第2期5話/16話ネタバレ感想【推しの子】心のロックを外した感情演技とは 解説&考察 | VG+ (バゴプラ)

第2期5話/16話ネタバレ感想【推しの子】心のロックを外した感情演技とは 解説&考察

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

心のロックを外して演じられる『東京ブレイド』

2024年11月28日(木)にAmazonプライムビデオでドラマ化、2024年12月20日(金)にはその続編が映画化されるなど、2つの実写化作品が控えている【推しの子】。そのメディアミックスの1つであるアニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」が2024年7月31日(水)に放送された。そこでは、星野アクアが心のロックを外して感情演技を行なう様子が描かれる。

本記事では、アニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」で描かれることになる心のロックを外した感情演技と、その危険性について解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容はアニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『推しの子』第2期5話/16話「開幕」の内容に関するネタバレを含みます。

【推しの子】第2期5話/16話ネタバレ解説

それぞれの決心

原作漫画【推しの子】第52話「カレシカノジョ」にあたるアニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」では、星野アクアが心のロックを外すことが上手くできないことを舞台俳優である黒川あかねに見抜かれてしまう。それをアニメ【推しの子】は映像化することで、わかりやすく表現している。

また、星野アクアが芸能界のトップへ登り詰めようとする理由を語る場面では、常に星空で1つの星が強く輝いている。これは星野アイのことを意味していることが考察でき、星野アクアの中にまだ星野アイの存在があることも考察できる。その後、星のようにきらめいていた黒川あかねの目から光が消えることで、黒川あかねの強い決心が読み取れる。

星野アクアは心のロックを外す感情演技を避けて通ろうとするが、鮫島アビ子とGOAの書いた尖った脚本がそれを許さない。星野アクアは母親の星野アイの死によるPTSDと向き合い、感情演技に挑まなければならないのだ。そのために星野アクアは五反田泰志に教えを乞う。

鳴嶋メルトの悩み

星野ルビーのパートが入ることで、暗い空気が明るくなるかと思いきや、兄である星野アクアに向けられた複雑で重たい感情が描かれる。その上、鴨志田朔夜のナンパを止めるために鳴嶋メルトが嘘をついたことをきっかけにそれぞれの感情が爆発する。

鳴嶋メルトは『今日は甘口で』の映像を見返すなど、自分を客観視しようとしていた。だが、そうすることによって、自分が劇団ララライと鏑木組の足を引っ張っている存在だと痛感してしまう。そのどうしようもない状況で鳴嶋メルトはもがいていた。

キャラクターと俳優の境が曖昧になるとき

明るく描かれているが、『東京ブレイド』の脚本が「役者の演技に全投げのキラーパス脚本」になったことで、俳優たちもそれぞれの演技論がぶつかり合う環境が生まれる。異質な演技をする天才と評価される黒川あかねに、かつての天才子役として演技に執着する有馬かな。

アニメではそれぞれの演技論のぶつかり合いが『東京ブレイド』のキャラクターがすれ違う形で描かれる。これは感情演技によってキャラクターと俳優の境が曖昧になっているためだと考察できる。そうして原作漫画【推しの子】第55話「開幕」が始まる。

心のロックを外して感情演技をするために、五反田泰志のもとで星野アクアはメンタルコントロールやエクスポージャー療法を試していた。それでも、前世の雨宮吾郎が抱える激情を抑えることはできない。星野アクアは心の傷も利用すると語っているが、感情演技という危険な演技をする上で、星野アクアは綱渡りのような道を選択したと考察できる。

【推しの子】第2期5話/16話ネタバレ感想&考察

エクスポージャー療法

五反田泰志の指導で星野アクアは心のロックを外すことを学ぶ。そこではメンタルコントロールだけではなく、エクスポージャー療法も用いていられる。エクスポージャー療法とは暴露法や暴露反応法の一つで、不安の原因になる刺激に段階的に触れ、不安を消していく方法であり、主に強迫症やPTSDで行なわれる療法である。

しかし、エクスポージャー療法は短時間で結果の出るものではない。治療者が同伴して、安心と安全を保障しながら段階的に不安の要因に触れていくものである。触れた後に、触れても大丈夫だったことを確認して話し合う必要性があるのがエクスポージャー療法だ。

そんな確認作業を伴うエクスポージャー療法は、時間をかける必要性がある。明らかに星野アクアはそれをスキップしていることが、公演まで残された時間から考察できる。そのため、中途半端に不安の原因に触れ続け、星野アクアの精神は不安定になることが考えられる。

心のロックを外す意味

感情演技をするために、俳優たちはキャラクターと自分の境が曖昧になっている。このような感情演技は心のロックを外すと呼ぶことが多い。ここで語られるロックは堰を意味し、俳優とキャラクターの境界線でもある。頭をつかって芝居をするよりも、心をキャラクターに明け渡すことで観客の共感を得られるとされる。

しかし、心を明け渡すという行為が危険な行為であると、ハリウッドで活躍している俳優の松崎悠希は語っている。特に日本の演劇界で危惧しているのが演出家や監督が強引に俳優の心のロックを「殻を破る」と言って外す行為である。

アニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」ではGOAと鮫島アビ子の書いた脚本によって、星野アクアは心のロックを外さないといけない状況に追い込まれる。それに加え、劇団ララライの代表兼演出家の金田一敏朗は、星野アクアに心のロックを外す感情演技をするように求めている。

五反田泰志はメンタルコントロールや、エクスポージャー療法によって可能な限り時間をかけて心のロックを外そうとしていた。しかし、星野アクアは芸能界で復讐を果たす目的があるため、心のロックを無理矢理外してしまっている。それによってPTSDは悪化しているような描写が見て取れた。

他の俳優たちも心のロックを外していることが、俳優とキャラクターが同一人物かのように描写されることで表現されている。危険な要素を含む心のロックを外す行為を伴って、2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』の幕が上がったアニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」。次回、心のロックが外れた俳優たちによって、どのような『東京ブレイド』が演じられるのかにも注目していきたい。

アニメ【推しの子】第2期は毎週水曜23時より全国35局にて放送中。配信先は公式サイトで。

アニメ版【推しの子】公式サイト

2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』編が収録された【推しの子】第5巻と第6巻は発売中。

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Source
e-ヘルスネット/Yuki Matsuzaki 松崎悠希

アニメ【推しの子】第2期第1話/第12話「東京ブレイド」のネタバレ感想はこちらから。

アニメ【推しの子】第2期4話/第15話「感情演技」のネタバレ感想はこちらから。

アニメ【推しの子】第2期6話/第17話「成長」のネタバレ感想はこちらから。

 

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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