『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』第9話 感想&考察 地底への挑戦 ネタバレ解説 | VG+ (バゴプラ)

『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』第9話 感想&考察 地底への挑戦 ネタバレ解説

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「ゴジラ」シリーズ70周年を飾る最初の作品

2024年は『ゴジラ』(1954)から70周年となる記念すべき年だ。そのような2024年最初の「ゴジラ」シリーズ作品がモンスター・ヴァースのドラマ最新作『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』だ。その『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』第9話「世界軸/アクシス・ムンディ」が2024年1月5日よりApple TV+から配信された。

2024年にはモンスター・ヴァースの映画最新作『ゴジラxコング:新たなる帝国』が公開される。それを前に映画作品同士を繋げるドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』第9話「世界軸/アクシス・ムンディ」について感想と考察をしていこう。なお、本記事では『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』第9話「世界軸/アクシス・ムンディ」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』の内容に関するネタバレを含みます。

地底GO! GO! GO!

砂時計〈アワーグラス〉作戦

1962年、アメリカ合衆国カンザス州の特別研究機関MONARCHの試験場。キャンピングトレーラーでケルトン・サカモト演じる幼き日のヒロシの面倒を見るワイアット・ラッセル演じる若き日のリー・ショウと、アンダース・ホルム演じるウィリアム・“ビリー”・ランダの2人。

特別研究機関MONARCHの任務のためにヒロシを置いていかなければならないことにリーとビリーは罪悪感を覚えていた。この罪悪感の根源にあるのは1959年のカザフスタンの原子力発電所跡地で山本真理演じるケイコ・ランダを喪ったことによるものが大きいと考察できる。ここで平岳大演じる大人のヒロシ・ランダが鉛筆を削るのに使っていたナイフは、元はリーのものだとわかる。

クリストファー・ヘイエルダール演じるパケット将軍のもと、カンザス州の試験場で特別研究機関MONARCHが行なおうとしていることは地球空洞説に基づく地下世界の探検「砂時計〈アワーグラス〉作戦」だ。しかし、モンスター・ヴァースの世界で地球空洞説が認められ、地下探検に成功したのは『ゴジラVSコング』(2021)のことであり、劇中設定だと2024年の出来事である。

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それ以前の地下世界への冒険は特殊な重力場が原因で失敗に終わっており、アレクサンダー・スカルスガルド演じるネイサン・リンドは自分の兄がその重力場に機体が耐えきれずに死亡したと語っている。そのため、特別研究機関MONARCHが地底への挑戦に成功したのに42年かかったと考察できる。

それ以前に地底への挑戦が行なわれ、乗組員が無事に帰還できた可能性は低い。だが、パケット将軍の口ぶりからアメリカ軍の指揮下に置かれていた当時の特別研究機関MONARCHはソ連との宇宙開発競争の一環として、砂時計〈アワーグラス〉作戦を行なったと考察できる。不安ながらも乗組員となったリーを見送るビリー。そこには地球空洞説の証明というケイコとの夢の実現と、仲間であるリーを喪うことへの不安が満ちている様子が見て取れる。

砂時計〈アワーグラス〉作戦は『ゴジラVSコング』でエイペックス社が行なったものと同じく、怪獣(タイタン)の誘導で地下世界に続く穴へと落ちていく作戦だ。そこで用いられるのが第6話「恐ろしい奇跡」でレオ・アシザワ演じる鈴木博士が発明したガンマ線シミュレーターだ。この際、パケット将軍がキャッスル作戦を嬉々として語っていることから、ケイコが憂いていた原爆に対する日本人とアメリカ人の認識の差が考察できる。

砂時計〈アワーグラス〉作戦が発動し、怪獣の体に乗組員を乗せたカプセルがくっついて地底に入った途端、周囲のアンテナが火花を散らし軋み、穴は周囲のものを飲み込み始める。これは第7話「本物のメイはどうぞご起立を」でのアラスカ州の穴を爆破する際の怪獣(タイタン)フロストヴァークや、第8話「生得権」でカザフスタンの穴を爆破しようとした際の成体のエンドスワーマーと同じく、地球規模でのホメオスタシスだと考察できる。

モンスター・ヴァースでの地球はガンマ線を放出する穴を呼吸孔のようにいくつも持っており、それが塞がれそうになれば怪獣を出現させ、異物が入ればせき込むようにそれらを爆発や吸引を繰り返すのだと考察できる。そのため『ゴジラVSコング』で成功したのは、特殊な重力場の克服だけではなく、ホメオスタシスである怪獣たちの王の候補であったコングの協力があったためだとも考察できる。

