性暴力に嘘……“正義の味方”がクズだったら? 『ザ・ボーイズ』シーズン1 第1話あらすじ【ネタバレあり】 | VG+ (バゴプラ)

性暴力に嘘……“正義の味方”がクズだったら? 『ザ・ボーイズ』シーズン1 第1話あらすじ【ネタバレあり】

©️Amazon Studios

Amazonプライム・ビデオ『ザ・ボーイズ』が大人気

Amazonプライム・ビデオで配信されているドラマ『ザ・ボーイズ』が人気を集めている。日本からも福原かれんがメインキャラクターの一人として出演している同作のシーズン1は、全8話の構成で2019年7月26日に配信を開始。配信開始2週間でAmazonオリジナルドラマとしては最も多く視聴されたドラマの一つとなった他、オンラインデータベース・IMDBのレビューでは10点中9.0点 (2019年8月11日現在) を記録し、こちらもAmazonオリジナルドラマの中では最高の評価となった (歴代テレビドラマ全体の中でも36位)。『ザ・ボーイズ』は既にシーズン2の製作も決定している。

原作はガース・エニスとダリック・ロバートソンによる同名コミック。アラン・ムーアのコミック『ウォッチメン』でなされた「ヒーローの悪事を誰が見張るのか」という問題提起を、より踏み込んで描いた作品だ。一体『ザ・ボーイズ』の何が人々を惹きつけているのか。今回はシーズン1、第1話のあらすじをネタバレありで紹介しながら、その魅力に迫る。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン1、第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン1第1話あらすじ

『ザ・ボーイズ』シーズン1の第1話「発端」は、「VOUGHT STUIDOS」という架空のスタジオ名がヒーロー映画のオープニング風に表示されるシーンから始まる。少年たちがヒーロー映画について議論を交わしているところに強盗犯の暴走車両が突っ込むが、スーパーヒーローのクイーン・メイヴ (演: ドミニク・マケリゴット) とホームランダー (演: アントニー・スター) が少年たちを助ける。この時点で、エンターテイメント (商業) としてのスーパーヒーローと、市民を守るスーパーヒーローが両立していることが分かる。

このスーパーヒーローたちは、オープニングで表示されたスタジオ名にもなっていたヴォート社によって管理されている。200名以上のスーパーヒーローを抱えるヴォート社だが、その中でも精鋭のトップヒーロー7人が“セブン”と呼ばれている。ヴォート社はメディア向けにカンファレンスを開き、人々にヒーローへの憧れを抱かせ、政治家の危機感を煽って“防衛力”を売りつけ、グッズや映画、テーマパークの収益を得ることでスーパーヒーロービジネスを成り立たせていた。

気弱な主人公ヒューイ

一方、ヒーロー達の活躍を横目に街の電気屋で働く主人公のヒューイ・キャンベル (演: ジャック・クエイド) は、上司に昇給の要望を言い出せない気弱で平凡な青年だ。それでも彼を引っ張ってくれる恋人・ロビン (演: ジェス・サルゲイロ) の存在が彼の拠り所……と思ったのも束の間、ロビンは、セブンのメンバーで高速移動ができるスーパーヒーロー・Aトレイン (演: ジェシー・T・アッシャー) に轢かれ、死んでしまう。その描写も含め、『ザ・ボーイズ』はシーズン1、第1話の冒頭から衝撃の展開を見せてくれる。

『ザ・ボーイズ』シーズン1は、この事件をきっかけに物語が発展していく。最愛の恋人を失ったヒューイは、ヴォート社から4万5千ドルの賠償金で示談 (口止め) を提示される。ヒューイは今回の事故についてメディアへ嘘の言い訳をするAトレインの態度に怒るが、気弱な彼はヴォート社の職員にその怒りをぶつけることができない。ヒューイは、サイモン・ペグ演じる父から「お前はこれまでも戦いを避けてきた」と、ヴォート社と争うことはせず示談を受けるよう説得されるが、納得できずにいた。

どこに行っても現れるAトレインの広告に動揺するヒューイ。そんなヒューイの前に現れたのが、カール・アーバン演じる謎の男、ビリー・ブッチャーだ。ブッチャーは、「どれだけの乳母が虐待をしている?1%以下でも、全世界で監視カメラが10億ドル売れている。教育を与えれば人はなんでも信じる」とスーパーヒーロービジネスを揶揄する。

