第9話ネタバレ感想!『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』あらすじ・考察・登場怪獣 | VG+ (バゴプラ)

第9話ネタバレ感想!『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』あらすじ・考察・登場怪獣

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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第9話配信開始

芥川賞作家の円城塔がシリーズ構成・SF考証・脚本を担当する『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』。Netflix先行配信ではいよいよ9話目。本編ではいよいよ”破局”が世界を覆いそうな様相を呈してきた。早速第9話を振り返っていきたい。

第9話「たおれゆくひとの」あらすじ/注目ポイントはココ!

ゴジラ第3形態

自衛隊の爆撃によって破壊された、炭化した皮膚の中からは更に変態したゴジラが姿を見せた。その後、再度二発の爆弾が投下され、一発はゴジラに命中し皮膚を貫通した後に爆発。ゴジラは出血し苦しむ様子を見せたことから、明確にダメージを与えたようだ。正面から『シン・ゴジラ』をオマージュしたこのシーンでは、しかし二発目の爆弾はさすがに背びれからの放射熱線で撃墜されることはなかった。紅塵を自在に操るらしいゴジラは紅塵で作った触手のようなもので爆弾を包み込んで爆発させてしまう。そして、さあ反撃とばかりに背びれを青白く発光させると、口元にサークル状の光の輪が形成されるものの遂に熱線は吐かれることなくゴジラは紅塵の煙に包まれる。

松原はゴジラの体表は着弾と同時に破裂することで衝撃を抑える「リアクティブ・アーマー」のような働きをしたのではないかと部下から報告を受ける。着弾前に組織の変化が見られるという指摘からアンギラスを連想し、そのアンギラスを駆逐した民間人に思いを馳せる。

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ようやく見た目もゴジラらしくなってきたが、とは言えウルティマには程遠い。最低でもあと一回は変態するのだろう。今のところOP前の冒頭での活躍に限られ、本編での大暴れが見られていないのは残念だ。変態も単に形が変わるのみならず、各形態において相応の見せ場が欲しかった。今のところミサキオク地下に眠る骨との関わりも特に匂わされておらず、「古史羅図」との関連も指摘されていない。これらは勿論「ゴジラ」を示しているのであろうが、作中で登場人物たちにそう感付かせるような伏線を設定せずに物語終盤において突如「謎が明かされた」という風に繋がりが分かったとしてもやはり唐突な印象を否めないのではないか。

今のところゴジラはゴジラ、破局は破局、紅塵は紅塵、銘は銘、ユンはユンという具合にそれぞれの要素が独立して描かれるのみで、物語の全体としての有機的な繋がりの感覚は乏しいように感じられる。単純に葦原が予言していた「破局」を「ゴジラ」と置き換えるだけで、場所は違えども銘やユンにとってゴジラは立ち向かうべき共通の命題となり得た筈ではないか。

このような素人の見方を覆すようなどんでん返し、そのための必然性をもって現状ゴジラがこのように描かれているのだと信じ、続きを観ていきたい。

世界の命運は銘の手に?

ジェットジャガーは大量の蜘蛛型怪獣を相手に孤軍奮闘する。いくらアンギラスの棘を用いているとは言え、槍一本で何十匹もの相手をするとは恐れ入る。その隙に倉庫の事務室へと避難するユン一行。銘からのメッセージで”破局”について知らされるユン。訝る侍と大滝に「彼女に世界の命運がかかっているのかも知れない」とユンが告げた時、職員の一人が蜘蛛型怪獣に連れ去られた同僚が繭に包まれているのを発見する。

時を同じくして援護に駆け付けた警察官からの連絡が。しかし彼らもまた空を飛ぶ蜘蛛型怪獣の別タイプに襲撃されてしまい電話は途切れる。ユンはジェットジャガーに助けに行けるかと訊ねるが、返事は「時間をください」というものだった。大滝がまずは職員の救出だと言った時、職員の一人が沖に停泊中のボートの存在を示す。だが鍵は繭に包まれた職員が持っているとのことだった。急いで事務室を出る大滝と侍。ユンは銘とのやり取りの中で破局とは「超時間計算機が成長」した結果起こるものだと推測する。

