『バッド・バッチ』で描かれる新たな物語
2021年5月4日(火)より配信を開始したアニメシリーズ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』は、クローンの“不良分隊”であるバッド・バッチことクローン・フォース99を中心に据えた物語。オーダー66によって銀河中のクローン兵が帝国の忠実なしもべになる中、プログラムが作用しなかったバッド・バッチの奮闘を描く。
アニメ『バッド・バッチ』は、クローン戦争終結時に起きていたスター・ウォーズ史の知られざる側面を新たに描き出す作品だ。そして、第1話「余波」では、早速スター・ウォーズ史の大きな流れに新解釈をもたらす描写が登場している。
帝国がクローンを廃止した理由
『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』第1話に登場したのはターキン提督。初代“モフ”であり、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977) からシリーズに登場している大物だ。クローン兵の製造拠点である惑星カミーノを訪れたターキン提督は、ラマ・スー首相と行政補佐官のトーン・ウィーと面会。帝国がクローン兵の利用を中止するという知らせに、ラマ・スーは驚きを隠せない。
ターキン提督は、クローン戦争が終結し、帝国が誕生したことでクローンが不要になったと話す。ラマ・スーは生産継続を明記した契約に反すると主張するが、「今はなき共和国との契約だ」と無茶苦茶な理論でこれをつっぱねる。「帝国の秩序維持にはクローン兵が必要」と食い下がるラマ・スーに対し、ターキン提督は「確かにそうだが、徴兵の実施で費用は半減する」と本音を話すのだった。
これまで、帝国がクローン兵の継続的な製造を廃止してから“ストームトルーパー”を創設し、人間を徴兵して戦力を補っていたことは明らかになっていた。だが、今回ターキン提督の口から明らかになったのは、軍事コストを半減させること、つまり“コスト削減”がその大きな理由だったということだ。
もちろん、クローン廃止の目的はそれだけではなかったはずだ。帝国の建設という目的を達成した今、カミーノへの依存を強化するわけにはいかない。共和国にとってそうであったように、製造拠点であるカミーノは帝国にとっての弱点になり得る。カミーノの裏切りによってオーダー66を“やり返される”リスクもあるだろう。一惑星に依存せず、自前の軍隊を作ることは当然の判断でもある。
一方で、“コスト削減”だけがクローン廃止の目的ではないにせよ、財政上現実的な代替案がなければ帝国はクローン依存から脱却できなかったはずだ。そこで”徴兵”という圧政下においては低コストで済む手段を採用したということだろう。自由意志を尊重しない帝国らしい対策である。
今回、第1話から本編のストーリーとは少し外れたところでスター・ウォーズ史に関する重要な証言を披露してくれた『バッド・バッチ』。全16話の中でどこまで物語を繋ぎ、そして広げてくれるのだろうか。
『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』第1話のネタバレ解説はこちらから。
第2話のネタバレ解説はこちらの記事で。
第3話のネタバレ解説はこちらの記事から。
第1話でターキン提督が投入したバトル・ドロイドに関する考察はこちらの記事で。
『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』はDisney+で独占配信中。
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