『ホワット・イフ…?』シーズン1全話配信
MCU初のアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』は2021年8月に配信を開始し、シーズン1では全9話が配信された。その中でもシーズン1のメインヴィランとして注目を集めたのは、映画『えアベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) でMCU初登場を果たしたウルトロンだ。
初登場以降、シーズン3では出番がなく、6年ぶりのMCU再登場となったウルトロン。製作陣はどのような思いを込めてこの大ヴィランを『ホワット・イフ…?』に送り出したのだろうか。
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』シーズン1第8話以降の内容に関するネタバレを含みます。
メインヴィランになったウルトロン
フェーズ3までの映画作品を対象に「もしも」の物語を描いた『ホワット・イフ…?』シーズン1は、各話がバラバラに進行しているように見えたが、最後にはマルチバースが交わる意外な展開を見せた。その事象の中心にいたのがウルトロンだ。
『エイジ・オブ・ウルトロン』のストーリーラインの上で、ウルトロンは本編で失敗した人工ボディへの意識のアップロードに成功する。この分岐イベントの結果としてアベンジャーズに勝利したウルトロンは、突如現れたサノスをも撃破し、全てのインフィニティ・ストーンを揃えてしまう。結果、ウルトロンはマルチバース間を移動し宇宙全体の事象に干渉できる“コズミック・ビーイング”となった。MCU史上最強のヴィランの誕生だ。
ウルトロンが異例の“厚遇”となったことで、MCUファンの間では本編における“ウルトロン生存説”が再燃することにもなった(生存説の詳細はこちらの記事で)。MCU初のアニメシリーズでウルトロンをメインヴィランとして起用し、マルチバースの扉を開かせることにはどのような意味があったのだろうか。
ウルトロン起用の真意を語る
『ホワット・イフ…?』でメインライターを務めた脚本家のA.C.ブラッドリーは、米ScreenRantにウルトロン起用の裏側を語っている。
原作コミックのファンであれば、ウルトロンがいかに絶望的な存在であるかを知っているはずです。映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は素晴らしい作品ですが、たった一本の映画であり、このクラシックなヴィランに十分な時間が与えられていないと私は感じたんです(笑) 映画の中では限られた時間しか使うことができませんからね。
本作はウルトロンの力を示すチャンスでした。また、フェーズ4に突入した今、私たちはインフィニティ・ストーンを気軽に使えますし、マルチバースの存在も認められています。もしウルトロンがインフィニティ・ガントレットを手に入れたらどうなる? どれほど事態は悪くなるのか? 簡単に壊滅状態に陥りますよ!
A.C.ブラッドリーは、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』だけではウルトロンという人気ヴィランの活躍の場としては不十分だと考えていたのだ。
確かに、『アベンジャーズ』(2012) のメインヴィランだったロキも、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) と『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) のメインヴィランだったサノスも、共にMCUの複数作品に登場していた。ロキは一度死んだにもかかわらず、主人公に据えられたドラマシリーズまで製作されている。サノスは登場までに複数の作品で伏線が張られおり、フェーズ4になっても“指パッチン”の影響を世界に色濃く残している。
そう考えれば、ウルトロンは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の一作だけで登場から退場が完結してしまった稀有な存在だ。コミック版では人気ヴィランだったウルトロンの真の力をMCUで見せることが、『ホワット・イフ…?』シーズン1におけるヴィラン起用の狙いだったようだ。
サノスは「絶対」ではない
『ホワット・イフ…?』では、サノスの扱いについても注目が集まっている。第2話でティ・チャラの力によって更生したサノスが登場したことは、MCUにおけるどのようなキャラクターであってもヴィランにもヒーローにもなり得るというセオリーを示した。
一方で、第8話ではウルトロンには瞬殺されてしまい、第9話でも“ゾンビの親玉”としてワンダが紹介されるなど、シリーズ内での存在感は薄かった。
『ホワット・イフ…?』におけるサノスの扱いについては、本作の監督を務めたブライアン・アンドリューズが語っている。「かわいそうなサノス。彼がマルチバースで活躍できることはあるのでしょうか?」というScreenRantのインタビュアーの質問に以下のように答えた。
サノスは存在そのものがすごいヤツですけどね。何よりも「可能性は無限大」だと覚えておくことが大切だと思います。サノスがうまく立ち回れず、私たちが知っているほどはワルになっていないユニバースもあるでしょう。あるいは、ギリギリのところで(アベンジャーズに)敗れたユニバースもあるかもしれません。ソーが頭を狙ったユニバースもあるはずです。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』でソーが“ひとこと言ってやる”ために頭への攻撃を行わず、サノスが指パッチンを成功させた例を挙げている。MCU世界には様々な可能性があり、サノスは「絶対」ではないということだ。
一方で、『ホワット・イフ…?』ラスト2話におけるサノスの扱いについては、以下のように語っている。
サノスがインフィニティ・ウルトロンに会うためにあのゲートから出てきて、ウルトロンを破壊したユニバースは何百個もあるでしょう。(『ホワット・イフ…?』シーズン1の物語は、)ある特定のストーリーが特定の方法で展開された結果、特定の物事が完遂されたということでしかありません。あの(第8話の)サノスの場合は、少しおごりがあったのではないでしょうか。事前の確認を怠り、準備不足でもあった。しかし、あれは例外的で特殊な状況であり、唯一無二の展開だとは思いません。
今回『ホワット・イフ…?』シーズン1でウルトロンがメインヴィランになり、サノスを瞬殺した例は、あくまでサノスが油断した特殊な例だったという。ウルトロンが実現したMCUのマルチバース合流は、アベンジャーズの敗北に加えて、“サノスが油断する”というレアな分岐イベントが重なった結果として起きたことだったのだ。
逆に言えば、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で退場してしまった本編におけるウルトロンは、『ホワット・イフ…?』世界のサノスのように、うまく作戦を実行できなかった一つの例に過ぎないということだろう。
どんなヴィランであっても成功することも失敗することもある。ドラマ『ロキ』でも示されたように、運命は定まっておらず、「可能性は無限大」であることを『ホワット・イフ…?』は改めて示したのだ。
今回の製作陣の話では、『ホワット・イフ…?』シーズン1におけるウルトロンの活躍は、あくまで『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で足りなかったものを埋めたということのようだ。“ウルトロン生存説”は微妙になってきたが、『ホワット・イフ…?』シーズン2でも様々なキャラクターの無限の可能性が描かれることを楽しみにして、配信を待とう。
アニメ『ホワット・イフ…?』シーズン1は全9話がDisney+で独占配信中。
Source
ScreenRant
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