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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第7話配信開始
芥川賞作家の円城塔がシリーズ構成・SF考証・脚本を担当する『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』。随所に散りばめられた過去作へのオマージュも楽しい本作も、Netflix先行配信ではいよいよ7話目を迎えた。本編ではゴジラも遂にその姿を現した。早速第7話を振り返っていきたい。
以下の内容は、アニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第7話の内容に関するネタバレを含みます。
第7話「じかんのぎもんふ」あらすじ/注目ポイントはココ!
『#ゴジラSP』第6話、TOKYO MX, KBS京都, BS11でご視聴ありがとうございました!https://t.co/zuLuRWFW08
次回5/13(木)放送の第7話「じかんのぎもんふ」もお楽しみに!
[#Netflix にて第7話まで先行配信中] pic.twitter.com/CS6AiTtVE5— ゴジラS.P<シンギュラポイント> 公式 #ゴジラSP (@GODZILLA_SP) May 6, 2021
ゴジラアクアティリス上陸
ゴジラアクアティリスに追われるマンダの群れ。その内の一匹を捕食したのか、鋭い牙で噛み付くとビルから見物していた野次馬の覗く窓にドス黒い血がべっとりと降り掛かる。ゴジラアクアティリスは東京湾から遂に上陸する。
特異点
対アンギラス戦における火器使用などの細かい法律違反について、警察官から形式的な取り調べを受けつつ「今回もお手柄でした」と言われて即座に解放されるユン。
一方、李博士とともにロンドンへと向かう機内でBBから送られてきたアーキタイプの模式図を見る銘。それは「四次元の回転で三次元の鏡映変換を実現」しているもので、銘によれば「私たちに見えているアーキタイプは一部分に過ぎない」らしい。機内食のゼリーを手掴みで二つ折りにし、そこへプラスチックのピックを刺して仕組みを説明する銘。ゼリーが「世界」でピックが「光」なら、高次元的操作で半分に折られたゼリー=世界にピック=光を刺せば、世界を同じ光が二度通過したことになるが、我々はそれに気付くことができないらしい。それが分子の「時間方向への屈折」だと言われても筆者には相変らず何のことかちんぷんかんぷんだが、それは銘曰く「半分は別の世界に存在している物質」であるのだそうだ。
アーキタイプってあの世で作ってるんですか、と言いながらゼリーを齧る銘に李博士は「我々は”特異点”と呼んでる」と答える。銘がロンドンに特異点があるのか、と訊ねた矢先に機内放送により不確定要素発生のため一時ミラノ・マルペンサ空港への着陸が告げられる。
オーソゴナル・ダイアゴナライザー
怪獣は「紅塵を生産している」と持論を述べるBB。それも葦原の予言かと問うティルダに「確かに彼はこれらの存在を示唆していた」と答えつつ何体もの同時発生はBBも想定していなかったらしい。”本命”は足元に封印中のサルンガか東京のあいつか、というBBの言葉は何を示唆するのだろうか? ティルダにサルンガの状況を訊ねられたオペレーターは「(サルンガが内側から押し上げているため)限界圧力到達まで24時間程度」との見込みを伝える。紅塵をコントロールしているサルンガと「同じこと」をやればいいと言うBBはティルダに”オーソゴナル・ダイアゴナライザー”の使用許可を求める。
