ネタバレ解説 『アーヤと魔女』 続編はある? ラストの意味を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説 『アーヤと魔女』 続編はある? ラストの意味を考察

©2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

宮崎親子のタッグで描かれる『アーヤと魔女』

愛知県のジブリパークに新エリア「魔女の谷」が開園することを記念して、金曜ロードショーで2週連続ジブリ作品が放映されることになった。そこでは魔女をテーマにしたジブリ作品を放映するということで、その第1弾として『アーヤと魔女』(2021)が2024年3月15日に放映される。

『アーヤと魔女』は企画が宮崎駿、監督が息子の宮崎吾郎という親子タッグで描かれるスタジオジブリ初の3DCG作品である。原作は『ハウルの動く城』(2004)のダイアナ・ウィン・ジョーンズ。『アーヤと魔女』は当初はNHK総合でテレビ放映され、そこに新しいカットを加えて劇場公開された。

1990年代のイギリスを舞台に孤児院育ちのアーヤ・ツールが、アーヤを引き取った意地悪な魔女のベラ・ヤーガに一泡吹かせるために奮闘する物語を描いた『アーヤと魔女』。本記事ではそのような『アーヤと魔女』のラストについて解説と考察をしていこう。なお、本記事は『アーヤと魔女』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『アーヤと魔女』の内容に関するネタバレを含みます。

賢く強かな子どもを描いた『アーヤと魔女』

人を操るアーヤ・ツール

仲間の12人の魔女から逃げるアーヤの母親は、バイクで追手の車から逃げ、「ミミズの魔法」でその車を追い払った。そして、娘のアヤツルを孤児院の前に置き、アヤツルを孤児院の園長たちに託すのだった。

孤児院の園長はアヤツルという名前が「操る」という言葉を想起させることから、アーヤ・ツールという名前に変えて彼女を引き取るのだった。それから10年後、アーヤは孤児院でいたずらっ子として元気に育っていった。アーヤは名前の通り、人を操ることに長けており、賢さと強かさを持った子どもになっていた。

人形のように子どもを品定めするのを嫌い、アーヤは孤児院で誰かに引き取られるのを嫌っていた。そこに訪れたのが魔女のベラ・ヤーガと小説家のマンドレークだった。マンドレークの異様な雰囲気から引き取られることを嫌がるアーヤだが、無情にもアーヤは魔女の助手としてベラに引き取られることになった。しかし、そこは賢く強かなアーヤだ。アーヤは魔女の助手になることと引き換えにベラに魔法を教えるように取引を持ち掛ける。

あらゆる魔法から身を護る魔法

雑用ばかりで魔法を教えてくれる気配のないベラにアーヤは業を煮やしはじめる。ベラは何かにつけてアーヤにミミズを食べさせると脅す。賢く強かなアーヤはベラに一泡吹かせようとする。そこに黒猫でベラの使い魔でもあるトーマスはミミズの魔法の恐ろしさを解説し、ベラの魔法のレシピの中から「あらゆる魔法から身を護る魔法」を使うように助言する。

ドブネズミの骨の粉にイモリの目玉、薄切りにしたアマガエル、猫の尻尾の毛を三本温めてベラドンナのエキスを三滴垂らすなど、アーヤは材料を集める。そうして、アーヤはベラの寝ている間に「あらゆる魔法から身を護る魔法」の準備をしはじめた。アーヤは作った魔法の液体を一滴残らず自分とトーマスの体に塗りたくり、その晩は疲れてそのまま眠ってしまった。

三本目の手を生やす魔法

こき使われ続けたアーヤは堪忍袋の緒が切れ、ベラに「おばさんはずるい! 園長先生には私のお母さんになりたいと言ったくせに!」と反発するが、ベラはミミズの魔法ではなく、アーヤの頭を叩いた。これまで、大人をうまく操ってきたアーヤにとって大人に頭を叩かれるのは初めての体験だった。

その日の食事ではマンドレークが使い魔のデーモンに頼み、孤児院のシェパーズパイを用意させていた。マンドレークはアーヤにおやつを持ってくるなど、彼女に対して特別な感情を抱いているように見受けられる。だが、アーヤが昔から持っていたカセットテープに録音されていたロックバンド「EARWIG」を聴くと途端に不機嫌になっていた。

ベラに三本目の手を生やす魔法をかけるべく、悪戦苦闘をしていたアーヤはベラの帽子のから魔法の最後の材料であるベラの髪の毛を手に入れた。そして、マンドレークを怒らせた後、ベラの額に三本目の手を生やすのだった。そこでアーヤはベラに雑用だけではなく、自分に魔法を教えるように反抗する

