『X-MEN‘97』第8話 ネタバレ解説 X-MEN最終章三部作、開幕 考察&感想 | VG+ (バゴプラ)

『X-MEN‘97』第8話 ネタバレ解説 X-MEN最終章三部作、開幕 考察&感想

©2024 Marvel

人類とミュータントの関係性が崩壊する『X-MEN‘97』

ジェノーシャの悲劇により、ミュータントと人類の関係性に崩壊の兆しが見え始めてしまった『X-MEN‘97』。その最終章三部作の第1部であるアニメ『X-MEN』第8話「寛容は絶滅 第1部」では、文字通り人類に寛容さを求めていたX-MENはいなくなり、現実世界のマイノリティとマジョリティの関係性がミュータントという比喩を通して描かれることになる。

本記事では、人類とミュータントの関係性を描くアニメ『X-MEN‘97』第8話「寛容は絶滅 第1部」について解説と考察、感想を述べていこう。なお、本記事はるアニメ『X-MEN‘97』第8話「寛容は絶滅 第1部」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『X-MEN‘97』の内容に関するネタバレを含みます。

『X-MEN‘97』最終章、開幕

バスチオンの築いた未来

ケーブルは空瓶相手に射撃練習することで、父親であるサイクロップスとの会話を避けていた。後のケーブルであるネイサン・サマーズを未来に連れて行ったビショップからの連絡では、タイムトラベル中にネイサン・サマーズとビショップははぐれてしまい、ネイサン・サマーズは1人で未来に辿り着いたとのことだ。

ケーブルはすべての黒幕である謎の男の正体を解説する。謎の男の正体はバスチオン。彼はジェノーシャの悲劇に乗じてプライム・センチネルを製造したということだが、その最大の目的は別にあった。それはケーブルも感染したテクノ・オーガニック・ウイルスを利用した繁殖する生体兵器を生み出すことだった。それが実現すれば、人類のDNAは書き換えられ、ミュータントに変わる存在としてプライム・センチネルが誕生することになる。それはミュータントの絶滅を意味していた。

バスチオンとミュータントの戦争は300年も続き、その先に待っていたのは何とミュータントを生体兵器となった人類が管理するというミュータントにとってのディストピアであり、反ミュータント主義者にとってのユートピアだった。それは明るく平和な世界をミュータントが陰ながら支えるというプロフェッサーXの夢が、最悪の形で実現されたと考察できる世界だ。

X-MENの立場

ケーブルは何度も過去にさかのぼり、ジェノーシャの悲劇を食い止めようとしたが、その度に失敗してきたという。ここでカマー・タージの魔術師が絶対点という変えられない時間軸の事象について話していたことをビーストが解説するが、このカマー・タージの魔術師とはドクター・ストレンジのことだと考察できる。アニメ版『X-MEN』にドクター・ストレンジは登場しており、ビーストの「不思議だな(Strange)」という台詞も彼の名前に引っ掛けたものだと考察できる。

ケーブルの解説では、バスチオンはマスターモールドの系譜となるアンドロイドの類だとされる。未来の反逆者が突き止めたバスチオンの本部に乗り込むかどうかで、サイクロップスとケーブルが親子喧嘩を始めたとき、TVでは奇妙な映像が流れていた。それはバスチオンがシーアー帝国の衛星をハッキングして手に入れた映像であり、プロフェッサーXの生存を裏付けるものだった。

プロフェッサーXの生存により、X-MENは厄介な立場に立たされる。それは世間の同情を買うためにX-MENが恩師であるプロフェッサーXの死を偽装したのではないかという考察が広まることだった。国連すらその考察を抱く中、ガイリックの遺体が発見された。当然、ガイリックの邸宅を襲撃したローグに疑惑が集まる。これはバスチオンによる宣戦布告だと考察できる。

親子の関係性

その頃、ロベルトの母親の邸宅で朝食を食べていたロベルトとジュビリー。X-MENを批判し、ミュータントを卑下する拝金主義者のロベルトの母親とジュビリーは舌戦を繰り広げていた。事なかれ主義者のロベルトも、ミュータントやX-MENを腐ったリンゴと評する母親に怒りをあらわにして、ジュビリーと共に席を外すのだった。

一方、恵まれし子らの学園ではローグの治療が続けられていた。ローグはガイリックの異常なミュータントへの憎悪を精神に浴びてから、テレパスのジーン・グレイの治療を必要としていた。その治療を見守るナイトクローラーは、マデリン・プライヤーとの思い出を語った。孤独を感じていたマデリンをジーン・グレイは救えたと返す。何故ならば2人は同じ記憶を共有していたからだ。

