【ネタバレ解説】『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード3「千人の剣士とともに丘を越えて」【あらすじ・音楽】 | VG+ (バゴプラ)

【ネタバレ解説】『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード3「千人の剣士とともに丘を越えて」【あらすじ・音楽】

©️Amazon Studios

配信を開始した『ザ・ボーイズ』シーズン2

2020年9月4日(金)より、満を持して配信を開始したAmazonプライムビデオのSFドラマ『ザ・ボーイズ』。2019年にスタートしたAmazonナンバーワンの人気ドラマで、早速大きな注目を集めている。最初に公開されたのはエピソード3までの3話で、毎週金曜日に最新話が配信されていく。

バゴプラではここまで、シーズン2のエピソード1とエピソード2のネタバレ解説をお届けしてきた。今回は衝撃の展開を迎えるエピソード3「千人の剣士とともに丘を越えて」のあらすじと解説をネタバレありでお届けする。

シーズン2エピソード1エピソード2のネタバレ解説もチェックしていただくと更に楽しめる。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード3「千人の剣士とともに丘を越えて」までの内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード3 ネタバレ解説&あらすじ

しどろもどろのザ・ボーイズ

『ザ・ボーイズ』シーズン2のエピソード3「千人の剣士とともに丘を越えて」は、ビリー・ジョエルの「オンリー・ヒューマン」(1985)のMV映像からスタートする。この曲はエピソード2でもヒューイが地下の部屋で聴いていた曲だ。

前回解説した通り、「人間なんだし失敗しても大丈夫。落ち込むこともある」という歌詞が唄われているのだが、今回のエピソードでは、「オンリー・ヒューマン」のMVの内容に焦点が当てられている。

このあと、ヒューイはスターライトことアニーに電話をかけ、留守電でこのMVのビリーが現れて自殺を止めるシーンについて話し出す。ヒューイはアニーのおかげで立ち直れたことを告げ、アニーやその周囲に危険が及ぶことを心配する。全てを失い不安定な状態に置かれているヒューイは、アニーの存在を必要としていた。

ブッチャーは前回のラストでヒューイを殴ったことを謝罪し、ザ・ボーイズの創設者で元CIAのグレイスにキミコの弟でスーパーテロリストのケンジを引き渡そうとする。だが、ブッチャーと仲間との歩調はいまいち一致しない。

キミコは拘束されたケンジの面倒を見ながらも、仲間を裏切ることができない。フレンチーはケンジからキミコが両親を失った夜に言葉を失ったという情報を聞き出すが、情をかけたことでケンジに逃げ出す隙を与えてしまう。

再結集したザ・ボーイズだが、なんだかしどろもどろだ。

ヴォートの危機

その頃、ホームランダーは家族での朝食を楽しんでいた。息子のライアンがスペイン語を勉強していることに明らかな嫌悪感を示し、母とスペイン語を勉強するか、自分とキャッチボールをするか選ばせる。ベッカはホームランダーの圧倒的な力の前に逆らうことができず、ホームランダーの思い通りに動かざるを得ない。実際に暴力は振るわずとも、力関係を利用した明らかなDVである。

ヴォート本社の99階では、P・J・バーン演じるシナリオライターのアダムがセブンのオリジンになる映画を熱烈にプレゼンしていた。敵キャラが話すのはスペイン語、つまりメキシコなどの南米からの移民である。

ちなみにトランス・ルーセントの声優にリン=マニュエル・ミランダを推しているが、リン=マニュエル・ミランダはプエルトリコ系で、『ウエスト・サイド・ストーリー』のスペイン語版の脚本も執筆している。

ストームフロントは、このシナリオを「ヒッチコック映画にいそうな女ばかり」と言い放ち、「トランスフォーマー」シリーズをもこき下ろす。相変わらずの痛快さだが、エピソード3ではストームフロントの衝撃の素顔が明らかになる。

そんなセブンとヴォートに、衝撃のニュースが入る。スーパーヒーロー達は生まれながらに能力を持っているわけではなく、コンパウンドVという薬によって力を与えられていたことがスクープされたのだ。

もちろんこの情報をリークしたのは、前回ゲッコーを脅してコンパウンドVを手に入れたスターライトだ。スターライトに詰め寄るAトレインに、お金は重要ではないと言い放つスターライトだったが、Aトレインは、お金が問題ではないと答えられるのは裕福な家で育った人間だけだと貧困の現実を突きつける。子どもにコンパウンドVを注入する実験に協力した親には多額の報酬が支払われていたのだ。

人種差別・性差別・貧困……誰もがマジョリティでありマイノリティでもある多面的な世界の様相を突きつけてくるのが『ザ・ボーイズ』の恐ろしさであり、頼もしさだ。

ディープもまた、魚と対話できる力が持って生まれたものではなく人工的に作られたものだと知り、落ち込んでいた。一方で、ザ・ボーイズはヒューイがあげた成果に大盛り上がりしていた……ブッチャーを除いては。ブッチャーにとっては妻の奪還が最終目標。気を引き締めるようメンバーに言い渡し、ヒューイはまたも複雑な表情を浮かべる。