地上破壊作戦の代償

2015年の東京では、病院のベッドで渡部蓮演じるケンタロウが目を覚ます。ケンタロウは重傷で、その状態のまま、ジョー・ティペット演じるティムミレリー・テイラー演じるナタリア・ベルドゥーゴ副長官から事の顛末を聞く。

現代のカート・ラッセル演じるリーが計画した地上の原子力跡地の破壊による穴の封鎖により、その原子力発電所跡地は内側に向けて倒壊、大勢の犠牲者を出した上、アンナ・サワイ演じるケイトカーシー・クレモンズ演じるメイ、そしてリー本人も穴へと落ちて行ってしまったのだ。ティムはエリサ・ラソウスキー演じるミッシェル・デュバルに助け出され生還し、カザフスタンの地元住民の協力で帰国に成功したとのことだった。

ナタリア副長官の口から告げられるケイト、メイ、リーの死亡という残酷すぎる事実。そしてナタリア副長官は協力すると言い続けるケンタロウに、生き続けるのがケイトとメイたちにできる精一杯の協力だと言い、ケンタロウを久藤今日子演じるケンタロウの母親のエミコ・ランダに会わせるのだった。

遭難者たち

しかし、真実は違っていた。リーは不可思議な森の中で目を覚ます。空はガンマ線を放出していた穴のように輝いており、そこが地下世界であることは明らかだ。リー、ケイト、メイの3人は怪獣(タイタン)エンドスワーマーと共に穴に落ちたことで特殊な重力場を突破し、命からがら地下世界へとたどり着いたのだと考察できる。

リー曰く、地上世界と地下世界の2つの世界の断層が閉じる際に一種の放電現象が生じるとのことで、メイの足元を稲妻が走り、天に向けて雷が降り注ぐという地上と正反対の現象が起きた。雷に巻き込まれる寸前のメイを助けたリーは、メイとそのまま合流し、ケイトを探す。

打ち切られる特別研究機関MONARCH

1962年、アメリカ合衆国バージニア州特別研究機関MONARCHの本部でケイコに引き続きリーまで喪ったビリーは打ちひしがれていた。泣きっ面に蜂が如く、パケット将軍から国防総省が砂時計〈アワーグラス〉作戦を鑑み、特別研究機関MONARCHへの援助を打ち切るという報告が入る。

パケット将軍は差別的な発言をし、原爆の威力に喜ぶなど善人とは言い難い人物だ。だが、それは1950年代から1960年代のアメリカの世相を反映したキャラクターだったからであり、部下であったリーの喪失には心を痛めていた。そして、このような台詞を残す。

宣戦を布告するのは老人だが、戦って死ぬのは若人。

リーを止められたはずなのにと自分を責め、リーの捜索を諦めないと発言するビリー。そんなビリーにパケット将軍は自分こそ止められたはずだと言い、ヒロシを引き合いに出して、母親のケイコと叔父のリーまで喪ったヒロシから父親まで奪うなと諫める。

浦島太郎

2015年のリーは地下世界に長くは居られないと語り、1962年の砂時計〈アワーグラス〉作戦で地下世界から生還した日を思い出していた。リーが目覚めたのは1982年の日本の特別研究機関MONARCHの医療施設であった。そこでリーは大人になったヒロシと出会う。

リーは砂時計〈アワーグラス〉作戦から20年経っているのにも関わらず年を取っていない浦島太郎のような状態になっていたのだ。これこそリーが社会法人フタバ憩いの里に軟禁状態であり、リーが90代にしては異常に若々しい理由だと考察できる。

パニックになり、怯えて動けなくなるリー。そのようなリーに対し、リーやビリーから言われた「戻ってくる」という言葉を信じたが、誰も帰ってこなかった幼少期を過ごしたヒロシはリーに複雑な感情を抱いていた。

サバイバーズ・ギルト

2015年、東京。ケンタロウは生還するも自分がもっとケイトたちのそばにいれば、ケイトたちが穴に飲み込まれるのを防げたのではないかと自分を責める。この状態はおそらくサバイバーズ・ギルトだと考察できる。

サバイバーズ・ギルトとは大勢の犠牲者が出た事件などで奇跡的に助かった人間が罪悪感を抱いてしまう現象だ。そんなケンタロウを母エミコは涙ながらに慰める。そして、エミコはケンタロウに自分の思うように生きればいいと言うのだった。