「シヴァを傷付けては元も子もない」と強度を増した発泡スチロールによる対処を進言したオペレーターやBBの”本命”という台詞。『新世紀エヴァンゲリオン』めいた謎かけがここにもあるようだ。「シヴァ」というのはやはり怪獣の名なのだろうか? たとえば「すべての怪獣の始祖」であるような? 現在世界各地に出現している怪獣はみなシヴァとの何かしらの接触を試みており、その中の”本命”がサルンガもしくは”東京のあいつ”ことゴジラアクアティリスということなのだろうか? しかしそれだけではやはり「どこかで見た」ような印象を免れない。『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』ならではの一捻りを期待したい。
紅塵に覆われる街
ビルの一室から紅塵に覆われる街を見下ろす松原。紅塵について「ヤツの総量を上回っている」と語っているが、”ヤツ”とは何のことだろうか? 総量と言っていることから単体で出現したゴジラアクアティリスのことではなさそうだ。ということは群れで出現したラドン、もしくはマンダのことを指しているのだろうか。
補佐官によればマンダも電波に引き寄せられる性質を持っているかも知れないとのことだ。”オオタキシグナル”は最早ラドン誘導において顕著な効果を発揮しなくなった。紅塵の”赤い海”に沈むビルと続く十字架の描写はやはり『新世紀エヴァンゲリオン』を想起させる。紅塵の中ではラドンが「しぶとい」と語る補佐官。逃尾におけるラドンの自滅が「環境の不一致」だとするなら、紅塵は怪獣の生息地を拡げているのではないかと推測する松原。紅塵は不可能を可能にする夢の素材か、はたまた鹿子の言うような”地獄”を招く素材なのか…
余談だが、松原と補佐官の会話の背景描写として出てきた教会のシーンは恐らくポルトガルの首都、リスボンがモデルではないか。偶然にも筆者はポルトガルにワーキングホリデーで滞在した経験があり、描かれているのにそっくりの景色に見覚えがあった。路面電車(トラム)の後ろにそびえる教会は恐らくリスボン大聖堂だろう。
現実の世界は目に見える紅塵にではないが、目に見えないウィルスに覆われたコロナ禍である。見覚えのある景色に胸を躍らせたのも束の間、今や気軽にそこに行くことのできない切なさを噛み締める。この事態に対処してくれている医療関係者はじめ多くの人々の尽力に感謝しつつ、医療崩壊は最早世界中どこにいようと他人事ではない。心の底からオリンピックをやっているどころではないと感じる。今はできるだけ部屋から出ないようにして事態の一刻も早い収束を祈っている。非常事態は、やはり画面越しのフィクションとして楽しむくらいが丁度いい。
紅塵=アーキタイプの原料
空港で足止めを食らう銘と李博士。紅塵の正体について疑問を口にする銘に、李博士は紅塵はアーキタイプの原料なのだと告げる。言うなればアーキタイプのフェーズ1。銘が驚いていると、そこへレンタカーで迎えに来るマキタ。李博士は「あなたのことだからもう気付いているものかと」と言って笑うが、確かにその通りだ。少なくとも視聴者はこれまでの話の流れで紅塵=アーキタイプだということには見当が付いていただろう。それをあれだけ複雑な理論を手足のように扱う銘がここに至るまで気付いていなかったというのは何だか不自然に思えるが、明確に紅塵=アーキタイプと劇中で明言されたのは今回が初めてだ。
これまで紅塵の正体についてはユンやBBたちの台詞も含めて様々な角度から示唆されていたので、それらの情報がなかった銘がこれまで気付けなかったというのも無理はないかも知れない。しかし演出の手順としては、視聴者にも分かる紅塵=アーキタイプという事実にまず銘が気付き、その後で視聴者には分からない光の時間方向への屈折、四次元がうんたらという専門的な議論を展開してくれた方が銘の天才性はより伝わり易かったのではないかと思える。少なくとも筆者には、専門知識を持たず故にその議論の妥当性を確かめることも叶わない複雑な議論に置いてきぼりにされた後で、専門知識がなくともおおよその見当は付く紅塵=アーキタイプという事実に銘がようやく気付く様を見せられると何だか拍子抜けして感じられてしまった。
戦利品はアンギラスの角!
