ネタバレ解説『バッド・バッチ』シーズン3第1話 囚われのオメガが「スター・ウォーズ」史を変える? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『バッド・バッチ』シーズン3第1話 囚われのオメガが「スター・ウォーズ」史を変える? あらすじ&考察

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『バッド・バッチ』シーズン3開幕

「スター・ウォーズ」シリーズの歴史におけるクローンたちの知られざる戦いを描く『スター・ウォーズ/バッド・バッチ』は、2021年に配信を開始したアニメシリーズ。2023年1月にシーズン2が配信され、2024年2月21日(水)より遂にファイナルシーズンとなるシーズン3の配信を開始した。

『バッド・バッチ』では、帝国成立まもないクローン大戦後の銀河を舞台に、クローンの“不良分隊”であるバッド・バッチが自分たちの信念を貫いて生きていく姿が描かれる。そして、クローンの少女オメガとの出会いを通して、クローン兵撤廃を推進する帝国の思惑も明らかになっていく。

今回は初回3話が一斉配信となった『バッド・バッチ』シーズン3より、第1話をネタバレありで解説していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『スター・ウォーズ/バッド・バッチ』シーズン3第1話の内容に関するネタバレを含みます。

シーズン3第1話「囚人」あらすじ&ネタバレ解説

シーズン3までの『バッド・バッチ』

まず、『バッド・バッチ』シーズン3までの流れをおさらいしておこう。シーズン2では、クローン兵の廃止と人間の徴兵制の導入が決定し、クローントルーパーたちは退役を迫られていた。バッド・バッチメンバーはというと、エコーがクローン兵救出に取り組むレックスと合流。帝国側で働いていたクロスヘアーは、クローンを「使い捨て」と切り捨てた人間の上官を撃って捕まっていた。

一方、ハンター、テク、オメガ、レッカーの4人は日本をモデルにした惑星パブーの復興を手伝いながらそこに定住することを選んだ。しかし、エコーが持ってきたクローンへ兵を乗せた護送船の暗号データの中にクロスヘアーの名前を見つけ、その護送船がドクター・ヘムロック率いる帝国の特殊科学部門の任務についていることを突き止めた。

そして、一行はクロスヘアーを助けるために、ドクター・ヘムロックの船に追跡装置をつけようと、帝国のサミットへ向かった。現地で遭遇したソウ・ゲレラとの衝突もあり、侵入がバレたバッド・バッチは逃走中にテクを失うことに。命からがら逃げ延びたハンターとオメガは戦いを止めることを決めるが、シドの裏切りによってオメガがドクター・ヘムロックに捕えられてしまった。

ハンター、レッカー、エコーはなんとか逃げ延び、オメガ奪還を誓う。一方のオメガはタンティスの秘密基地でクロスヘアーと合流。更にヘムロックの部下エメリーから、自身がオメガと姉妹であることを告げられて『バッド・バッチ』シーズン2は幕を閉じていた。シーズン3ではどんな物語が展開されるのだろうか。

オメガの囚人生活

『バッド・バッチ』シーズン3第1話「囚人」では、そのタイトル通り、囚人となったオメガとクロスヘアーの様子が描かれる。お留守番以外で初めて仲間の元を離れたオメガだが、それでも逞しく生きる姿を見せている。

第1話は、タンティス基地に着陸しようとした帝国兵たちが雷に撃たれて墜落し、森の野獣たちの犠牲になるところから幕を開ける。タンティス基地が自然に守られた難攻不落の要塞であることが示唆されているほか、帝国兵たちが基地の“番犬”に期待する様子も示されている。

囚人となったオメガはディストピアのような生活をおくっている。『マンダロリアン』(2019-) シーズン3で描かれた新共和国や、『キャシアン・アンドー』(2022-) で描かれたナーキーナ・ファイブのように、最近の「スター・ウォーズ」はディストピア的風景を描くのが妙に上手い。

