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アニメ『呪術廻戦』第2期第3話放送
芥見下々作の大人気漫画『呪術廻戦』のアニメ版第2期が2023年7月から放送を開始した。2020年に放送された第1期から3年、映画『呪術廻戦 0』(2021) の公開を挟んで遂に登場した第2期。コミックス第8巻途中の「懐玉・玉折」編から幕をあける。
第2期の3話、全体の第27話にあたる今回はどんな展開が待っていたのだろうか。今回もアニメ版の各シーンの感想と、原作漫画になかったオリジナルシーンをネタバレありで解説していく。なお、以下の内容はアニメ『呪術廻戦』第2期3話/通算第27話のネタバレを含むが、アニメでまだ扱われていない範囲の原作漫画のネタバレは行わない。アニメの方を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『呪術廻戦』第2期3話/第27話の内容に関するネタバレを含みます。
アニメ『呪術廻戦』第2期3話/27話「懐玉-参-」ネタバレ感想&解説
アニメ独自の演出
アニメ『呪術廻戦』第2期の「懐玉・玉折」編は、8月3日(木) 放送の第5話/29話までの全5回で構成される。第3話/27話の「懐玉-参-」は、ちょうど「懐玉・玉折」編の折り返しにあたるエピソードだ。前回、懸賞金を狙う呪詛師から天内理子を守り抜いた五条悟だったが、最後に黒井が捕えられて幕を閉じた。
第3話/27話の冒頭は水の中の天内理子の姿から始まる。本話で登場する水族館をイメージしたものだ。夏油の油断によって黒井を人質に取られた一行。「ミスってほどのミスでもねーだろ」と夏油を庇う五条は天内を高専に連れて行き、取引には影武者を連れていくことで危険を回避しようとするが、天内は自らも取引に行くと言い張る。両親を失った天内理子にとって、黒井は唯一の家族だ。
開けた場所での会話になっていた原作漫画と違い、アニメではこのシーンは前回の戦いの後の廃墟での会話となっている。天内の前の扉が檻のようになっており、檻に囚われた天内とその檻を開く五条という演出がなされている。
黒井以外の周囲の人を失ってきた天内は、また同じ経験をしてしまうことを恐れ、心を閉ざしているのだろう。これに対し、五条は「ビビって帰りたくなってもシカトするからな」と覚悟を求める言葉と眼差しを向ける。天内に必要だったのは優しい言葉ではなく、大事な人のために覚悟を求める言葉だったのだろう。
沖縄へ
しかし、ここで漫画と同じく一気に沖縄のリゾートムードに突入。捕えられた黒井は沖縄に連れてこられ、一行はあっさり黒井を救出して沖縄で時間を過ごしているのだ。なお、五条が着ているパーカーと夏油のアロハシャツは2023年10月に発売される予定で、プレミアムバンダイで予約を受け付けている。
アニメでは、漫画で描かれなかった黒井救出時の様子が描かれている。五条は片足だけで敵を制圧しており、いかに楽なミッションだったかということが示されている。また、天内がやはり現場まで同行していたことも描かれている。
移動時の飛行機では、五条悟が機内の乗客に文字通り“睨み”を利かせ、夏油は呪霊の竜を飛ばしていたことも明かされていいる。機内では夏油は文庫サイズの本を読んでいる。ジャンプコミックスかもしれない。漫画にも出てきた「旅のしおり」は、アニメでは手書きになっており、天内の絵が入っている。天内が描いたのだろうか。楽しそうだ。
ナナミン登場、灰原の声は?
那覇空港に張っているのは高専1年の七海建人と灰原雄。ナナミンこと七海はもちろん津田健次郎が声優を務めている。本エピソードではちょい役であり、贅沢な使い方だ。1年生なのに声が渋カッコよすぎる……。灰原の声は『ブラッククローバー』(2017-2021) の主人公アスタ役などで知られる梶原岳人が演じている。後に高専で学んだことは「呪術師はクソということ」と言い放つことになるナナミン。「懐玉・玉折」編では七海の過去も描かれることになる。
五条は、帰京を次の朝に帰ることを決める。フライト中に賞金期限が切れることを狙うのだ。だが、五条は術式を二日間解かず、この日も寝ずに天内を守るつもりだった。この会話の中で、漫画ではなかった天内と黒井が一緒に遊んでいるシーンも描かれている。そうされることでより本エピソードのラストが辛くなるのだが……。
五条は心配する夏油をよそに「心配ねーよ」と強がりを見せる。“最強”ゆえに自分で全ての責務を背負おうとすることによって、五条には隙が生まれることになる。だが、この時の五条は、「それに、お前もいる」と夏油を頼ることを忘れなかった。“一人の最強”だけでは世界を守ることはできないのだ。
