『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』公開
2024年も「ドラえもん」映画の季節がやってきた。シリーズ第43作目となる『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』が3月1日(金)より全国の劇場で公開されている。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』では、「ドラえもん」映画3作目となる今井一暁が監督を務める。初長編に挑戦する内海照子の脚本、「ドラえもん」映画6作目となる服部隆之の音楽とともに、ドラえもんとのび太達の新しい冒険が描かれる。
なんといっても『地球交響楽』のテーマは「音楽」だ。子ども達が音楽に触れるきっかけになるような作品になっており、大人が観ても学びの多い作品になっている。今回は、『地球交響楽』に登場したキャラクター達のモデルとなった音楽家をチェックして、深掘りしてみよう。
なお、以下の内容は『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』のネタバレを含むため、劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』の内容に関するネタバレを含みます。
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『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』登場キャラをネタバレ解説
ミッカ CV:平野莉亜菜
『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』で物語が動き出すきっかけとなったミッカは、地球に音楽をもたらしたムシーカ星人の一人。歌声を自分の楽器のように操る。ミッカの声を担当した平野莉亜菜は第9回「東宝シンデレラ」オーディションのファイナリスト。12歳で「映画ドラえもん」のゲストキャラの声を務める大抜擢となり、見事な演技と歌声を披露している。
チャペック CV:菊池こころ
ミッカのお世話を担当するチャペックは、ムシーカ星のロボット。マエストロヴェントーを師と仰ぎ、作曲家を目指している。“チャペック”という名の元ネタは、小説家のカレル・チャペック(1890-1938)だろうか。小説家のチャペックは『R・U・R』という作品で「ロボット」という言葉を作り出した人物。最後に書いた小説のタイトルは『ある作曲家の生涯』で、「作曲家を目指すロボット」のチャペックというキャラにピッタリ当てはまる人物だ。
チャペックの声を演じたのは声優の菊池こころ。「プリキュア」シリーズのポプリの声や『はなかっぱ』(2010-) のすぎるの声などで知られる。
モーツェル CV:田村睦心
ファーレの殿堂にいたロボットのモーツェルは、バッチを「先生」と呼び、クラリネットを演奏する。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』では数少ない女性風のロボットだが、公式には「紳士」と表現されている。モーツェルのモデルになった音楽家はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)。幼少期から作曲の才能を発揮し、20代で『ピアノソナタ第11番(トルコ行進曲付き)』を作曲したが、晩年は貧窮し、35歳の若さで病死している。
モーツェルの声を演じたのは声優の田村睦心。『映像研には手を出すな!』(2020) の金森さやか役や『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』(2022-2023) のエルメェス・コステロ役などで知られる。近年はアニメ『ONE PIECE』(1999-) のエッグヘッド編でヨークの声を演じている。
バッチ
同じくファーレの殿堂にいたバッチはティンパニを演奏するロボット。モーツェルからは「先生」と呼ばれている。バッチのモデルになった音楽家はヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)。バッハは「Bach」のドイツ語読みで、英語読みすると「バッチ」になる。
バッハは「音楽の父」と呼ばれる大音楽家で、「G線上のアリア」を含む『管弦楽組曲』など、さまざまな名曲を残している。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』のバッチは声を出さないため声優は割り当てられていない。
タキレン CV:チョー
墓守ロボットのタキレンは、ムシーカ人の哀しい歴史を背負って生きている。演奏する楽器はヴァイオリン。タキレンのモデルになった音楽家は瀧廉太郎(1879-1903)。のび太達が通う学校の音楽室にも瀧廉太郎の肖像画が飾られている。瀧廉太郎は「荒城の月」や「花」といった作品で知られる。留学先で肺結核にかかり、25歳の若さで亡くなった。
『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』では、4万年前にミッカの姉妹であるムシーカ人が地球に降り立った場所が現在のドイツのあたりとされている。それもあってかロボットのモデルになっている音楽家はドイツの作曲家が中心になっている。瀧廉太郎は唯一非ヨーロッパ圏の人物だが、ドイツ音楽の影響を受けており、ドイツに音楽留学している。
タキレンの声を演じたのはベテラン声優/俳優のチョー。『いないいないばあっ!』(1996-) のワンワン、『ONE PIECE』のブルック役などで知られる。意外にも「映画ドラえもん」では『地球交響楽』が初めての出演になっている。
ワークナー CV:石丸幹二
