暴力と破滅の運び手、久永実木彦のSF短編小説が中国に! 第三回かぐやSFコンテスト大賞作品&Kaguya Planet掲載作品 | VG+ (バゴプラ)

暴力と破滅の運び手、久永実木彦のSF短編小説が中国に! 第三回かぐやSFコンテスト大賞作品&Kaguya Planet掲載作品

KAGUYAから2編の短編小説が中国に!

2023年に開催された第三回かぐやSFコンテストで大賞を受賞した暴力と破滅の運び手「マジック・ボール」と、2023年にKaguya Planetに掲載された久永実木彦「天国には行けないかもしれない」が中国語訳され、中国のSF誌『科幻世界』と『銀河辺縁』に掲載されます。

「マジック・ボール」は『科幻世界』に掲載

暴力と破滅の運び手「マジックボール」は、中国のSF誌『科幻世界 2024年4月号 韓国・アジア特集』に掲載されます。中国語訳を担当したのは翻訳家の田田さんで、中国語のタイトルは「魔球」です。

『科幻世界』は世界最大規模の読者数を誇る中国の歴史あるSF誌で、1979年の創刊以降、40年以上にわたって国内外のSF小説を紹介してきました。日本でも大ヒットを記録した小説『三体』も、最初に連載されたのは「科幻世界」でした。

かぐやSFコンテストとしては、第二回かぐやSFコンテストの大賞受賞作である吉美駿一郎「アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ」の『科幻世界 2022年3月号』への掲載に続く、大賞作品の2回連続の掲載という快挙です。

田田さんは翻訳者、SFファン、愛猫家。北京師範大学日本語学科卒業。2018年から日本SFの中訳を始めました。代表的翻訳作品に乾緑郎『機巧のイヴ』、広瀬正『マイナス·ゼロ』、柴田勝家『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』などがあります。2023年からは英文SFの翻訳も始めており、フレドリック・ブラウンの短編集『地球上最後の敲門声』を翻訳しました。手がけた翻訳作品のリストはこちらから見ることができます。

かぐやSFコンテストでは第一回から大賞作品の中訳を担当しており(第一回は審査員長賞も含む)、これまでに勝山海百合「あれは真珠というものかしら」大竹竜平「祖父に乗り込む」吉美駿一郎「アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ」の翻訳を手がけました。

暴力と破滅の運び手「マジックボール」は、「未来のスポーツ」をテーマに最大4,000字のSF短編小説を募った第三回かぐやSFコンテストの大賞受賞作品です。磯上竜也さん、井上彼方さん、岸谷薄荷さん、佐伯真洋さんが、筆者匿名の状態で選考をした同コンテストには、プロアマ混合の297編が応募され、魔球を投げる女子学生のフェミニズム歴史SF「マジック・ボール」が見事の大賞を受賞しました。コンテストの最終候補作品10編と、審査員による選評は特設ページから読むことができます。

第三回かぐやSFコンテスト特設ページ

暴力と破滅の運び手 プロフィール
2022年、「エッチな小説を読ませてもらいま賞」の審査員長を務める。京都・大阪を中心に活動するクラシック音楽サークルCrazy Gal Orchestraの運営をしているギャル。個人の短編集『ブラームスの乳首』や、8名の作家が参加した『ケモのアンソロジー』など、同人誌の制作を積極的に行っている。井上彼方編『京都SFアンソロジー』(Kaguya Books/社会評論社)等に小説を寄稿。橋本輝幸編『Rikka Zine vol.1』にて、橋本輝幸氏との共訳でソハム・グハ「波の上の人生」の翻訳を手掛ける。

社会評論社
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「天国には行けないかもしれない」は『銀河辺縁』に掲載

SF企業VGプラスの運営するウェブマガジンKaguya Planetに掲載されている、久永実木彦「天国には行けないかもしれない」は、中国のSF誌『銀河辺縁 16号:極北の地』に掲載されました。中国語訳を担当したのは翻訳者の木海さんで、中題は「或许上不了天堂」です。

『銀河辺縁』は、2016年から活動している中国のSF企業、八光分文化が刊行しているSFのマガジンです。『銀河辺縁』はこれまでも、2023年のヒューゴー賞中編小説部門を受賞した、海漄「时空画师」を掲載するなど、多数の名作を発表してきました。「天国には行けないかもしれない」が掲載された第16号の表題作「極北の地」は、海漄さんの新作短編小説です。

また、『銀河辺縁 第14号』には、稲田一声「きずひとつないせみのぬけがら」(『Rikka Zine vol.1』収録)の果露怡さんによる翻訳「无痕的蝉蜕」が掲載されており、日中SFの架け橋としても活躍が期待されます。

木海さんは1998年生まれ。作家・書評家・日中と英中の翻訳者として幅広く活動されています。橋本輝幸編『Rikka Zine Vol.1 Shipping』に短編小説「保護区」(訳:橋本輝幸)を寄稿している他、紅坂紫編『INITIATION』に日本語の小説「潮間帯」を寄稿するなど、日本語での創作活動もされています。

久永実木彦 プロフィール
日本SF作家クラブ会員。2017年、「七十四秒の旋律と孤独」で第8回創元SF短編賞を受賞。2020年に受賞作を表題作とした『七十四秒の旋律と孤独』(東京創元社)を刊行。2022年には「わたしたちの怪獣」を『紙魚の手帖 vol.06』に寄稿。「わたしたちの怪獣」を表題作とした短編集『わたしたちの怪獣』を東京創元社から2023年5月に刊行。上記の三作品で、三年続けて日本SF大賞の最終候補に選出されている。また『わたしたちの怪獣』は「ヒデミス!2023 小島秀夫が選んだミステリー・ゴールデン・ダズン」に選出され、小説界のデル・トロと紹介された。
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Kaguya Planetにて気候危機特集開催中!

2024年1月〜3月のKaguya Planetでは、「気候危機」を特集しています。現在は第一弾のエラ・メンズィーズ「雨から離れて」(訳:川崎遥佳)を先行公開中。こちらは環境問題が「解決」して8年後のルワンダが舞台の作品。少女ケーザは、強酸性の雨が降り注いだ時代のトラウマから自然の水を極端に恐れるママと一緒に、窓を閉め切った家で暮らしている……。地球規模の問題を解決するために捨象されてしまう文化や言葉に丁寧に目を向けた、希望の物語です。

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