フランス版『メガロボクス』 声優にムスリムラッパー起用で話題に | VG+ (バゴプラ)

フランス版『メガロボクス』 声優にムスリムラッパー起用で話題に

via: Médine Instagram

フランスで『メガロボクス』声優が話題に

2018年に発表された『メガロボクス』

2018年に放送・配信され、大きな話題を呼んだSFボクシングアニメ『メガロボクス』。『あしたのジョー』(1968-1973) 連載開始50周年記念作品として制作された同作は、米クランチロールの“アニメアワード 2019”で最多部門ノミネートを果たすなど、アメリカでも高い評価を得た。

終わらない“メガロボクス熱”

日本ではひと段落した感もある“メガロボクス熱”だが、実はアメリカではカートゥーンネットワークでの英語吹き替え版の放送が2019年3月23日に終了したばかり。テレビ放送を終えて、改めてレビュー合戦も盛り上がりを見せている。また、ドイツではドイツ語版『メガロボクス』のDVDセットが3月8日に発売4-5月のANIMAXでの放送が決定するなど、ヨーロッパにも勢力図を拡大している。

フランスでもDVD&Blu-ray発売

更にさらに、4月24日にはフランスで『メガロボクス』のDVD&Blu-rayが発売されることも決まっている。日本語版にも付属していた特製メイキングブックもついてくる豪華仕様だ。そんなフランス語版『メガロボクス』のBlu-rayのパッケージを、フランスのあるラッパーがインスタグラムに投稿している。

「シャーク鮫島の声を担当するよ」とコメントを残しているのは、フランスのムスリムラッパーとして名を馳せているメディン (Médine) だ。コメント通り、フランス語版『メガロボクス』で、ジョーと対戦するシャーク鮫島の声を担当している。

戦う社会派ラッパー

1983年生まれ、アルジェリア系のメディンはこれまで、移民や抑圧された人々の代弁者として、ラップを通してメッセージを発信し続けてきた。フランスではラッパーとして名を馳せている彼だが、世界的には、2005年にTIME誌に寄稿した「How Much More French Can I Be?」の文章でも知られている。ヨーロッパに暮らすイスラム教徒の代弁者でもあるメディンは、政府や世論に対する挑戦的で挑発的な活動を続けてきた。近年では、フランスの極右政治家から攻撃的な批判を浴びることもある。それでも理念を曲げない彼の姿は、人々から絶大な支持を受けており、インスタグラムのフォロワー数は23万人を超えている。

社会派ラッパーがアニメ声優?

メディンが日本アニメの声優を——フランスメディアは、今回の起用を驚きをもって報道している。アニメメディアよりも音楽メディアがこぞって報じており、「新たな挑戦!」という見出しが躍っている。「社会派ラッパーがアニメの声優!?」と、フランスの音楽畑の人々が驚くのも無理はない。だが、『メガロボクス』がSFというギミックを利用して描き出したのは、貧富の格差が極限化した近未来をサバイブしようとする人々の姿だ。国籍も人種も入り混じった格差社会を乗り越えていこうとするストーリーはきっと、抑圧される人々の側に立つメディンの心にも響いたのだろう。

フランスのメディンファンも『メガロボクス』のストーリーに触れれば、なぜこの社会派ラッパーが同作に出演したのかが分かるはずだ。日本でも、3.11後に反原発を掲げていたラッパーのCOMA-CHIが同作に劇中歌を提供している。Mabanuaのビートが牽引する『メガロボクス』のバイブスは、世界共通だ。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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