ロンドン脱出

一方、銘は葦原の屋敷で破局が「2030年」と予測されている資料を発見する。慌てて報告に行くと、李博士はティルダ、BB、スティーブンらと遠隔会議中だった。破局自体を何とかしなければと言う銘に対して、BBらはオーソゴナル・ダイアゴナライザーの開発のために超時間計算機を活用したいと言う。BB曰く「オーソゴナル・ダイアゴナライザーを完成させることができれば紅塵から世界を救える」とのことだ。スティーブンに意見を求められた李博士も同調し、BBに計算機の起動準備を指示する。銘はそんな李博士に不信感を覚えるが、李博士は口に人差し指を立てるジェスチャーで銘に真意を伝えるのだった。

スティーブンからインドのウパラへの帰還を要請される李博士。その時、ティルダにサルンガが紅塵とともに消失したとの報告が上げられる。オーソゴナル・ダイアゴナライザーを喰らってもサルンガは絶命していなかったらしい。李博士の方はマキタからラドンの群れの襲来を告げられる。ウパラでの再会を約束してロンドンの脱出準備を始める李博士。

会議の後、銘は李博士から「私も破局は現実に起こるものだと思う」と真意を告げられる。葦原の後を追うだけでなくその先へ進めと発破を掛けられる銘。慌ただしく荷物を纏めるとマキタの用意した車に乗り込む一行。

職員救出

侍と大滝が繭に包まれた職員を救出すると、一行は倉庫を出てボートへと駆け出す。脱出を援護すべく倉庫内の蜘蛛型怪獣を蹴散らすジェットジャガー。しかしボートに衝突した際に床面にガソリンが漏れ出してしまう。倉庫の鉄扉を開き、怪獣が迫っていないことを確認して駆け出す一行。ユンはジェットジャガーに合流を指示するものの、両腕が鎌になったタイプの怪獣と激しい剣戟を交わすジェットジャガーは「追い付きます、先に行ってください」と答える。その内に火花がガソリンに引火してしまい、倉庫は大爆発を起こす。ユンは自らも爆風に吹き飛ばされながらジェットジャガーの身を案じる。炎の中で怪獣に囲まれるジェットジャガー。

BBと手を組む李博士

部屋に戻り、娘のリーナが観ていたニュースで東京のゴジラが炭化した状態を目にしたBBは「こっちは違ったってことか」と意味深な言葉を吐く。李博士から掛かってきた電話に「東京はもう収束かもよ。わざわざ届ける必要が?」と答えるが、一体何を届けるつもりなのだろうか? 李博士は空港へと向かう車内で「BBには破局を観測するのを手伝ってもらう」と銘に説明する。これまでの話の流れではBBはティルダ、スティーブンとともにシヴァの中枢に居て、李博士は表向きは華やかな地位を与えられながらもその実際は小間使い的な役割なのかと思えたが、やはり李博士は李博士で独自の権力を持っているようだ。破局を前にして、果たして人類は一致団結して立ち向かうことができるのだろうか?

破局は回避できたとしたら存在しなくなるのだからそもそも観測できるのだろうかと問う銘に、「未来に破局を観測できなければそれで問題解決じゃない?」と楽観的に答える。

その時ラドンの群れが上空に迫る。車を捨てて逃げる途中、小さな女の子の飼い猫を助けようとする李博士に迫るラドン。果たして博士の命運や如何に?!