ここからのシーンは、天内が、黒井、五条、夏油と共に青春を謳歌する時間。カヤックにソーキそば、あじさい園など、普通の高校生が修学旅行で味わうような経験を重ねていく。カヤックのシーンも、水族館のシーンも、水の表現が素晴らしい。天内は水族館の「黒潮の海」のコーナーで、自由に泳ぐ魚たちを見る。呪霊も呪術も関係のない世界。アニメ版では美しいピアノの音色と魚たちの動きによって、より印象的な場面となっている。
一行は高専に帰還。五条は夏油の「本当にお疲れ」という言葉を受けて術式を解いて一息ついてしまう。この一言が夏油からの言葉だったから、気を抜いてしまったのかもしれない。気を抜いた瞬間、五条は伏黒甚爾に腹部を貫かれる。コミックス第8巻のラストで、第2期3話/27話の前半が終わる。
天与呪縛のフィジカルギフテッド
第2期3話/27話の後半からは第9巻の内容に。甚爾が「面白半分で」子どもの頃の五条悟を見に行った時の回想シーンだ。漫画では詳しく描かれていなかったが、雪が積もる冬に見に行ったことが明かされている。この時、甚爾は幼い五条に背後にいることを気取られた。気取る(けどる)とは、気配を察知するという意味。背後から近づいても「眼のいい」五条には気づかれてしまう。だから、甚爾は刺客を仕向け、移動させ、気を張り詰めさせ、偽の目標を達成させて五条気を抜く瞬間を待っていたのだ。
甚爾は、“天与呪縛”によって並外れた身体能力を持つが、呪力を全く持っていない。天与呪縛とは、ずば抜けた能力を得る代わりに何らかの制約を抱えて生まれてくること。名門の禅院家に生まれた甚爾にとって、呪力が全くないことはハンデだったはずだ。だが、甚爾はそれを逆に利用しており、呪力が全くないことで呪術師に気取られず、一般人と同じように結界の中に入ることもできる。
そして、甚爾が与えられた能力は“フィジカルギフテッド”と呼ばれる身体能力で、アニメでは目に見えないほどの甚爾のスピードがよく表現されている。スーパーサイヤ人並のスピードだ。動きが読めない甚爾に対し、五条悟は術式順転 出力最大「蒼」を発動。映像で見ると五条がいかに高専を破壊しまくっているかがよく分かる。「蒼」は引き寄せる力を強化した無下限呪術。これは負の力の放出であり、前回見せた弾く力の術式反転「赫」は負の力同士を掛け合わせた正の力の放出だ。
大量の蠅頭(ようとう)という呪霊を使い、武器をしまっている呪霊が発する呪力を誤魔化した甚爾に対し、五条は甚爾が天内の方に行ったと思い攻撃をやめてしまう。この瞬間、甚爾は特級呪具の天逆鉾(あまのさかほこ)を使い、五条の首に致命的な一撃を喰らわせる。天逆鉾の力は、術式の強制解除。周囲に無限を作りだす五条は守りにおいても最強だったが、術式を突き破ってくるこの刃を避けることはできない。甚爾は五条が攻撃をやめ、防御の術式のみとなる瞬間を待っていたのだ。
甚爾が五条の身体を徹底的に切りつけるトラウマシーン。初めて五条が負けた姿が映し出されている。
天内の決断、衝撃のラスト
黒井との別れを経て、高専の地下にある薨星宮(こうせいぐう)本殿(天元がいるところ)にたどり着いた天内だったが、ここで夏油は天内に引き返すかどうかを確認する。夏油と五条は事前に、星漿体が同化を拒んだ場合には同化をやめることを決めていた。天元と対峙することになっても、二人は“最強”だから問題ない。夏油はそう言って天内に選択を委ねる。
そして、ここからはアニメのオリジナル演出が入っているシーンで、天内理子の過去の回想は水族館の水の中で、崎山蒼志による第2期第1クールのエンディングテーマ「燈」と共に流される。漫画版でも天内の両親は交通事故で死んだことが示唆されていたが、アニメでも水の底に沈んだ軽自動車が描かれている。
自由に泳ぐ魚、友達、黒井を追い、自分の運命に逆らうことを決めた天内。夏油が「帰ろう」と差し伸べた手に「うん」と答えたところで、甚爾によって銃で頭を撃ち抜かれる。甚爾は五錠を殺したと告げると、夏油は二体の呪霊(一体は飛行機の外で飛んでいた竜)を呼び出し、「そうか」「死ね」と吐き捨てるところで『呪術廻戦』第2期3話/27話は幕を閉じる。
五条悟と天内理子の死。第9巻冒頭の超トラウマ展開を一話にまとめるとんでもない采配。五条の死も天内の死も、映像で見ると漫画よりも何倍も辛い。天内理子は死ななくてもよかったはずの命。そして親友五条の死。夏油が抱いた怒りの大きさは想像に難くない。次回はいよいよ甚爾vs夏油。どんな決着が待っているのか、次週も楽しみに待とう。
アニメ『呪術廻戦』第2期は2023年7月6日(木) より、毎週木曜23:56~、MBS/TBS 系列全国28局にて放送中。配信先は公式サイトで。
『呪術廻戦』コミックス最新刊第23巻は発売中。
第2期1クール目の原作である第8巻と第9巻は発売中。
第2期3話/27話のネタバレ感想&解説はこちらから。
第2期2話/26話のネタバレ感想&解説はこちらから。
第2期1話/25話のネタバレ感想&解説はこちらから。
映画『呪術廻戦 0』ラストのネタバレ解説はこちらの記事で。