第11話ネタバレ感想!『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』あらすじ・考察・登場怪獣 | VG+ (バゴプラ)

第11話ネタバレ感想!『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』あらすじ・考察・登場怪獣

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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第11話配信開始

芥川賞作家の円城塔がシリーズ構成・SF考証・脚本を担当する『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』。いよいよ物語もクライマックス目前。ここへ来てこれまでとは格段の”進化”を予感させるジェットジャガーは、果たして人類の切り札となるや? 早速第11話を振り返っていきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第11話の内容に関するネタバレを含みます。

第11話「りふじんながくふ」あらすじ/注目ポイントはココ!

持ち出される”地下の骨”

電波の出所を確かめに再びミサキオクへと赴いたユンと侍はトレーラーで恐竜のような巨大な骨が持ち出されるのを目撃する。そこには”独立自営ジャーナリスト”海建宏の姿が。銃を突き付けられて佐藤、山本らとともに拘束されるユン、侍。

海によれば地下の骨は「葦原が発見した最初の特異点」とのことだった。それが成長して破局をもたらす前に破壊すると言うユンを置いて、海はヘリコプターで飛び去ってゆく。

これまで抽象的にしか語られてこなかった「特異点」という言葉が遂に「地下の骨」という具体的な形を持つことが明らかとなった。ということは、特異点とは怪獣そのもののことを指すのだろうか? だとしたら「特異点同士の競合」による”破局”とはつまり大怪獣バトルということ、なのか?

ゴジラ対マンダ

紅塵の煙の中でゴジラの首に噛み付くマンダ。これまでの作品で両者の直接対決が描かれたことはなく、夢の対決カードが実現した。前回の黒いラドンに続いてマンダも紅塵の煙の中で海ではなく空中を自在に泳いでおり、紅塵はやはり怪獣の力を高めるようだ。

とは言えゴジラの吐き出す熱線の前にやはり敗れ去ってしまったが。

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『シン・ゴジラ』やアニメ映画三部作に見られた「細長く切り裂くような光」という演出を引き継ぎながら、更にそこに「光の輪」を加えた『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』版ゴジラの放射熱線は、視覚的には歴代の中でも相当な高威力に見える。人間でもロボットでも怪獣でも、果たしてゴジラに対抗し得る能力を持つ者は現れるのだろうか?

李博士の遺言

ウパラの研究所に辿り着いた銘はティルダに”破局”を回避する策を講じるように訴えるが、ティルダはオーソゴナル・ダイアゴナライザーの完成を優先する。

ティルダから顧問研究員であった李博士の穴を埋めるように言われた銘はしかしその横暴な振る舞いに反発する。BBに研究施設の地下から二十年掛けて特異点を引き上げ中だと知らされ、超時間計算機の元へと案内される途中で事態は一変する。何者かが研究施設へと侵入したとの報告を受けるティルダ。そしてBBの方でも何か企みがあったらしい。アクセスキーが使用不能になる中、オーソゴナル・ダイアゴナライザーを盗んで世界中に送り付けたと銘に告白するBB。曰く、それは李博士の遺言だったらしい。階段を下った先のドアにまたしてもアクセスキーが通用せず万事休すかと思われたその時、ドアは内側から開けられた。助っ人にやってきたのは、またしてもスティーブンだった。

これまでの話の流れではBBはどちらかと言えばヒールであるように思われたが、どうやらベビー・フェイスだったようだ。とは言えこの「裏切り」も、シヴァ共同事業体やティルダの目的がはっきりとは描かれない以上どういった意味を持つのかは不明瞭だ。ティルダが”破局”を用いて自らの政治的野心を達成しようというような明確なヒールとして描かれているならばともかく、一応は紅塵に対処する現実的な方途としてオーソゴナル・ダイアゴナライザーを完成させようとしているらしい。ならば敢えて波風を立てることなく一旦はティルダの下でオーソゴナル・ダイアゴナライザーを完成させ、その上で、あるいはその過程で”破局”に対してアプローチしていくという戦略も立てられたのではないだろうか。そもそも”破局”の全容が掴めていない以上、一体銘がどのような方法でそれに対抗するつもりなのか、また対抗できるのかも不明だ。そのような曖昧な状況で、出会ったばかりのBBに無条件について行ってもいいのだろうか? BBの方にこそ野心がないとも言い切れない。

そして、前回疑問に感じた「-1」の意味はどうやら李博士の死亡のことを指していたようだ。とすれば、銘、李博士、マキタの三人での会食シーンは一体どういうことだろうか。あの時点では李博士は存命していたにも拘らず、銘が「-1」という数字を指定したがために過去が書き換わり、李博士は命を落としてしまったということだろうか?

