『ブラック・ウィドウ』から『ホワット・イフ…?』へ——ナターシャが遺したメッセージとは【ネタバレあり】 | VG+ (バゴプラ)

『ブラック・ウィドウ』から『ホワット・イフ…?』へ——ナターシャが遺したメッセージとは【ネタバレあり】

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『ブラック・ウィドウ』見放題スタート

2021年7月に公開された映画『ブラック・ウィドウ』は、10月6日(水)よりDisney+での見放題配信がスタートした。『ブラック・ウィドウ』はMCU映画としては『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) 以来約2年ぶりに公開された作品であり、ドラマ配信が続いていたMCUフェーズ4では初の映画作品。約10年にわたってMCUを支えてきたブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの知られざる戦いが描かれる。

作品のレビューはこちらから、ポストクレジットの解説はこちらで読むことができる。今回注目したいのは、『ブラック・ウィドウ』の見放題配信スタートと同日に最終話の第9話が配信されたアニメ『ホワット・イフ…?』とのリンクだ。「もしも」のストーリーを描く同作でも、ナターシャ・ロマノフはやはりストレートなメッセージを届けてくれていた。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ブラック・ウィドウ』およびアニメ『ホワット・イフ…?』最終話第9話の内容に関するネタバレを含みます。

『ブラック・ウィドウ』で描かれた物語

MCU本編におけるナターシャ・ロマノフは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で世界を救うために自らの命を捧げた。時には男性キャラクターをケアする役割を、時には性的な対象としての役割を担わされてきたナターシャの最後は悲劇的な幕切れだった。

MCUフェーズ4ではそうした過去を清算するように、白人男性以外のキャラクターに焦点が当てられ、ナターシャ・ロマノフにも初めての単独映画の機会が巡ってきた。映画『ブラック・ウィドウ』はMCU映画24作品目にして初めての女性単独主人公&女性単独監督の作品となった。

『ブラック・ウィドウ』で語られたことは、『エンドゲーム』におけるナターシャの行動の理由、そして、女性を一方的に消費する社会に対する批判だった。人身売買によって少女たちを消耗品のように扱う悪党を批判的に描きながら、女性が消費される一方だったスパイ映画の定石を塗り替えることで、ブラック・ウィドウは改めてアベンジャーとしての、一人の主人公としての主体性を取り戻していった。

『ホワット・イフ…?』のナターシャ

一方、フェーズ3までの「もしも」の物語を描く『ホワット・イフ…?』でナターシャが登場したのは第3話第8話、そして最終回の第9話。第3話ではやはり死んでしまうナターシャだったが、第8話では、ナターシャが死ぬ本編の世界線に対し、ナターシャだけが生き残る世界線が描かれた。更に第9話では、ペギー・カーターの相棒として登場し、フェーズ3では描かれなかったナターシャのシスターフッドが描かれた。

『ホワット・イフ…?』においては、ナターシャは命を捧げるのではなく、生き残ることで多元宇宙を救う。しかし、それぞれのヒーローが自分の戻っていく中、ナターシャには帰る場所が残されていない。そこでナターシャは、これまで傍観を決め込んでいたウォッチャーに対してこう批判するのだ。

あなたにとって私たちはただの物語。現実じゃない。私たちが戦い、勝ち、負けるのを見てるだけ。ウルトロンが私の仲間を殺して世界が破壊されてる時、ポップコーンでも作ってた?

『ホワット・イフ…?』におけるウォッチャーは、ヒーローたちを応援しながらMCU作品を楽しんでいる視聴者、つまり私たちの反映でもある。物語を消費することは悪いことではない。ただ、物語を物語としてのみ捉え、物語から学んだことを現実社会で実践として反映できなければ、本当の意味でその作品のメッセージを受け取った/影響を受けたとは言えない。

そして、ヒーローたちと私たちの関係は一方通行では終わらない。なぜならSFの物語の多くは現実社会の状況を反映したものであり、現実が変わらないならば、『ブラック・ウィドウ』で描かれた哀しい物語も変わり得ないからだ。現実において女性が抑圧にさらされ続けるならば、世界はブラック・ウィドウを必要とし続ける。少女たちが暴力にさらされ、搾取され続けるならば、『ブラック・ウィドウ』は何度でも作り直され続けるだろう。

故に、『ホワット・イフ…?』における「あなたにとって私たちはただの物語。現実じゃない。私たちが戦い、勝ち、負けるのを見てるだけ」というナターシャの言葉は、『ブラック・ウィドウ』を観た私たちの心に強く響く。

指摘を受けたウォッチャーことウアトゥは思わずヒーローたちの物語が「私の全て」と本音を吐露し、遂に世界を救うためではなく、ナターシャに報いるために現実を改変する。別のナターシャが暗殺された第3話の世界に、このナターシャを連れていくのだ。そしてこのナターシャは罪の意識によってではなく、必要とされて世界を助ける。

『ブラック・ウィドウ』が劇場公開と同時に配信され、俳優の報酬が大幅に減少した件を巡り、ナターシャを演じたスカーレット・ヨハンソンは配給を手がけるウォルト・ディズニー社を提訴していたが、見放題配信直前の9月30日に和解が発表された。スカーレット・ヨハンソンは今後もディズニー社と仕事をしていきたいと語っている。マルチバースの扉が開かれたMCUでは、いつか再びナターシャの姿が見られるかもしれない。

その時には、世界の不幸を背負わないナターシャの姿が見られますように。

映画『ブラック・ウィドウ』とアニメ『ホワット・イフ…?』シーズン1はDisney+で独占配信中。

Disney+

『ブラック・ウィドウ』で流れた音楽は全曲こちらで解説している。

『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンについての詳細な解説はこちらの記事で。

ポストクレジットシーンと、その前のラストシーンも含む『ブラック・ウィドウ』における時系列の解説はこちらから。

『ホワット・イフ…?』最終話第9話のネタバレ解説はこちらから。

『ホワット・イフ…?』シーズン1の幻のガモーラ回についてはこちらから。

製作陣がシーズン1でのウルトロン起用とサノスの扱いについて語った内容はこちらから。

『ホワット・イフ』シーズン1最終話までの全話あらすじ&分岐イベントのまとめはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。 お問い合わせはコチラから
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