立ち上がるセブン

コンパウンドVについての大スキャンダルを知らないホームランダーは、息子のライアンに屋根から飛び降りて空を飛ぶよう強要していた。ライアンは地面に叩きつけられるが、無傷で立ち上がる。やはりホームランダーの子どもだ。

ベッカはライアンを心配して駆け寄るが、ホームランダーは「娘のように育てるな」とミソジニー丸出しでベッカを罵る。と、ここで、母親を守ろうとしたライアンがその力を覚醒させる。突き飛ばされたホームランダーはその能力を喜ぶが、ホームランダーはライアンに嫌われてしまう。息子に拒絶され、精神が不安定になったホームランダーは、ヴォートに戻り、クイーン・メイヴとの絆を確認する。

ヴォートの株価は暴落。投資家からは訴訟を受け、ヴォート社長のスタン・エドガーは世間にどのように弁明するのか、結論を迫られるが、余裕の表情を見せている。エドガーは99階でセブンのメンバーに「ヴォートとして危機を乗り越えよう」と呼びかけるが、「あなたの失敗の尻拭いをする気はない」と拒絶されてしまう。

ホームランダーは「セブンとして協力し合おう」とヒーロー達に呼びかける。セブンを「私の本当の家族」と表現し、「私たちはヴォートではない」「会社はなくなるが能力は永遠」と社長を突き放す。セブンはさながら労働組合。非常に分かりやすい労使対立の構図だ。

衝撃の“クジラ”シーン

一方のザ・ボーイズは、ブッチャーが船を盗んでいだことで警察に追われる羽目に。ついには警察のヘリコプターを撃墜してしまうが、ビリーは自分のせいではないと突っぱねる。そこに登場したのは無数のサメ達。ビリー達は沈みゆく船からボートで脱出するが、そこに現れたのは小型クジラだった。

ディープの登場だ。共同教会の指導者であるアラステア・アダナから情報を得ていたのだ。ブッチャーはお構いなしにボートごとクジラに突入。人間だろうがクジラだろうが容赦がない。ボートはクジラを貫通してザ・ボーイズはこのピンチを脱する。

アフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』では、キミコを演じた福原かれんが、このシーンで実際にボートを操縦したのはブッチャー役を演じたカール・アーバンだったことを明かしている。ボートの操縦に慣れているカール・アーバンは、実際に猛スピードでボートを操縦していたのだという。

ブッチャーに変化

セブンがスーパーテロリストの確保に向かう中、ヒューイはクジラの中で離脱を表明する。ブッチャーについていけないという思いと、スターライトに会える可能性がヒューイの足を止めてしまう。

MMの説得でヒューイはなんとか一行と合流する。一方でMMは、ヒューイが精神的に参っていることをブッチャーに告げ、ブレーキを踏むように説得する。あと少しで妻の居場所が分かるとあって、ブッチャーは突き進もうとするが、MMは「カナリアがいないと行き過ぎに気付けない」と、ヒューイの存在意義を説明する。

セブン一行はディープと合流。ディープはスターライトへすべての女性への贖罪を誓うが、口を挟むストームフロントに対して「new girl」と軽んじる発言をする。ホームランダーはディープに怒るスターライトに任務を優先するよう指示するが、ストームフロントがこれを“通訳”。「シスター」と呼びかけることでスターライトを動かすが、ホームランダーにとっては面白くない。ディープに「すぐにセブンに戻れる」とフォローアップしながらも、服が破れて見えていたエラを「気味が悪い」と八つ当たりする。相変わらず嫌な奴である。

排水路を進むザ・ボーイズだったが、ヒューイはスターライトことアニーと遭遇。再会を喜ぶかと思いきや、ホームランダーが見ている前ではスターライトはヒューイを攻撃せざるを得ない。だがそれにとどまらず、ホームランダーはスターライトにヒューイを殺すよう指示する。

ここでヒューイを救ったのはブッチャーだった。ケンジを解放し、意表をついてホームランダーを抑え込む。ケンジはそのまま逃げ出してしまうが、ブッチャーは、CIAとの交渉の切り札だったケンジを追うことよりもヒューイに手を差し伸べることを選ぶ。MMの説得のおかげだろう。ブッチャーはようやく仲間の方を向いて、ブレーキを踏んだのだ。

ストームフロントの正体

ケンジに追いついたキミコだったが、そこに現れたのはストームフロントだ。初めてその能力をみせ、電撃で二人を吹き飛ばしてみせる。そしてこの戦いの中で、ストームフロントは民間人を殺戮していく。しかし“無差別”ではない。そこは黒人達が住む地域のマンション。エピソード2まで痛快な存在感を見せていたストームフロントは、とんでもないレイシストだったのだ。

ケンジの手をもぎ取り、首を絞めあげるとんでもないサディストのストームフロントは、ケンジに「アジア野郎 (fuckin’ yellow buster) め」と吐き捨ててその命を奪う。白人至上主義のレイシストとしての顔が明らかになる。

