“消える魔球”から宇宙を舞台にした野球まで 『野球SF傑作選 ベストナイン2024』5月27日発売 | VG+ (バゴプラ)

“消える魔球”から宇宙を舞台にした野球まで 『野球SF傑作選 ベストナイン2024』5月27日発売

装幀:谷脇栗太

『野球SF傑作選 ベストナイン2024』5月27日(月)発売

現代野球SFのベストナインが集結した短編集『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(齋藤隼飛編)が2024年5月27日(月)にKaguya Books/社会評論社から刊行される。『野球SF傑作選』では、「2024年の今読んで面白い野球SF」をコンセプトに、野球SF短編の傑作9編を選出。さらに英語圏の野球SF短編を紹介するコラムや、創作の中の野球をめぐるエッセイ、作品解説も収録されている。

社会評論社
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『野球SF傑作選 ベストナイン2024』収録作品(収録順)
水町綜「星を打つ」
溝渕久美子「サクリファイス」
関元聡「月はさまよう銀の小石」
暴力と破滅の運び手「マジック・ボール」
小山田浩子「継承」
新井素子「阪神が、勝ってしまった」
鯨井久志「終末少女と八岐の球場」
小松左京「星野球」(+小松実盛による作品解説)
青島もうじき「of the Basin Ball」(+平大典による作品紹介)

 

コラム:千葉集「わたしの海外野球SF短編ベストナイン」
エッセイ:高山羽根子「永遠の球技」
作品解説:磯上竜也

トップバッター水町綜「星を打つ」は、井上彼方編『SFアンソロジー 新月/朧木果樹園の軌跡』(2022, Kaguya Books/社会評論社)初出の一編。遠未来を舞台に宇宙規模のストーリーが展開されるエンタメ性の高い作品だが、戦争や歴史といったテーマも射程に入れた奥行きのある作品だ。

溝渕久美子「サクリファイス」は、近未来の日本プロ野球界を舞台に“送りバント”について扱った小説。送りバントを禁じられたベテラン選手の闘いをウェブマガジンの掲載記事という体裁で描いていく。第三回かぐやSFコンテスト選外佳作の隠れた傑作だ。

関元聡「月はさまよう銀の小石」は、同コンテストの最終候補としてネット上で多くの支持を得た作品。舞台はアメリカに移り、ネアンデルタール人が生き延びていたら……というあり得た歴史が描かれる。野球フィクションでは定番である“父子の物語”を、“差別”というテーマと共にこれまでにない角度で描き出している。

同じくアメリカを舞台にした暴力と破滅の運び手「マジック・ボール」は、第三回かぐやSFコンテストの大賞受賞作。「消える魔球」を題材に多くの読者の心を鷲掴みにしたフェミニズムSFの名作で、谷脇栗太が手がけた本書の表紙イラストは「マジック・ボール」のワンシーンを描いたものだ。本作は田田による中国語訳版が中国の老舗SF誌《科幻世界》の2024年4月号に「魔球」のタイトルで掲載されている。

小山田浩子「継承」は、著者による広島カープ三部作の一つ。「自分が試合を観ると必ず負ける」という野球ファンならよく知るジンクスを扱った作品で、解体前の広島市民球場が舞台になっている。小山田浩子の短編集『小島』(2023, 新潮文庫)には、三部作の他の二作「異郷」「点点」が収録されている。

新潮社
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「継承」と同じく野球ファンに焦点を当てているのが新井素子「阪神が、勝ってしまった」。阪神タイガースが日本一になるまでの過程と、その翌年の出来事が描かれており、阪神タイガースが日本一になった翌年である今読むのにぴったりな作品だ。「阪神が、勝ってしまった」は新井素子の短編集『影絵の街にて』(2021, 日下三蔵編, 竹書房文庫)にも収録されている。

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鯨井久志「終末少女と八岐の球場」は『少女終末旅行トリビュート』(2018, カモガワGブックス)から再録の作品。永遠に続く野球という「茶番」に主人公たちが向き合う。サブカル愛に満ちた小ネタとメランコリックな現代を乗り越えるためのメッセージを併せ持った力強い作品だ。

小松左京「星野球」は星の間で野球を行うというアイデアを1964年に描き出した先駆的な作品で、『小松左京アニメ劇場』でアニメ化もされている。「星野球」は『地には平和を』(2019, 角川文庫)、『小松左京アニメ劇場 原作集』(2020, 角川文庫)にも収録。『野球SF傑作選』には『小松左京アニメ劇場 原作集』初掲の小松実盛による作品解説と小松左京の野球漫画の“落書き”も掲載されている。

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青島もうじき「of the Basin Ball」は、メディアレーベル〈anon press〉で発表された作品。anon press掲載の平大典による作品紹介も合わせて収録されている。本作は「インフィールド・フライ」をテーマにした、AIのような語りが魅力の短編だ。野球とは、人生とは、という哲学的な問いかけで本書のトリを飾る。

千葉集による書き下ろしコラム「わたしの海外野球SF短編ベストナイン」では、英語圏の野球SF短編を14,000字超で一挙に紹介。野球SFの歴史を振り返り、“女性選手と野球SF”、“救世主モノ”、“歴史改変モノ”、“野球×時間”、“野球×ロボット”など、タイプごとに作品と作家達を紹介している。

高山羽根子のエッセイ「永遠の球技」は、SFウェブマガジンのKaguya Planetに掲載されたものに若干の改稿を加えて収録。「原理上、永遠に終わらないということも可能なスポーツ」である野球を、様々な作品での描写と共に読み解いていく。

最後には本屋toi booksの店主である磯上竜也による収録作の作品解説も収録。数多の小説を読んできた本屋店主であり、野球経験者でもある筆者が『野球SF傑作選』の楽しみ方の一つを提示してくれる。

装幀:谷脇栗太

今読むから面白い、名作野球SF短編を集めた『野球SF傑作選 ベストナイン2024』。なぜ野球SFが人々を魅了するのか、本書の小説とエッセイ・コラム・解説を読めば、その理由の一端を知ることができるだろう。

齋藤隼飛編『野球SF傑作選 ベストナイン2024』はKaguya Books/社会評論社より2024年5月27日(月)発売。

社会評論社
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書籍情報
【書名】『野球SF傑作選 ベストナイン2024』
【編者】齋藤隼飛
【発行】Kaguya Books(VGプラス合同会社内)
【発売】社会評論社
【判型】文庫本
【発売日】2024年5月27日(月)
【定価】1,500円(税込:1,650円)

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Kaguya Books/社会評論社からは日本SF作家クラブ編『SF作家はこう考える 創作世界の最前線をたずねて』も発売中。

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