【ネタバレ解説】『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード1「新たな敵」【あらすじ・音楽・ゲスト出演者】 | VG+ (バゴプラ)

【ネタバレ解説】『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード1「新たな敵」【あらすじ・音楽・ゲスト出演者】

©️Amazon Studios

『ザ・ボーイズ』シーズン2配信開始!

遂に配信を開始した『ザ・ボーイズ』シーズン2。Amazonプライムビデオが誇る人気SFドラマの新シーズンが2020年9月4日(金)に公開された。最初に配信を開始したのは、エピソード1〜3の計3話に加え、アフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』の3話。今後は毎週1話ずつが更新されていく。

今回は『ザ・ボーイズ』シーズン2のエピソード1「新たな敵」の内容をネタバレありで解説していこう。あらすじだけでなく、『ザ・ボーイズ』の特徴である音楽の使い方や、サプライズゲストも紹介しつつ、その魅力を徹底的にお伝えしていく。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード1「新たな敵」までの内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード1 あらすじ&ネタバレ解説

新たなスタート

『ザ・ボーイズ』シーズン2のエピソード1「新たな敵」は、シーズン1のハイライトから幕を開ける。恋人ロビンを失ったヒューイ、ビリー・ブッチャーとの出会い、フレンチー・マザーズミルク・キミコとの合流、ヒーロー退治、スターライトの苦難、ディープの失墜、ホームランダーの暴挙、コンパウンドVの秘密、ザ・ボーイズとセブンの戦い……そして、衝撃のラスト。

あの後、ブッチャーはどうなったのか。そして副社長のマデリン・スティルウェルを失ったヴォート社はどうなっていくのか……。

既に公開されていたシーズン2エピソード1の冒頭シーンは、死んだ副社長のマデリン・スティルウェルに代わってヴォート社の顔として社長のスタン・エドガーが登場する。ブラック・ノワールは外国でスーパーテロリストを退治、ホームランダーはトランスルーセントの死を利用した対スーパーテロリストのプロパガンダを展開していた。相変わらずうまくやっているようだ。

スーパーヒーローによる軍事介入の口実を手に入れるための演出に、スターライトことアニーも歌を唄って一役買っていた。この歌のシーンは数秒ほどしか流れないが、実際には3分間のフルソングが制作されていたという。曲名は「永遠のヒーロー」。フルバージョンの公開に期待しよう。

諦めないヒューイ

ファンとカメラに笑顔を振りまいた後、スターライトはコスチュームを脱ぎ捨てて疲れた表情を見せる。本来のアニー・ジャニュアリーの姿に戻るのだ。街にはスターライトの広告が溢れており、秋には映画『市民スターライト』が公開されるという。誇大報道で知られた新聞王を描いた映画『市民ケーン』(1941)へのオマージュだ。

セブンに挑んで指名手配犯となったヒューイは身を隠すようにザ・ボーイズの地下基地に暮らしていた。だが、買い物に出かけるフリをしたヒューイは、電車でこっそりアニーと合流。アニーはスターライトとしての地位を利用してヒューイを助けていたのだ。

エピソード1のスペシャルゲスト

ここで、エピソード1のスペシャルゲストが登場する。ヴォート副社長のマデリンが殺害された件について、再現ビデオが流されるが、性犯罪者を追うジャーナリストのクリス・ハンセンが実名でゲスト出演を果たしている。

この番組の中では、ホームランダーが殺害したマデリンは、ブッチャーの手で殺されたことになっていた。それでも、ハンセンは持ち前のジャーナリストとしての勘か、「なぜ副社長の子供は離れた場所で保護されたのか」と、鋭い指摘を行なっている。

この番組のタイトルは「A Closer Look with Chris Hansen」と表示されているが、クリス・ハンセンは現在、YouTubeチャンネルの「Have a Seat with Chris Hansen」を運営している。

忘れかけていたホームランダーの異常さ

マデリン亡き後のセブンはどうなったのか。前作でヴォート社の広報だったアシュリー・バレットはホームランダーに呼び戻され、幹部として復職を果たしていた。アシュリーは早速、セブンの新メンバー候補としてアジア系で目の見えないブラインドスポットをホームランダーに紹介する。

なお、酒に溺れるディープは、自身を助けた無名ヒーローの名前を言い当てられなかったが、ホームランダーはブラインドスポットの存在を認識しており、ディープとの格の違いを見せている。

アシュリーは元広報として、目が見えないアジア系のブラインドスポットを“マイノリティ枠”として採用し、更にディープのポジションにエスニック系の女性を入れることで、マイノリティからの支持を集めようとしている。