息子を生んだ記憶がすべて嘘だったということに打ちひしがれるジーン・グレイだったが、ナイトクローラーは大事なのはそのときに抱いた感情だと話す。ナイトクローラーはローグの養母であるミスティークの子供であり、ミスティークに捨てられた経験を持つ。それでも、ナイトクローラーはつらい過去を水に流し、ローグを家族として受け入れた。ナイトクローラーは家族とは選択肢だと語る。

裏切り者の正体

反ミュータント主義者の群衆が恵まれし子らの学園に迫っているとき、X-MENのジーン・グレイ、サイクロップス、そしてケーブルは専用機ブラックバードでバスチオンのところに向っていた。バスチオンの研究室ではミスター・シニスターが研究をしている。そこに現われたのは死んだと思われていた国家安全保障担当大統領補佐官のヴァレリー・クーパー博士だった。ジェノーシャに潜伏している内通者はヴァレリー・クーパー博士だったのだ。

監禁されているマグニートーに懺悔するヴァレリー・クーパー博士だが、世界は既に反ミュータントの流れへと動いている。自分を罵ってくれと自虐的な贖罪を求めるヴァレリー・クーパー博士だったが、マグニートーは沈黙を貫き通した。その腕にはユダヤ人収容所での番号が残されており、現在の『X-MEN‘97』の世界情勢を如実に表した演出だと考察できる。

ミュータントのセバスチャン

ビーストはプライム・センチネルとなったトラスクの解析を続けていた。プライム・センチネルの人数を探るために3人のX-MENは出動したのだ。古びた住宅街に辿り着いた3人は、そこがセンチネルの施設ではなく、バスチオンが幼少期を過ごした家であることを知る。そこには老婆が1人で暮らしており、X-MENを老人ホームの人間だと勘違いしていた。

ジーン・グレイがバスチオンことセバスチャン・ギルベルティの部屋で、彼の幼少期を読み取る。バスチオンは元々ミュータントであり、機械の声を聴くミュータント能力があった。そこに未来から来たセンチネルの進化した姿であるニムロッドが現われ、彼は感染する。そして変異を繰り返した末に生まれたのがミュータントとセンチネルの要素を兼ね備えるバスチオンだったのだ。

秘密の国際会議

バスチオンが開く秘密裏の国際会議にはファンタスティック・フォーの宿敵にして小国ラトベリアの専制君主であるドクター・ドゥームも参加していた。バスチオンはガイリックのプロフェッサーXの暗殺を否定し、暗殺はプロフェッサーXを殉教者にしただけだと語る。

そして続けて、一度ジェノーシャにミュータントを集め、ミュータントが人類では支えきれない負荷だと思わせることが重要だと語る。仕上げができたらジェノーシャを解体することで、ミュータント難民の受け入れを拒否させ、人種間戦争を引き起こすという計画をバスチオンは話した。

そのためにロバート・ケリー大統領とX-MENの関係性を断つように進言したのは、ドイツの政財界に力を持つ名家の当主であり、キャプテン・アメリカの長年の宿敵であるバロン・ジモだった。既に手を打ってあるとバスチオンは返す。バスチオンの計画には複数の国際規模のヴィランが参加していたのだ。

オペレーション:ゼロ・トレランス

バスチオンの計画は、インターネットにいるような誰でもない、顔を持たない差別主義者の心をくすぐることから始まる。そして志願者を集め、彼らをテクノ・オーガニック・ウイルスでプライム・センチネルへと改造していくのだ。そうすれば、どこにでも生体兵器を送り込める。これは現在のアメリカの現状を憂いた演出だと考察でき、インターネットの掲示板にいるような無自覚な差別主義者の声が集まって大きくなり、暴動を引き起こす様子を比喩していると考えられる。

バスチオンはどこにでもいる差別主義者を集めるために、様々な言葉を使ったというが、その内容はどれも移民に仕事を奪われるといった文脈で使われるものと同じだった。そのことからも、この展開がまったくのフィクションではないことがうかがいしれる。

バスチオンの生家にいたX-MENたちは彼が16歳の頃に描いた絵を見せられる。それはセンチネルによってミュータントが焼き払われるものであり、タイトルは「最後の夢」だった。そのとき、バスチオンの母親が異常な行動を取り始める。何とバスチオンは自分の母親もプライム・センチネルに改造していたのだ。

