『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』モスラの全米デビューに込められた監督の熱い想い | VG+ (バゴプラ)

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』モスラの全米デビューに込められた監督の熱い想い

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モスラ登場に込められた監督の想い

日本の怪獣が大集合した『キング・オブ・モンスターズ』

2019年に公開された『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、初週の週末で世界約200億円の興行収入を記録、日本と北米で首位発進を決めた後、興行収入は計400億円超に達した。ハリウッド版ゴジラとしては前作『GODZILLA ゴジラ』(2014)以来5年ぶりの新作で、ゴジラ、ラドン、キングギドラ、そしてモスラが登場。怪獣映画史上に残る豪華な布陣で世界中の観客を驚かせた。

モスラは初のハリウッド

中でも、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でハリウッドデビューを果たしたモスラに注目してみよう。日本の「ゴジラ」シリーズではゴジラに次ぐ人気を誇りながら、モスラがアメリカの映画作品に登場したのは今作が初。それでも長年培ってきた持ち前の魅力を発揮し、世界でも“クイーン・オブ・モンスターズ”としての地位をゆるぎないものとした。

1961年に誕生したモスラ

そもそも、日本でのモスラのデビューは1961年。ゴジラ、ラドンに続く第3の怪獣として、映画『モスラ』で華々しいデビューを飾った。同作ではロシアとアメリカを掛け合わせたロリシカという架空の国も舞台となり、撮影は日本とアメリカで行われた。そう、モスラはデビュー時からアメリカとのつながりが強い怪獣だったのだ。それに、『モスラ』は男性的なイメージが強かった怪獣映画で女性キャラクターを中心に据えた先進的な作品でもあった。災害と恩恵の双方をもたらす“自然”のイメージに近いゴジラに対して、モスラはインファント島の守護神であり、モスラに巫女として使える“小美人”と自然環境の味方であり続けた。登場時から欧米の一神教の価値観に近い設定だったと言える。

マイケル・ドハティ監督のこだわり

半世紀の壁を打ち破ったドハティ監督

にもかかわらず、登場から50年以上が経過してもモスラのハリウッドデビューは叶わなかった。モスラに限らず、ハリウッドはゴジラ以外の日本の怪獣にスポットライトを当てることをしようとしなかったのだ。今回そんな状況を打破したのが、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の指揮をとったマイケル・ドハティ監督だ。同監督は、米ニューヨーク・タイムズに今作でモスラを登場させるにあたってのこだわりを説明している。

「モスラは慈悲深いキャラクター」

まず、ドハティ監督は、モスラというキャラクターの特殊性について、以下のように語っている。

他のあらゆる怪獣は当然、より破壊的な傾向にある一方で、彼女 (モスラ) は非常に慈悲深いキャラクターなんです。ゴジラが“陽”だとすれば、モスラは“陰”なのです。

モスラが人類の味方であることを強調しているが、これはもちろん東宝版のモスラのこと。ドハティ監督は、日本のモスラの設定を引き継ぐことを前提とした語り口でモスラの特徴を説明していくのだ。

“モスラのルール”

さらに、東宝が長い歴史の中で築き上げてきた“モスラのルール”についても言及する。

東宝は“モスラが意図的に人を殺すべきではない”というルールを持っていました。彼女を他の怪獣よりも興味深い存在にしている点は、彼女が“生”と“死”、そして“復活”の絶え間ない循環を表現しているということです。彼女は毎回自らを犠牲にしていると思われていますが、よく考えれば、これまでも彼女は完全に死んでしまったことはありません。そして、私は彼女がそのことを理解していると思っています。

『キング・オブ・モンスターズ』で“変えなかった”もの

一方で、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、旧来のモスラから少なからずモデルチェンジも行われている。これは、過去のシリーズよりも大きくなったゴジラのサイズに合わせるための変更だ。キングギドラやラドンと対比してもモスラは“戦える”サイズとデザインである必要があったのだ。それでもドハティ監督は、モスラが持つ美しさを損ねることはしたくなかったと話す。

彼女が持つ美しさを是非とも残したかったんです。彼女が持つ鮮やかな色合いと神秘的な魅力をね。

作品の設定が要請する技術的な問題をクリアしながらも、モスラ本来の魅力を継承することにも重点をおいていたのだ。

エスニシティを重視

その他にも、東宝版の歴史を踏襲して幼虫モスラを登場させていたり、監督のコンセプトアートでは双子の妖精も描かれていたりと、とにかく東宝版モスラの設定を軸に置いた制作が行われていたことが分かる。日本版『モスラ』では“小美人”にあたる双子の妖精については、「エマとマディソンの母娘がこの双子の役割を果たすのでは」という憶測も流れていたが、ここでもベトナム人の母親を持つドハティ監督のこだわりが発揮されている。

オハイオで育ったアジア系のキッズとして、私があの双子について大好きだった点は、二人のアジア系の女優によって演じられているということでした。皆さんがあの双子にエマとマディソンの二人を重ね合わせる理由はわかります。しかし、私は彼女らのエスニシティを変えるつもりはなかったのです。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の大ヒットを牽引した最大の要因は、作品の根底にあるマイケル・ドハティ監督の“ゴジラ愛”であることは間違いないだろう。だが、上記の一連の発言からも分かる通り、モスラに対する思い入れもまた相当なものだった。これまでの怪獣映画の歴史と蓄積への敬意を忘れることなく作り上げられた同作は、更に支持を伸ばしていくことになるだろう。

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Source
The New York Times

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で流れた音楽のまとめはこちらから。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のスピンオフと続編についての情報はこちらの記事で。

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