは異なる演劇の魅力がアニメという媒体を通して詳しく語られることが考察できる。

【推しの子】第2期2話/第13話ネタバレ感想&考察

原作者と脚本家の関係性

第2期第2話/第13話「伝言ゲーム」は原作者と脚本家の関係性に注目したエピソードである。近年、原作者が実写化作品にどこまで介入できるのか、脚本家は原作者の意見をどこまで受け入れるべきなのかという問題はセンシティブなものになっている。この問題は原作者と脚本家の対立構造で語られることが多いが、実際はそのような単純なものではない。

原作者の意見はサブ担当編集者に伝えられ、サブ担当編集者は担当編集者に伝える。このとき、編集者たちは原作者の意見を文章化する。さらにライツ、制作やプロデューサー、脚本家マネージャーと伝言ゲームをするなかで言葉の角を取る作業が行なわれるのだが、それによって本来の意見が正しく伝わらないことがある。双方に失礼にならないように意見を文章化することで、言葉の解釈が変わってしまうのだ。

この伝言ゲームは多くのスタッフが関わる実写化作品では仕方のないことだが、意見の齟齬が雪だるま式に大きくなるのは深刻な問題だ。原作者はどこまで意見を出すべきなのか。吉祥寺頼子の持つ実写化作品においては部外者である原作者が意見を出すことで、実写化作品の現場をかき回してしまうという心配も当然のものだろう。

越えてはいけない一線

その一方、鮫島アビ子は越えてはいけない一線を越える寸前で吉祥寺頼子たちに止められている。それは脚本家のGOAを創作者として否定することだ。脚本家はプロデューサーや事務所からの無茶ぶりを受けながらも、その作品が成り立つようにする仕事でもある。そのせいか原作付きの実写化の場合は、原作を実写化させるための翻訳者という印象が強い。

それでも原作が実写化作品になっても魅力が損なわれないように努力を重ねている。その血のにじむような努力を否定することは、同じ創作者として越えてはいけない一線だと考察できる。だからこそ、吉祥寺頼子たちは全力で鮫島アビ子がその一言を言うのを止めたのであり、その一言によって脚本家のGOAの心は折られてしまったのだと考えられる。

次回では、舞台演劇でしか出せない魅力について深掘りされることが考察できる。そして、鮫島アビ子の創作者として最高のものを出したいがための危うさも描かれると考えられる。脚本家のGOAと原作者の鮫島アビ子はどこに向かうのだろうか。そして、星野アクアの思惑は如何に。次回にも期待だ。

アニメ【推しの子】第2期は毎週水曜23時より全国35局にて放送中。配信先は公式サイトで。

アニメ版【推しの子】公式サイト

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アニメ【推しの子】第2期第1話/第12話「東京ブレイド」のネタバレ感想はこちらから。

アニメ【推しの子】第2期第3話/第14話「リライティング」のネタバレ感想はこちらから。

 

【ネタバレ注意!】『呪術廻戦』第2期最終話の解説&感想はこちらの記事で。

【ネタバレ注意!】アニメ『ダンジョン飯』第1話「水炊き/タルト」の感想と考察はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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