何十億ドルもの産業に成長し、大企業や政治家をも取り込んだスーパーヒーロービジネス。巨大な力を得ていることは確かだが、ヒーローたちの悪行が世間で報道されない理由は、人々がヒーローに守られたいと願っており、その暗部について誰も知りたがらないからだと、ブッチャーは解説する。ブッチャーはヒューイに、セブンへ復習するための共闘を持ちかける。一度は逃げようとしたヒューイだが、既に失うものがないことを悟ったヒューイはこの話に乗る。シーズン1、第1話きっての名シーンだ。

スーパーヒーローの現実を突きつけられるアニー

その頃、スーパーパワーを持つアニー (演: エリン・モリアーティ) は、セブンの新メンバーになるべくオーディションを受けていた。純粋に世界を救いたいとスーパーヒーローになることに憧れていた彼女は、面接で「世界を救うことが子供のころからの夢」と話し、見事セブン入りのチケットを手に入れる。多くのファンとメディアが詰めかける中、アニーは新たなヒーロー“スターライト”として、セブンの一員であるディープ (演: チェイス・クロフォード) と共にカンファレンスに登壇する。

アニーは自分の一挙手一投足が全てビジネスとして扱われることに違和感を感じながらも、セブンの一員に加われたことを喜んでいた。だが、追い打ちをかけるように酷い現実が彼女に突きつけられる。ディープはセブンのナンバー2としての自分の地位を利用し、スターライトことアニーをセブンから追い出さないことを条件に性行為を強要するのだ。

トイレで嘔吐し涙を流すアニーに、先輩ヒーローのクイーン・メイヴは「皆にそんな顔を見せてはいけない」と忠告する。透明化できるセブンのメンバー、トランスルーセント (演: アレックス・ハッセル) がトイレを覗いていたことも発覚し、アニーの精神状態はいよいよ追い込まれて行く。それでも、小さい頃から受けてきた親の期待を背景に、母親に本当のことを言い出せずにいた。

立ち上がる二人

そして、ヒューイとアニーの物語が交差する。二人は一般人同士として偶然出会い、アニーはヒューイに悩みを打ち明ける。彼女はディープから受けた性暴力について、母親の「笑顔で最後までやり抜きなさい」という言葉を思い出し、戦うことをやめたと振り返る。自分が思っていたよりも強くなかったということに失望したという。ヒューイはある女性に言われたという「転んだら立ち上がればいい」という言葉を伝え、アニーに、仕事に誇りを持っているということ、自分が戦士だということを思い出させる。アニーは「クソ野郎の頭を蹴り落としてやる」と宣言し、セブンに戻っていくのだ。

ヒューイはその後、Aトレインとの示談交渉に応じるフリをしてヴォート社に潜入、盗聴器を取り付ける。恋人を轢き殺されたトラウマに襲われながらも、大仕事をやってのけるのだ。だが、それを見ていたのは透明化能力を持つトランスルーセント。彼は電気屋の店番に戻ったヒューイを襲撃する。しかし、ザ・クラッシュの名曲「ロンドン・コーリング」(1979) が鳴り響く中、助けに現れたのはブッチャーだ。ヒューイとブッチャーは共闘してトランスルーセントを倒すが、その頃、セブンのトップに立つ“聖人”ホームランダーは、スーパーヒーローたちの弱みを握る政治家を始末していたのだった……。

以上が『ザ・ボーイズ』シーズン1、第1話のネタバレあらすじである。型破りのスーパーヒーロードラマ『ザ・ボーイズ 』には、シーズン1の第1話だけでも様々な比喩が散りばめられていた。スーパーヒーローがエンタメ界を賑わし、人々に大きな影響を与えている状況は現実そのもの。加えて、ヒーローでなくとも、セレブやアーティスト、それに政治家や社会活動家など、市民の味方であったはずの人々が、裏では性暴力やパワハラを行っていたという話は現実社会にも蔓延している。ブッチャーが、加害者が持つ権力の強大さよりも、人々が問題から目を逸らしていることが原因だと指摘したことは、現実に生きる私たちにも新たな視点をもたらしてくれるだろう。

ヒーロー自身が自戒するのではなく、一市民がヒーローの腐敗に立ち上がる『ザ・ボーイズ』。シーズン1はAmazonプライムビデオで独占配信中。

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