『シークレット・インベージョン』第2話はどうなった?
ドラマ『シークレット・インベージョン』は2023年6月21日(水) からディズニープラスで配信を開始。アベンジャーズを組織しながらも、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) 後に姿を消したニック・フューリーを主人公に据えた物語が描かれる。
ドラマ『シークレット・インベージョン』は全6話で構成される。衝撃の結末を迎えた第1話に続き、第2話ではどんな展開が待っていたのだろうか。今回は第2話の各シーンを解説していこう。なお、以下の内容はネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『シークレット・インベージョン』第2話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『シークレット・インベージョン』第2話「約束」ネタバレ解説
スクラルが地球に戻った理由
ドラマ『シークレット・インベジョン』第2話のタイトルは「約束」。第1話が「復活」だったので、日本語題では二文字縛りで展開していくのかもしれない。そして、マリア・ヒルが腹部を撃たれて血を流すという第1話の衝撃のラストから一転、第2話は1995年のニック・フューリーの姿から幕をあける。1995年とは映画『キャプテン・マーベル』の舞台になった年だ。
フューリーとタロスの出会い、スクラルが一部のクリー人によって迫害されて難民になったこと、ラストで「新しい家」を見つけようと旅立って行ったことが回想として描かれている。そして、1997年のロンドン・ブリクストンの物語は、これまでに描かれていない『キャプテン・マーベル』のその後の物語だ。
スクラルたちが滞在する施設でニック・フューリーに話しかけるヴァーラ (Varra) は、原作コミックにも登場するチョイ役のキャラクターだ。そのヴァーラがフューリーに紹介したのは、ほかでもない少年時代のグラヴィクだった。グラヴィクはクリー人との戦いで両親を亡くした戦争孤児で、ヴァーラはグラヴィクが立派な戦士になると考えてフューリーの元へ連れてきたようだ。
そして、タロスは新しい故郷を探したが暴力と憎悪しか見つからなかったと話す。タロスはフューリーを信じ、フューリーは人類とスクラル人は助け合えると信じ、スクラル人たちに取引を持ちかけている。迫り来る危機に備え、スクラルの力が必要だと考えたフューリーは、スクラル人たちが人間に姿を変えて過ごし、故郷を守ればキャロル・ダンヴァースとフューリーが新しい故郷を見つけると約束していたのだ。
最初に同意したのはソレンで、そこにはガイアの姿もある。勇敢そうに見えるが、“故郷”を交渉材料に本来の姿を捨てさせて自分の星を守らせるというのは非常に危うさを感じる。アベンジャーズの結成前に難民を義勇軍にしたニック・フューリーの“罪”の帰結が今回のスクラル蜂起ということなのだろうか。
タロスの思い
場面は第1話のラストに戻り、ぐったりとしたマリア・ヒルの姿が。フューリーは何者かに連行されている。もう一人、捕まっている人物はアメリカの反ロシア組織AARの顔を使っているスクラル人だ。第1話で顔と精神を盗むシーンが描かれていた人物である。このスクラル人は、わざとらしく「俺はアメリカ人だ!」と喚いている。アメリカ人がロシアに仕掛けたテロだということにするのがグラヴィクたちの狙いだ。
そして、フューリーを連行した人物は擬態したタロスだった。タロスは相変わらずフューリーの安全の確保を第一に動いている。タロスがフューリーに愛想をつかせれば物語は大きく動くが、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) でもフューリーの代わりに働いていたことを考えれば、相当な思いがあるように見える。その背景には一体何があるのだろうか。
そして『シークレット・インベージョン』第2話のオープニングもAIを利用したアニメーションが用いられている。生成AIをめぐる議論については第1話の解説記事を参照してもらいたい。批判が起きた後、制作を担当したMethod Studiosは、AIが作った素材を元に実在のアーティストが作成したため雇用は奪われておらず、むしろAIがクリエイターを補助していると発表した。
