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Kaguya Planet掲載中の全作品を紹介

 

Kaguya Planet掲載中の10作品

SFメディアのバゴプラが運営するKaguya Planetにて配信中のSF短編小説を一挙に紹介します。
Kaguya Planetは、毎月SF短編小説をウェブに掲載するプロジェクトで、月500円(年間登録の場合は5,000円)で会員登録して頂くと、全ての作品を無料公開の約1ヶ月前に読むことができます。

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先行公開中の作品

一般公開中の作品

5月に先行公開予定の作品

  • 大木芙沙子「かわいいハミー」
  • ユキミ・オガワ「町の果て」(大滝瓶太 訳)

麦原遼「それはいきなり繋がった」

14,090字

ある春の日、世界は左右の反転した鏡の世界と繋がった。シンメトリーな二つの世界には、一つ大きな違いがある。鏡の世界との境界となった僕の町は変貌を遂げていく。

世界規模の出来事で生まれたひずみを、個人やそれぞれの人間関係で展開していく手腕がとても見事です。複雑な設定を説明する描写力も高く、世界から個人を、個人から世界を、そして物語から現実を照らしていく作品です。

麦原遼
1991年生まれ。ゲンロン 大森望 SF創作講座の2期生。2018年に『逆数宇宙』で第2回ゲンロンSF新人賞優秀賞を受賞してゲンロンSF文庫からデビュー。Toshiya Kameiが英訳した「GかBか(ガール・オア・ボーイ)」(『Sci-Fire 2018』収録)がスコットランドのShoreline of Infinity誌に掲載予定。2020年には『S-Fマガジン』2020年8月号の「それでもわたしは永遠に働きたい」、『小説すばる』2021年1月号の「2259」、『文藝』2020年冬季号の「〈90年代生まれが起こす文学の地殻変動〉アンケート」、『Sci-Fire 2020』の「嗅子」など、多くの媒体に活躍の場を広げている。圧倒的な強度を誇る新鋭SF作家。

D・A・シャオリン・スパイアーズ「虹色恐竜」(勝山海百合 訳)

4,666字

チャットアプリ「ララ」で出会った上海のシィと河北のポン。クリスマスにはプレゼントを贈り合い、バーチャルデートを重ね、たとえ会えなくても二人の未来は明るいと思っていた。

二人の女性の様子が愛らしく、近未来の恋愛の可能性とそこに潜む落とし穴をリアルに描いた作品です。中国の神話や、恐竜の化石が多く出土するという河北省の土地柄などがとても効果的に使われています。

D・A・シャオリン・スパイアーズ
D・A・シャオリン・スパイアーズはアメリカの小説家、詩人。 彼女の作品は Clarkesworld, Analog, Strange Horizons, Nature, Terraform, Uncanny, Fireside, Galaxy’s Edge, StarShipSofa, Andromeda Spaceways などの他、多くの媒体で読むことができる。アンソロジー収録作多数。いくつかはドイツ語、スペイン語、ベトナム語、エストニア語に翻訳されている。フランス語への翻訳も進行中。

揚羽はな「また、来てね!」

4,000字

主人公のエミは幼い娘のナオを地球に残し、長期の宇宙探査の任務に就いていた。エミは15年ぶりの帰還を果たすが、そこで待っていたのは、再会したナオからの意外な言葉だった。

宇宙探査をめぐるシビアな設定の中で、物語全体を通して貫かれている人の温かさが特徴の作品です。揚羽さんの魅力である軽やかな文体や、多くの人に開かれた作品である点も高く評価されています。

揚羽はな
これまで、臨床検査技師、医療機器メーカー勤務、医療機器・体外診断用医薬品の薬事コンサルタントとして働き、医療に携わる傍、SF小説を執筆してきた。ゲンロン 大森望 SF創作講座の第3期および第4期を受講すると、第3期の第3回に提出した「流星雨があがったら」を改稿した「Meteobacteria」が第6回日経「星新一賞」優秀賞(アマダホールディングス賞)を受賞。ポップであたたかみのあるSFアイデアが魅力で、英訳者からも注目されている。

揚羽はなさん最新情報!
2021年1月に日本SF作家クラブに入会。日本SF作家クラブ主催の「小さな小説コンテスト」(さなコン)の審査員を務めています。

藤井太洋「まるで渡り鳥のように」

11,647字

2119年、宇宙に居留し春節に大陸へ帰省する華人は「華㝯」と呼ばれるようになっていた。浙江大学自然工学研究所に所属する日比野ツカサは、軌道居留施設で生物の移動に関する研究に取り組んでいる。そのツカサの元に、ある知らせが届く。

