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『バッド・バッチ』第3話配信開始
2021年5月4日(火)(スター・ウォーズの日)から配信を開始したアニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』は、アニメ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020) と映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) のその後を描く。帝国が成立していく時代の社会や人々の変容を新たな視点で描き出す試みだ。
5月14日(金) には第3話の配信がスタート。旅に出たバッド・バッチの一行は、次はどんな惑星に降り立ったのだろうか。今回は第3話「エリート分隊」のあらすじとネタバレありの解説をお届けする。
第3話「エリート分隊」あらすじ&ネタバレ解説
バッド・バッチに新たなトラブル
サルーカマイから逃げ出してきたバッド・バッチとオメガ。第2話ではオメガはハンターらと離れることを拒否し、自らバッド・バッチを一緒にいることを選んだ。しかし、シップの中でまともな寝床も食料も与えることができず、ハンターはオメガを心配している。テックはスキャナーを気にしていたが、シップの蓄電器が故障し、ある星に墜落してしまう。
一同はひょんなことからバッド・バッチを裏切ったクロスヘアーの武器キットを目にして、微妙な空気に。テックはクロスヘアーの裏切りについて抑制チップの影響を示唆し、オメガはチップはそのように作られたものだと主張する。カミーノで房に入れられた際も、オメガはクロスヘアーに「あなたのせいじゃない」と優しい言葉をかけている。
帝国初のエリート部隊
その頃、当のクロスヘアーはターキン提督の監視下でプログラム通りに動いているかのチェックを受けていた。そこにやってきたのは、第2話で登場したランパート中将。サルーカマイの街中にホログラムで登場し、チェーンコード推進のスピーチを行なっていた人物だ。ターキン提督の口ぶりからすると、チェーンコード制度はランパート中将が主導しているらしい。
ターキン提督はチェーンコード制度を褒めた上で、「ウォー・マントル計画」の進捗について確認する。ウォー・マントルとは、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) とノベライズ版『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) でその名が登場したプロジェクトである。成立したての帝国だが、様々なプロジェクトを同時進行させていたことが分かる。ウォー・マントル計画の解説はこちらの記事で。
ランパート中将は、クロスヘアーを「強化クローン」と位置付ける一方で、クローンだけには任せられないとして、“帝国初のエリート部隊”となる4人の兵士をターキン提督に紹介する。第3話のタイトル「エリート分隊」の英題は「Replacements」であり、「代用」「後任」という意味である。バッド・バッチはクローンのエリート分隊だったが、帝国は新たなエリート兵を育てようとしているようだ。
ランパート中将はこの4名について「銀河各地から集めた精鋭」と語り、エリートクローンであるクロスヘアーがエリート部隊を訓練することで無敵の軍が生まれるという、人間とクローンによるハイブリッドモデルを目指している。確かに、ターキン提督は徴兵で人間の兵士を集めようとしているため、このやり方であればそれほどコストはかからない。医療科学者のナラ・セは、複雑な心境でこのやり取りを見守る。
バッド・バッチのテックとエコーはシップを修理しようとするが、オルドの夜行性ドラゴンに蓄電器を奪われてしまう。“オルド”とはアドベンチャーブックの『Friends Like These』(2016) に登場したマンダロリアンの星である。レッカーが頭痛に悩まされる中、ハンターはオメガと行動を共に蓄電器を取り戻しに出かける。
エリート分隊に変化
一方、帝国の“エリート分隊”は、給与と住む場所を与えられる帝国兵に志願して入隊したという。共和国時代に割りを食っていた人々だろう。共和国よりも帝国の方がマシだと考えている。ランパート中将の方はというと、クローンではなく志願して入隊した人間の兵士が持つ忠誠心に価値を見出している。そしてターキン提督は第1話と同じく、やはり実地試験をオンダロンでのソウ・ゲレラ部隊掃討作戦に駆り出すのだった。