一方で、利用された学習元のデータや、そもそも(制作自体にではなく)利用されたAIのトレーニングにどんなデータが利用されたかということの詳細は明かされていない。第2話でこのオープニングが取り下げられなかったということは、この点についても何かしらの倫理的な後ろ盾があるということなのだろうか。ともかく、ドラマを楽しむためにも、時間がかかっても明瞭な説明がなされることを願う。
知らないこと
タロスとニック・フューリーはモスクワ発、ポーランドのワルシャワ行きの鉄道で移動している。ロシアを含むヨーロッパは鉄道で移動できるのだが、ニック・フューリーはアメリカの大陸横断鉄道のアムトラックで母親と共にアラバマからデトロイトまで通っていた時の話をしている。
ニック・フューリーは1950年7月4日生まれという設定(ちなみに演じるサミュエル・L・ジャクソンは1948年12月21日生まれ)。施設やサービスでの人種差別・隔離を禁止する公民権法が可決されたのは1964年のことで、幼い頃はまだ鉄道でも有色人種用車両に乗らなければならなかったことを回想している。有色人種用車両の環境は劣悪で、食道車両は利用できなかったとも語っている。
この思い出語りは、この後にタロスとフューリーが「私が知らないことは?」ゲームを始めることでストーリーにつながっていく。タロスはクリー人がスクラロス星を滅ぼした時に100万人のスクラル人が地球にやってきたことを明かす。ちなみに「ドロージ皇帝の居留地外にいた者は」と言っているが、ドロージという名前は原作コミックに登場するスクラル人のドロージ科学部長からのオマージュだろう。
地球にスクラルが100万人もいたこと、それを知らされていなかったことにフューリーは怒りだすが、「スパイにした」「受け入れたのに消えた」と反論されてしまう。確かにフューリーはスクラルを戦力にしたのだろうし、サノスの指パッチンから復帰した後に宇宙のS.A.B.E.R.基地に行ってしまっている。だが、なかなかその背景が語られないのが気になるところだ。
フューリーは「連絡できたのにしなかった、事実を知られたくないからだろう」と反論し、水掛け論になってしまう。一番良くない喧嘩のパターンである。それでもタロスはかつてのフューリーが掲げたスクラルと地球人の共存という理想を語るが、フューリーは「地球人同士でも共存できていない」と声を荒げる。ほんの数十年前までアメリカ黒人の人々が法的にも差別されていたという先ほどの話と繋げて、フューリーは感情を荒げているのだ。
フューリーは「他の種族を受け入れる余裕など残っていない」という決定的な言葉を口にしてしまう。これは、難民の受け入れに国内の問題を盾に取り組まない政府のスタンスと同じだ。SFは、「もしも」を通して現実と、乗り越えなければいけない壁を見せてくれる。
なお、このシーンではフューリーはガイアからタロスへの連絡を気にしており、二人がまだガイアを裏切り者とは断定していないことが分かる。
評議会のメンバー
ニック・フューリーは一人同盟国イギリスのロンドンにたどり着くと、マリア・ヒルの棺桶をアメリカに運ぶ式に出席している。マリア・ヒルの現在の役職は分からないが、かつては政府機関S.H.I.E.L.D.の副長官まで上り詰めた人物だ。今でも政府からは丁重な扱いを受ける人物のようである。
ここで、マリア・ヒルの母のエリザベス・ヒルが初登場。フューリーは「私を傷つけたい者が彼女を殺した」と正直に話すと、エリザベスはマリアの「ニック・フューリー」に対する忠誠のためにも、その死を無駄にしないように告げるのだった。
ニュースではアメリカ人がロシアでテロを起こした、米政府の関与が疑われているという報道がなされている。現実にも通じるロシアとアメリカの緊張関係が描かれている。容疑者の名前はマーティン・ウォレスで、イギリスの首相パメラ・ロウトンとNATOの事務総長セルジオ・カスパーニが調査を進めていると報じられている。
ちなみにイギリスの女性首相は過去にマーガレット・サッチャー、テリーザ・メイ、リズ・トラスと三人いる。NATOの事務総長セルジオ・カスパーニはスペイン系の名前で、過去にスペイン人が事務総長になったのは過去一人だけである。