「俺の獲物だぞ」と言うホームランダーに対し「早い者勝ちよ、おじいさん」喧嘩を売るストームフロント。事件の収束後、ヴォート社長はコンパウンドVが使用されていたことについて「真実を明らかにする」としつつ、科学者や前副社長マデリンに責任を転嫁しようとしている。

更に話題をスーパーテロリストによる襲撃に差し替え、「アメリカにはヒーローが必要」「アメリカが戦場になった」というお決まりのセリフを繰り出すつつ、ストームフロントの活躍を取り上げる。新たなヒーローを登場させることで人々に熱狂を与えるいつものアメリカのやり方だ。

フラッシュを浴びるストームフロントがテレビに映る様子をキミコが睨みつけ、『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード3は幕を閉じる。

『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』では、キミコ役の福原かれんカレンが、撮影終了は昨年末だったが、シーズン2はタイムリーな内容になったと話している。

ストームフロントははっきりとアジア人に対する差別意識を表明したが、コロナ後に現れたアジア人を差別する女性達は「カレン」と呼ばれ、社会現象にまでなっていた。同じ名前を持つ福原かれんは「本当に迷惑」と語っているが、「カレン」についてはザ・ボーイズキャストがファンにマスクの着用を呼びかけた際にも話題になっている。

また、エピソード3の脚本を手掛けたクレイグ・ローゼンバーグは、エピソード3の最後にストームフロントの素顔が明らかになる演出は意図的なものであることを認めている。レイシストという設定を前面に出さないことを心がけ、人種差別主義者としての一面を最後に明らかにすることで、差別の形は様々であり、あからさまに表に出るものではなく陰湿なものであるということを示している。

『ザ・ボーイズ』の製作総指揮でショーランナーのエリック・クリプキもまた、ストームフロントについては「今日見られるようなヘイトや不寛容さというのは、より陰湿なもの。それをストームフロントを通して表現したかった」と語っていた。ストームフロントの「暗い側面」について言及していたが、シーズン2エピソード3でそれが明らかになったのだ。

「千人の剣士とともに丘を越えて」で流れた音楽

ビリー・ジョエル「オンリー・ヒューマン」

エピソード2と同様、エピソード3でもビリー・ジョエルの「オンリー・ヒューマン」(1985)がMVと共に使用されている。今回でようやくMVが流されていた理由が明らかになる。ヒューイは「オンリー・ヒューマン」のMVで自殺しようとしている男性に自身の状況を重ね合わせていたのだ。

「オンリー・ヒューマン」の原題は「You’re Only Human (second wind)」。「オンリー・ヒューマン」の曲中では、ビリー・ジョエルは「君はただの人間だから失敗もある。でもsecond windが来るから大丈夫」という内容を歌っている。副題で歌詞にも登場する「second wind」とは、直訳すると「第二の風」だが、「元気」「生きる気力」という意味を持っている。

そしてエピソード3では、ヒューイは「second wind」という言葉を何度も使っている。「君のおかげで風向きが変わった (I got my second wind, it’s you.)」「君は生きる力だ (you are my second wind.)」という言葉を、スターライトの留守電に残し、クジラの体内でもビリーに「何を待つっていうんだ?」と聞かれ、「生きる力だ (my second wind)」と答えている。

St. john「Filthy Stinking Rich」

Aトレインがクラブでチルっているシーンでは、St. johnの「Filthy Stinking Rich」が流れている。「あなたは不道徳な金持ち」と女性に歌わせるこの曲は、Aトレインが金に執着していることを示している。セブンとしての今の地位を失いたくないという思いから、体の状態が万全ではない中でも復帰を急がせたのだ。

この“お金”にまつわる流れは、エピソード3内のスターライトとの会話でも登場する。Aトレインのお金に対する執着は、単なる個人の性格として片付けることのできない社会的な要因が含まれているのだろう。Aトレインの黒人としての苦悩は、ジェシー・T・アッシャーが『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』で語っていることでもある。

そしてエピソード3「千人の剣士とともに丘を越えて」では、シーズン2で初めてエンディングに既存の曲は使用されず、オリジナルサウンドトラックのインストが使用されている。二話連続でヒューイの微妙な表情で終わりを迎えていたが、今回は怒りにふりえるキミコの表情でエンディングを迎えており、エピソード3の終わりが様々な展開の始まりであることも示唆している。

『ザ・ボーイズ』シーズン2は最初の3エピソードが同時配信され、今後は毎週金曜日に1話ずつが配信される。この配信方法も巧みに利用した演出が行われていることは間違いないだろう。次々と起こる衝撃的な事件をどのように回収していくのだろうか……。

『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」のあらすじと解説はこちらから。

シーズン2エピソード2「正しい準備と計画」のあらすじと解説はこちらから。

『ザ・ボーイズ』シーズン2は、Amazonプライムビデオで10月9日まで毎週金曜日に更新。

キャスト達が各話の裏側を語るアフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』も同時公開中。

原作コミックの日本語版はG-NOVELSより発売中。

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齋藤 隼飛

1991年生まれ。
社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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