オメガはエメリーのアシスタントとして働かされている一方で、血液のサンプルを取られる。エメリーは「血液サンプルを使うプロジェクトは様々」と言っているが、『マンダロリアン』ではグローグーもその血液を狙われていた。

エメリーはオメガと同じクローンだが、カミーノには送られず、ドクター・ヘムロックの助手をしてきたという。「会えてよかった」と言うオメガに驚くような表情を見せているが、英語では「It’s nice to be not alone.(一人じゃなくてよかった)」と言っており、この言葉はエメリーも一人ではないという受け止め方ができる。オメガの純粋さは他者に影響を与えていくことになる。

M値とは

オメガはナラ・セのもとへ血液サンプルを運ぶが、ナラ・セはこっそりこれを廃棄。『バッド・バッチ』シーズン1のラストで帝国軍に滅ぼされた惑星カミーノの唯一の生き残りであるナラ・セは、彼女なりに研究を遅らせるための抵抗を続けているようだ。

そしてナラ・セは、帝国の実験について語り出す。曰く、帝国は遺伝工学によるM値の増殖を試みているという。「スター・ウォーズ」世界の「M値」とは、「ミディ=クロリアン値」を意味する。この数値が高いほどにフォースの感応力が高いとされており、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999) でアナキンのジェダイとしての可能性を示すために用いられた。

通常、ミディ=クロリアンの数は1細胞に対し2,500体以下だが、アナキンの場合は2万体を超えていた。また、『マンダロリアン』では帝国の残党であるモフ・ギデオンがグローグーを追う理由は、その血液のミディ=クロリアン値の高さであったことも示唆された。なお、最終的にモフ・ギデオンは自分自身のクローンを作り出そうとしていたことが明らかになっている。

『バッド・バッチ』シーズン3第1話では、帝国がフォースの源であるM値を人工的に増殖させようとしていることが明らかになった。オメガの出自を知っているナラ・セがオメガの血液サンプルを廃棄したということは、オメガの血液はM値を増殖させるための鍵となるのだろうか。

また、ナラ・セはこれまでの良い結果が出ていない検査対象はクローンではないとも話している。ジェダイの生き残りが検査されているということもあり得るかも?

誰も見捨てないオメガ

オメガは冒頭で触れられた“番犬”ことハウンドの世話をしている。映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018) やドラマ『キャシアン・アンドー』などで、惑星コレリアにいたハウンドはコレリアン・ハウンドと呼ばれていたので、ここのハウンドはタンティスのタンティシアン・ハウンドといったところだろうか。その一体にオメガは“バッチャー”と名付けて、自分の食事を分けてあげたりしている。

さらにオメガは独房にいるクロスヘアーにこっそり会いに行っていた。脱出の相談を持ちかけるオメガだが、クロスヘアーはそれを突き放す。クロスヘアーは「人を疑いすぎ」という言葉を受けると自分の手を見つめている。クロスヘアーの体調は悪化しているようだ。

夜にオメガが自室で取り出した人形は、レッカーが大事にしているトゥーカ人形のルーラを模したものだろう。トゥーカは「スター・ウォーズ」世界の猫のような生き物で、ドラマ『アソーカ』(2023-) でも登場した惑星ロザルの露ズ・キャットはトゥーカの亜種である。

人形のルーラは、バッド・バッチが惑星カミーノから脱出する時にオメガがレッカーのために救出してあげていた思い出の物だ。壁の傷を見ると、オメガがここに来て21日が経過したようだが、オメガはバッド・バッチの元へ戻れることを信じている。

22日目、オメガのいつものルーティーンはさらにディストピア感が増している。だがこの日のオメガはバッチャーが怪我をしていることを知り、手当てをしてやる。夜にはクロスヘアーに話しかけに行く。どこにいてもオメガは弱い立場に立たされた者に寄り添うのだ。

しかし、クロスヘアーはそんなオメガに「任務をやり遂げろ」と言い、自分ならオメガを置いて逃げると言い放つ。オメガは「私は諦めない」と応戦するが、クロスヘアーが最終的に言いたかったことは、「俺に構うな」ということだった。

