第2期4話/15話ネタバレ感想【推しの子】実写化する上で外せないことと演技に潜む罠 解説&考察 | VG+ (バゴプラ)

第2期4話/15話ネタバレ感想【推しの子】実写化する上で外せないことと演技に潜む罠 解説&考察

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』、再始動

2024年11月28日(木)にAmazonプライムビデオで実写ドラマ化、それから約1か月後の2024年12月20日(金)にはその続編が実写映画化される【推しの子】。そのアニメ版の【推しの子】では、実写化する上で守られなければいけない権利と俳優にも大きな影響を与える演技メソッドについて細かく描写された。

本記事では、アニメ【推しの子】第2期4話/15話「感情演技」で描かれる実写化の権利と演技の2つの問題について解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容はアニメ【推しの子】第2期4話/15話「感情演技」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『推しの子』第2期4話/15話「感情演技」の内容に関するネタバレを含みます。

【推しの子】第2期4話/15話ネタバレ解説

漫画家と脚本家の共同作業

星野アクアの計らいにより、GOAのステージアラウンドの作品を観賞しに来た鮫島アビ子。当初こそ雷田澄彰は胡麻をすっていたが、星野アクアの言葉を思い出して鮫島アビ子を説得する。その内容は脅しに近いものだったが、そこに吉祥寺頼子の言葉も加わり、鮫島アビ子の説得は成功した。

しかし、鮫島アビ子は一つだけ条件をつけた。それはクラウド上で脚本を共有しながら書き換えていくというものだった。これはもう後がない背水の陣だからこそ、取った下策だった。GOAの脚本を気に入った鮫島アビ子は、キャラクターの柱を大事にしてくれたならばそれで良いという考えで脚本の説明台詞や描写をカットしていく。

それにより、台詞数が減り、尖った作品になった『東京ブレイド』。それこそ雷田澄彰が恐れていた「クリエイターが団結すると尖った作品になる」というものだった。説明台詞をカットしていく場面は原作漫画【推しの子】よりも嬉々としていて、明るく楽しげな雰囲気に仕上がっているが、その後のことを考えると視聴者も胃が痛くなる。

役者の演技に全投げのキラーパス脚本

役者の演技に全投げのキラーパス脚本に対し、劇団ララライを含めた俳優たちの反応は様々だ。原作漫画【推しの子】では台詞無しの1ページで済まされていた演技指導の場面がアニメ【推しの子】では細かく表現されている。これは映像作品ならではの演出だろう。

それによって、刀鬼役の星野アクアが原作漫画通りの演技しかできておらず、遠くの観客にも感情を伝えるための感情演技ができないことが指摘される。そこで有馬かなが涙を流すための演技メソッドとして例に挙げるのが、もし母親が死んだらどうするというものだった。

星野アクアのPTSD

その言葉で星野アクアの世界は灰色に変わり、母親である星野アイが亡くなった瞬間を思い出し、動揺する場面が原作漫画【推しの子】よりも強調されている。そして、星野アクアは嬉しかった時の記憶としてB小町のことなどを思い出す。そのとき、星野アクアの前世である雨宮吾郎らしき影がPTSDとして襲い掛かる。

黒川あかねによって五反田泰志のもとに連れて来られる星野アクア。そこで五反田泰志の口からかつて星野アクアを襲った悲劇が断片的に語られる。原作漫画【推しの子】では、台詞のみで描かれた黒川あかねの推理パートだが、アニメ【推しの子】ではかすれた映像によって描かれる。

そして、黒川あかねが星野アイに子供がいたのではないかという考察をはじめてしたときの絶望した星野アクアの顔などがより一層強調される。アニメ【推しの子】では、星野アクアのPTSDが生々しく描かれることで、殺人事件の被害者遺族の苦しみも生々しく描かれることになると考察できる。

【推しの子】第2期4話/15話ネタバレ感想&考察

説明台詞は必要? 不必要?

著作人格権と同一性保持権という本来ならばクリエイターを守るための権利を利用し、それを逆手にとって脅すという手段を取った雷田澄彰。売れっ子原作者への脅しなど本来はご法度だが、すべては2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』を守るためだった。この禁じ手はクリエイター同士の関係性も悪化させる悪手である。

そんなことは雷田澄彰も承知している。悪手だとわかっていても、その手段を取るしかない状況だということが伝わってくる描写だ。その不安を余所に、楽しそうに添削をしていく鮫島アビ子とGOA。特にGOAは鮫島アビ子にとって何がOKで、何がNGかがわかったことで仕事がしやすそうだ。だが、それは良くない方向に転がっていくことになる。

それがキャラクターの柱を際立たせるため、役者の動きに依存した脚本であり、有馬かなの言葉を借りれば「役者の演技に全投げのキラーパス脚本」ができあがることだ。確かに説明台詞が長くなると現実感が薄れるだけではなく、どこか馬鹿馬鹿しく思えてしまうことがある。しかし、説明台詞を削り過ぎるとそのしわ寄せが俳優たちに行くことを第2期4話/15話「感情演技」は如実に表したエピソードとなっていた。

感情演技の問題点

タイトルにもなっている通り、第2期4話/15話「感情演技」のテーマは俳優たちが感情をむき出しにして行なう感情演技だ。それは一見すると生々しい演技を引き出すことが出来るので素晴らしいものに思える。しかし、感情演技には問題点が存在している。それが俳優の心のリミッターを外すという危険性だ。

良くも悪くも自分の感情と役柄の感情を重ねることは、その役柄に私生活を持っていかれる可能性がある。特に星野アクアは悲しみから喜びへと転じる感情演技をしようとした結果、それがPTSDの再発の引き金となってしまった。

一度外されたリミッターはそう簡単には戻らない。このリミッターを外す、そして戻すことを正しく学ばなければ、俳優たちは役柄の抱える負の側面に引っ張られてしまう可能性が考察できる。第2期4話/15話「感情演技」では感情演技の負の側面が描かれ、今後感情演技をする上で星野アクアはPTSDとどのように向き合うのかが重要になると考えられる。次回でその答えの片鱗を掴むことは出来るだろうか。

アニメ【推しの子】第2期は毎週水曜23時より全国35局にて放送中。配信先は公式サイトで。

アニメ版【推しの子】公式サイト

2.5次元ミュージカル『東京ブレイド』編が収録された【推しの子】第5巻と第6巻は発売中。

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アニメ【推しの子】第2期第1話/第12話「東京ブレイド」のネタバレ感想はこちらから。

アニメ【推しの子】第2期3話/第14話「リライティング」のネタバレ感想はこちらから。

アニメ【推しの子】第2期5話/16話「開幕」のネタバレ感想はこちらから。

 

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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