人気沸騰のAmazonドラマ『ザ・ボーイズ』
人気沸騰中のAmazonドラマ『ザ・ボーイズ』。腐敗したスーパーヒーローにスーパーパワーを持たない主人公たちが立ち向かうストーリーは、ヒーローもののコンテンツで溢れるエンタメ界に衝撃を与えている。
そんな中、数少ない善意のスーパーヒーローとして登場するのが、エリン・モリアーティ演じるスターライトことアニーだ。新米ヒーローのスターライトは、スーパーヒーロー集団セブンで性被害に遭い、ヒーローたちの腐敗した現実を知る。それでも権力に屈することなく、真っ直ぐな自分でいることを選ぶ彼女の姿は、見るものに勇気を与えた。
エリン・モリアーティが語る
そのスターライト/アニーを演じたエリン・モリアーティが、米CNETのインタビューにて、自身のヒーロー観について語っている。勧善懲悪ではない複雑な世界観を持つ『ザ・ボーイズ』の魅力について、エリン・モリアーティはこう語っている。
『ザ・ボーイズ』がクールなところは、スーパーヒーローが存在する世界で起きることはとても極端であるにも関わらず、私たちが向き合わなければならない問題は非常に人間的で普遍的なものだという点です。多くのスーパーヒーロー作品が扱わない、地に足のついた人間的な要素が含まれているのです。
人生で経験することの多くはグレーな領域にあります。私たちは物事を白か黒かで判断したがりますが、そうでないことも多いのです。このドラマの最大のポイントの一つは、私たちは (物語で) 良いモンと悪モンだけを設定したくなりますが、人々をそのように分類するのは決して簡単なことではないということです。スーパーヒーローのドラマであろうと実生活であろうと、人々をそのように分類することはできず、物事はグレーな領域にあることが多いのです。
多くのスーパーヒーロー映画/ドラマが扱わない部分を描いたという点は、ドラマ『ザ・ボーイズ』が人気を集めている一番の理由だ。ヒーローにも汚い部分があり、そしてそれに立ち向かう人々もまた完璧ではなく弱さを抱えるという特異な設定は、エリン・モリアーティが「非常に人間的なもの」と語った通り、一周して説得力のある設定でもある。
「権力は腐敗する」
また、ドラマ『ザ・ボーイズ』における腐敗したヒーロー達は、現実世界における様々な著名人・権力者の比喩として捉えられている。エリン・モリアーティは、ヒーロー的な存在との向き合い方について、こう述べている。
私たちはいつもヒーローやセレブ、政治家たちを崇めています。それがスーパーヒーローであるか、セレブであるかにかかわらず、彼女ら/彼らを偽りの神として崇めているんです。超越者としてね。でも、実際には、権力は腐敗するんです。
実際には、権力は腐敗する——SNSを通して、セレブはもちろん政治家であっても、個人に対する熱狂の視線が注がれる現代において、彼女は『ザ・ボーイズ』の作品性にも通じる冷静な視線を持ち合わせている。
スターライト/アニーの人間らしさ
一方で、否、だからこそ、スターライト/アニーの演じ方について、彼女は非常に真摯な態度を示している。
スターライト/アニーのキャラクターに敬意を払っていましたし、決してステレオタイプな演じ方をしないようにしました。彼女が置かれている状況を感情で捉えるようにして、できる限り人間的な表現を心がけました。(撮影の) 70%はコスチュームを着ていたんですけどね。
彼女はスーパーヒーローで、手から光を放つことができたとしても、彼女が直面している問題はとても人間的なものです。多くの若い女性が何らかの形でスターライトと同じ経験をしています。彼女の人間らしさと抱える問題の双方を尊重するようにしました。
エリン・モリアーティが繰り返し使っているのは、「人間らしさ」「人間味」という言葉だ。スーパーヒーローでありながら、ある種もっとも人間的とも言えるのがスターライト/アニーのキャラクター。故に、彼女はドラマを観る人々が共感できるような表現を心がけていたのだ。救いのない物語にも思えるドラマ『ザ・ボーイズ』が人気作品になった理由の一つには、彼女が演じたスターライト/アニーの愚直な人間味があるのかもしれない。
なお、エリン・モリアーティは、同インタビューでマーベルとDCコミックスのどちらが好きかを尋ねられ、「マーベル」と答えている。ロバート・ダウニー・Jr.演じる『アイアンマン』とロン・パールマンが演じた『ヘルボーイ』のようなキャラクターを重視したスーパーヒーロー作品が好きなのだとか。エリン・モリアーティはNetflixオリジナルのマーベルドラマ『ジェシカ・ジョーンズ』(2015-2018) にも主要キャラの一人として出演している。
“スーパーヒーロー” スターライトとして堂々の演技を見せたエリン・モリアーティ。独自のヒーロー観を得たようにも見える。今後もモリアーティがヒーローを演じる姿は見られるだろうか。
『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語翻訳版は、G-NOVELSより発売中。ドラマ『ザ・ボーイズ』はAmazonプライムビデオで独占配信中。
Source
CNET