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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の音楽に注目
「ゴジラ」シリーズの傑作
2019年に公開されたマイケル・ドハティ監督の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017)に続く“モンスターバース”シリーズの第3作目。日本ではゴジラ65周年記念作品にあたり、「ゴジラ」シリーズの“系譜”にどのような爪痕を残すのか、かねてより注目を集めていた。
以下の内容は、映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の内容に関するネタバレを含みます。
蘇ったゴジラ音楽
そんな中、日本の観客をあっと驚かせたのが、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で利用された楽曲だ。庵野秀明監督による『シン・ゴジラ』(2016)でも『ゴジラ』(1954)や『怪獣大戦争』(1965)を始め、ゴジラ音楽の生みの親である故・伊福部昭が作曲した楽曲が使用されたが、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、日本のゴジラ音楽を見事にアレンジ。ドラマ『エージェント・オブ・シールド』(2013-)やゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』(2018)で音楽を手がけたベアー・マクレアリーが、伊福部昭による「ゴジラのテーマ」、古関裕而による「モスラのテーマ」を現代に蘇らせてみせたのだ。
「ゴジラのテーマ」をアレンジした「Godzilla Main Title」
メインタイトルとして採用されたのは、伊福部昭による普及の名曲「ゴジラのテーマ」(1954)をアレンジした「Godzilla Main Title」。日本のゴジラファンであれば聞こえた瞬間に背筋が伸びるあのイントロにはハリウッドらしい重厚さが加えられている。次いでおなじみの「デデデン、デデデン」というメロディが日本的な掛け声と共に流れ出す。ストリングスとホーンの描く旋律が頂点に達するや、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』という作品のスケールに呼応する壮大な展開を見せる。
「モスラのテーマ」をアレンジした「Mothra’s Song」
モスラの登場シーンでも怪獣ファンにはおなじみの音楽が聞こえてくる。古関裕而が1961年に作曲した「モスラのテーマ」をアレンジした「Mothra’s Song」だ。「Godzilla Main Title」と同様、原曲の形は残しながら映画のスケールに合わせたアレンジがなされている。東洋的な音色にストリングスとホーンの華々しさと重厚さが段階的に加わっていくことで、神々しい音楽を織りなしている。東洋の神を世界が歓迎しているかのような演出だ。
ドハティ監督がモスラに込めた想いはこちらの記事に詳しい。
エンディング曲「Godzilla (feat. Serj Tankian)」
エンディングで流れる曲は、アメリカのロックバンド、ブルー・オイスター・カルトが1977年に発表した楽曲「ゴジラ」のカバーバージョン。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ではベアー・マクレアリーの名義で、フィーチャリングにサージ・タンキアンがクレジットされている。ブルー・オイスター・カルトの「ゴジラ」は、松井秀喜がニューヨーク・ヤンキース時代に登場曲として使用していたこともある。歌詞自体は「ゴジラがくるぞ、バスを持ち上げて投げるぞ」といったゴジラのアクションを描写した内容が中心になっている。日本のゴジラ映画をモチーフとした曲だが、これまで「ゴジラ」作品で使用されたことはなかった。1998年のローランド・エメリッヒ版『GODZILLA』でも使用されず、ブルー・オイスター・カルトのメンバーはそれをネタにした「Nozilla」という曲を発表している。
正当な”ゴジラの系譜”
以上の三曲が、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のメイン音楽として使用されている楽曲だ。この三曲に共通するのは、ハリウッド版「ゴジラ」作品が避けて通ってきたものを取り入れ、アレンジしているという点だ。
前作のギャレス・エドワーズ版『GODZILLA ゴジラ』(2014)で音楽を手がけたアレクサンドル・デスプラは、ゴジラ音楽の生みの親である伊福部昭への敬意を表明しており、もちろん原曲を“無視”してきたわけではない。
だが、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の音楽には、原作への愛と、それを継承するという姿勢と共に、ゴジラ音楽に蓄積された歴史を現代に、そして国際社会に向けて昇華してみせるという意気込みが感じられる。これにより、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、もはや我が道を行く“ハリウッド版ゴジラ”ではなくなった。「日本版」「ハリウッド版」という括り方を超えて、自らを正統なゴジラの系譜に位置付けるという姿勢を、世界中の人々が理解できる“音楽”という形で示したのだ。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』はサントラが発売中。
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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の続編およびスピンオフについてはこちらの記事で。