まさかそんな、とは思うものの「超時間計算機」が実際にどういったものなのかが分からない以上その可能性も否定し切れない。そうでないとしたら、そもそもこの会食シーン自体の整合性が怪しくなる。現実には李博士がラドンに襲われて死亡した後で、夢の中で銘は李博士とやり取りしていた、というようなことなのだろうか。

いずれにせよ、これまで直接的に怪獣の被害によって人が死ぬ描写のなかった『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』という作品において、初めて劇中で主要人物の死が描かれたのは衝撃だ。しかし、以前も書いたが『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』におけるキャラクターはそれぞれの内的な欲望を賭けて互いにドラマを織り成すというより、”謎”を解き明かすという物語の都合のために機械的に配役された感がある。そんな中で描かれた李博士の死も、やはり物語上のギミックの一つという印象を拭えない。

ジェットジャガーの異変

ゴジラを退治すべくボートに乗って東京へと赴くユン、侍、大滝、ジェットジャガー、それから佐藤。葦原に予言された銘とのチャットのやり取りを改めて確認しながら、ゴジラ討伐のヒントを探るユンと侍。と、ジェットジャガーはそのやり取りを反復再生している内に”心”がザワついてきたと訴える。すぐに強制的に再起動状態に入るジェットジャガー。

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世界を救うための洞窟探検

鹿子と対面したマキタは李博士の遺言としてスーツケースを手渡す。中身はオーソゴナル・ダイアゴナライザーなのだろうか?

一方、ウパラの研究所を脱出して車でどこかへと向かう銘、ペロ2、リーナ、BB、スティーブンの五人。BBによればオーソゴナル・ダイアゴナライザーの完成のためには”シヴァ”へのアクセスが必要なようだ。”シヴァ”とは果たして何なのだろうか?

辿り着いたのは遺跡。サルンガはここから地上へと出てきたらしい。その道を辿ればシヴァの真下へ出られると言うスティーブン。そこへ海が登場する。海曰くシヴァ共同事業体もあらゆる所からの寄り合い所帯で一枚岩ではないとのことだ。魔法のランプの例えを出し、あらゆる願いを叶えるが破局をもたらすランプを如何に破壊するかと問う海に、銘はランプ自身に考えてもらうと答える。それを「現実的」と評した海は「君に託すことにするよ」と言って銘を送り出す。スティーブンによれば、無事にシヴァへと辿り着きオーソゴナル・ダイアゴナライザーを完成させることができればティルダは権限を失うということだった。「世界を救う」ため、洞窟探検へと出発するBB、リーナ、銘、ペロ2。

それにしても、海は拘束したユンが「あらゆる願いを叶えるランプにその消滅を願う」と答えた際には「君はロマンチックなことを考えるね」と言っていたが、銘に対しては随分対照的な態度だ。しかし解法をランプ自身の手に委ねるという意味ではユンも銘も言っていることはそう変わらない気がするが、さて。

ジェットジャガーPP誕生

歌に含まれていたデータからアップデートを繰り返すジェットジャガー。通信が遮断されているにも拘らずどうやって、という侍の疑問に大滝は「前成説」を示唆する。卵の中にはこれから生まれる雛がいつか生む卵の情報が既にあり、更にその卵の中には・・・というマトリョーシカ的な説明をするユン。ユンの説明が初めて腑に落ちた気がする。

そこへ一羽のラドンが襲い来るや、ジェットジャガーは即座に起動しラドンの背に飛び乗り、川底へとラドンを沈めてアンギラスの槍を一突き見舞う。思えばジェットジャガーの初戦の相手もラドンだった。あの頃は有人操縦式で動かしていたのが大滝だったとは言え、完全に見違えた。今や歴戦の勇士の風格である。

事もなげにラドンを倒したジェットジャガーはアップデートを終え、再び言葉を発するようになる。しかしユンの名前も記憶しておらず、自らは「ジェットジャガーPP」と名乗った。”幼児化”したジェットジャガーPPはしかし、急速に数字と言語を獲得し「東京駅上空100メートル」地点に何かが届くと予言する。そして例の”歌”を口ずさむジェットジャガーPP。待て、次回。

以上、第11話のあらすじをざっと振り返ってみた。ここからは筆者の感想を述べてみたい。

人の死をどう扱うか

人の死をどう扱うかというのはそれこそドラマに関わる部分だ。たとえば初代『ゴジラ』(1954)において芹沢博士は物語の最後、人類のゴジラに対する罪、即ち原爆実験の罪を自らの罪によって贖うべくオキシジェン・デストロイヤーを抱いて海に消える。ここで芹沢博士が抱えていたものは非常に大きい。それはゴジラへの贖罪の意志であり、オキシジェン・デストロイヤー発明に対する罪悪感であり、叶わぬ恋の葛藤であり、人類救済への希望であった。それら相互に矛盾さえし合うような感情の綱引きの中で、芹沢博士は自らの命をゴジラに捧げることによる人類の救済を決断したのだった。

筆者が『ゴジラ』を初めて観たのは2014年、ハリウッド版『GODZILLA-ゴジラ-』公開に合わせてリバイバル上映されたのが最初だったと記憶しているが、初上映から60年が経過した当時観てもこのラストには涙させられた記憶がある。それは死に至るまでの芹沢博士のドラマが濃厚に綴られていたからに外ならない。