脱出

ユンに向かって無事を報告したジェットジャガーは「バッテリーをパージして脱出を試みます」と告げる。箱型のバックパックを外して身軽になったジェットジャガーは見た目からも若干野暮ったさが消えてシャープな印象だ。とは言えパイプを繋げただけのような貧相な腕でよくもあの巨大なアンギラスの槍を自在に操れるものだ。その上バーニアの一つもないのにまるで曲芸師のような身軽な身のこなしで羽根を持つ怪獣を倒したり屋根の上に上がったりする。これまでのリアルロボット的な活躍から一気にスーパーロボット的な活躍へと舵を切ったかに見えるジェットジャガー。まさか巨大化する訳はないよな?

死闘の末にユン一行の乗るボートへと辿り着いた途端にジェットジャガーのバッテリーは切れた。間一髪。赤い海を進むボートの中でユンたちが目にしたのは、空を覆い尽くさんばかりの巨大な赤い積乱雲。そう言えば、第8話でジェットジャガーは積乱雲について「上昇気流によって成長する雲。その高さは成層圏に達することもある。地表と電離圏の作る地球規模のコンデンサを充電する発電装置。それがあんなにも美しく、恐ろしく見える」と言っていた。まるで予言ではないか。まさかユング自体が未来を視る”超時間計算機”の一つなのだろうか? だから同じく未来を予知したアンギラスの槍を武器として使っているということなのだろうか。ユングたちAIが破局に対してどのような役割を演じるのかにも注目だ。待て、次回。

怪獣映画に人間ドラマは不要か?

以上、第9話のあらすじをざっと振り返ってみた。ここからはこれまでの物語を振り返った上で現在のところの筆者の所感を述べてみたい。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の物語は基本的に“謎”によって牽引されている。しかし謎が余りにも大きいと、どうしてもそれを自分事として捉えることは難しくなってしまうのではないだろうか。所謂「終末モノ」においては、終末後を生き延びた主人公たちのサバイバルが描かれるか、あるいは終末を如何に回避するかという奮闘が描かれるのが定石だ。そして『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は後者に属する作品だろう。

しかし終末回避のために、人は何故奮闘せねばならないのか。究極的には、「世界」が滅びようが滅ぶまいが個人としての生命には避けられぬ死が予め組み込まれている。それでもなお世界を滅ぼさずにいたい、存続させたいという動機は決して自明のものではないだろう。世界の終焉が自らの死に先んじて訪れる、世界が滅びてしまうことによって自らの死が前倒しされるという状況であれば自らの死を避けるべく行為することと世界の終焉を防ぐ(先延ばしにする)こととは同じ意味を持つ。しかしその場合においてさえ、やはり原理的には「そうまでして生きていたいか」、生きる意味とは一体何であるのかということが問われてくる筈だ。そこには勿論解はない。だからこそ多くの作品で「身近な人間関係における幸福な現在」を維持すべく主人公が奮闘するヒューマン・ドラマの枠組みが採用されている。それは確かに多くの人の共感を得易い形式だろう。

しかしそのようなマジョリティ的価値観からはみ出してしまう人間も居る。筆者も含めたそうした”はみ出し者”にとって、日常を破壊し、人間の存在そのものを相対化するような「圧倒的な力」の象徴たる怪獣は、それが想像力の産物である限りにおいてまさに福音なのである。

では怪獣がただ街を破壊している様を見せ付けられればそれで気が済むのか。気が済む、むしろ人間を映している暇があれば一秒でも長く怪獣を映せという人も居るだろう。そうした人は恐らく怪獣の造形に惹かれているのだろうが、筆者の場合は少し違う。造形もさることながら、やはり筆者にとっては怪獣の持つ人間存在を相対化する力の方こそが魅力なのだ。言うなれば、筆者は造形というよりも観念的に怪獣に惹かれている。そのような人間にとっては、怪獣と人間のどちらが主役と割り切れるものでもない。むしろ怪獣と人間の「関わり」、圧倒的な力としての怪獣を前にして果たして人間は怪獣と、世界と、即ち自らの生と如何に対峙していくのか、そうした問いが見事に結実した「物語」にこそ惹かれる。