著者の作品では珍しく、約100年後という少し先の未来を描いた作品です。宇宙を舞台に描かれる情景の美しさを称賛する声も。コロナ禍で人の移動が制限される今こそ読んでほしい、「渡り」という行為を宇宙規模で描くグローバルな意欲作です。

藤井太洋
1971年、鹿児島県奄美大島生まれ。ソフトウェア会社に勤務する傍ら執筆した長編『Gene Mapper』を電子書籍で発表し、2012年のKindle本で最多販売数を記録する。2015年、『オービタル・クラウド』で第35回日本SF大賞および第46回星雲賞日本長編部門を受賞。2019年、『ハロー・ワールド』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2015年から2018年まで、第18代日本SF作家クラブ会長を務める。海外のSFイベントにも数多く出演。様々なメディアでの発信やSF関係者との交流を通して、日本SFの成長に貢献している。

藤井太洋さん最新情報!
2021年3月に講談社文庫から『ハロー・ワールド』が、4月にはハヤカワ文庫から『ポストコロナのSF』が刊行。

講談社
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正井「宇比川」

6,103字

間違えたバスにずっと乗り続けている私。親戚の集まりに辿り着きたくない私は、「人魚寺」と呼ばれるお寺を目指していた。人魚伝説が伝わる宇比川町での不思議な物語。

淡いの世界に引き込まれ、日常と異界の境目がなくなっていくような少し不気味な読後感がとても好評の作品です。伏線を丁寧に回収していく展開、テーマや内容にぴったりの文体や描写も魅力的です。ホラーや実話怪談が好きな方にもオススメの人魚SFです。

正井
2014年に個人誌としてSF短編集『沈黙のために』を発表。2017年には『さまよえるベガ・君は』を、2019年には『沈黙のために』の新装版を発行した。「大食い女」を寄稿した『フード性悪説アンソロジー 燦々たる食卓』(2018) をはじめ、数多くの同人誌で小説および短歌・俳句を発表してきた。2019年に第一回ブンゲイファイトクラブ本戦出場。2020年には第一回かぐやSFコンテストで416作品の応募の中から「よーほるの」が最終候補11作品に選出された。唯一無二の作風でファンから強い支持を得ている。

正井さん最新情報!
犬と街灯が発行しているエッセイ集「みんなの美術館」に大山崎山荘美術館について寄稿しています。

蜂本みさ「冬眠世代」

7,363字

冬が来れば、貧しい熊は冬眠しなければならない。工場で働く熊のツブテは毎年冬眠を繰り返してきた。冬眠しないで済む裕福な熊との差が寂しい。でもこの冬は、スグリと一緒に夢にもぐれる。

世代を超えて繋がっていく熊たちの物語です。読み進めるにしたがって幾重にも重なった語りを潜っていくような、奥行きのある構成が高い評価を得ています。匂いや寒さや感触が感じられそうな、豊かな文章が描き出す熊たちの悲喜交々がどこか切ない作品でもあります。

蜂本みさ
2020年に掌編集『いきもんら』を発表。2021年には、西崎憲がプロデュースする短文集シリーズ「kaze no tanbun」(柏書房) 第3弾に参加する。また、毎週水曜日21時より、谷脇クリタ、北野勇作と共に「犬と街灯とラジオ」(通称:犬街ラジオ)をツイキャスで配信。トークと共に朗読を披露している。2019年には第一回ブンゲイファイトクラブで準優勝、2020年には第二回ブンゲイファイトクラブで優勝を果たした、“今最も強い小説家“。

蜂本みささん最新情報!
「犬と街灯とラジオ」で、苺大福論争などの少し不思議な掌編を朗読しています。

佐伯真洋「月へ帰るまでは」

7,202文字

そこは“植物船”が行き交う世界。船は都市となっていた。巨大な植物船コロニーに乗る梅の船の民・トーリャと柳の船の民・リョウは、ある日、思いがけない出会いを果たす。

何世代にもわたる壮大なスケールを射程に入れた上で、他者と他者が繋がっていくとある瞬間を捉えた美しい作品です。短編としてのバランスの良さも評価されています。幻想的な描写と、日本昔話のような要素が入り混じった、ポストヒューマンSFです。