翻って『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』において李博士が命を落としても、それは偶然の事故でしかない。その死には「人一人の命が失われたこと」に対する抽象的な悲しみはあれど、「かけがえのない李博士の命」が失われたことに対する具体的な悲しみはない。それは李博士と銘との関わりが殆ど紅塵の謎解きのために必要な描写に終始していたためだ。元より視聴者は、李博士が如何なる思想の持主で何を守るために何を賭けるのかという「内面」については知る由もなかった。

作劇上、李博士は単に「主人公を目的地まで誘う助言役」を果たしただけだった。銘とさえ知り合ってからは学術的な会話を交わすのみであり、互いの価値観について語り合う描写は皆無であった。だから、筆者としてはたとえ銘が李博士の死を悼むシーンを見せられても、それこそ記号的な描写に思えてしまい、実際の銘の喪失の悲しみに寄り添うことはできなかった。

そうであるとすれば、逆に気になるのは「李博士は何故殺されたのか」ということだ。端的に、敢えてあのような形で李博士を退場させる必要はなかったのではないか。たとえ退場させるにせよ、単純にロンドンで仕事があるというような形で銘と別れさせるなり、方法はいくらでもあった筈だ。それでも敢えて李博士が殺されたのは、やはり「-1」というギミックを成立させるための物語上の都合という印象が強く、ドラマとしての必然性は感じられない。

勿論、人の死は、それがどう描かれるにせよ物語として描かれる以上それは何らかの役割を持たせられた「ご都合」主義的なものだ。現実の死のように不可逆的で、不条理としか呼べないものとは全く異なる。『ゴジラ』(1954)における芹沢博士の死でさえ、筆者がそれだけ感動を覚えられたという事実が、むしろ緻密に計算され役割を持たせられた「機能的な死」であることを証明している。『ゴジラ』(1954)において、身も蓋もないことを言えば芹沢博士は「観客を感動させるため」に殺されたのだ。

そのこと自体の倫理性を問うことは勿論可能だろう。しかしそこにはまだ、「その死によって成立する倫理上の問い」が存在し、その問いを問うためにはキャラクターに死を演じてもらわねばならないというドラマ上の必然性があった。それは、単にSF的なギミックを成立させるためにだけもたらされた李博士の「道具的な死」とはやはり一線を画していると感じる。読者諸氏は果たして李博士の死について如何なる感想を抱いただろうか。

登場怪獣

メカゴジラ登場の布石?

遂に持ち出された”地下の骨”は果たしてどこへ運ばれるのだろうか?

これまでは骨は過去改変により「ゴジラを倒した証」としてクライマックスでその意味が明かされるのかと予感していたが、どうやらそうではないようだ。

わざわざ持ち出されたということは、それについて人工的な加工がされる予感がある。

これが仮に「ゴジラの骨」だとするなら、これまでにもゴジラ作品でそれは用いられてきた。そう、オキシジェン・デストロイヤーで死んだ”初代ゴジラ”の骨を組み込んで開発されたという設定のメカゴジラ、2002年公開『ゴジラ×メカゴジラ』および2003年公開『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』に登場した”3式機龍“がそれである。

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過去作のオマージュもふんだんに取り入れられた『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』である。最後のどんでん返しとして、メカゴジラが登場しないとも限らない。

そしてここへきて大幅なパワーアップを遂げそうなジェットジャガーPPも気になる。今更だがタイトルの「シンギュラ・ポイント」とはそのものずばり”特異点”を意味するらしい。俗に言われる「シンギュラリティ―」とはAIが自我を持ちあらゆる面で人間を凌駕するその特異点のことを指す。これまではアシスタントAI「ユング」をジェットジャガーのボディに移しただけだった。謂わばスマホにアプリをインストールするのと変わらなかった。しかし今回のアップデートで、ユングは一旦ユングとしての自我を失い、ジェットジャガーのボディに新しく生まれ変わったということなのだろうか。

筆者としては「AIが自我を持つ」というSFにお決まりな描写に対してはどうしても違和感を抱いていた。意識とはそもそも「身体」の五感や諸感覚を統合するもの、ないし統合の結果生まれるもので、だとするならば意識の前提には身体が必要とされると考えるからだ。そうであるならば、「身体を持たないAI」がただプログラム上でいくらそれらしい計算を加えられようとも、それはやはり意識とは認められないだろうと考えていた。そういう意味では外付けのアプリのユングではなく、ジェットジャガーという「身体」の中で「シンギュラリティ―」を起こした結果まさに「意識」が芽生えるとする描写であれば、少なくともこれまで無前提的にアンドロイドに意識が与えられてきたSF作品群よりは遥かに説得力を感じる。

そしてそのような「シンギュラリティ―」の結果、作品世界は一気にメカゴジラを建造できる科学レベルまで引き上げられるのかも知れない。惜しむらくは残り話数が2話しかないということである。

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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は2021年4月1日(木) 22時30分よりTOKYO MX、KBS京都、BS11で、同日24時よりサンテレビで放送開始。

Netflixでは3月25日(木)より先行配信を開始しており、毎週木曜日に最新話が配信される。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』公式サイト

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』Blu-rayは予約受付中。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第10話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

第1話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

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