第2期5話/29話ネタバレ感想『呪術廻戦』最強に成った五条、夏油が選んだ道 「懐玉・玉折」編完結 | VG+ (バゴプラ)

第2期5話/29話ネタバレ感想『呪術廻戦』最強に成った五条、夏油が選んだ道 「懐玉・玉折」編完結

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

アニメ『呪術廻戦』第2期5話放送

芥見下々の人気漫画をアニメ化した『呪術廻戦』。2020年に放送された第1期、2021年に劇場公開された『劇場版 呪術廻戦 0』に続き、ついにMAPPAスタジオ制作による第2期が放送を開始している。

アニメ『呪術廻戦』2期は、全5話の「懐玉・玉折」編と、その後の「渋谷事変」編で構成される。第2期5話/29話「玉折」は、「懐玉・玉折」編の最終回ということになる。夏油と五条の道を分けることになったものとは。今回も各シーンを原作マンガとの違いも含めてネタバレありで解説していく。

なお、以下の内容はアニメ『呪術廻戦』第2期5話/通算第29話のネタバレを含むが、アニメでまだ扱われていない範囲の原作漫画のネタバレは行わない。アニメの方を視聴してから読んでいただきたい。

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ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『呪術廻戦』第2期5話/第29話の内容に関するネタバレを含みます。

アニメ『呪術廻戦』第2期5話/29話「玉折」ネタバレ感想&解説

最強に成った五条と悩める夏油

アニメ『呪術廻戦』第2期5話/29話「玉折」は、2期で初めてオープニング曲から幕をあける。伏黒甚爾を倒してから1年後の2007年8月。五条悟と夏油傑は高専3年生になっている。五条は無下限呪術を“ほぼ”出しっぱにすることで無意識に危険な物体を弾くことができるようになっていた。反転術式も回し続けることでその負荷を補うという永久機関状態に達していた。

五条の言う「掌印」とは術式を発動する時に手を特定の形に結ぶことで、五条はこの掌印の省略もできるようになったという。長距離の瞬間移動まで習得しつつある五条を夏油は「“最強”に成った」と言う。3年になった硝子と五条、夏油は別行動をすることが多くなっていた。

そして、「その夏は忙しかった」という第2期1話冒頭の夏油のセリフが再び語られる。夏油の脳裏には笑顔で握手をする盤星教の信者。夏油は、術師としての仕事を「誰のために?」と意味を問う。第2期1話では五条に「術師は非術師を守るためにある」と説いた夏油は、非術師を守ることに意味があるかどうか、前話のラストでも問うた「意味」に悩んでいる。

シャワーを浴びながら虚な目をする夏油は、「術師としての責任」を自分に言い聞かせる。天内理子が亡くなる第2期3話でも水の表現がキーの演出になったが、第2期5話でもシャワーと雨の音がキーの演出になる。盤星教信者の拍手の音とシャワーの音が重なり、夏油は「猿め」と本音をこぼしてしまうのだった。

九十九由基の哲学

そして、那覇空港に警備に出ていた灰原が登場。夏油にお土産の希望を聞くと、夏油は「悟も食べるかもしれないから甘いのかな」と答える。一緒に入れなくても五条に対する悪感情はなく、むしろ更に仲良くなっている印象だ。

物事を深く考えないタイプの灰原は、呪術師として生きていくことに疑問を感じていない。「人を見る目には自信がある」と言う灰原に、夏油が「私の隣に座っておいてか」と問いかけるのは、後に夏油がゆく道を暗示している。

そして登場したのは、特級術師の九十九由基。第1期20話で東堂が術師になるきっかけになった回想シーンで登場している。特級術師だが独立して行動する九十九は、高専関係者で唯一、天元を呼び捨てにする人物でもある。

九十九は、高専がやっているのは「対症療法」であり、自分がやりたいのは「原因療法」だと話す。対症療法とは、表面上の苦痛などを取り除くことを主眼に置いた治療法で、原因療法とは病気の原因を取り除こうとする療法だ。治療に限らず、例えば、疲れている人にお風呂に入って疲れを癒すよう勧めるのは対症療法で、働き方を変えて疲れないようにすることを勧めるのは原因療法と言える。

九十九曰く、高専がやっているのは現れた呪いを祓い続ける対症療法で、九十九がやりたいのは呪い自体をなくすことだというのだ。呪霊を狩るのではなく、呪霊の生まれない世界を作りたいと話す九十九は、①全人類から呪力をなくす、②全人類に呪力のコントロールを可能にさせる、という二つの原因療法を提案する。