佐伯真洋
1991年生まれ、大阪府出身。仕事と育児をしつつ大学で勉強中。2016年、初めて書いたSF小説「母になる」が第4回日経星新一賞で最終候補に選ばれると、同年から3年連続で同賞の最終候補に選出された。2020年には「青い瞳がきこえるうちは」が第11回創元SF短編賞の最終候補入りを果たす。同年夏に開催された第1回かぐやSFコンテストでは「いつかあの夏へ」で読者賞を受賞。筆者名を伏せた状態で実施された読者投票で最多票を獲得した。同年12月には、Toshiya Kameiが英訳した「母になる」がWelkin Magazineに掲載されることが決定し、英語誌でのデビューが決まった。国内外で活躍の場を広げる次世代注目のSF作家。

冬乃くじ「国破れて在りしもの」

カバーイラスト:冬乃くじ 題字:浅野春美

4,088字

新しい市長が掲げた政策は、次々と街の形を変えていった。施設が取り壊され、また建設されていく。それを見守る人々、そして抗う人々。変わりゆく街を待つ運命とは……

Kaguya Planet掲載作品の中で最も多角的な感想が見られたように、表面と中身、時間の遡行、聴覚情報と視覚情報、解体と再構築、物語論、現実と虚構など、多様なテーマが4,000字に凝縮されています。冬乃くじさんのセンス・オブ・ワンダーを感じさせる作品です。

冬乃くじ

2019年の第一回ブンゲイファイトクラブと2020年の第二回ブンゲイファイトクラブで2年連続本戦出場を果たし、“ジャッジをジャッジ“の文章も話題を呼んだ。2020年には第三回阿波しらさぎ文学賞で「水と話した」が一次選考を通過。選評では審査員の小山田浩子から賛辞を受けた。2021年2月に犬と街灯から出版された『みんなの美術館/エッセイアンソロジー』にはエッセイを寄稿している。noteで漫画「カバンたんとフトンたん」も発表するなど多彩な魅力を持つ書き手で、2020年代の開かれた文芸の世界でひときわ輝きを放っている。

冬乃くじさん最新情報!
冬乃くじさんの作品はこちらに一覧がまとまっています。

オーガニックゆうき「チグハグバナナ」

3,790字

ある日突然、私の部屋に現れた「バナナ」は、世界を、そして私の生活を壊していく。「バナナ」は、一体何を求めているのか。チグハグな「バナナ」との奇妙な物語。

現代を生きる私たちにとって、身近に存在しているかもしれない「バナナ」。そのメタファーの受け取り方は、読み手の方の環境や経験によって様々。著者がこれまで発表してきた作品とはミステリ長編『入れ子の水は月に轢かれ』やSF中編「龍とカナリア」とは一味違ったスタイルで、読者に新鮮な“恐怖”を与えています。

オーガニックゆうき
1992年生まれの小説家、ウルトラシリーズ好きの、うちなーんちゅ。2018年に『入れ子の水は月に轢かれ』で第8回アガサ・クリスティー賞を受賞し、同作で早川書房からデビューを果たす。2019年10月から2020年6月までは、沖縄タイムスでコラム『うちなぁ見聞録』を連載。2020年12月には『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』(社会評論社)にSF中編「龍とカナリア」を寄稿した。ミステリとSFを自在に横断していく多才さを見せる注目の作家。

トシヤ・カメイ「ピーチ・ガール」(勝山海百合 訳)

3,711字

あなたの両親は、あなたを小さな桃型の宇宙船に乗せて地球へと送り出した。鬼の脅威を前に、“ピーチ・ガール”としてグリッドで戦うことを決意したあなたは、仲間集めに取り掛かる。

アメコミものを彷彿とさせるポップでテンポの良い文体は、原作者と翻訳者のコンビネーションがなせる技と言えます。現代の視点と共にグリッド空間で描き直される「桃太郎」。モモコと雉のバディが人気です。

トシヤ・カメイ
トシヤ・カメイはバイリンガル作家(英語とスペイン語)、翻訳家。彼の短編小説はCollective Realms、Trembling With Fear、Utopia Science Fictionなどに掲載されている。

トシヤ・カメイさんの最新情報!
Insignia Storiesの最新アンソロジー『Mythical Creatures of Asia』に翻訳を手がけた作品、自身の作品が掲載されます。

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