エリート分隊は指揮官に指名されたクロスヘアーと隊員の間に軋轢が生まれている。クローン兵の時代から人間兵の時代に移り変わる時期の微妙な関係が見て取れる。オンダロンでソウ・ゲレラの一行を襲撃したエリート分隊は逃げ出そうとするシャトルを取り押さえるが、そこにはゲレラの姿はなかった。すると、クロスヘアーは躊躇なく民間人を殺してしまう。
民間人は捕虜にするという“道義”を持ち出す人間のエリート分隊に対し、クロスヘアーは「命令に従わない気か?」と非難する。クローンであるクロスヘアーが指揮官である理由は「すべきことを迷わず遂行できるから」と、“命令が間違っている”という考えを受け入れず、逆らった兵士を殺してしまう。ここまで人の心を持っていたエリート分隊も、任務を遂行。このようにして帝国軍の残忍な性格が形成されていったのだろう。
なお、このシーンではエリート分隊が撃つブラスターから射出されるエネルギー体が赤色になっている。第1話、第2話の銃撃戦では、帝国側のトルーパーも共和国時代と同じ青色のエネルギー体を射出していた(バトルドロイドは赤色)が、装備に何らかの変化があったのかもしれない。もしくはエリート分隊だけの特殊装備なのか。クロスヘアーは第1話ラストの銃撃戦から赤色に変わっている。
ソウ・ゲレラは逃したものの任務を遂行した部隊を見て、ターキン提督はクローン兵をやはり「コスト高な遺物」と結論づけ、この計画を続行するようランパート中将に指示を与える。ターキン提督はランパート中将を高く評価しているが、チェーンコード制度の導入成功がその土台にあることは確かだろう。それにしてもターキン提督はコストを気にしている。帝国がクローン兵を廃止した背景については、こちらの記事に詳しい。
カミーノのラマ・スー首相はナラ・セにクローンの重要性を守るための施作について相談していた。すべてのクローン兵の遺伝子ホストになったジャンゴ・フェットの遺伝子素材は既に劣化しているという。ナラ・セは“優性クローン”の研究を進めるためにはバッド・バッチ変異遺伝子が必要だと話す。カミーノで作られたオメガは、この優性クローンの実験体か何かなのだろうか。
クロスハンターは、帝国のエリート分隊と共にかつてのバッド・バッチの基地に戻る。レッカーが残した壁の傷に目をやり、複雑な表情を浮かべるのだった。
オメガはバッド・バッチの一員
ハンターとオメガはドラゴンを追跡する。オメガはクロスヘアーを庇うが、ハンターは「仲間を置いてきた」と自分自身を責めていた。ドラゴンに襲われたハンターは酸素マスクが取れて気を失ってしまう。オメガは一人でドラゴンを追跡。ドラゴンを倒すことなく、その特性を見抜いて蓄電器を取り戻す。
オメガのおかげで蓄電器を取り戻した一行は、無事に星を離れる。するとレッカーは戻ってきたオメガに部屋をプレゼントする。オメガにとって初めての自分の部屋だ。ハンターはオメガもバッド・バッチの一員であることを告げて『バッド・バッチ』第3話は幕を閉じる。
第3話「エリート分隊」解説&考察
バッド・バッチの方は不時着から復帰して第3話を終えてしまったが、第2話で登場の機会がなかったクロスヘアーに進展があった。バッド・バッチを離れ、人間の部隊を率いる指揮官となったのだ。プログラム通りに行動するようになったクロスヘアーは、命令(order)を遂行し、秩序(order)を守る存在に。その冷血さが人間の兵士の心理にも影響を与え始めている。
バゴプラではクローン戦争後に「ジェダイが忘れ去られた理由」についての考察をお届けしたが、第3話ではクローン兵から人間のストーム・トルーパーへと編成を移していく帝国軍がどのように変化を遂げていったのかという点も見えてきた。
そして、気になるのはオメガの存在だ。第2話ではカット・ロクウェインが、カミーノがオメガを作った理由を勘繰っていたが、“優性クローン”の計画と関係がありそうに思える。また、このタイミングでジャンゴ・フェットの遺伝子に劣化が見られ始めたことが明らかになっている。ジャンゴ・フェットの遺伝子が失われゆく中、ジャンゴの唯一の純正クローンであるボバ・フェットの登場はあるのだろうか。そして、バッド・バッチ一行の逃避行とクロスヘアーの追撃はどのような展開を迎えるのだろうか。
『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』はDisney+で独占配信中。
『バッド・バッチ』第1話のネタバレ解説はこちらから。
『バッド・バッチ』第2話のネタバレ解説はこちらから。
第2話から名前が登場しているチェーンコードに関する解説はこちらの記事で。