だが、ホームランダーはブラインドスポットの鼓膜を破壊してしまう。視聴者もついていけない異常さである。シーズン1の公開から1年が経過して忘れかけていたが、ホームランダーはこんなやつなのだ。ホームランダーは、今後は自分で自分のマネジメントを行うことを宣言し、アシュリーに全ての情報をホームランダーに上げるよう指示する。典型的なワンマン上司である。

ホームランダーはマーケティングにも口出しをして、「スーパーテロリスト」を一般人に評判の良い「スーパーヴィラン」と呼び替えさせるが、一般人からの評価が高い「世界を救う」よりも、評判の悪い「アメリカを救う」の方を標語に選ぶ。有能なのではなく、単にわがままなのだ。

その頃、スターライトへの性暴力が発覚し干されていたディープは、酒に溺れ、子ども達の水浴び広場で奇行に走っていた。逮捕されたディープだが、ヒーローのイーグル・ジ・アーチャーに助けられ、キャロルという謎の人物のカウンセリングを受ける。二人はどうやら“共同教会”の人間のようだ。セブンとザ・ボーイズの外側で進んでいくディープの物語は、今後どのように本筋に絡んでくるのだろうか。

ザ・ボーイズとホームランダーの危機

一方でザ・ボーイズは資金集めのためにフレンチーが中心になって行なっていた武器と薬の密輸が、スーパーテロリストの密入国に利用されていることを知る。

スーパーテロリストの密入国に加担していたという事実に、ザ・ボーイズの結束が崩れ出す。ヒューイがアニーと会っていたことも明らかになり、マザーズミルクはヒューイを責める。マザーズミルクには帰るべき家族がいるが、仕事もロビンも父もアニーも失ったヒューイは、「ヒーローには慣れないがハリー・ポッターになら」と諦めない。リーダーシップは取れそうにないが、ヒューイにはこのチームしか残されていないのだ。

そして、『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード1におけるハイライトの一つが、ストームフロントの登場シーンだ。いきなりインスタライブでプロパガンダ映像の舞台裏を暴露しまくるストームフロント。初手から掟破りのゲームチェンジャーになることを示唆している。

ストームフロントは自身がセブンの新入りであると自己紹介するが、ホームランダーにとっては寝耳に水。セブンに誰が加入するかはホームランダーが決めると宣言したばかりだ。

ストームフロントがスマートなのは、インスタライブという形で世間に向けて配信を続けることで、ホームランダーがストームフロントに手を出せない状況を作り出しているということだ。一方で、防衛策を取っているというということは、ストームフロントがホームランダーの力を脅威に思っているということも示している

ストームフロントは、自分のセブン入りを認めた人物が「エドガー」だと告げる。ホームランダーは「エドガー」という人物の名前を聞いただけでその場を離れてしまう。エドガーとは、もちろんヴォート社の社長であるスタン・エドガーである。

その頃、ザ・ボーイズはCIA副長官のスーザン・レイナーと落ち合っていた。情報を交換する両者だったが、スーザンがヴォートの内部でクーデターが起きていることを伝えるや、スーザンの頭は吹き飛んでしまう。パニックに陥った一同は、地下基地に逃げ帰る。ヴォート社の中で何かが起きているようだ……。

ホームランダー vs エドガー

『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード1におけるもう一つのハイライトシーンは、ホームランダーvsエドガーのワンシーンだろう。

ホームランダーはヴォート社長のエドガーのもとに直接出向き、ストームフロント加入の人事への不満を露わにする。「私がヴォートだ」とまで言い放ち、契約満了を機にヴォートを離れることをチラつかせるホームランダー。朗らかに話を聞いていたエドガーだったが、冷血な表情を浮かべ、ヴォート社の創業者であるフレデリック・ヴォートの話を始める。

世間に知られていないフレデリック・ヴォートの真実の顔は、ヒトラーの下で強制収容所の人々にコンパウンドVの初期実験を繰り返していた遺伝学の研究者だった。終戦直前の戦場でもコンパウンドVの実用化実験は行われていたという。ファシズムと戦争の中で作られたのがコンパウンドVだったという逸話は、その力によってスーパーパワーを手にしているヒーロー達にとっては受け入れがたい事実だ。

衝撃の事実に加えて、エドガーは「君はスーパーヒーロー会社と勘違いしているが、実のところ我が社は製薬会社だ。君は重要な資産ではない」とホームランダーを突き放す。本当に利益を生み出すのはコンパウンドVであり、セブンはヴォートの広告塔でしかなかったというのだ。