評議会へと向かうグラヴィクは、ニック・フューリーについて「殺そうと思えば殺せたが痛めつけたい」と話す。相当な恨みを持っていることが分かる。グラヴィクの目的は地球の征服だけでなく、フューリーへの復讐でもあり、そこにはフューリーへの執着が感じ取れる。『インフィニティ・ウォー』ではアベンジャーズがそうした個人的な感情で足をすくわれたが果たして。
第1話では、タロスは評議会を追い出され、グラヴィクが評議会の一員になったという話が出ていた。そこに出席していたのは、NATOの事務総長にイギリスの首相、アジア系の人物もいる。スクラルは既に世界中で権力の座についているようだ。
唯一軍人然としたグラヴィクは、「犬は自分たちの居住空間を汚したり壊したりしない」と、環境破壊や戦争に触れて人間の愚かさを指摘している。だが、この評議会はグラヴィクの一派がテロを起こしていることを容認していなかった。評議会は平和を守ることを目的としている秘密結社だったようで、規模は違えど人知れず地球を見守っていたエターナルズと被るところもある。
戦争が始まる
グラヴィクは開き直ると、フューリーが「君らが約束を守れば私も守る」という約束を果たさなかった、「フューリーに見捨てられ、地球人に除け者にされた」と主張。地球を奪い取ることを表明する。「どうせ地球人は自滅する」とは耳が痛い言葉だ。「アベンジャーズが戻ったら?」という問いにもグラヴィクは準備をしているという。
英首相のパメラは、独裁的な権限を持つスクラル軍の将軍にグラヴィクを推薦。評議会が徐々に転覆していく緊迫のシーンだ。シャーリーだけは、戦争を望んで故郷を失った、クーデターの支持はしないと表明。『キャプテン・マーベル』では「戦争に勝つのではなく、戦争を終わらせる」というメッセージがあったが、30年の時を経て、『シークレット・インベージョン』では新しい世代の蜂起に直面することになる。
シャーリーは評議会を追放されたが命までは奪われなかった。シャーリーから状況を聞かされたタロスは今でもグラヴィクと話ができる関係だと思っているようで、グラヴィクとの対話を求めるのだった。
グラヴィクは賞賛を持ってニュー・スクラロスに迎え入れられるが、“人類の失敗”の象徴である廃炉になった原発を基地にしていることが改めて意味を持つ。そして、評議会の前のシーンに続き、ガイアがグラヴィクの背中を追うカメラワークが印象的だ。ガイアは情報を得ようとスパイ活動を続けているのだが、評議会の会合にも入れてもらえなかったし、いつまでも届かないグラヴィクの背中を追いかけているようにも見える。
その先では、ダルトン博士という人物によって何らかの実験が行われていた。「収穫物」がなければそれは成功しないようだが、これが対アベンジャーズの秘策ということなのだろう。
ローディ登場
世間では、アメリカがロシアを攻撃したかも知れないという異常事態にEU27カ国の首長と英首相がロンドンに集結。そんなに各国の首長が集まってそれこそテロが起きないかと心配になるが、EUの加盟国が27というのは現実の現在と同じで、イギリスがEUに入っていないのも現実と同じだ。
イギリスがEUを脱退したいわゆる「ブレグジット」は2016年に決定し、イギリス時間の2020年1月に完了した。MCUの世界では、サノスの指パッチンによる人口半減時代の最中だが、予定通りブレグジットは実行されたようだ。
EU+英国は米国政府に釈明を求めることになるが、北米と欧州による軍事同盟であるNATOのトップとイギリス首相がグラヴィク配下のスクラル人である以上、思惑通りにことが運ぶに決まっている。その矢面に立たされたのは、かつてウォーマシンとしてアベンジャーズで戦ったローディ・ローズだった。ローディは今も「大佐」と呼ばれており、『アイアンマン3』(2013) で昇進した時のまま、サム・ウィルソンと同じ空軍の所属になっているようだ。
ニック・フューリーとマリア・ヒルが現場にいたことも指摘されているが、ローディは二人を「完全に私人」と言い切る。これは第1話で大統領に二人が「無断離隊」したと報告した内容と異なる。S.H.I.E.L.D.の崩壊を経て、米国は単独で行動しているようだ。
