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『メガロボクス』海外の反応は…?
高い評価を得た『メガロボクス』
2018年4月よりTBS系で放送されたアニメ『メガロボクス』は、アニメファンに衝撃を与えた。同作は、『あしたのジョー』(1968-1973)の連載開始50周年記念作品として制作されたSFボクシングアニメ。経済格差が拡大した近未来で、“ギア”と呼ばれる強化骨格を身につけたボクサー同士の戦いを描いた。海外での評価も高く、アニメ配信プラットフォームの米クランチロールが開催した“アニメアワード 2019”では、『メガロボクス』は最多8部門でのノミネートを果たした。
“アニメアワード”では無冠…
だが、『メガロボクス』は惜しくも受賞を逃し、ファンの間では驚きと落胆の声が広がっている。そこで、今回は改めて『メガロボクス』の海外での評価を振り返っておきたい。海外のレビュアー達は同作にどのような評価を下していたのだろうか。
『あしたのジョー』と比較
アメリカ人は『あしたのジョー』を知っている?
北米最大のアニメ情報サイト・ANIME NEWS NETWORKのダリル・スラト記者は、「あしたのジョーの今日——メガロボクスはクラシックをアップデートした」と題した特集を公開。
スラト記者によると、漫画版およびTVアニメ版『あしたのジョー』の完全版は、アメリカでは合法的には流通していないという。アメリカのアニメファンが『あしたのジョー』に触れる機会があったとすれば、DVDとBlu-rayで発売されたアニメ映画版が主なものになるそうだ。
同記者は、原案となった『あしたのジョー』の回想を挿入しながら、『メガロボクス』で“アップデート”された要素を解説している。
独自の設定を評価
スラト記者は、『あしたのジョー』が執筆された時期が、日本の戦後復興の時期にあたることに着目。その時代特有のハングリーさが表現されていた『あしたのジョー』に対し、『メガロボクス』の舞台は近未来、それもルール無用のメガロボクスというスポーツが物語の中心に据えられている。だが、スラト記者が『メガロボクス』を支持する理由は、まさにその点においてだ。2011年に公開された実写映画版『あしたのジョー』を遠回しに否定しつつ、『メガロボクス』が単に『あしたのジョー』のキャラクター達を、場所と時代の設定を変えて登場させただけでなく、独自の関係性を描き出したということを高く評価している。
We’re thrilled to share this special message from You Moriyama, the director of MEGALOBOX, which was nominated for EIGHT different categories this year! #AnimeAwards
🥊 Vote: https://t.co/WguFWqEXeh pic.twitter.com/TryPDP30qs
— Crunchyroll hoping to reincarnate as a slime 💧 (@Crunchyroll) 2019年1月17日
称賛されるキャラクターデザイン
「ロッキー」と対比
SYFY WIREのクリストファー・イノア記者は、ボクシング映画「ロッキー」シリーズの主人公、ロッキー・バルボアの魅力から語り始め、何も持たない主人公が底辺から這い上がっていくスタイルを『メガロボクス』のジョーにも見出す。その上で、『ルパン三世 PART5』、『東京喰種トーキョーグール』第3期や、『僕のヒーローアカデミア』シーズン3などの放送が始まった豊作のシーズンであったにもかかわらず、『メガロボクス』が一際注目を集めている理由について解説している。
「原作をチェックしたくなる」
イノア記者がその理由の一つとして挙げるのは、森山洋監督にとっては初監督作品であったにもかかわらず、『あしたのジョー』の要素を維持しつつ、オリジナルの作品として成立させたことである。リメイクやリブートが一般的になった現代アニメにおいて、森山監督は『あしたのジョー』を“もう一度作る”ことも可能だったはずだが、そうはしなかった。それでいて、『あしたのジョー』のテーマや要素を作品の根底に残すことに成功している。原作は未見だというイノア記者は「原作をチェックしたくなる」とし、“『あしたのジョー』連載開始50周年記念作品”としての完成度の高さを賞賛している。
『メガロボクス』のキャラデザが、アニメ業界を変える?
加えて、「90年代後半から2000年代前半を思わせる」独特なキャラクターデザインが、他の有力アニメが溢れる中でも、『メガロボクス』を特徴的な作品にしているとした。イノア記者は、「郷愁を感じて90年代に戻りたい思っているわけではない」と前置きしながらも、『メガロボクス』の成功によって、他のアニメスタジオがキャラクターデザインにおいて思い切った冒険に出られるようになることを願う、と綴った。
なお、アニメアワードの受賞作品発表に際して、米アニメ作家のマイルズ・ルナもまた、『メガロボクス』のキャラクターデザインを称賛するコメントを残している。
イノア記者は結論として、「信頼できるストーリーと興味深いキャラクター、ユニークな設定、ドープな音楽、高いクオリティのアニメーション」によって、他の人気作品とも対等に渡り合える作品だと評価している (このレビューが公開された時点で同作は完結していなかった為、暫定的な評価となっている)。
ファンからの評価の高さ
一般ファンの評価は…?
同作への評価の高さは、これらのレビューの中からも読み取ることができるが、評論家による『メガロボクス』のレビューは、それほど多くは公開されていない。海外での『メガロボクス』の評価を示すもう一つの指標は、一般のファンからの評価だ。
「『メガロボクス』ヤバイよ」
配信が開始された直後には、Comicbook.comが「『メガロボクス』は2018年春アニメの意外なスーパースターになるかもしれない」と題した記事を投稿している。第一話の配信を受けてTwitterで盛り上がりを見せるアニメファンの声を紹介した。「今期を (“今年を”かも) 制覇するデビュー作だ」、「『メガロボクス』ヤバイよ。観終わるのが嫌だった。まだ第一話だけど、もう映画で見たい」、「ヒロアカが帰ってきたことは分かってるけど、それよりも『メガロボクス』を観て。とりあえず観てよ、いい?」。
評価の高さは数字にも
海外アニメファンの『メガロボクス』への評価の高さは、数字にも現れている。『メガロボクス』を配信する世界最大のアニメ配信プラットフォーム・クランチロールでは、227人のユーザーが投票で評価を下し、5点満点中4.8点という驚異のハイスコア。89,589人のユーザーが投票したMyAnimeListでは10点満点中8.07点、Facebookのオフィシャルページでは124人の投票で5点満点中4.9点、IMDbでは1,055人の投票で10点満点中8.1点を記録している。
“アニメアワード 2019”では受賞を逃した『メガロボクス』だが、最多ノミネートという結果に恥じぬ高い評価を受けていたことが分かる。同作は、今の時代にはない“何か”を呼び覚ましてくれる作品であり、それは国境を越えても共有されるものでだったのだ。それに、SYFY WIREのイノア記者が述べた通り、とりわけそのキャラクターデザインは現在のアニメ作品の潮流を打ち破るものであった。“無冠の帝王”となった『メガロボクス』が残した爪痕は、今後のアニメ界にどのような影響を与えていくことになるのか。刮目して見届けよう。
Source
ANIME NEWS NETWORK / SYFY WIRE / Comicbook.com