呪霊とは人間の呪力が漏れ出して生まれたものであり、呪力をコントロールできる呪術師から呪霊は生まれない。非術師の呪力を完全になくすか、全員が術師になることで呪いのない世界が作れるというのだ。

伏黒甚爾は、天与呪縛によって呪力が完全に0になったモデルケースだった。全人類が伏黒甚爾のようになれば呪力が漏れ出すこともなく、呪霊も生まれない。だが、九十九は甚爾に研究を断られてしまっていた。なお、アニメ版のこのシーンでは、窓の向こうで甚爾の回想が再生されている。また、九十九が「天与呪縛はサンプルは少ない」と語るシーンでは自動販売機が映し出されているが、原作漫画の方では禪院真希の幼少期の姿が描かれている。呪力を持たない真希の存在が強調されるシーンでもあるのだ。

『呪術廻戦』のテーマ

天与呪縛のサンプルの少なさから、九十九が狙っているのは「②全人類に呪力のコントロールを可能にさせる」。術師は呪力の漏出が非術師に比べて極端に少ないため、全人類が術師になれば呪いは生まれないというのだ。

「非術師を皆殺しにすればいい」という夏油の極端な考えに対し、九十九は「それは“アリ”だ」と答える。ここでバックグラウンドで盤星教の拍手の音が流れ始める。夏油にとってはあの光景が忘れられないのだ。その拍手の音は、シャワーのシーンと同じく雨の音と同化していく。外で雨が降っているのはアニメオリジナルの演出だ。

非術師を間引き続け、術師に適応させることで人類の進化を促す——九十九は理論的には最も簡単な方法だが、自身はそこまでイカれていないという。だが、この発想が夏油の行く道のヒントになったことは確かだ。何が自分の本音か分からないと話す夏油に、九十九はどっちが本音かはこれから選択することだと助言するのだった。

また、九十九は星漿体の天内理子が死んだ後も、何らかの理由で天元は安定しているということを告げる。結果的に天内は”弱者”である盤星教信者のために犠牲になっただけで、その命が世界の命運を左右するわけではなかったということだ。この事実も夏油の決断の背中を押す要因になったのだろう。

後日、灰原と任務についていた七海は、灰原の遺体とともに高専に帰ってきていた。任務の中で灰原を失い、夏油は「術師というマラソンゲーム」に疑問を強めていく。「その果てにあるのが仲間の屍の山だとしたら——」。この疑問は『呪術廻戦』という作品の根幹を担う問いだ。

ドラゴンボールを集める『ドラゴンボール』や、ワンピースを目指す『ONE PIECE』といった少年漫画と違い、『呪術廻戦』には明確なゴールがない。高専に入り、呪術師になっても無限に生まれる呪霊を祓い続けることが生業になるだけだ。「なぜ術師は非術師のために命をかけて呪いを祓い続けるのか」、その疑問を突き詰めようとすると、呪術師と呪詛師の戦いが生じる。非術師を滅ぼすか、非術師を守るか、このゲームには出口が一つしかない。

事件の日付は?

そして、2007年9月19日、夏油が任務に赴いた村の住民112名を皆殺しにする事件が起きる。その報告書には、呪霊によって神隠しや変死が起きている村に夏油が派遣され、呪霊を祓ったが、村人たちは呪力を持つ二人の少女が事件の原因だと考え監禁していた。原作漫画では、方言が伝わらないように村人のセリフは黒塗りされており、括弧書きで敬語のセリフが書かれていた。アニメ版では村人のセリフは敬語に統一されている。

夏油は、非術師を見下す自分を「本音」に選んだ。落ちているのは高章のボタンだ。この事件が9月19日に発生したというのは原作コミックでは示されていないが、アニメ版では報告書から読み取ることができる。民間人を殺して逃亡した夏油は、呪詛師として処刑対象となったのだった。

夏油は自分の両親も手にかけていた。動揺する五条に対し、夜蛾も混乱を隠せない。怒鳴る五条の声は、漫画で想像していたよりも力強い。五条の握り拳からは爪が食い込んで血が溢れ出ている。これもアニメオリジナルの演出だ。

違う道を行く二人

新宿で高専生なのにタバコを咥えている硝子は原作のまま。だが、漫画版では夏油がタバコに火をつけるが、流石にアニメ版ではタバコに火はついていない。硝子は夏油が新宿にいることを五条に伝え、五条と夏油は再会する。