大滝は”戦利品”としてアンギラスの角を入手した。それをジェットジャガーの武器にするらしい。矢じりにして弓で撃ち込むと言う大滝に対して、「一発外したら終わっちゃうじゃん」と言ってさとみは槍にすることを提案する。
2人のやり取りを後目に、ユンはミサキオクで録音した曲を原曲と比較したデータをユングに分析させていた。ユングによればそこには8ビットのブロック16個を1まとまりとした信号が含まれているらしい。その一部の数列を抜き出すと「20300706193650」となった。それを見て「2030年7月6日19時」と呟く侍。それは屋敷で曲を録音した約37分後のことだとユングは答える。しかし意味を成す数列はそれだけだった。ラドンが西暦を理解するとも思えない、原曲が録音されたのは60年以上前……果たして曲に隠されたメッセージとは。
骨に繋がれたケーブル
佐藤は防護服に身を包み再度ミサキオク地下の”骨”に接触する。恐らく山本に許可を取らない単独行動だろう。そこで佐藤は目論見通り警報機から延びるケーブルが骨に繋がっているのを発見する。やはり曲は骨から流れているのだと確信する佐藤が動くラドン人形に気を取られている隙に、その背後からスタンガンを突き付けたのは海だ。先客に気付くことなく失神する佐藤。恐らくガイガーカウンターを片手に骨に近付いた海は「素晴らしい。80年経ってもこの反応とはね」と口にする。一体海の目的とは何なのだろうか?
紅塵には13のフェーズ
移動する車内で紅塵=アーキタイプなら「怪獣を作ったのは李さんたち?」と訊く銘。「私たちに生命を作り出せる程の知恵があると思う?」と一笑に付した李博士は紅塵には13のフェーズがあるのだと銘に告げる。しかし未だに自分たちで制御できるのはフェーズ3までに留まるらしい。紅塵をベースとする生物の進化を予言していた葦原。彼は日本で特殊なクラゲの体内から微量な紅塵を発見。そのクラゲは紅塵を体内に取り込んで利用する、これまでの生物とは全く別種の生物だった。
紅塵を何とかする方法を問う銘に、アーキタイプ13番目のフェーズ“オーソゴナル・ダイアゴナライザー”は「触媒のように働き他のアーキタイプを変質させる」ものだと答える李博士。それがあれば紅塵を無害化できるのかと期待を寄せる銘に対して、3番目でやっとの自分たちには絵に描いた餅だのとつれない返事。しかしそこに現れたのが銘のレポートだった。今頃BBが実証実験の準備中とのこと。果たして銘は紅塵に覆われた世界の救世主となるや?
サルンガ殲滅
スーツケースを手にエレベーターに乗り地下へと降りていくBB。地下では今にもシェルターを突き破らんとするサルンガに向けて、命綱をして壁に対して垂直に立って銃を構えるレンジャーたちの姿が。姿を見せたサルンガにライフル弾は全く効き目を見せない。作業用の鉄塔やパイプを伝って上ってくるサルンガ。それらを火薬で爆破しても見た目よりも俊敏な動きを見せるサルンガは次々に別の鉄塔に飛び移る。地下から噴き出す紅塵がスモークとなってサルンガの位置が確認できない。
そこへようやく到着したBBは徐にスーツケースを開けて蹴り落とす。退避の指示に従って壁を蹴り上がっていくレンジャーたち。パラシュートを広げてサルンガを素通りした”オーソゴナル・ダイアゴナライザー”を見て不発かとたじろぐ警備員。紅塵の中で起爆しないと意味がない、と言ってBBがトリガー型のスイッチを押すと紅塵の海の中から無数の”赤い針”が延びる! 赤い針はサルンガのみならず四方八方の壁に突き刺さる。しかし針は延びきるや否や粉々に砕け散ってしまう。針に串刺しにされ呻き声を上げるサルンガを見て曰くありげな笑みを浮かべるBBの顔が、閉まるシェルターの隙間から覗く。
オーソゴナル・ダイアゴナライザーとはユンの直訳によれば「直交対角化」という意味らしい。その名称は明らかに初代ゴジラを倒し、また平成vsシリーズのラスボスであるデストロイアを生み出したゴジラとは因縁の深い“オキシジェン・デストロイヤー”を意識したものだろう。どちらもイニシャルを取れば「O・D」だ。しかも名前だけでなくスーツケースに収まるそれは見た目も初代のオキシジェン・デストロイヤーにそっくりなものだった。
