『ザ・ボーイズ』シーズン2はストームフロントに注目
AmazonプライムビデオのオリジナルSFドラマ『ザ・ボーイズ』。ガース・エニスとダリック・ロバートソンの同名コミックを実写化した作品で、2019年7月に公開されると、Amazonドラマ史上ナンバーワンのヒット作品となるまで人気を集めた。
現在、『ザ・ボーイズ』はシーズン2の製作が進んでおり、シーズン2から登場する新キャラクターの存在にも注目が集まっている。特に、スーパーヒーローチームのセブンに新加入するストームフロントの存在は注目の的だ。
俳優のアヤ・キャッシュが演じるストームフロントは、3月にその姿が公開されたばかり。原作コミックではネオナチの男性キャラクターだったが、ドラマ版では女性が演じ、フェミニストという設定も加わった。アヤ・キャッシュ自身が語るストームフロントの特徴については、以下の記事に詳しい。
エリック・クリプキが語る
そんなストームフロントについて、『ザ・ボーイズ』を統括するショーランナーであるエリック・クリプキも口を開いた。米Comingsoon.netのインタビューで、物語にストームフロントが加わる意味について語っている。
コミック版のストームフロントは——私はコミックが大好きですし、強くリスペクトしていますよ——真っ直ぐなキャラクターだったんです。彼の最初のセリフも「バカモノ!!」という感じでしたから。まさにナチスっぽいキャラクターだったんですよ。そういうキャラクターをお披露目するっていうのは簡単なことではありません。
あまりネタバレせずに言うと、作家の「世界にとって悪いことは、作品にとっては良いこと」という考えの下では、現実の世界で起きていることを扱う傾向にあるんです。私たちはみんなニュースジャンキーですからね。それで、このスーパーヒーローたちをどういう風にメタファーとして使えるのだろう、ということを考えるんです。
私は、ホワイトナショナリズムが台頭していることにゾッとしていますし、哀しく思っています。現在の状況は、1940年代のそれとは違う形をとっています。ソーシャルメディアが活用され、若い人々が男性も女性も (ホワイトナショナリズムに) 惹きつけられているんです。
ですから、私たちはそうした状況を表現できるキャラクターを創り出すことに関心を持ちました。コミック版の姿とは異なりますが、彼女と彼は同じ腐った魂を持っています。
ホワイトナショナリズムとは
エリック・クリプキが言う「ホワイトナショナリズム」とは、白人であることにアイデンティティを見出し、白人同士の連帯と結束、利益保護を呼びかける立場を指す。もちろん、ホワイトナショナリズムは、マイノリティの立場からおこる民族ナショナリズムとは本質的に異なるものだ。ホワイトナショナリズムには、数的・制度的優位に立つ状況や加害の歴史を直視しない歪んだ認識が存在する。それらを直視できていれば、マジョリティが不平等に利益を得ていることに対して批判的な立場を取らざるを得ないだろう。
エリック・クリプキが「1940年代のそれ」と話しているのは、ナチスドイツによる白人至上主義の立場のことで、現代ではSNSを通じてホワイトナショナリズムがよりフランクな形で若い人々に受け入れられているという。エリック・クリプキは、ストームフロント役にアヤ・キャッシュを起用することで、ホワイトナショナリズムは“マッチョなおじさんのもの”という固定概念を覆そうとしているのかもしれない。
アヤ・キャッシュに託されたストームフロントは、どのようなメッセージを届けてくれるのだろうか。
新型コロナの影響も
なお、『ザ・ボーイズ』シーズン2については、ロサンゼルスで3月15日に予定していたPaleyFestでなんらかの発表があると見られていたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由にイベント自体が延期となった。エリック・クリプキのコメントは、ファンがシーズン2についてのニュースを待ち望む中での新情報となった。
多くの映画作品が公開延期となる中、Amazonナンバーワンドラマの『ザ・ボーイズ』シーズン2は2020年9月4日(金)より配信を開始する。
ドラマ『ザ・ボーイズ』はシーズン1がAmazonプライムビデオで配信中。原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。
また、コミック版は米国で8年ぶりの新作が発売される。詳細は以下の記事から。
Source
Comingsoon