迫るプライム・センチネル

買い物をしていたジュビリーとロベルトは、ロベルトの母親について話していた。ロベルトにとって、どんなに差別主義者であっても母親は母親だ。彼女には時間が必要だという考えを示す。そのとき、執事が不審な行動を取る。執事も既にプライム・センチネルへと改造されていたのだった。

ビーストはセレブロで異常な数のプライム・センチネルを検出する。何とビーストが心を許していたレポーターの女性もプライム・センチネルだった。バスチオンは無自覚な差別主義者たちの多くをプライム・センチネルへと改造していた。彼らは、未来はミュータントにあり、未来がないと言われ続けてきた人類の気持ちがわかるかと語る。

眠ったままのローグのもとに現われたプライム・センチネルの魔の手から、ヒーリングファクターのウルヴァリンとテレポーターのナイトローグが救う。だが、その数は膨大過ぎた。その頃、ジュビリーはミュータント能力が覚醒したロベルトによって窮地を脱する。

プロフェッサーXの帰還

ブラックバードは撃墜されるが、内蔵されていたスポーツカーで3人のX-MENは脱出する。ケーブル、サイクロップス、ジーン・グレイの3人の協力はX-MENではなく、家族そのものだった。しかし、家族に裏切られる者もいる。何とか逃げてきたロベルトはパーティー会場の母親に助けを乞うが、世間体を気にした母親は息子の言葉よりもプライム・センチネルの言葉を信じ、身柄を引き渡すのだった。

火の海となった恵まれし子らの学園にバスチオンが高級車で乗り付ける。その様子に笑みをこぼすバスチオンだったが、ミスター・シニスターの連絡で不機嫌な顔へと戻る。それは良心の呵責に耐えかねたヴァレリー・クーパー博士がマグニートーを逃がしたという報告だった。ヴァレリー・クーパー博士は「人間は同じことを繰り返す」と言い、マグニートーは正しかったと言い切るのだった。

寛容は死んだと考えたマグニートーは地球の磁場を操り始める。それにより世界中が停電し、その影響は世界中のヒーローやヴィランに波及した。ニューヨークのスパイダーマン、日本のシルバーサムライ、そしてロシアで監禁されているオメガレッド。マグニートーの磁場によりすべての電力が落ちる。

それはマグニートーから人類への宣戦布告だった。そのとき、隕石のような物体が恵まれし子らの学園に降ってくる。隕石の正体は宇宙船であり、中に乗っていたのはプロフェッサーXだった。そして、彼は言う。「来たれ、我がX-MEN」と。

第8話の感想と最終章三部作の第2章となる第9話

最終章三部作の幕開けとなったアニメ『X-MEN』第8話「寛容は絶滅 第1部」。親子関係の意味とその破綻や、世界中のヒーローやヴィランを巻き込んだ物語へとなった第8話「寛容は絶滅 第1部」では、マグニートーは再び人類と敵対する道を選び、帰還したプロフェッサーXによって散らばっていたX-MENは再集結する。

意識の奥底にある差別意識がプライム・センチネルとして覚醒するという形で、現実の社会問題を表現しているのは見事だ。最終章三部作の幕開けである。第8話「寛容は絶滅 第1部」から、第2部にあたる第9話で人類とミュータントの関係性はどうなるのだろうか。注目していきたい。

アニメ『X-MEN‘97』第8話「寛容は絶滅 第1部」は2024年5月1日(水)よりDisney+より配信開始。

『X-MEN’97』配信ページ

『X-MEN’97』の情報解禁はこちらから。

『X-MEN’97』で登場するX-MENのメンバーはこちらから。

『X-MEN’97』第1話「来たれ、我がX-MEN」のネタバレ感想と考察はこちらから。

『X-MEN’97』第9話「寛容は絶滅 第2部」のネタバレ感想と考察はこちらから。

『ファンタスティック・フォー』に関する発表はこちらの記事で。

『デッドプール&ウルヴァリン』と旧「X-MEN」シリーズの繋がりについての考察はこちらから。

MCU最新タイムラインの解説&考察はこちらの記事で。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
お問い合わせ

関連記事

  1. ネタバレ解説『ホワット・イフ…?』第2話 〇〇の登場で確定したMCUの新セオリーとは

  2. 最終回2期第8話ネタバレ感想!『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd-覚醒前夜-』あらすじ・解説

  3. ミッシングリンク発売記念『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』第57話「スカイファイアーの再生」配信

  4. 2期第2話ネタバレ感想!『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd-覚醒前夜-』あらすじ・解説