EARWIG

ベラは怒り、ミミズの魔法をアーヤに浴びせるが「あらゆる魔法から身を護る魔法」によってそれは無効化されていた。しかし、このままではアーヤが「あらゆる魔法から身を護る魔法」を使ったことがばれてしまう。そう考えたアーヤは自室の壁に開けた穴から洗面所にミミズを流し込んだが、洗面所とアーヤの部屋の間には魔法で隠されたマンドレークの部屋があった。

部屋にミミズを流し込まれたことで激昂したマンドレークは、悪魔のような容貌でベラを問い詰める。ベラに責任を押し付けてマンドレークの部屋に逃げたアーヤだったが、そこでかつてベラとマンドレークがロックバンド「EARWIG」のメンバーだったことを知る。

ベラは元ドラマーで、マンドレークは元キーボード、そしてアーヤの母親は元ギター兼ボーカルだった。アーヤは赤毛の女性が自分の母親だとは知らなかったが、自分が孤児院に預けられていたときから持っていた「EARWIG」のカセットテープに録音された音楽に惹かれていた。

部屋にロックバンド「EARWIG」時代の写真を飾っていることから、マンドレークはロックバンド「EARWIG」時代を懐かしんでいることが考察できる。それを裏付けるように、マンドレークはアーヤが「EARWIG」の音楽を聴いているのを知ったとき、機嫌を悪くした後、自室にこもってキーボードを弾いている。

ミミズの魔法

それに反して魔女のベラはあまり良い思い出と思っていないとも考察できる。アーヤの母親がロックバンド「EARWIG」から脱退したときに車で追跡している。その車は家の地下室に隠されている上、アーヤの母親から受けたミミズの魔法を今も罰として利用しているほどだ。

アーヤの母親はベラと同じくせ毛で、前述の通り、その髪の毛をミミズに変える魔法を物語冒頭で使っている。おそらく、この車を運転していたのがマンドレークとベラだと考察でき、ベラにとってミミズは友人との別れを意味するものになったとも考察できる。

アーヤの母親はアーヤと同じく賢く強かで、12人の魔女に支配されることを嫌っていた。回想ではそれが顕著にあらわれており、魔女の掟を破ってまでロックバンド「EARWIG」から脱退し、そして自分で生きる道を選んだほどだ。

続編に続く?

アーヤの策謀により、マンドレークを怒らせてしまったベラは彼からアーヤに魔法を教えるようにこってり絞られる。ベラはアーヤに彼女の母親の面影を重ねながら、アーヤを魔女の助手として育てる道を選んだ。そうしてアーヤは孤児院に続き、ベラとマンドレークも操るようになったのだ。アーヤは人を操るというよりも、家族を手に入れたと考察できる。

物語は臆病な孤児院の友人カスタードが、アーヤの母親と共にマンドレークとベラの家に訪ねてくるシーンで終わった。エンドクレジットではアーヤは要望通りカスタードと学校に通えるようになり、ベラとマンドレークと円満な関係を築いていることが示唆されている。また、アーヤが、原作者が同じダイアナ・ウィン・ジョーンズの『ハウルの動く城』を観ているというイースターエッグも仕込まれている。

そうなるときになってくるのが、『アーヤと魔女』に続編はあるのかどうかだ。2024年3月15日時点でスタジオジブリが長編映画の続編を作った例はほとんどない。あっても三鷹のジブリの森美術館で上映される短編作ぐらいだ。

しかし、『アーヤと魔女』は元々がテレビ放映用の映画として制作されたため、続編が制作される可能性は0ではない。『君たちはどういきるか』(2023)のパンフレットでも宮崎駿は『となりのトトロⅡ』に関して僅かながら言及している。そこでは平和な作品をスタジオジブリとして作っていきたいと解説されている。今後のスタジオジブリに注目していきたい。

劇場映画『アーヤと魔女』はDVD、Blu-ray発売中。

『アーヤと魔女』(NHK)

金曜ロードショー

英語版のリリースは2021年を予定している。

『アーヤと魔女』のサウンドトラックは2020年12月31日(木)に配信開始、CDは2021年1月6日(水)から発売中。

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イアナ・ウィン・ジョーンズによる原作『アーヤと魔女』は田中薫子による翻訳で発売中。

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アートブック『ジ・アート・オブ アーヤと魔女』も発売中。

スタジオジブリ
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『魔女の宅急便』ラストの解説&考察はこちらから。

『アーヤと魔女』の日本語版声優と英語版声優はこちらから。

『となりのトトロ』の声優についてはこちらから。

『風の谷のナウシカ』の声優についてはこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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