Netflixドラマ『湖へ』原作は?
2020年10月7日(水)よりNetflixで配信を開始したSFドラマ『湖へ』。ロシアで『The Outbreak』として2019年に配信され、2020年4月より地上波でも放送された作品だ。未知の感染症によってモスクワが封鎖されるという設定は、現実に起きることになったパンデミックを予期した作品として注目を集めた。
そのあらすじはこちらの記事に詳しい。
そもそも、『湖へ』の原作はロシアのベストセラー小説で、2011年にヤナ・ヴァグナーが発表した作品だ。2013年にチェコ語、スロバキア語、スウェーデン語などに翻訳され、2014年にはフランス語に。英語や日本語には翻訳されていないが、計11のバージョンが発売されている。なお、原作小説の『Вонгозеро (Vongozero)』というタイトルは、実在する湖の名前をとったものだ。
元はブログで発表した短編小説
『湖へ』の原作小説には、更に“オリジナルバージョン”が存在する。2015年、原作者のヤナ・ヴァグナーはフランスメディアのlibrairie mollatに、以下のように語っている。
この小説の最初のチャプターは自分のブログで公開したものなんです。その時はまだ長編にはなっておらず、ただの掌編でした。ある日突然、2,000人ものアクセスがきて、中にはこの物語が実際に起きていることだと信じる人もいました。なぜなら、自分について語る女性の主人公の一人称で展開される物語だったからです。モスクワでパンデミックが実際に起こっていると信じる人が現れたんです。「そんな、これ本当に起きていることですか?」というコメントも来ました。
意外な形で2000人の読者を獲得したヤナ・ヴァグナーは、1-2週間で次のチャプターを投稿。ブログについた読者はこの作品を読み続け、展開について議論を続けた。「読者は物語を自分のことのように受け取ってくれました。だから、やめられなかったんです」と語る通り、ヤナ・ヴァグナーは執筆を続け、1年後には長編作品が完成していたという。
なお、著者本人は夫と共に『湖へ』の舞台になったVongozeroへ狩りに出かけたことがあるという。原作はリアルな体験をもとにして描かれていたのだ。
元々ディストピア小説やポストアポカリプス小説を読むのが好きだったというヤナ・ヴァグナー。小説を書き始めたのは、「(ディストピア小説やポストアポカリプス小説を) 全部読んだ気がしたから」で、「自分で書けばもっと読めると思いました」と話している。リチャード・マシスンの小説を映画化した『アイ・アム・レジェンド』(2007)をお気に入りの作品の一つに挙げているが、自身の作品も多数の国での翻訳を経てドラマ化、Netflixを通して世界へ配信されることに。
ブログに投稿した短編小説から始まった快進撃は、どこまで続くのだろうか。1973年生まれ、新たにロシアを代表するSF作家となったヤナ・ヴァグナーの今後に期待しよう。
ドラマ『湖へ』は、2020年10月7日(水)よりNetflixで独占配信中。
Source
librairie mollat