ローディは、トニー・スタークの相手をしていただけのことはあって、なかなか口が立つ。ロシアの資料に対して信憑性がないとして「CIAで検証しますか?」というのは随分な挑発だ。リットソン大統領が来ていない理由を聞かれても、「フランスやイタリアやイギリスに呼ばれても急には来れません」と容赦ない。2025年もアメリカは「地上最強の国」のようだ。
フューリーとローディの違い
会合を終えたローディにニック・フューリーが電話をかける。ローディが高級スーツのことを聞かれて「もう一着はチタン製」と答えているのは、ウォーマシンのスーツのことで、アイアンマンのスーツもゴールドとチタンの合金で作られていた。「クロアチアに何か言われたか?」「スロバキアだ」というやり取りは、この前のシーンで字幕で「また鼻で笑われたらスーツで爆撃する」となっているシーンが英語では「スロバキアが呆れた顔(eyeroling)をしたらスーツで爆撃する」と言っていたことを回収している。
ついに再会したローディ・ローズとニック・フューリー。共に政府で働いてきた二人だが、「階級マウント」を取ろうとするフューリーにローディは「私が最後の友人だ」と警告する。ローディが言うようにアメリカが孤立し、EUがロシア側についているという状況で、現実で考えればかなり苦しい状況だ。ここに来て『シークレット・インベージョン』はポリティカルスリラーとしても面白くなってきた。
フューリーは、「警備が全員スパイだったら?」と迫り来る脅威についてローディに告げる。「国境のない活動をしている」というのは、ウイルスやAIといった人間が脅威に感じるもののメタファーだろうか。ローディは一旦ヒドラのことかと疑うが、ローディはスクラルのことを知っていた。15年前の時点でアメリカ政府はスクラルに地球を侵略されると恐れていたのだ。フューリーは、アベンジャーズを呼んでも姿をコピーされてテロリストに仕立て上げられてしまうと主張するが、これはフェイクニュースやデマとの戦いを想起させる。
「これは俺の戦争だ」と言い切るフューリーだったが、ローディには協力を求める。ローディはアメリカ政府の特使という立場からこれを拒否するのだが、フューリーは「互いに借りがあるだろ。黒人はコネじゃ昇進できない」と、米国政府内でマイノリティとして助け合ってきた歴史を指摘する。なお、字幕で「黒人」となっているところは、英語では「poeple who look like us(私たちのような見た目の人々)」と間接的な表現を用いている。
また、フューリーが「血を流して力をもぎ取った」と話す「ピアースのような人物」というのは、アレクサンダー・ピアースのことで、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014) でS.H.I.E.L.D.の理事として登場したが、結果的にはヒドラのメンバーであることが明かされた。同作では、ニック・フューリーはボゴタの大使館占拠事件でピアースの娘を助け出したことも語られている。
だが、ローディはこれを断固拒否する。「平凡な白人(men who don’t look like us)から力をもぎ取ってきたのは、次の平凡な黒人に力を渡すためじゃない」「力を持ったのは妥協しないため」として、フューリーに「クビ」を言い渡すのだった。やはり公聴会での「私人」というのは嘘だったようだ。
フューリーは黒人として歩んできた歴史を強調するが、ローディは人種に関係なく生きていける社会を模索しているように見える。世代間の認識の違いとも言えるが、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) ではサム・ウィルソンはそれを乗り越えてみせた。権力を得たローディはこのまま突き進んでしまうのだろうか。
フューリーはマリア・ヒルの死の責任としてクビを言い渡される。それでも、ニック・フューリーは「追い出されてもこじ開ける」と引かない。「俺はニック・フューリーだ」というセリフは、マリアの母エリザベスから言われた「あなたはニック・フューリー」という言葉を引用したものだろう。
そして登場したのは、イギリスの捜査官であるソーニャ・ファルズワース。拷問されていたマーティン・ウォレスの指を切り取ると、その正体がスクラルであることが判明する。グロテスクなシーンだが、『シークレット・インベージョン』のレーティングは16歳以上が対象となっている。死ねば元に戻る性質を利用して、身体の一部を死んだ状態にすれば元に戻るということなのだが、なかなかこれができる人はいないだろう。