ところで、BBがスーツケースを持ってきた時に警備員が言っていた“アムリタ”とは何だろうか? 以前にもどこかの会話で出てきた言葉だ。検索すると、サンスクリット語で甘露、「インド神話に登場する神秘的な飲料の名で、飲む者に不死を与えるとされる」ものとのことだ。BBはオーソゴナル・ダイアゴナライザーについて「その副産物の毒の方」と語っていたことから、紅塵を用いた何かしらの実験で発明が目指されているものが”アムリタ”なのだろう。紅塵、アーキタイプ、オーソゴナル・ダイアゴナライザー、アムリタ……同じような性質のもので提示されるアイテムが多いと混乱してしまうが、これらの正体が物語においてどのように明かされていくのかを刮目して待ちたい。
“ジェットジャガー・ユング”誕生
鹿子を空港まで出迎えた佐藤は、車内で「骨が怪獣の出現を知らせるものなら欲しがる人間もいるのでは?」と自らを襲った人間について私見を述べる。ミサキオクは骨を見張る施設、と見当を付ける鹿子は警報機が鳴った時に報告書を出したという佐藤の言葉から「その行き先は葦原ってことにならない?」と言う。そう言えば、第1話で銘は警報機が鳴った際の報告書を出すためにミサキオクに呼ばれたのだった。そこには「報告書を出せ」という手順は書かれていたがその中身について知る者は居なかった。葦原はどこかで生きていてその報告を待っているのだろうか?
ニュースでは政府により怪獣が”ゴジラ”と名付けられたとの報道。
ユンはジェットジャガーにユングを乗り移らせ、“ジェットジャガー・ユング”と名付ける。随分と即物的な名付けである。それなら敢えて「新しい名前」と言う程のものでもないような……ともかく新たなボディを得たユング、そしてパイロットを必要としなくなったジェットジャガー。槍術プロトコルを設定し、アンギラスの槍を構えて大見得を切るジェットジャガー・ユング。待て、次回。
第7話の登場怪獣
第7話も新規登場怪獣はなし。話数的にも折り返し地点を過ぎた。今のところ毎話のテンポが同じように感じられるのは少し気に掛かる。散りばめた謎はそろそろ一度回収され、その上で新たに浮かび上がった謎によって主人公たちが当初は想像もしていなかったような場所へと向かうような展開を期待していた。番組の宣伝文句としては〈 抗えない未来<ゴジラ>を、覆せ。〉と書かれていたので、ゴジラの出現が予知された上でそれに対して人々が立ち向かっていくのかと思いきや、ゴジラは姿を見せたは見せたものの今のところ姿形も含め何らゴジラらしい存在感を発揮していない。
にも拘らず政府から”ゴジラ”と名付けられたというニュースだけが描かれたのは余りにもやっつけという印象で寂しい。せめてこれまで度々登場した「古史羅図」との関わりなどが描かれるべきではなかったのか。姿を変えるならば活躍はゴジラらしく、姿をオーソドックスに造形するならば意外な仕方で活躍させるなどしないとなかなか視聴者の印象には残らないのではないだろうか。謎の要素が多いのは楽しめるが、どうせ視聴者の大半が理解できない専門用語の議論は正直繰り返されても冗長だ。それよりは手に汗握る怪獣の活躍を観たい。後半の怒涛の展開を期待している。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は2021年4月1日(木) 22時30分よりTOKYO MX、KBS京都、BS11で、同日24時よりサンテレビで放送開始。
Netflixでは3月25日(木)より先行配信を開始しており、毎週木曜日に最新話が配信される。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第8話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第1話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第2話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第3話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第4話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第5話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
第6話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の声優キャストまとめはこちらから。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の音楽についてはこちらの記事に詳しい。