意味を求めていた夏油は、意味さえあれば非術師を殺すというロジックに到達していた。『呪術廻戦 0』でも口にした「大義」という言葉も持ち出す。非術師を全て殺すなんて無理だと五条は言うが、“最強”の五条にはできることを無理だと言うのは傲慢だと夏油は指摘する。「もし私が君になれるなら、馬鹿げた理想も地に足がつく」という言葉も合わせて、夏油の五条へのコンプレックスが見え隠れするシーンでもある。

だが、夏油に「無理だ」と言った五条はただ夏油を引き止めたかっただけではないだろうか。夏油が遠くに行ってしまうのを止めたかったのではないか。五条は掌印を結びかけるが、夏油を殺すことはできなかった。その結果が『呪術廻戦 0』へと続いていくことになる。

五条の言葉に耳を貸さなかった夏油の姿を見て、五条は夜蛾に「俺だけ強くてもダメらしい」とその責務を受け入れることを宣言する。教員になる五条の第一歩である。

旧星の子の家で、もう拍手の音に怯まなくなった夏油は、甚爾のエージェントだった孔を連れ、五条袈裟を着て盤星教の後継団体の舞台に立つ。夏油が五条袈裟を着るようになったのは、盤星教を基盤にするための演出だった。

前回盤星教の代表役員として登場した園田茂を壇上で殺し、力づくで組織を乗っ取った夏油は、「猿は嫌い」が選んだ本音だと吐き捨てる。『呪術廻戦 0』で描かれた通り、夏油はここを基盤に「愚者に死を」「弱者に罰を」「強者に愛を」を掲げる組織を作り上げていくことになる。

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恵のターニングポイント

五条は、甚爾から言われたを迎えにいく。恵にとっては五条は父を殺した相手なのだが、恵は父に興味がない。今は甚爾の再婚相手の娘で恵の義理の姉に当たる津美紀と共に暮らしている。五条が父を殺したと言おうとしたところで話を遮ったため、恵はその事実を知らない。だが、五条は父のことが知りたくなったらいつでも聞くよう告げる。

その上で、恵は禪院家に行きたいかを聞かれ、そうすれば津美紀が幸せになることはないと聞かされて不満そうな顔を浮かべる。五条はあとは任せるように告げるのだが、これはつまり甚爾が3、4年すれば禪院家に売られると言っていた恵が禪院家の手に渡ることを五条が阻止したということだ。その代わり、恵の中学卒業後に五条は教師として恵の面倒を見ることになる。五条の「強くなってよ。僕に置いていかれないくらい」という言葉の背後には、夏油の姿があるようにも思える。

「渋谷事変」編へ

そして、夏油の事件からちょうど11年後の2018年10月19日。虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇を中心とした現在編に戻ることになる。『呪術廻戦 0』での夏油の死から約1年後。かつての硝子、五条、夏油を思わせる三人組を前に五条は笑顔を見せて第2期5話/29話は幕を閉じる。

五条と夏油の決別後に見るエンディングは格別に辛い。雨の中で独り五条を待つ夏油。傘を持って夏油の元に向かう五条。今回は特に雨の音と拍手の音が重ね合わせられた回ということもあって、雨があがって二人が一緒に帰る姿は、起こらなかった理想の結末の比喩とも考えられる。

そして、次回の8月10日は「懐玉・玉折」編および劇場アニメ『呪術廻戦 0』の総集編「閑話前編」が、その翌週の8月17日は第1期の総集編「閑話後編」が放送されることが告知されている。「懐玉・玉折」編の後に何が起きたのか、第2期「渋谷事変」編の前に何があったのか、しっかりおさらいして後半戦を迎えることにしよう。

アニメ『呪術廻戦』第2期は2023年7月6日(木) より、毎週木曜23:56~、MBS/TBS 系列全国28局にて放送中。配信先は公式サイトで。

アニメ『呪術廻戦』公式サイト

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第2期5話/30話のネタバレ感想&解説はこちらから。

第2期4話/28話のネタバレ感想&解説はこちらから。

第2期3話/27話のネタバレ感想&解説はこちらから。

第2期2話/26話のネタバレ感想&解説はこちらから。

第2期1話/25話のネタバレ感想&解説はこちらから。

映画『呪術廻戦 0』ラストのネタバレ解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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