米国の孤立、ソコヴィア協定も関係?『シークレット・インベージョン』第2話ネタバレ考察 | VG+ (バゴプラ)

米国の孤立、ソコヴィア協定も関係?『シークレット・インベージョン』第2話ネタバレ考察

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『シークレット・インベージョン』から見るポリティクス

MCUドラマ『シークレット・インベージョン』は2023年6月より配信をスタート。かつてアベンジャーズを結成した元S.H.I.E.L.D.長官のニック・フューリーを主人公に据えた物語を描いている。ニック・フューリーは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) での人口半減、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) での復活を経て地球を離れた。そのフューリーがスクラル人による蜂起を前に地球に帰還するというストーリーだ。

『シークレット・インベージョン』は、政治要素の詰まったポリティカル・スリラーとしても質の高い作品となっている。2025年の地球を舞台にしたアメリカ合衆国と他国の緊張関係も注目ポイントの一つだ。今回は、『シークレット・インベージョン』第2話で見えたMCU世界における2025年のアメリカの状況と、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022) など他作品とも繋がるある要素について考察していきたい。

なお、以下の内容は『シークレット・インベージョン』第2話と、それまでのMCU作品のネタバレを含むので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『シークレット・インベージョン』第2話の内容に関するネタバレを含みます。

『シークレット・インベージョン』第2話で描かれたこと

ドラマ『シークレット・インベージョン』第2話では、スクラルのグラヴィク一派がロシアのモスクワで起こしたテロの現場にニック・フューリーがいたことから、アメリカ政府がロシアにテロを仕掛けたのではないかという嫌疑がかけられることになる。テロの実行犯として逮捕されたのはアメリカの反ロシア組織のメンバーに擬態したスクラル人で、フューリーはアメリカ政府の人間であるため、そう疑われても仕方ない。

この状況に、元アベンジャーズメンバーで現在はリットソン米大統領の右腕として働くローディ・ローズ米空軍大佐がロンドンに召集される。EU各国の首脳と英首相が米政府の立場を問いただす場としての公聴会が開かれたのである。この時点で英首相と、北米と欧州による軍事同盟のNATOの事務総長がグラヴィク配下のスクラル人の擬態であり、欧州各国がロシア側につく中で米国は孤立していく。

この状況に対してローディが下した決断は、ニック・フューリーを米政府から解雇することだった。ローディは、元S.H.I.E.L.D.副長官、つまり政府の高官だったマリア・ヒルを死なせたことへの責任と話しているが、いわゆるトカゲの尻尾切りと取られてもしょうがない。一方で公聴会ではローディはマリアもフューリーも私人だとも発言しており、米国は同盟国の海外政府に対してもオープンではないようにも思える。

米国の独自路線

『シークレット・インベージョン』を第2話まで観て感じるのは、MCU世界の米国が独自路線をひた走っているという印象だ。第1話に登場したリットソン大統領は、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022) に映り込んだテレビのテロップでニュー・アスガルドと貿易協定を結んだことが報じられていた。一方で、同作ではヴィブラニウムを売ってくれず、ヴィブラニウム探知機を開発したリリ・ウィリアムズを米国から奪ったワカンダへの攻勢に出るつもりで、「国の弱体化」を目論む場面もあった。

ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) では、宇宙からの危機に対応することとキャロル・ダンヴァースの帰還に備えてマリア・ランボーが創設したS.W.O.R.D.(知覚兵器観察対応局)のタイラー・ヘイワード長官が暴走。ヴィジョンの遺体を利用した兵器を作ろうとしてラストでは逮捕されている。

『シークレット・インベージョン』では、米国は「人類史上最も複雑な航空宇宙防衛システム」であるS.A.B.E.R.宇宙ステーションを運営していることが明かされている。映画『マーベルズ』の予告でもS.A.B.E.R.宇宙ステーションに滞在するニック・フューリーの姿が描かれているほか、映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) でもフューリーはこの宇宙ステーションにいたものと考えられる。

ヒドラに乗っ取られていたことが発覚して崩壊したS.H.I.E.L.D.、サノスとの戦いの中で自然解散したアベンジャーズ、それに代わる組織として、米国はS.W.O.R.D.やS.A.B.E.R.を運営しているようだ。しかし、ローディは第1話でフューリーとマリアのことを「事実上の無断離隊」と断じたにもかかわらず、英・EUとの公聴会では二人を「私人」扱いしていた。S.H.I.E.L.D.やアベンジャーズは他国との協調路線をとっていたが、指パッチンからの復帰後の米国は、やはり他国に隠し事をして独自路線をとっているように見える。

二つの方針

S.H.I.E.L.D.に代わる組織はもう一つある。それがフェーズ4の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) から中心的な役割を果たすようになったダメージコントロール局(D.O.D.C.)だ。ヒーローだろうがヴィランだろうが、スーパーヒューマンが絡む事件には武力を持って対応するのがダメージコントロール局の特徴で、ドラマ『ミズ・マーベル』(2022) ではミズ・マーベルの、ドラマ『シー・ハルク』ではシー・ハルクの前に立ちはだかった。両作では、ダメージコントロール局の管轄下にある最高警備レベル刑務所が登場している。