それにしてもテロリストとはいえ、ロシア警察に逮捕されたはずのマーティン・ウォレスがソーニャが来る前にも拷問を受けていたというのは、ロシアという国に対する偏見が見え隠れしている……。
グルート、フロスト・ビースト…
ガイアはローザ・ダルトン博士のアカウントを使って情報を探していた。パソコンに表示されたのは、「グルート」「フロスト・ビースト」「カル・オブシディアン」「エクストリミス」という名前とデータだ。それぞれ、MCUの過去作に登場した面々で、ダルトン博士はこれらの生物のDNAを利用したスクラルの人体強化に取り組んでいるのだろうか。
グルートは言わずと知れたガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバー。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)、『エンドゲーム』で地球を訪れて戦った際に切られた腕が残っていたのだろう。
フロスト・ビーストは映画『マイティ・ソー』(2011) でソーが氷の巨人が住むヨトゥンヘイムで戦った四足歩行の獣。『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013) では次元移送に巻き込まれてヨトゥンヘイムからロンドンに飛ばされていた。その個体が回収されたのだろう。
カル・オブシディアンは『インフィニティ・ウォー』でサノスが連れてきた側近の一人。巨漢の戦士だが、ドクター・ストレンジとの戦いで左腕を切り落とされている。この場面でもパソコン上に左手の画像が表示されている。
そして、エクストリミスは映画『アイアインマン3』(2013) に登場した人体の生体電位をコントロールする技術。エクストリミスを投与された人物は身体能力が向上し、高熱のエネルギーを操ることができるようになる。映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) ではマカオの地下格闘技場で戦っていた。
いずれも地球上に来た/いた生物であり、スクラルはその残骸を利用しようとしているようだ。ここに入ってきたグラヴィクは、タロスについて「腰抜けじゃ娘を送り込めない」と話す。タロスはグラヴィクと話せると信じていたが、グラヴィクもまた、かつての将軍のことを認めているようだ。
フューリーの秘密
ブローガンを拷問するソーニャは、ダルトン夫妻がスクラルたちを強くする機械を作っているという情報を手に入れる。そこにグラヴィクの部隊が到着。拷問が行われていた建物に突入するが、ソーニャはそれも見越して脱出口を聞いていたのだ。地下に入るときに「ドストエフスキー的ね」と言っているが、これは『罪と罰』(1866) でラスコーリニコフが殺人をおかした後に逃げるときの場面を言っているのだろうか。または、地下に閉じこもった男の独白を描く『地下室の手記』(1864) のことだろうか。ドストエフスキーはロシアの小説家である。
ブローガンを助け出したグラヴィクだったが、隠れ家には警察が到着していた。ガイアはこの直前に「様子を見てくる」と言って車を離れ、ロシア語で電話をかけていたが、これは警察に隠れ家の場所を密告していたのだろう。仲間たちには、ブローガンが拷問で口を割ったと思わせたのだ。結果、ブローガンは始末されてしまう。やはりガイアはタロスの側についているのだろうか。
孤立したフューリーはある家を訪ねていた。そこにいたのはスクラル人で、姿を人間に変えると、結婚指輪をはめたフューリーと口付けを交わす。フューリーはスクラル人と結婚していたのだ。この人物は、クレジットでは「プリシラ」という名前になっている。
かつて『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) ではフューリーはスティーブ・ロジャースに「妻に追い出された」と言ってスティーブの家に上がり込んでいた。「結婚してたのか」と驚くスティーブに、フューリーは「君が知らないことはたくさんある」と返答していたが、これはプリシラのことを指していたのだろうか。
