『バッド・バッチ』シーズン3第10話はどうなった?
『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』は2021年から配信を開始した「スター・ウォーズ」シリーズのアニメ。『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020) の続編/スピンオフにあたり、クローン大戦後の帝国成立まもない銀河でのクローンたちの戦いが描かれる。
シリーズフィナーレとなるシーズン3は全15話で構成される。シーズン3第10話と第11話は同時配信となり、この週を終えれば残すところたった4話。いよいよクライマックスを迎える『バッド・バッチ』にどんな展開が待っているのか、今回はシーズン3第10話をネタバレ有りで解説&考察していこう。
以下の内容は、アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン3第10話の内容に関するネタバレを含みます。
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『バッド・バッチ』シーズン3第10話「迷い」あらすじ&ネタバレ解説
検体の子ども達
『バッド・バッチ』シーズン3第9話では、あのアサージ・ヴェントレスがカムバック。バッド・バッチメンバーは、オメガが持つ高いM値(ミディ=クロリアン値)とその特質によって帝国に追われていることを知るのだった。
シーズン3第10話の冒頭では、特殊な力を持つ子どもが登場。『マンダロリアン』(2019-) のグローグーとディン・ジャリンを思わせる親子から物語が展開されていく。その子どもは見つかるやいなや帝国に通報されてしまう。やはりグローグーが帝国の残党から追われていたことを思わせる展開だ。
そして、シーズン3第10話では久しぶりにタンティスの研究所が登場。オメガの脱走を手助けしたナラ・セが監禁された後、研究が滞っており、ドクター・ヘムロックはエメリー・カーを昇進させている。そして、エメリーは「重要な検体」に接触することになるが、そこに集められていたのは、特にM値が高い子ども達だった。
ジェダイ・オーダーと重なる面も
子ども達が集められている理由は、ジェダイ狩りによって成人がほとんど残っていないという背景もあるようだ。しかし、ヘムロックは「子どもの方が手に入りやすく、進んで服従する」と本音を隠さない。人間よりも10倍ほど成長速度が遅く、フォースの力も強いグローグーが長い間帝国から身を隠さなければならなかった理由が暗に示されている。
一方で、「子どもの方が手に入りやすく、進んで服従する」という本音は幼少の頃からフォース感応者を親元から引き離していたジェダイ・オーダーの“本音”と捉えることもできる。ジェダイ・オーダーが子どもを連れて行く理由は、建前上は、幼少期から訓練を積んだ方がダークサイドに堕ちにくくなるということだ。だが、その考え方は、アナキン・スカイウォーカーのような自立した考えを持つ人物も、幼ければ「手に入りやすく、進んで服従する」と言い換えることはできないだろうか。
ヘムロックは、M値は複製できないが、オメガの血液は結合剤となりM値を増やすことができると話す。ネクロマンサー計画がパルパティーンのクローン作成計画だとすれば、パルパティーン本体のクローンを作ってもM値は複製できない、そこでクローンのM値を増幅させる方向に舵を切った、そのためにオメガの血が必要ということなのだろう。そして、ヘムロックは「子どもは科学的資産でしかない」と言い切るのだった。
『マンダロリアン』での既視感
一方、冒頭に登場した親子の前に現れたのはキャド・ベイン、そしてアシスタントドロイドのトド360だ。『クローン・ウォーズ』から登場している賞金稼ぎのキャド・ベインは、『バッド・バッチ』でもオメガを狙ってシーズン1第8話と第9話に登場した。ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) ではその最期が描かれたが、そちらは帝国崩壊後の新共和国時代のお話だ。
振り返れば、『バッド・バッチ』シーズン3は第8話でフェネック・シャンド、第9話でアサージ・ヴェントレス、そして第10話でキャド・ベインと、シーズン後半に入って毎話ゲストキャラが登場している。これが「スター・ウォーズ」ユニバースの面白いところだ。
キャド・ベインは子どもを捕らえると、浮遊する装置に乗せて連れ去る。この浮遊する装置もまたグローグーが初登場時に乗っていた装置を想起させるものだ。元々グローグーは帝国側に捕らえられており、逃げ出してあの『マンダロリアン』シーズン1第1話の場所にいたという可能性もあるだろう。