No Frauds

リーの一派がカザフスタンの爆破事故で大勢が死亡し、リーの残したガンマ線の急上昇という後始末に追われる特別研究機関MONARCH。ここでジェス・サルゲイロ演じるバーンズ博士が聞いているのはニッキー・ミナージュ,ドレイク&リル・ウェインの「No Frauds」だ。「No Frauds」はニッキー・ミナージュがラップの王となるには数字が重要だとレミー・マー相手にディスをした楽曲であり、ガンマ線の信号という数字をキャッチし、ゴジラという怪獣の王に近づくバーンズ博士にはぴったりの楽曲だと考察できる。

バーンズ博士は今にも噴火しそうなほどガンマ線を放出している穴の中に規則性を発見し、それを圧縮して見やすくしたところ、何者かが地底から地上へとメッセージを送っていることを発見したのだった。地下世界と地上世界では時の流れが違う。そのため、誰がメッセージを送っているのかもはっきりしない。

地底への挑戦

1982年、日本。リーはヒロシから尋問を受けていた。リーは特別研究機関MONARCHにより地下世界の未知の感染症や放射能汚染をしている可能性があるため、隔離されていたのだった。そして、残された親族であるヒロシを送り、どのように地下世界を生き延びたのか、若いままの年齢などの謎をリーから聞き出そうとしていた。

そしてリーは地底での出来事を思い出していった。リーたちを地底へと導いたのは駆逐艦ロートン号を撃沈させ、フィリピン山中まで運んだイオンドラゴンだった。しかし、イオンドラゴンは異物に気づき離脱。カプセルは操作不能になり落下し、乗組員の1人は地底へ到着した時点で死亡していた。

それでも、残りのメンバーは任務に着手した。地上世界への交信や偵察任務を行なったが、そこに異物を排除するようにイオンドラゴンが襲撃してくる。緊急避難を命じるも、地上世界との断層が閉じたことによる放電現象で乗組員は更に死亡していき、イオンドラゴンが明けた空中に浮かぶ穴にリーは吸い込まれた。そして気が付くと死者と生者の境があるとされる東出雲の古い神社にリーはいた。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)で古代人は怪獣(タイタン)との交流があり、それが神話に登場する怪物や神々だということが明らかになっている。リーが経験したことは日本で古くから伝わる神隠しや天狗攫いの類いであると考察できる。

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ヒロシはケイコ、ビリー、そしてリーも怪獣(タイタン)への執着という狂気に囚われているというが、リーはそれに激しく反論する。そしてケイトとケンタロウの2人に出会ったときと同じように、この仕事は遺産(レガシー)であり、ランダ家とミウラ家の家業だと告げた。そうしてリーは社会法人フタバ憩いの里に軟禁状態となる。しかし、ゴジラとM.U.T.O.(Massive Unidentified Terrestrial Organism、未確認巨大陸生生命体の意)との戦いを見て脱出を試みたのだった。

家族との出会い

ヒロシのオフィスでケイトの行方に関する資料を探すケンタロウだったが、そこでヒロシと遭遇する。ケンタロウはヒロシを責め、ケイトが地下の穴に落ちて消息不明となったことを告げるのだった。

そして、ケンタロウはヒロシに対して、ヒロシが2つの家族を持つような人間ではなかったら、このような惨劇は起きなかったと心の中のすべてをぶちまける。

その頃、地下世界で目覚めたケイトは背中に枝を生やしたイボイノシシ型の怪獣(タイタン)と遭遇する。目と鼻の先にまでその怪獣(タイタン)は迫ってくるが、一度は事なきを得たケイト。しかし、その怪獣(タイタン)はもう一度ケイトを襲おうとする。その怪獣(タイタン)を弓で射ち、ケイトの危機を救ったのは若々しい姿のままのケイコだった。

最終話はどうなるのか

地下世界では時間の流れが違う点や、『ゴジラVSコング』以前に地下世界への侵入を試みたことが特別研究機関MONARCHにあるなど、モンスター・ヴァース全体の根幹となる新設定が明らかになった第9話「世界軸/アクシス・ムンディ」。激動の展開を見せた第9話「世界軸/アクシス・ムンディ」だが、ここから最終回「論理を超えて」でどのような結末を迎えるのだろうか。

最終回のタイトル「論理を超えて」はビリーの口癖の「論理を超えた先に真実がある」というものからきている。ビリーといえば、第1話でジョン・グッドマン演じる晩年のビリーが誰に向けて謝っていたのかなど、謎が多く残されている人物でもある。最終回の展開に期待していきたい。

『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』第9話「世界軸/アクシス・ムンディ」は2024年1月5日よりApple TV+から配信開始。

『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』公式サイト

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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