そもそもフューリーはタロスを「共存できない」と突き放したはず。しかも妻を置いてしばらく宇宙にいたのだから、本当に自由な人である。フューリーの意外(?)な一面が明かされて、『シークレット・インベージョン』第2話は幕をとじる。エンディングで流れている曲はオーティス・レディング「Try a Little Tenderness」(1966) だ。「彼女が一人で待ってるなら、少し優しくしてあげな」「思いのままに抱きしめるだけでいい」と歌われている。
『シークレット・インベージョン』第2話ネタバレ考察&感想
進むスクラルの計画
ドラマ『シークレット・インベージョン』第2話のハイライトは、かつてタロスがその地位にあったスクラルの将軍にグラヴィクが就任したことだろう。これでグラヴィクは100万人のリーダーとなったも同然だ。その上で、ダルトン夫妻はスクラルを強化するマシンの開発を進めているという。
おそらく、グルートやカル・オブシディアンのDNAを使い、擬態できるスクラルに同様のパワーをもたらす実験なのだろう。グラヴィクが話していた“アベンジャーズ対策”というのはこの計画のことなのだろう。まだうまくいっていないようだが、これが実現すれば大量のグルートやカル・オブシディアンのような軍隊を相手しなければならないことになる。
アベンジャーズでも危ういくらいの戦力であり、生身のニック・フューリーも、流石のタロスも肉弾戦では勝てそうにないが、ウォーマシンは助けに来てくれるのだろうか。『シークレット・インベージョン』はローディが主人公の映画『アーマー・ウォーズ』に繋がっていくということだが、次はローディの行動が戦争を呼び起こしてしまうのだろうか。
ガイアは味方?
気になるのはガイアの動向だ。第1話ではテロの計画をタロスに共有したが、リュックは囮だった。ガイアはタロスに情報を提供したつもりだったが、グラヴィクが更に裏をかいたということなのだろうか。今回もブローガンを生贄にした裏切りがあったが、せっかくならばニュー・スクラロスの場所を漏らすぐらいのことはしてもいい。セーフハウスを使えなくするだけでは戦争に与える効果はイマイチだ。
もっとも、ニュー・スクラロスには一般市民もいるため、ガイアもそこには影響を与えたくなかったのかもしれない。また、今回のブローガンへの処置で分かったが、ガイアもグラヴィクを裏切れば同じように始末されてしまうのだろう。グラヴィクは評議会ではシャーリーを生きたまま追放したが、同胞殺しはやらないというわけではなさそうだ。
フューリーの狙いは?
窮地に立たされたのはニック・フューリーだ。アメリカ政府から追放された流浪の老人は唯一の拠り所である妻プリシラのもとへ赴いた。プリシラはロンドンにいたということなのだろうが、1997年にロンドンのブリクストンでフューリーとタロスがスクラルたちを集めていた時からずっとイギリスにいたのかもしれない。
だが、家族の存在というのは、ヒーローやエージェントにとっては弱点になりうる。同胞殺しをやるグラヴィクにプリシラを人質に取られないことを願うばかりだ。あと、気になるのはスクラルの年齢は人間の3倍ということなので、フューリーはプリシラよりもかなり早く亡くなることになる(『マンダロリアン』のディン・ジャリンとグローグーのようだ)。なのにしばらく宇宙にいたなんて……。
それでも、第2話では「あなたはニック・フューリー」「俺はニック・フューリー」という力強い言葉が強調された。誰にも出し抜かせない強固さがフューリーにはある。あるいは、これらのセリフはミスリードで、このフューリーは偽物ということもあり得るだろうか。丁寧に幼い頃の母との思い出話を入れたりするところが余計に怪しいが、果たして……。
あっという間に次回は全6話の折り返しとなる第3話が配信される。第3話ではどんな展開が待っているのか、引き続き注視しよう。
ドラマ『シークレット・インベージョン』は2023年6月21日(水)より、ディズニープラスで独占配信。
第3話のネタバレ解説はこちらから。
第2話で見えた米国の孤立とソコヴィア協定廃止との関係に関する考察はこちらの記事で。
エミリア・クラークが演じるガイアの原作での設定はこちらから。
第1話のネタバレ解説はこちらから。
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