エメリーの方はというと、検体の一人であるイヴァの名前を知り、脱走を試みたSP-32と呼ばれる検体の名もジャックスであることを知る。「資産」として名前を奪われているが、一人一人に名前と帰るべき場所があることを知ると同時に、「手順(プロトコル)通り」として、スタンモードといえど子どもにブラスターを向ける帝国のやり方に、エメリーは違和感を覚えているようだ。
エメリーは独房のナラ・セに会いに行き、検体になった子ども達が「昔の自分のよう」だと表現する。そして、ナラ・セはオメガを守ったとしつつ、検体の子ども達にもできることをしたから、子ども達は後任のエメリーを頼ることになると語る。たとえ一人しか救うことができなくても、できることをやっていればそれが次の人に繋がっていく。非常に参考になる問題への取り組み方だ。
動き出す暗殺者、そしてエメリー
一方のヘムロックは、ターキン提督からタンティスの研究施設が帝国の財政を圧迫していると指摘される。ヘムロックは皇帝が個人的に興味を持っている研究だと主張するが、ターキンは結果が出なければ施設とヘムロックは窮地に陥ると警告するのだった。帝国も一枚岩ではないことがよく分かるシーンだ。なお、ターキン提督は、シーズン1では財政を理由にクローン兵の廃止をカミーノに言い渡している。
続いてヘムロックはクローン工作員と話す。前回オメガを逃したとを指摘されていることから、シーズン3第6話と第7話で登場した暗殺者であることが分かる。第7話のラストでは暗殺者が最後に生き延びていたことが示されていた。暗殺者は海賊の名前を得たと話し、海賊のフィーに危険が迫っていることが示唆されるのだった。
エメリーは新しい検体の到着に立ち会うことに。その検体とは、キャド・ベインが捕らえた子どもだ。エメリーは検体の幼さにドン引き。言葉も喋れない赤ん坊すら標的にする帝国に、エメリーは疑問を抱き始めている。
その夜、ジャックスが懲罰を喰らったことについて、イヴァは「お仕置きされないと言ったのに」とエメリーを責める。捕えられた子ども達はみんな家に帰りたいと思っている。家族から離れて背中を丸めるイヴァの後ろ姿を見て、エメリーはシーズン3第1話でオメガが作った手製のトゥーカ人形をイヴァにあげ、『バッド・バッチ』シーズン3第10話は同日配信の第11話へと続いていく。
『バッド・バッチ』シーズン3第10話ネタバレ感想&考察
『マンダロリアン』に説得力
『バッド・バッチ』シーズン3第10話は、エメリーに葛藤が生まれる回だった。やはり、シーズン2のラストで示唆された通り、エメリーはシーズン3のキーキャラクターになる存在だったようだ。
シーズン3第10話では、ナラ・セやエメリーといった女性のキャラクター達が、子どもを利用する帝国に抵抗を覚える様子が描かれた。ともすれば、女性=子どものことを第一に考えるというような母性神話に陥る危険性もあるが、「スター・ウォーズ」シリーズではディン・ジャリンというベストファーザーを既に見せていることが効いている。
また、賞金稼ぎとして出向いたキャド・ベインが容赦なく幼いターゲットを帝国に引き渡して役目を終えた様子は、『マンダロリアン』でのディン・ジャリンとの対比としても機能している。後にキャド・ベインは、マンダロリアン&グローグーが助っ人として参戦したボバ・フェット陣営との戦いで命を落とすのだから、必ず報いは受けるということだ。
グローグーの件で言えば、帝国が計画のために言葉も喋れない幼い子どもまで狙っていたという事実は、『マンダロリアン』の冒頭でグローグーが追われていたことに更なる説得力を与えることになる。帝国には、ネクロマンサー計画以外でも、高いM値を持つ子どもを育てて利用する計画があったということだが、それはもしかするとジェダイ・オーダーのやり方を模倣したものだったのかもしれない。
『マンダロリアン』のグローグーが帝国時代にひたすら身を隠し続け、帝国崩壊後も帝国の残党にクローン計画のために狙われているという設定が、『バッド・バッチ』シーズン3に入ってバシバシと納得のいくものになっていく。こうしたダイナミズムも「スター・ウォーズ」フランチャイズの楽しいところだ。
それはさておき、エメリーはどんな決断をくだすのか、同日配信の『バッド・バッチ』シーズン3第11話を続けて見ていこう。
シーズン3第11話の解説はこちらから。
アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン3はディズニープラスで配信中。
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