更に、ホームランダーの奔放な動きに対し、エドガーはその後始末に奔走してきたマネジメントの意見を突きつける。冷静に正論を畳み掛けるエドガーに対して、ホームランダーが申し立てられる異議は「言い方が気に食わない」ということだけ。エドガーは、ホームランダーを「心が未熟な大人」と呼び、権力を決定するのはスーパーパワーではないということを証明。セブンの人選についてはホームランダーの意見は鑑みないということを改めて宣言する。

このシーンについて、スタン・エドガー役を演じたジャンカルロ・エスポジートは、アフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』で解説を行なっている。エスポジートは、エドガーを「狡猾なビジネスマン」と表現しつつ、「重責を背負っており、大勢の利益を守る必要がある」と説明。この社会では、“世界最強の男”よりも、企業利益の方に高い価値が付くのだ。

また、エスポジートは、ヴォートとアメリカの歴史を重ね合わせ、「我々の存在もこの国もウソの上に作られた。欲深い人間はウソをつく」と看破している。

一方、スターライトことアニーは、ヒューイが渡した情報を元にヴォートで働くゲッコーのスキャンダル映像を入手。ゲッコーを脅してコンパウンドVを手に入れる段取りを取り付ける。CIA副長官の死を目の当たりにしたヒューイのもとにその一報が届くが、アニーを危険に晒したくないヒューイはアニーに嘘をつき続け、二人はすれ違う。

事態が悪化していく中、そこに現れたのはあの人物だった。「リーダーが必要だ」とフレンチーが呼び出したその人物は、「Daddy is home (パパは戻った)」と宣言して、シーズン2のエピソード1「新たな敵」の幕がおりる。

「新たな敵」で流れた音楽

ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」

『ザ・ボーイズ』シリーズで定番になっているのは、その音楽だ。今回も、冒頭のブラック・ノイアーがスーパーテロリスト達を殺していくシーンで、まずはローリング・ストーンズの「悪魔を憐む歌」(1968) が流れている。

「悪魔を憐む歌」で歌われているのは、「私は多くの人間から魂と信仰を奪ってきた」「偽りの神々のために人々が争っているのを見てきた」という内容。悪魔の視点から言葉が紡がれており、相変わらずヴォートとセブンの面々が悪魔的な存在であることを示唆している。

 

メディン「Double audition (feat. Brav’)」

スターライトとホームランダーがインタビューを受けるシーン。スマホでその様子を見ていたヒューイが動画を切ったところで微かに流れているのは、メディンの「Double audition (feat. Brav’) 」(2013)。

メディンは著名なフランスのムスリムラッパーで、極右の攻撃の標的にされるほど社会的なメッセージを放つ人物として知られている。この曲を流しているのは、明らかにフレンチーかその仲間であり、このシーンでは音楽を通してヒューイがフレンチーらと共に行動していることを示唆している。

なお、メディンはSFボクシングアニメ『メガロボクス 』(2018)ではフランス語版の声優に挑戦して話題となっている

ビリー・ジョエル「プレッシャー」

エンディングではビリー・ジョエルの「プレッシャー」(1982)が使用されている。11分30秒頃から「The Boys」のタイトルと共に流れている曲も、この「プレッシャー」。なお、予告編ではビリー・ジョエルの「ハートにファイア」(1989)が使用されていた

「プレッシャー」で歌われている歌詞は、「あなたは遠くへ走らなくてはいけない」「プレッシャーと向き合わなければいけない」と、人々が抱えるプレッシャーについて歌われている。確かにシーズン2のエピソード1では、それぞれの登場人物がプレッシャーに晒される展開が続いた。

それでも、オープニングタイトルでヒューイを映しながら「プレッシャー」の曲がかかり、エンディングでやはりヒューイを映しながら同曲が流れるというのは、ヒューイの肩にのしかかったプレッシャーに焦点が合っていると読み取れる。

ブッチャーの帰還は心強いが、シーズン1のラストには仲間を捨てた経緯もある。アニーを危険に晒さずに、仲間たちの平穏な日々を取り戻すことができるのか……。「助けを求めるな」「自分自身に答えを出せ」とは、「プレッシャー」の終盤の歌詞だが、複雑さを増していくこの状況を、ヒューイは、そしてブッチャーはどのように打開していくのだろうか。そして、ホームランダーとストームフロントは、セブンでどのように共存していくのだろうか……。

シーズン2エピソード2以降のネタバレ解説は、以下のリンク先から。

ますます目が離せない『ザ・ボーイズ』シーズン2は、Amazonプライムビデオで10月9日まで毎週金曜日に更新。

キャスト達が各話の裏側を語るアフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』も同時公開中。

原作コミックの日本語版はG-NOVELSより発売中。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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