クロスヘアーの「俺ならお前を置いていく」という言葉は、「お前は俺を置いて逃げろ」と遠回しに伝えているだけだったのだ。それでもオメガは「ここは誰の居場所でもない」と返し、仲間を見捨てない姿勢を貫くのだった。

“移行”とM値

オメガが荷物検査で人形を没収される一方、ドクター・ヘムロックはナラ・セに実験の結果、“移行”には成功したがその過程でM値が著しく低下したと話している。これは、のちにパルパティーンがクローンとして復活する展開を示唆しているのだろうか。

魂や意識をクローン体に移行できても、クローン体もM値=フォースが強力でなければ復活とは言えない。『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019) で強力な姿で復活したパルパティーンの実験はこの時から進められていたのだろう。それにブレーキをかけていたのがナラ・セだったのだ。

オメガが変える

オメガに慣れたばバッチャーの処分が決定したことを知ると、オメガは警備ドロイドのK-9X1を倒し、バッチャーを逃す。すると、これを見ていたドクター・ヘムロックは、バッチャーは野獣のいる自然では生きていけない、残酷だとオメガを非難。管理社会を善とする帝国らしい発想だ。

オメガはナラ・セの協力に必要な自分自身を人質にするが、ヘムロックは逆にクロスヘアーを人質にする。クロスヘアーが再教育に抵抗していることに触れつつ、オメガが反抗を続けるならクロスヘアーを処分することを示唆するのだった。

しかし、このやり取りに心を動かされたのはエメリーだ。ヘムロックがバッチャーはすぐに死ぬと言い、オメガが「彼女にはチャンスが与えられるべき (She deseves a chance.)」と返した際にエメリーは小さく俯いている。「一人じゃない」「彼女に機会を」……妹であるオメガからこうした言葉を受けて、エメリーは独房のオメガに人形を返してやるのだった。オメガは少しずつ人を変えていく。

そして、外では逃がしてもらい自由になったバッチャーが遠吠えをあげる姿を見せて『バッド・バッチ』シーズン3第1話は幕を閉じる。バッチャーも今後、力になってくれるはずだ。

『バッド・バッチ』シーズン3第1話ネタバレ考察&感想

『バッド・バッチ』シーズン3第1話では、オメガ中心の物語が展開された。やはり、帝国支配による暗黒の時代にあって、オメガのピュアな心は素晴らしい。一方で、オメガの遺伝子にM値を増幅させる鍵があることが示唆されたことも興味深い点である。

帝国側は帝国に疑問を持つクローンが増えてきていることを警戒し、①デス・スターの建設を急いでいる。また、ジェダイの影響を受けているクローン・トルーパーたちをただ退役させて野放しにすることにも危機感を抱いており、②ヘムロックの施設で“再教育”を施していると思われる。

そして、③遺伝子工学によるM値の増幅を狙ったクローン開発。成立直後の帝国は、いずれもクローンと関連するこの三つのプロジェクトを進めている。パルパティーンが共和国時代にクローン・トルーパーを用いた目的は、オーダー66によるジェダイの殲滅だけでなく遺伝子工学面での活用、それもミディ=クロリアン値の増幅というフォースに関する研究にあったのだとすれば、相当な策士である。

私たちはその結末を知っているが、大事なのはそこに至る過程だ。オメガは、そしてバッド・バッチはどうなるのか、引き続き『バッド・バッチ』ファイナル・シーズンを見ていこう。

アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』シーズン3は2024年2月21日(水) よりディズニープラスで配信開始。

『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(Disney+)

『バッド・バッチ』シーズン3第2話の解説はこちらから。

『バッド・バッチ』シーズン2最終話の解説はこちらから。

シーズン1で明かされたクローン兵廃止の理由はこちらから。

 

ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は2024年夏配信開始を予定している。詳しくはこちらから。

映画『マンダロリアン&グローグー』についての情報はこちらの記事で。

2024年公開予定の「スター・ウォーズ」作品についてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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