ダメージコントロール局の特徴は、米国の連邦組織であり、州を跨ぐことはできるが、S.H.I.E.L.D.のように海外での活動を行っていないということだ。そこには、スーパーヒーローを国連の管理下に置くソコヴィア協定がアベンジャーズを二分し、サノスへの対応の初動が遅れたこと、結果として人口半減を招いたことへの反省があるのかもしれない。

つまり、フェーズ4以降の米国は国際協調を捨て、①国内においてはダメージコントロール局がヒーローでもヴィランでもスーパーヒューマンが問題になる前に芽をつむ(刑務所に入れる)こと、それとは別に②独自に宇宙外からの危機に対応するS.A.B.E.R.をニック・フューリーに委ねること、の二つの方針を置いているのではないだろうか。

廃止されたソコヴィア協定

そうした状況の中で、重要なポイントになるのがソコヴィア協定の廃止だ。ソコヴィア協定は、前述の通りスーパーヒーローを登録制にして国連の配下に置く協定で、アイアンマンことトニー・スタークが賛成した一方で、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースが反対してアベンジャーズは二分された。

ドラマ『シー・ハルク』の第8話では、デアデビルことマット・マードックが法廷でソコヴィア協定が廃止されたことに言及している。一方で、ドラマ『ワンダヴィジョン』ではS.W.O.R.D.のヘイワード長官がヴィジョンの死体を利用して兵器を作ることを試みたが、これはソコヴィア協定違反であるため、その罪をワンダに着せようとしていた。つまりこの時点でソコヴィア協定は生きていたのだ。

更に、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) では、シャロン・カーターがスティーブ・ロジャースの亡命を手助けしてソコヴィア協定違反となったため逃亡生活を送っていることが明かされた。同作は2024年4月が舞台になっているため、人口が復活した2023年10月から半年が経った時点でもソコヴィア協定は廃止されていなかった。

ドラマ『シー・ハルク』の舞台は、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) の2024年4月よりも後ということしか分かっていない。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』後の2024年4月以降にソコヴィア協定が廃止されたということになるが、ソコヴィア協定が廃止された背景には何がったのだろうか。

ソコヴィア協定廃止の理由は?

ここからは完全に考察だが、①ソコヴィア協定のせいでアベンジャーズが分裂してサノスの攻撃を防げなかったことの他に、②S.W.O.R.D.長官がソコヴィア協定違反の行動をとって逮捕されたこと③ソコヴィア協定の存在によってS.H.I.E.L.D.職員=米国政府職員だったシャロン・カーターが不当に亡命生活を強いられたことと、相次ぐ失策の結実としてソコヴィア協定は廃止されたのではないだろか。

ソコヴィア協定はそもそもヒドラに侵略された状態で作られた協定であり、②と③に関しては完全に米政府の失策である。現実と同じく2024年11月に米大統領選が行われたのだとすれば、リットソン大統領は初当選か再選かにかかわらず、失策が続く中でスーパーヒューマンを巡る問題にテコ入れをしていたとしても不思議ではない。その結果、国際協調を目指すソコヴィア協定よりも、国内の治安維持を目的としたダメージコントロール局による統制を目指したのではないだろうか。

ドラマ『シークレット・インベージョン』の舞台は2025年11月(1995年の30年後、ロシアの民族統一の日=11月4日が舞台)。モスクワでの一件も含め、米国が孤立して行く中で2024年5月3日(金) 米公開予定の『キャプテン・アメリカ:ブレイヴ・ニュー・ワールド(原題:Captain America: Brave New World)』では、ハリソン・フォードが大統領となったサディアス・E・“サンダーボルト”・ロス将軍を演じるとされている。

ローディも新キャップのサム・ウィルソンも米空軍出身だが、サンダーボルト・ロスも軍出身で国務長官に就任した人物だ。セオドア・ルーズベルトやドワイト・D・アイゼンハワーなど、軍出身の米大統領は珍しくないが、サンダーボルト大統領の誕生は、“孤立する米国”から繋がっていく要素なのかもしれない。

ポリティクス・スリラーとしても楽しめる『シークレット・インベージョン』。第3話以降の展開も政治要素にも注目してみていこう。

ドラマ『シークレット・インベージョン』は2023年6月21日(水)より、ディズニープラスで独占配信。

『シークレット・インベージョン』(Disney+)

第2話のネタバレ解説はこちらから。

エミリア・クラークが演じるガイアの原作での設定はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

マリア・ヒル役のコビー・スマルダーズは第1話ラストの展開についてメディアに語った。詳しくはこちらから。

 

『シークレット・インベージョン』では、ローディは「大統領の右腕」として登場するとされている。詳しくはこちらから。

サミュエル・L・ジャクソンが語ったニック・フューリーが消えた理由についてはこちらの記事で。

『シークレット・インベージョン』は映画『アーマー・ウォーズ』に繋がっていく要素もあるという。詳しくはこちらから。

 

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』ラストに残された9つの謎はこちらから。

【ネタバレ注意!】『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』にあったMCU要素の解説はこちらから。

ドラマ『ロキ』シーズン2は2023年10月6日(金)より配信開始予定。詳しくはこちらの記事で。

映画『マーベルズ』のヴィランについてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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