ファーレ工場を指揮するワークナーは、歌を唄いあげるように会話するのが特徴だ。演奏時はトランペットを操る。ワークナーのモデルとなった音楽家はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)。歌を中心としていたオペラに劇表現の要素を融合させた「楽劇」の生みの親として知られる。「第1幕への前奏曲」などは誰もが聞いたことがあるであろうワーグナーの代表作だ。
ワークナーの声を演じたのは俳優の石丸幹二。ドラマ『半沢直樹』(2013-) の浅野匡支店長役で広く知られるが、元は劇団四季出身で、映画『ノートルダムの鐘』(1996) の主人公カジモド役、『シング・フォー・ミー、ライル』(2022) のヘクター・P・ヴァレンティ役など、ミュージカル作品の声優としても活躍している。ディズニー100周年作品の『ウィッシュ』(2023) にも木のパパ役で出演した。
マエストロヴェントー CV:吉川晃司
マエストロヴェントーは4万年もの間、ファーレの殿堂を見守り、ノイズについての研究を続けてきた作曲家ロボット。「マエストロ」は指揮者や作曲家に対する敬称だ。ヴェントーのモデルになった音楽家は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン(1770-1827)。言わずと知れたドイツの大音楽家で、難聴になりながらも数々の名曲を世に送り出した。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』では、ヴェントーが「運命」の一節を披露するシーンもある。
マエストロヴェントーの声を演じたのは、歌手で俳優の吉川晃司。「仮面ライダー」シリーズでは仮面ライダースカルこと鳴海荘吉役を演じたことで知られるが、意外にも『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』でのヴェントー役が声優初挑戦となる。ミッカと並んで重要な役割を務めるヴェントーの声を見事に演じた。
パロパロ CV:悠木碧
タキレンがいた音虫の森で登場した犬のような生き物のパロパロは、ミッカと一緒にコールドスリープに入った様子も描かれている。名前の由来は不明だが、フラメンコで「曲種」を意味するポルトガル語の「パロ」が語源だと考察できる。
パロパロの声を演じたのは人気声優の悠木碧。『魔法少女まどか☆マギカ』(2011) の鹿目まどか役、「プリキュア」シリーズの花寺のどか/キュアグレース役などで知られる。「映画ドラえもん」シリーズでは、『映画ドラえもん のび太の宝島』(2018) のクイズ役や『ドラえもん のび太の新恐竜』(2020) のたまご隊長役でも出演している。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』では音楽の先生の声も演じた。
ミーナ CV:芳根京子
「歌姫」として紹介されるミーナは、「ドイツのおばあちゃん」からもらったお守りを持っていることからドイツ出身であると考えられる。ミーナという名前もドイツ系の名前だ。4万年前にファーレの殿堂から現在のドイツのあたりにやってきたムシーカ人、つまりミッカの双子の妹の子孫である。
ミーナの声を演じたのは俳優の芳根京子。朝ドラ『べっぴんさん』(2016-2017) の坂東すみれ役で主演を務め、月9ドラマ『海月姫』(2018) でも倉下月海役で主演を務めた。SF作家ケン・リュウの原作を映画化した『Arc アーク』(2021) でも主演を務めるなど、数々の作品に主演を務めている。「ボス・ベイビー」シリーズでも吹き替えを担当しているが、国内の劇場アニメでは『ぼくらの七日間戦争』(2019) 以来の出演になる。
なお、芳根京子は『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』に楽器隊スペシャルゲストとしても参加している。小学生の時から続けているフルートを楽団と共に演奏した。
ヴィルトゥオーゾ
ヴィルトゥオーゾは、ムシーカ人の絵本で伝承として伝わる5人の演奏家のこと。ミッカとチャペックは地球のドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫の5人がヴィルトゥオーゾだと考え、助けを求めた。ヴィルトゥオーゾ(またはヴィルトゥオーソ)は現実においても達人の域にある音楽家を指す言葉として使われるイタリア語だ。いつもの5人は、ドラえもん役を水田わさび、のび太役を大原めぐみ、しずか役をかかずゆみ、ジャイアン役を木村昴、スネ夫役を関智一というお馴染みの面々が演じている。
これ以外にも、演歌を歌うおじいちゃん・テレビに映る漫才師・路上ライブをするバンドマンの役でお笑い芸人かが屋の加賀翔と加屋壮也が出演している。また、ラジオのDJとネコの声を歌手で声優の天月、バンドマンのボーカルの声を本作の主題歌「タイムパラドックス」を手がけたVaundyが担当した。
さまざまなキャラクターとそのモデルとなった人物の歴史、そして豪華声優陣によって作り上げられた『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』。さまざまな背景を知った上で再鑑賞すると、新しい発見があるかもしれない。
『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』は、2024年3月1日(金) より、全国の劇場で公開。
内海照子がノベライズを手がけた『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』小説版は発売中。
サウンドトラックも発売中。
主題歌「タイムパラドックス」のCDも初回生産限定盤が発売中。
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