そうした観点から『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』を観ていくと、登場人物が内なる動機を持って怪獣と、世界と対峙しているというよりは、半ば謎解きの駒として自動的に配役されてしまったような印象が強い。銘は世界の破局という解決すべき課題を与えられ、そこへ向かうに足る能力もあるために内省することなく能力をフルに発揮できている。ユンも実際に目の前に怪獣が現れてしまった以上その場を生き延びるためには戦わざるを得ない。それは良いとして、ではその他の人物はどうだろうか。李博士にせよティルダにせよBBにせよ佐藤にせよ鹿子にせよ海にせよ、それぞれに思惑はあるのだろうがそれが何なのかが明かされず、世界の謎とは別にそれぞれの個人の動機それ自体も謎に包まれている。

つまり目的が何かが明確でないままに物語が進行するので、彼らの一つ一つの行為が果たして彼らの目的の遂行のために有意義であるのか、有意義であるとしてその選択は倫理的に許容し得るものなのかといった判断を、視聴者が下すことができない。要するに、これだけ多くの登場人物を設定しておきながら、その中に誰一人「苦悩」を担う人物が居ないのだ。

そういうウェットな感情を抜きに論理で物語が進むのが『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の魅力だという声も聞く。筆者としてはそうした意見も理解しつつ、しかしそもそも果たしてこの物語が論理によって展開されているのか自体に対する疑念も抱く。作中では「有り得ない物質」の仕組みが議論されているが、それが有り得ないものであればその理屈もやはり現実には有り得ない。世界の仕組みも、個人の動機も、それらに対して何かしらの価値判断を下すための「前提」が情報として提示されぬまま、ただ数珠繋ぎのように謎が謎を呼んでいく。そうなってしまうと、結局のところその謎が解かれようと解かれまいと、世界が滅びようと滅びまいと、それを外から観ている視聴者にとってはだから何だという話になってしまわないだろうか。前述した通り、筆者が怪獣を愛するのは怪獣が人間の日常、人々が無意識の内に下している抑圧的な価値判断を相対化するためだ。そこにはやはり人間が自らの生を如何に捉えるかという自省的な視点が不可欠に思う。その視点があって初めて、怪獣の圧倒的な暴力は、暴力としての意味を持つ。

脚本を担当する円城塔はインタビューで「メッセージ性よりはエンタメ性を重視する」と答えていた。しかし独自のテクニカルタームで前提の不明瞭な理論について長々と議論させることが果たして”エンタメ”だろうか? 筆者としてはメッセージ性とエンタメ性は決して対立するものではなく、むしろメッセージ、即ちある視点を明確にした上で例え他者の視点により相対化されるとしても何かしらの価値判断を下すこと、それによって視聴者にその価値の妥当性を問うことこそが「面白さ」に直結していると感じる。

すべての謎が解き明かされた時、「してやられた!」と思わせてくれることを期待している。

第9話の登場怪獣

ゴジラ新形態

冒頭に現れたゴジラの新形態は『シン・ゴジラ』の第3形態を思わせるが、それよりは大分完成されたイメージだ。今回は文字通り煙に巻かれてしまったが、背びれが発光していることから熱線を吐く能力も獲得しているらしい。一度”繭”のような状態になってからの変態であったが、果たして最終形態であるゴジラ・ウルティマへはどのように変態するのだろうか。

 

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は2021年4月1日(木) 22時30分よりTOKYO MX、KBS京都、BS11で、同日24時よりサンテレビで放送開始。

Netflixでは3月25日(木)より先行配信を開始しており、毎週木曜日に最新話が配信される。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』公式サイト

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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第10話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第1話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第2話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第3話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

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『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第7話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』第8話のネタバレあらすじ&感想はこちらから。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の声優キャストはこちらから。

『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の音楽についてはこちらの記事に詳しい。

腐ってもみかん

普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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